薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.08.16公開日:2024.06.12 薬剤師のスキルアップ

かかりつけ薬剤師(薬局)とは?役割や条件・業務内容を解説

編集:秋谷侭美(薬剤師ライター)

高齢化が進み、地域医療のサポート体制や医療費削減が課題となる中、期待が高まるのが「かかりつけ薬剤師」の役割です。2024年度の診療報酬改定では、24時間対応に関する要件やかかりつけ薬剤師と連携する薬剤師、加算項目などについて見直されました。ますます高齢化が進むことが懸念されている現在、地域全体で高齢者を支えるためにも、かかりつけ薬剤師の役割は大きいものです。この記事では、かかりつけ薬剤師になるための条件や、かかりつけ薬剤師業務における算定要件、施設基準などについて解説するとともに、かかりつけ薬剤師はいらないと患者さんに言われることがある理由や声かけをする患者さんの選び方、声かけのタイミングなどを詳しくお伝えします。

目次

1.かかりつけ薬剤師・薬局とは?

かかりつけ薬剤師・薬局とは、担当患者さんが服用している薬などのさまざまな情報を継続的・一元的に把握し、休日や夜間などを含めて患者さんからの薬の相談に乗ったり、治療のサポートを行ったりする薬剤師・薬局のことです。
 
薬剤師は、かかりつけ薬剤師でなくても、処方薬の飲み合わせや副作用の有無、市販薬や健康食品との飲み合わせなどを確認しなければなりません。しかし、かかりつけ薬剤師になることで、患者さんの服用歴や治療経過を把握しやすくなり、さまざまなケースでスムーズに対応できるメリットがあります。
 
例えば、患者さんの中には、体調が悪くなったため病院を受診したいものの、都合がつかず、とりあえず市販薬で様子を見たいという人もいるでしょう。そうしたときに、自身の治療経過や服用薬を把握しているかかりつけ薬剤師に相談することで、安心して市販薬を選択できるようになります。
 
そのほか、深夜に発熱して病院受診ができない場合や誤って重複服用してしまったときなどに、時間を問わず相談できるので、かかりつけ薬剤師は患者さんにとって頼りになる存在となるでしょう。かかりつけ薬剤師は、普段の生活で困ったことが起きたときに気軽に相談できる医療従事者としての役割を担います。
 
参照:かかりつけ薬剤師・薬局とは?|日本薬剤師会

2.かかりつけ薬剤師・薬局に求められる役割

かかりつけ薬剤師指導料を算定する患者さんは、通常より多くの医療費を負担します。かかりつけ薬剤師は、この負担額に見合った医療の提供が求められるでしょう。普段の服薬指導に加え、患者さんの日常生活や治療に対する考え方なども踏まえて指導を行うと、生活習慣や患者さんの価値観にさらに寄り添った服薬サポートができます。
 
丁寧なサポートを行うためには、処方薬だけでなく市販薬やサプリメントなど幅広い知識を深めることに加え、患者さんが気軽に相談できる人柄であることも大切です。どんなことでも気軽に話せる相手になると、体調や生活習慣などの些細な変化を相談される機会が増え、アドヒアランス向上につながるでしょう。かかりつけ薬剤師は今以上に身近な存在になるよう努力が必要です。

 
🔽 かかりつけ薬剤師に必要な心構えを紹介した記事はこちら

3.かかりつけ薬剤師になるための条件

かかりつけ薬剤師として「かかりつけ薬剤師指導料」や「かかりつけ薬剤師包括管理料」などの薬学管理料を算定するためには、まず施設基準をクリアし、地方厚生局長などに届け出る必要があります。施設基準は、以下の4つの要件を全て満たす保険薬剤師が配置されていることです。

 

1.必要な勤務経験を積む
2.認定薬剤師などの資格を取得する
3.地域活動へ参画する
4.患者さんのプライバシーに配慮する

 

それぞれ詳しく解説します。

 

3-1.施設基準の要件 ①必要な勤務経験を積む

かかりつけ薬剤師になるためには、ある程度の勤務経験を積む必要があります。薬剤師の勤務経験に関する要件は以下の3つです。

 
■薬剤師の勤務経験に関する要件

1.保険薬剤師としての薬局勤務経験年数が3年以上であること
2.勤務している薬局での勤務時間が週32時間以上であること
3.勤務している薬局の在籍期間が継続して1年以上であること

 

上記全てをクリアした場合のみ、勤務経験の要件を満たします。
 
ただし、病院薬剤師の経験を持つ薬剤師の場合、薬局勤務経験については、病院勤務の期間を1年まで含めてよいとされています。例えば、病院勤務経験が3年、薬局経験が2年の薬剤師の場合、病院勤務経験を1年とカウントできるため、かかりつけ薬剤師の薬局勤務経験年数を満たします。
 
