異動で、常勤薬剤師2名（自分含め）、パート薬剤師4名、補助スタッフ2名の薬局に勤務することになりました。僕以外は全員女性という職場は初めてです。美容の話などついていけない話題が多かったり、ハラスメントに気を付けたりとなにかと気疲れしてしまいます。どうすれば働きやすくなりますか？

男性薬剤師が増えてきたとはいえ、女性スタッフの方が多いという調剤薬局がほとんどだと思います。性別で人を判断する時代ではないと理解していても、女性ばかりの中で肩身が狭い思いをしたり、余計な緊張をして気疲れしたりしてしまう気持ちもよく分かります。
 
薬局は薬剤師だけでなく、調剤助手や医療事務といった多くの女性スタッフが活躍している職場です。そして医療関係者に限らずおしゃべり好きな女性は多く、女性特有の話題というものも確かにあると思います。ですが、その話題に無理についていこうとする必要は全くありません。美容やファッションなど自分の興味のない話題であれば、適当に聞き流しましょう。もしコメントを求められたら、「あまり詳しくなくて……」とやんわり伝えれば、それ以上追及されることはないはずです。悪口や噂話が出た場合も、軽く聞き流すのが一番です。

 

 
何かコメントすること以上に大切なのが、聞き役に徹すること。おしゃべり好きな人たちは、必ずしも返事を期待していない場合も多くあります。余計なことは言わず、時々共感を示すことで、話し手は満足するものです。大切なのは場に馴染むこと。たとえ無意識でも、話の途中で目線をそらしたり、自分から話題を変えたりすると、話を聞いていないと思わせてしまう可能性があるので注意が必要です。相手が「聞いてくれているんだなぁ」と感じる程度で十分なので、適度に相づちやうなずきをはさみながら話を聞きましょう。

 

働きやすい環境を作るためには周囲に敵を作らないことが重要で、女性スタッフが多い職場で働く男性はとくに配慮が必要なポイントがあります。たとえ特別扱いしているつもりはなくても、特定のスタッフの話ばかりをしていると「好意を持っている」とか「えこひいきしている」などととらえられかねません。スタッフ間での嫉妬や、いじめや嫌がらせの原因になる可能性もあるので、特定の人とだけ仲良く話すことはもちろん、女性スタッフを比較することも控えましょう。
 
また人は誰でも褒められると嬉しいもの。褒められることでモチベーションが上がったり、気分がよくなったりします。「調剤台を片づけてくれてありがとうございます」というように、ただ褒めるだけでなく、感謝の言葉を添えることで、人間関係がよくなります。ぜひ試してみてください。

 

 
あくまでも個人的な考えですが、調剤薬局にはさまざまな人が出入りするため、ごくまれに患者さんとの間でセクハラまがいのトラブルが生じることがあります。男性薬剤師が薬局に1人いるだけで目に見えない抑止力になり、とても心強く思う女性薬剤師が多いと思います。

 

 
相談者さんが働きやすいと感じる職場は、女性スタッフにとっても働きやすい職場になるはずです。職場コミュニケーションは大切ですが、患者さんと真摯に向き合うのが薬剤師の本来の使命です。女性薬剤師との関係を意識しすぎず、患者さん応対に集中しましょう。気負い過ぎず自然体で、性別に関係なくプロフェッショナルの薬剤師としてお互いを尊敬しあう関係性を築いてほしいと思います。

薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日　同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling！」: https://smilegrdn.exblog.jp/