薬剤師会

抗癌剤の残液請求が議論に‐病院ごと見解バラツキも

薬+読 編集部からのコメント

バイアルの残液を2人目以降の患者さんに投与し、使用量ごとに請求できる薬剤バイアル最適化(DVO)が検討されています。
しかし、やむをえず残液を廃棄したときの対応などで病院によって見解が分かれており、日本病院薬剤師会関東ブロック第47回学術大会で議論されました。

焦点は「やむを得ず廃棄」

 

日本病院薬剤師会関東ブロック第47回学術大会が26、27の両日、前橋市内で開かれ、抗癌剤の曝露対策をテーマにしたシンポジウムでは残液を廃棄した場合の保険請求をめぐって議論になった。1バイアルを2人以上の患者に分割投与する薬剤バイアル最適化(DVO)が検討されている中、7月に厚生労働省は使用量に応じて請求するよう疑義解釈通知を発出した。ただ、“やむを得ず廃棄”した場合はバイアル単位で保険請求できるのが現状。そのため、医療現場の薬剤師からは「バイアル単位か使用量単位か選択できると考えていたが、どう解釈すればいいのか」などと意見が相次ぎ、医療機関によって見解の相違がある状況がうかがえた。


シンポジストとして参加した慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆氏は、厚労省通知を踏まえ、「やむを得ず廃棄した分をどう保険請求するかが今後の課題」と指摘した。実際に通知発出後、医療現場では「1バイアルを1人の患者に投与し、残液を廃棄した場合はバイアル単位で保険請求できるのか」などとその解釈で混乱が生じた。

 

現在、抗癌剤の残液については、添付文書に「残液は使用しないこと」「残液は廃棄すること」と記載されていることがDVOを実施できない根拠とされている。参加者からも「抗癌剤の残液を分割投与した場合の保険請求は、バイアル単位か使用量単位か医療機関で選択できるのではないか」との質問が出た。

 

岩本氏は「添付文書上はそうなっているが、調べた限りでは法的拘束力はない」と指摘。現状でもDVOの実施は可能との見解を示した。また、現状では残液をやむを得ず廃棄した場合に限り、従来通りバイアル単位で保険請求できるため、「全てのケースでやむを得ず廃棄したことになれば、逆にコスト高になってしまうのではないか」との懸念も出た。厚労省は今年度、DVOの本格実施に向けた調査研究を行う予定で、その結果を踏まえて「やむを得ず廃棄」の定義が決まることになりそうだ。

 

そのほか討論では、「バイアルを複数回使用する場合、院内での保管の仕方はどうなるのか」などの声も出た。抗癌剤の分割投与をめぐっては実践例が増えている一方、依然として医療機関ごとに解釈の違いが大きく、過渡期にあることがうかがえた。

 

一方、国立がん研究センター東病院薬剤部の野村久祥氏は、「がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン」の医療現場での活用方法を解説。18年に予定されているガイドライン改訂に向けた方向性についても言及した。

 

指針では、薬剤師に関連する事項として閉塞式薬物送達システム(CSTD)の使用が推奨され、野村氏は「抗癌剤の調製時にCSTDを使用することについては、だいぶ流れに乗ってきた」としつつ、病棟では抗癌剤投与時に様々な場面で汚染されていると指摘。

 

野村氏は「抗癌剤の曝露対策はガイドラインによって大きな進歩を遂げた」と強調。「今後は病院全体に目を向ける必要がある」とし、「調製に関する曝露対策にとどまらず、投与時のCSTD使用に目を向け、病院全体の曝露対策を行うことが重要」と訴えた。

 

また、CSTDを用いた曝露対策はDVOの実施にもつながることから、今後DVOが曝露対策にどう影響するかもガイドライン改訂のポイントになるとの見方を示した。

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出典:薬事日報

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