医療

医師との関係性を最重視~地域フォーミュラリ作成で 日本フォーミュラリ学会学術総会

薬+読 編集部からのコメント

2024年10月20日、大阪府豊中市で日本フォーミュラリ学会学術総会が開催されました。各地の薬剤師会関係者は、地域フォーミュラリの作成・運用を進める上で、医師との関係を重視していることを強調しました。

日本フォーミュラリ学会学術総会が20日に豊中市内で開かれ、地域フォーミュラリの作成や運用を進める上で各地の薬剤師会関係者は、医師との関係を重視していることを強調。「全て医師会、歯科医師会、薬剤師会の3師会で協議して決めるスタイルで進めた」「医師にとって有用なものをどうやって作り込むかが重要になる」などの声が上がった。

高槻市薬剤師会は2022年度から2年間、大阪府のモデル事業として地域フォーミュラリ作成を推進。1月からプロトンポンプ阻害薬(PPI)、ビスホスホネート、尿酸生成薬、内服鎮痛剤の4領域で運用を開始した。作成に当たっては3師会の幹部計8人で構成される実行委員会を中心に協議を重ね、内容を練り上げた。

 

三宅良宏会長(スマイル薬局)は、「薬剤師会だけが頑張るのではなく、領域の選定から公開に至るまで3師会で協議を重ねた」と言及。多忙な中、業務を終えた夜にオンラインでメンバーが集まり対話を進めた。実行委員会には敢えて病院薬剤師を加えず、確認したいことは医師に意見を求めて当事者意識が高まるように工夫した。

 

ビスホスホネートの地域フォーミュラリ作成時には、歯科医師から安全性に関する各種データが提出されるなど医師は積極的な姿勢で議論に加わった。高槻市における薬剤使用実態も考慮し、たたき台の案に薬剤を追加するなどして最終的な内容を決めた。三宅氏は「処方する医師が使いやすいように意見をできるだけ反映し、ドクターファーストで作り上げる方針で進めた」と振り返った。

 

昨年度でモデル事業の役目は終えたが、引き続き医師は前向きで、今年度は自主的にスタチンと睡眠導入剤の2領域の作成を進めている。三宅氏は、「医師に引っ張られて動き出している」と語った。

 

仙台市薬剤師会の渡辺善照氏(東北医科薬科大学薬学部名誉教授)は、地域の医師会、歯科医師会と連携して睡眠薬や抗菌薬、鎮痛薬の推奨薬リスト作成を進めていると報告。「医師、歯科医師にとって処方時に利用価値があると判断されるものを作っていかなければ、受け入れられない」と強調した。

 

推奨薬リストは3師会で最終的に承認する枠組みとし、作成には医師も関わるようにした。必要に応じて専門領域の医師の外部評価を行う仕組みも設けた。

 

渡辺氏は「薬剤師だけの判断、目線で物事を進めて良いものではない。関連領域の医師の評価や意見を聞いて作り込んでいくことが大事。医師が専門外の薬を使う場合に安心できる根拠になる」と話した。

 

和歌山県田辺市で地域フォーミュラリ作成を進める田辺薬剤師会の山下真経副会長(くまの貿易)は、今年度中に運用を開始する見通しを提示。フォーミュラリの内容は、地域の医師会の承認を得るだけでなく、医師会からの要望で基幹病院の専門医による評価や意見を得たいと語った。

 

議論では、地域フォーミュラリの作成や運用で先行する八尾市薬剤師会の関係者から、全診療所の医師など地域の隅々に地域フォーミュラリを浸透させるのが難しいとの声が上がった。

 

渡辺氏は「医師の理解についてはかなり温度差があるため、フォーミュラリというカタカナではなく、推奨薬リストとして話を進めるようにした」と報告した。

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出典:薬事日報

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