勤務先の薬局での勤務時間や在籍期間は、直近の勤務状況が要件を満たさなければなりません。例えば、5年間在籍していた薬局を一度退職後に再就職した場合、在籍期間がリセットされます。過去にどんなに長く働いていたとしても、再雇用の場合は過去の勤務期間が考慮されません。
 
また、育児・介護休業を挟んで勤務しているケースでは、育児・介護休業期間が勤務経験としてカウントされません。育児・介護休業期間を除いて3年以上の薬局勤務経験と、1年以上の在籍期間が必要です。しかし、勤務時間については、週24時間以上かつ週4日以上の勤務が基準とされており、短時間勤務の人への配慮がなされています。
 
なお、短時間勤務を行う薬剤師のみで届出を行うことはできません。同じ薬局で、他に週32時間以上勤務するかかりつけ薬剤師がいることが条件となっています。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1) 事務連絡 令和4年3月31日|厚生労働省

 

3-2.施設基準の要件 ②認定薬剤師などの資格を取得する

薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度などの研修認定を取得していることも、かかりつけ薬剤師の要件です。薬剤師認定制度認証機構が認証しているプロバイダーの種類は、大きく以下の3つに分かれます。

 

● 生涯研修認定制度:G(日本薬剤師研修センターなど)
● 特定領域認定制度:P(日本在宅薬学会など
● その他の薬剤師認定制度:E(東北大学大学院薬学研究科)

※参照:生涯研修プロバイダー|薬剤師認定制度認証機構

 

かかりつけ薬剤師を目指すのであれば、該当するプロバイダーで研修認定を受けましょう。
 
また、資格取得までの工程や更新時の条件は、各プロバイダーによって違いがあります。単位として認められる研修も異なり、インターネットで受講できるもの、各薬剤師会が地域で主催する講習など、幅広くあります。
 
いずれも、勤務状況や都合に合わせて、柔軟に受講できる工夫がなされていますが、短い期間でまとめて単位を取得するのは難しいかもしれません。年間を通して計画的に受講することが大切です。

 

3-3.施設基準の要件 ③地域活動へ参画する

地域医療への参画とは、「地域包括ケアシステムを構築するための活動」「地域住民とのつながり」「顔が見える関係が築けるような活動」をすることです。
 
具体的には、以下のようなものが挙げられます。

 

● 研修会への参加や演者としての実績
● 学校薬剤師として子どもたちへ薬の適正使用についての説明
● 地域ケア会議など多職種が連携して定期的かつ継続的に行われている医療・介護に関する会議
● 地域の行政機関や医療介護関係団体などが主催する住民を対象とした研修会等への主体的、継続的な参加
● 行政機関や地域医師会、歯科医師会、薬剤師会の協力の下で実施している休日夜間薬局としての対応、休日夜間診療所への派遣

 

なお、メーカーが主催する勉強会への参加は、「地域活動」としては認められていません。かかりつけ薬剤師を目指すのであれば、上記5つの要件を踏まえ、積極的に地域医療へ参画しましょう。

 

3-4.施設基準の要件 ④患者さんのプライバシーに配慮する

かかりつけ薬剤師は、患者さんのプライバシーに配慮することが求められます。そのため、かかりつけ薬剤師が在籍する薬局では、患者さんとの会話のやりとりが他の患者さんに聞こえないようにするため、パーティションなどで区切られた独立したカウンターを設けるなど、環境を整える必要があります。
 
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて 保医発 0305 第6号 令和6年3月5日|厚生労働省

4.かかりつけ薬剤師の業務内容

かかりつけ薬剤師は担当する患者さんの薬剤に関わるさまざまな業務を行い、サポートします。かかりつけ薬剤師・薬局に求められる業務内容についてお伝えします。

 

4-1.かかりつけ薬剤師に関する同意書の取得

かかりつけ薬剤師指導料を算定するためには、かかりつけ薬剤師となる薬剤師本人が以下の点を説明した上で、患者さんから同意書を取得する必要があります。

 

● かかりつけ薬剤師の業務内容
● かかりつけ薬剤師を持つことの意義、役割など
● かかりつけ薬剤師指導料の費用
● かかりつけ薬剤師が必要と判断した理由

 

患者さんは、説明を聞いた後、かかりつけ薬剤師に求めることや署名を同意書に記載します。取得した同意書は薬局で保管し、薬歴にも同意を得たことを記載しましょう。
 
なお、同意書を取得した当日は算定できないため、次回の処方箋受付時以降に算定します。

 
🔽 かかりつけ薬剤師の同意書の取得について解説した記事はこちら

 

4-2.一元的で継続的な服薬管理・服薬指導

かかりつけ薬剤師は、保険医と連携して患者さんの服薬状況を一元的・継続的に把握しなければなりません。そのため、やむを得ない場合を除き、原則としてかかりつけ薬剤師が、担当患者さんへの服薬指導や休日・夜間の対応といった業務を行います。
 
