処方せん

抗凝固薬の種類、血栓形成速度異なる‐不整脈での脳出血発症に違い

薬+読 編集部からのコメント

不整脈の一つである「心房細動」で抗凝固薬を服用中の患者において、熊本大学大学の研究グループが血栓形成の過程を観察しました。
その結果、ある種の直接経口抗凝固薬(リバロキサバン、アピキサバン)はワルファリン製剤と同様に血液が固まらないようにして、脳梗塞を予防する効果がありますが、血管が障害を受けた際には、速やかに血栓を形成している可能性があることがわかりました。

熊本大学大学・循環器内科学の研究グループは、不整脈の一つである「心房細動」で抗凝固薬を服用中の患者において、血栓形成の過程を観察し、従来のワルファリンや近年普及している新規の抗凝固薬の種類によって、血栓の形成速度が異なることを明らかにした。

 

心房細動では心房内の血液が滞ることでできた血栓が脳に流れ、脳梗塞の原因となる危険性があるため、抗凝固薬の内服が推奨されている。現在は、従来のワルファリン製剤に加えて、新しい作用機序の直接経口抗凝固薬が登場し広く普及している。一方で、副作用として出血性合併症が問題となるが、直接経口抗凝固薬は、ワルファリン製剤に比べ脳出血の発症率や血腫量が少ないとされている。直接経口抗凝固薬で脳出血が少ない機序は、動物実験レベルで検証されているが、いまだ十分には解明されていない。

 

そこで同研究グループは今回、ワルファリン製剤や各直接経口抗凝固薬を内服している心房細動患者でカテーテル治療を受けた120症例の血液を用いて、血栓形成の過程を、新たな測定機器である「血栓形成解析システム(T-TAS)」を用いて評価した。抗凝固薬の内訳は、ワルファリン製剤29例、ダビガトラン19例、リバロキサバン47例、アピキサバン25例となっている。

 

その結果、内服前と比較し、内服1カ月後の、血栓でマイクロチップ内が閉塞するのを防ぐ効果(抗凝固能)の値はどの群でも同程度に低下しており、抗凝固作用が十分に働いていることを確認した。

 

しかし、血栓形成の過程をマイクロスコープで経時的に観察すると、ワルファリン製剤に比べてある種の直接経口抗凝固薬(リバロキサバン、アピキサバン)投与後では、マイクロチップの障害血管壁に付着する血栓が、より早い時期から厚く形成されていることが分かった。

 

この結果は、ある種の直接経口抗凝固薬はワルファリン製剤と同様に血液が固まらないようにして、脳梗塞を予防する効果があるが、いざ、血管が障害を受けた際には、これら直接経口抗凝固薬では障害部位に速やかに血栓を形成している可能性が示唆するものだった。

 

これらの結果を受け同研究グループは、「ワルファリン製剤や直接経口抗凝固薬の最終的な抗凝固作用は同程度であっても、薬剤によって血栓形成の過程が異なり、それがある種の直接経口抗凝固薬の脳出血の抑制機序につながっている可能性がある」としている。

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出典:薬事日報

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