医療

診療所と薬局がPBPM‐貼付剤の使用継続率が向上

薬+読 編集部からのコメント

静岡県浜松市のクリニックと近隣の薬局13軒が連携し、「プロトコルに基づく薬物治療管理」(PBPM)の一環として患者が「ネオキシテープ」を使い続けられるように支援しているというニュース。皮膚炎による使用中断を減らすため、薬剤師が患者に電話をかけて様子をヒアリングするなど対応しているということです。

浜松市で地域医療連携

 

浜松市のながえ前立腺ケアクリニックと近隣13薬局は連携し、「プロトコルに基づく薬物治療管理」(PBPM)の一環として、過活動膀胱治療用の貼付剤「ネオキシテープ」を患者が使い続けられるように支援している。接触性皮膚炎による使用中断を減らすため、スキンケア方法や皮膚症状出現時の対応を標準化し、プロトコルを策定した。初回処方時の説明に加え薬局薬剤師は開始後3日目、7日目に電話をかけてモニタリングを行う。プロトコルの運用によって、同剤の継続率は向上しており、地域の医療機関と薬局が連携してPBPMを導入する一つのモデルとなりそうだ。


 

ネオキシテープは、2013年に発売された1日1回貼り替えタイプの過活動膀胱治療用の貼付剤。血中薬物濃度を一定に維持できる貼付剤の特性を生かし、経口剤で治療継続のネックになっていた便秘や口渇の副作用出現を軽減できるのが特徴だ。しかし、その反面、貼付剤ならではの接触性皮膚炎の出現が使用継続を妨げる要因になり、その対処が課題になっていた。

 

こうした中、使用初期の接触性皮膚炎出現による脱落を防ぐため、同クリニックの医師と近隣の薬局薬剤師は連携してプロトコルを策定。隣接する薬局フォーリア細江店と試行を開始し、浜松市薬剤師会の承認を得た上で、昨年12月から近隣13薬局と連携したPBPMを開始した。病院内の医師と薬剤師が連携するPBPMは各地に広がっているが、地域医療連携での実践例はまだ少ない。

 

策定したプロトコルは、ネオキシテープについて、[1]処方開始前[2]初回処方時[3]皮膚症状発現時[4]効果不良時――の標準的な対応や指導内容をまとめたもの。処方開始前に薬局薬剤師は、スキンケアの指導を行う。同クリニックからヒルドイドローションの院外処方箋を応需。貼付予定部位に貼付開始1週間前から毎日塗布するよう患者に説明する。初回処方時にはスキンケアの実践状況を確認するほか、併用するステロイド剤の使用方法なども指導する。

 

使用開始後3日目と7日目に薬局薬剤師は患者に電話をかけて、皮膚症状発現の有無や状態を聞き取る。皮膚の発赤、かゆみ、痛みの状態を聞き取り、症状の強さに応じてプロトコルに沿って対応する。ステロイド剤の使用方法やスキンケア方法を改めて実践的に指導したり、貼付部位の変更を指導したりする。皮膚障害が強く出現している場合には、貼付休止を指示し、医師に連絡した上で受診勧告を行う。効果不良時には、スキンケア方法の徹底や貼付部位の変更などを指導する。これらの対応結果は、速やかに同クリニックへFAXで報告。それ以降も必要に応じて電話モニタリングを実施する。

 

これまでに、同クリニック前の薬局フォーリア細江店が33人、他の薬局が6人の過活動膀胱患者にこのPBPMを実践した。電話をかけて皮膚症状を聞き取った上で、保湿剤塗布の回数やタイミングの修正を指導したほか、テープの剥がれを経験した患者には、その対策として被覆材の使用説明を重点的に行った。

 

PBPM導入前の18例と導入後の33例でネオキシテープの継続率を比較したところ、開始1カ月後の継続率は導入前の47%から導入後は85%に向上。3カ月後の継続率も導入前の29%から58%に向上した。特に開始後1カ月以内の脱落が減少したという。

 

薬局フォーリア細江店の薬剤師、三橋悠希氏は「初回指導通りに自己管理できている高齢者は少なく、具体的なサポートの繰り返しが必要不可欠であると痛感した。電話モニタリングによる自己管理の修正や意識づけが継続率の改善に貢献したのではないか」と語る。

 

また、「通常、薬局薬剤師の介入は診察後の服薬指導のみだが、本来は投薬後のモニタリングが非常に重要なはず。その介入をより確実にスムーズに実施するにはプロトコルを作成する必要がある」としている。

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出典:薬事日報

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