また、患者さん1人に対してかかりつけ薬剤師は1人と決まっているため、複数の調剤薬局それぞれでかかりつけ薬剤師を持つことはできません。かかりつけ薬剤師の重複を防止するためにも、お薬手帳などにかかりつけ薬剤師の氏名や勤務先について記載するよう定められています。
 
全ての服用薬を管理するため、処方薬や市販薬、サプリメントなどの服用歴についても聞き取り、薬歴やお薬手帳に記録しなければなりません。加えて、自宅にある残薬整理を促す「ブラウンバッグ運動」についても周知することが求められています。

 
🔽 服薬指導について解説した記事はこちら

 

4-3.調剤後の服用状況の把握と薬剤情報の提供

かかりつけ薬剤師は、定期的に担当患者さんの服薬状況を確認することも業務のひとつです。来局時の服薬指導のほかに、患者さんの状況や希望に合わせて、電話で連絡を取ったり、自宅に訪問したりすることが求められています。
 
また、服用中の薬剤について自主回収や副作用などの情報を得た場合には、患者さんに対して情報提供しなければなりません。担当患者さんからの相談をいつでも受けられるよう、勤務日や開局時間外の連絡先を伝えることも必要です。
 
なお、原則、かかりつけ薬剤師が相談対応することとされていますが、場合によってはかかりつけ薬剤師以外の薬剤師が対応しても差し支えないとされています。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

5.かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料とは?

かかりつけ薬剤師としての施設基準を満たすと、「かかりつけ薬剤師指導料」もしくは「かかりつけ薬剤師包括管理料」を算定できます。

 

■かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の算定点数
算定要件 算定点数
かかりつけ薬剤師指導料 76点
かかりつけ薬剤師包括管理料 291点

 

「かかりつけ薬剤師指導料」と「かかりつけ薬剤師包括管理料」との違いは、対象患者さんです。「かかりつけ薬剤師指導料」の対象患者さんに制限はありませんが、「かかりつけ薬剤師包括管理料」は、医科診療報酬における以下のいずれかを算定している患者さんです。

 

● 地域包括診療加算もしくは認知症地域包括診療加算
● 地域包括診療料もしくは認知症地域包括診療料

 

続いて、かかりつけ薬剤師指導料とかかりつけ薬剤師包括管理料の点数と算定要件について詳しく見ていきましょう。

 

5-1.かかりつけ薬剤師指導料の点数・算定要件

「かかりつけ薬剤師指導料」は、施設要件を満たした薬剤師が患者さんの同意を得て必要な指導などを行った場合に、処方箋受付1回につき76点を算定できます。かかりつけ薬剤師指導料は、かかりつけ薬剤師が医師と連携して患者さんの服薬状況を一元的かつ継続的に把握した上で服薬指導を行った場合に算定できます。
 
算定するためには、以下のような業務を行うこととされています。

 
■主な算定要件

● 必要な説明を行った上で患者さんから同意書を取得
● お薬手帳にかかりつけ薬剤師の氏名や勤務先の名称、連絡先を記載
● 服薬情報や通院歴、検査結果といった患者情報を一元的・継続的に管理
● 休日、夜間を含む時間帯の相談に応じる体制整備や開局時間外の連絡先の提示
● 調剤後のフォロー
● 医師との情報共有(必要に応じて処方提案)
● ブラウンバッグ運動の推進

 

上記に加えて、かかりつけ薬剤師指導料を算定する患者さん以外の患者さんへの服薬指導や、地域住民からの相談に対しても丁寧に対応した上で、必要に応じて保険医療機関へ受診勧奨を行うよう努めることとされています。
 
2024年度の診療報酬改定より、かかりつけ薬剤師が対応できない場合、患者さんへ他の薬剤師が対応することについて同意を得ることで、同じ薬局に在籍する「かかりつけ薬剤師の要件を満たした薬剤師」が対応可能になります。その場合、「かかりつけ薬剤師指導料」の代わりに「服薬管理指導料(特例)59点」を算定します。

 

■服薬管理指導料の特例
算定点数 対応する薬剤師 要件
59点 かかりつけ薬剤師の要件を満たした薬剤師 患者さんへの事前説明・同意取得

 

🔽 服薬管理指導料について詳しく解説した記事はこちら


 
かかりつけ薬剤師指導料については、要件を満たすことで以下の加算項目を算定できます。

 
■かかりつけ薬剤師指導料の加算項目

● 麻薬管理指導加算
● 特定薬剤管理指導加算1、2、3
● 乳幼児服薬指導加算
● 小児特定加算
● 吸入薬指導加算

 

