新型コロナウイルスへの不安を訴える患者さんが増えています。たとえば、「いつまで続くのか」「外出できなくてストレスがたまる」といった相談です。患者さんの不安をあおらないようには気を付けていますが、正直薬剤師である私自身も毎日不安を抱えて出勤しています。患者さんの不安の声にどう答えたらよいのでしょうか。

本記事の掲載時点では、確実な治療方法が見つかっておらず、感染の収束も見えていない新型コロナウイルス感染症。ご自身も不安や心配が大きい中、患者さんとの対応について真剣に考える姿勢は本当に素晴らしいですね。
 
薬剤師としては確たる情報があれば適切な指導ができますが、今は医療者でも先が見えない状況。そこで大切なのが、患者さんの不安を受けとめ、寄り添う姿勢です。不安を抱えている患者さんは、むやみに情報を集めようとして、場合によっては誤った情報や誇張された報道等を信じてしまうかもしれません。薬剤師に不安を受けとめてもらうことで、気持ちが軽くなったり安心感を得られたりすれば、患者さんにとって何より心強いことなのではないでしょうか。
 
患者さんには、言葉で不安を表現することができる人もいますが、自分が抱えている不安に気づくことができていない人もいます。じっくり向き合い話を聞くことで、患者さん自身が自覚している不安を受けとめたり、もしかしたらまだ自覚していない胸のうちに隠れている不安を引き出して寄り添ったりすることができます。
 
その後、今できることを正しく伝えましょう。「ご存じだと思いますが、流水で15秒手洗いするだけで、ウイルスが100分の1になるそうです。こまめに手を洗いましょうね」といった具合に、ごく簡単なことでも感染を防ぐ可能性が高くなることを繰り返し伝えてください。自分にもできることがあると患者さんが理解すれば、自分を守るための行動へとつなげてくれます。
 

患者さんの不安に寄り添う姿勢をあらわす方法の一つが「傾聴」です。人は話を聴いてもらうと、「認められた」と感じて安心します。とくに苦しい時や辛い時は、黙って話を聴いてもらうだけでも、寄り添ってもらえている心強さを感じるものです。
 
日ごろの服薬指導でも実践していると思いますが、患者さんの不安が強いと感じられる時は、いつも以上に丁寧に真剣に話を聴きましょう。患者さんの目を見て、患者さんの立場になったつもりで共感しながら聴きます。話を否定したり遮ったり、言い返したりするのはＮＧ。
 
例えば「外出できなくてストレスがたまる」という患者さんがいれば、「確かにストレスがたまりますよね。外出しない時は、どのようにお過ごしですか」と関心を寄せて尋ねてみましょう。あるいは「自粛が続いて疲れてきた。もう嫌だ」という患者さんには「そうですね、自粛疲れが出る頃ですよね。嫌だと思うのはどんな時ですか」といった具合です。
 
患者さんの話や気持ちがわからない時は、わからないままにせずに、聞き直して確かめることも大切。決して分かったふりをせず、興味を持って質問することで、相手を大切に思っていることが伝わります。
 
不安に寄り添う姿勢で接していると患者さんの本音が引き出され、薬剤師が伝えたいことにも耳を傾けてもらいやすくなります。ソーシャルディスタンスを守りながらの対応では、思うように伝わらなくてもどかしい気持ちになるかもしれませんが、患者さんの不安を少しでも和らげることができるよう「傾聴」の姿勢を大切にしてほしいと思います。

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薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日　同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling！」: https://smilegrdn.exblog.jp/