薬剤師会

社会的価値を加算対象に‐薬価改革で政策提言

薬+読 編集部からのコメント

日本製薬工業協会は、「製薬協政策提言2019」を発表し、「現行の薬価制度は医薬品の価値を適切に反映していない」との問題点を指摘しました。20年度、22年度の薬価制度改革に向け、新薬創出等加算の見直しなどを提案しています。

類似薬効比較見直しも要望

中山会長
中山会長

 

日本製薬工業協会は、新薬創出等加算の見直しを含む薬価制度改革の業界案を柱とした「製薬協政策提言2019」を発表した。2020年度の薬価制度改革には医薬品の医療的価値のみならず、患者や医療従事者、介護者に価値をもたらす「社会的価値」をインセンティブ系加算として薬価に反映する仕組みを提案。さらに22年度には、原価計算方式による薬価算定を廃止するのに加え、既存薬と新薬を比較する現行の類似薬効比較方式を見直し、対象疾患の患者数や重篤度、治療期間の長さなど新たな要素から比較対照薬を選定し、多面的に新薬を評価する新たな薬価方式の導入を目指す。今後、日本製薬団体連合会が具体的な提案内容をまとめ、中央社会保険医療協議会で実現に向けて、働きかけていく。

 


中山讓治会長は24日、都内で記者会見し、「現行の薬価制度は医薬品の価値を適切に反映していない」との問題点を指摘。「製薬協政策提言2019」をまとめた背景については、イノベーションの推進と国民皆保険の持続を両立させるために、「政府に求めるだけではなく、業界としてどうあるべきか国民に見える形でオープンに議論したいと考えた」と説明した。

 

20年度の薬価制度改革では、患者の治療に価値をもたらす「医療的価値」、患者や医療従事者、介護者に価値をもたらし、政策的に必要な医薬品の開発促進や医学・薬学の発展に寄与する「社会的価値」を医薬品の価値として定義し、薬価に反映させるよう取り組む。医療的価値では、これまで薬価収載時に画期性加算や有用性加算で評価してきたが、新規性や有効性・安全性、治療法の改善、利便性といった評価ポイントの積み上げ型で連続的な加算取得が可能になるよう、評価体系の見直しを求める。

 

経済性や労働生産性を評価する社会的価値については、政策的に必要な医薬品の開発を促進させる項目をインセンティブ系加算としての評価を提案。インセンティブ系加算は、先駆け審査指定制度や稀少疾病用医薬品、条件付き早期承認制度適用品を「承認審査制度加算(仮称)」とし、新薬創出等加算の品目要件に追加するべきと明記。小児や授乳婦、妊産婦、肝機能障害や腎機能障害患者に対する効能・効果は、「特定集団/特定背景患者加算(仮称)」として新たな加算体系として設置するよう求めた。

 

さらに22年度の薬価制度改革では、原価計算方式の廃止、新たな視点を組み入れた類似薬効比較方式の導入を目指す。中山氏は、「原価計算方式では、そもそも医薬品の価値を適切に評価しているとはいえず、それに代わる評価方式が必要」と話す。

 

業界が要望する類似薬効比較方式では、薬価算定上の比較対照薬選定の幅を従来よりも拡大し、より医療の実態に基づく薬価の算定を可能にする。現在、新薬と既存薬の類似性を検討する要素として、効能・効果、薬理作用、組成・化学構造、投与形態が現行ルールにおける最類似薬検討などとなっているが、対象疾患での患者数や重篤度、治療期間の長さといった新たな視点も加え、新薬の有用性を評価する上で、最も比較するのに適した類似薬を検討する。新薬が置き換わる診断や検査、処置、手術などの医療技術でも類似性を検討する。

 

さらに、企業が主体的に医薬品が持つ多面的価値を説明し、国民に対して薬価の算定根拠の透明性を高める仕組みとして、比較対照薬の選定、加算の根拠となる評価結果を記載した「評価報告書(仮称)」を活用し、医薬品の価値を客観的に評価できるシステムを確立する。

 

健康医療ビッグデータ、22年度以降に創薬で活用

イノベーション創出に向けては、「予防・先制医療ソリューションの早期実用化」「健康医療ビッグデータとAIの開発・活用」「ヘルスケアイノベーション創出エコシステムの構築」と三つの課題に取り組む。予防・先制医療ソリューションの早期実用化に関しては、製薬協が主導して前向きコホート研究で4社、疾患コホート研究で7社が参画し、小規模のパイロットを実施しており、20年度以降には大規模なパイロットに移行する。

 

健康医療ビッグデータの利活用やAI開発の基盤整備には8社が参画。21年度までに基盤を整備することで、22年度以降には創薬に本格的に活用する。

 

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出典:薬事日報

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