長期品の選定療養スタート~薬局で制度説明に課題多く
患者希望で長期収載品が処方された場合に患者に特別料金の自己負担を求める長期収載品の選定療養が1日から全国で始まった。後発品調剤割合が80%を超える薬局が多く、長期収載品の選定療養に該当する患者割合が少ないことに加え、制度開始前から医療制度の仕組みが変わることなどを薬剤師から患者に説明した結果、大きな混乱は見られていない模様だ。現場からは「後発品の使用促進につながる」との肯定意見があった一方、制度を知らない患者も一定数存在したため、「薬剤師から患者への制度の説明に時間がかかった」との声が相次いだ。
後発品使用促進効果も
埼玉県の薬剤師会会営薬局は、事前準備としてポスターによる周知や、カウンターごとに机面に貼付した。問い合わせはなかったため、長期収載品利用者には個別に時間を見つけて声かけしていたという。管理薬剤師は、制度開始初日を終えて「利用者、患者側には『制度が複雑で分かりにくい。どれくらい変わるのか』という声が大きかった」と感想を話す。処方箋を発行する医療者側も「制度の理解が乏しい」と課題を指摘する。
後発品の使用促進には期待を寄せる。同薬局は後発品調剤割合が75%にとどまるが、「ほとんどの患者が後発品に変更したいとの声が多く、後発品の使用促進となった印象」と述べた。
東京都墨田区内の薬局薬剤師は、「朝早く起きて、仮の処方箋を組み立ててレセコンにきちんと反映されるかシミュレーションをした。前日まで心配だったが、うまく立ち上がって安心した」と胸をなで下ろした。
患者希望で長期収載品が処方された患者のうち、最も自己負担額が大きかったのは「2500円」で、「使用感を気にする患者が多い。後発品と長期収載品の差額の4分の1であれば、長期収載品を選ぶ患者は多いかもしれない」と実感を話す。業務上の影響については「患者への制度説明で10分程度かかり、患者を待たせてしまった」と話す。
また、都内の薬局では「普段は話をしない患者だったが、制度導入をきっかけにコミュニケーションが徐々に取れるようになった」との好影響も聞かれた。
鹿児島で複数店舗を持つ薬局の管理薬剤師は、「薬の価格やオーソライズドジェネリック(AG)の有無に詳しくなった。AGであれば変更してくれる医師や患者がいる」と明かす。
一方で課題も指摘した。入金するレジに自費・課税対象と保険対象を分けて入力する必要性から、会計処理の複雑化によるミスが多発したという。また、「『そんな制度は聞いていない』と怒って戻られた患者もいる」とし、「お金や制度説明に割く時間がしばらくは続きそう」と話す。
東京都町田市内のドラッグストアに勤務する薬剤師は「特に大きなトラブルはなかったが、定期的に来ない患者の中には制度を知らない人もいた」と話す。「後発品の使用促進につながるのはいいことだが、一定数の患者は後発品メーカーの不祥事を気にして変えない人もいるので、再発防止のために国やメーカーに安全性担保の仕組み作りをお願いしたい」と求める。
一方で、厚労省の資料をもとに個人が作成しているシミュレーションサイトを患者が利用し、薬剤師が事前に試算して伝えた追加額と実際の追加額が大きく乖離している事例があることには、「今後揉めるかもしれない。厚労省公式で立ち上げてほしい」と要望した。
複数の薬局から在庫調整の難しさも指摘された。患者が希望する長期収載品を自薬局でどれだけ確保すればいいかの判断に頭を悩ませている。「在庫調整も大変で、対物から対人にシフトしているが、また対物に戻っている印象」との意見のほか、「自薬局にない医薬品を薬局間連携で融通する仕組みが必要」との指摘も上がった。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
2024年10月1日より、患者希望で長期収載品が処方された場合に患者に特別料金の自己負担を求める長期収載品の選定療養が開始されました。現場からは肯定意見があった一方、「薬剤師から患者への制度の説明に時間がかかった」との声も相次ぎました。