また、「調剤後薬剤管理指導料1、2」は、かかりつけ薬剤師の行う業務の範囲と異なるため、2024年度改定より、かかりつけ薬剤師指導料を算定する患者さんに対して要件を満たすことで算定できることになりました。
 
🔽 調剤後薬剤管理指導料について解説した記事はこちら


 
一方、以下の薬学管理料については算定できません。

 

■同時または同一月内に算定できない薬学管理料
  薬学管理料
同時算定不可 ● 服薬情報等提供料1、2、3
● 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料
● かかりつけ薬剤師包括管理料
同一月内算定不可 ● 在宅患者訪問薬剤管理指導料
※訪問薬剤指導の薬学的管理指導計画とは異なる疾病・負傷などの処方の場合は除く

 

また、特別調剤基本料Bを算定する薬局は「かかりつけ薬剤師指導料」が算定できないことになっています。
 
🔽 特別調剤基本料について解説した記事はこちら

 

5-2.かかりつけ薬剤師包括管理料の点数・算定要件

「かかりつけ薬剤師包括管理料」は、医療機関で地域包括診療加算もしくは認知症地域包括診療加算、または地域包括診療料もしくは認知症地域包括診療料を算定している患者さんのかかりつけ薬剤師として服薬指導などを行った場合、処方箋受付1回につき291点を算定できます。
 
かかりつけ薬剤師包括管理料は、かかりつけ薬剤師指導料とほぼ同等の算定要件となっていますが、患者さんの服薬状況については「随時把握」し、医師へ「その都度」情報提供することとされています。ただし、情報提供の要否や頻度などについては医師と相談して決定した方法で差し支えないとしています。
 
また、かかりつけ薬剤師指導料の加算については、かかりつけ薬剤師包括管理料の点数に包括されるため算定できません。
 
参照:令和6年度調剤報酬改定の概要(調剤)|厚生労働省
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
 
🔽 かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料について詳しく解説した記事はこちら

6.患者さんがかかりつけ薬剤師を持つメリット

かかりつけ薬剤師を持つためには一定の費用が必要ですが、その費用対効果は非常に大きいものです。ここでは、患者さんがかかりつけ薬剤師を持つメリットについて見ていきましょう。

 

6-1.服薬情報の一括管理ができる

かかりつけ薬剤師は服用薬やサプリメントについて一元的かつ継続的に管理します。服薬歴や治療歴、副作用、飲み合わせなどを一括管理するので、安心・安全な薬物治療が望めるでしょう。
 
また、薬や健康について気軽に相談できるのも、かかりつけ薬剤師を持つメリットです。新しく飲んでみたいサプリメントがある場合や、風邪症状を抑えるためになるべく早く市販薬を飲みたい場合などに、電話ですぐに確認できるのは、かかりつけ薬剤師を持つ利点といえるでしょう。

 

6-2.休日夜間を含む時間帯も薬の相談ができる

かかりつけ薬剤師を持つ患者さんは、薬局が開局していない休日や夜間帯も、電話で薬や健康などについての相談ができます。例えば、深夜に熱が出た場合の解熱剤の使い方や、薬を飲み忘れてしまった場合の対処法など、その場ですぐに知りたい情報を得られるでしょう。
 
いつでも薬の専門家によるアドバイスを受けられる状況であることは、患者さんにとって大きなメリットといえます。

 
🔽 かかりつけ薬剤師の夜間電話対応について詳しく解説した記事はこちら

 

6-3.医療チームのサポートを受けられる

かかりつけ薬剤師は医師や地域の医療機関などと連携して服薬サポートを行います。例えば、医師へ処方内容の確認や、薬の効果、副作用、残薬などのフィードバックなどが挙げられます。
 
そのほか、患者さんの状態に合わせて医療機関へ受診を提案したり、在宅医療を受けたい場合には手順などをアドバイスしたりすることも可能です。患者さんの希望や状況、状態に合わせて医療サポート体制を整えられるのは、患者さんがかかりつけ薬剤師を持つメリットです。

7.「かかりつけ薬剤師はいらない」と患者さんに言われてしまうことがある理由

患者さんに声かけをしても「かかりつけ薬剤師はいらない」と言われることがあります。ここでは、断られる理由について考えてみましょう。

 

7-1.費用がかかるイメージがある

かかりつけ薬剤師を持つと、高額な費用がかかると考える患者さんもいます。かかりつけ薬剤師を持たないときの服薬管理指導料は、45点または59点です。かかりつけ薬剤師指導料の場合、算定点数は76点であることから、点数の差は、17~31点です。3割負担の場合、患者さんの負担額は、50~90円ほど増すことになります。
 
こうした具体的な費用を把握しておらず、イメージだけで拒否感を持つ人もいるかもしれません。かかりつけ薬剤師を持つように勧めるときは、費用の説明をするとよいでしょう。加えて、かかりつけ薬剤師の業務内容や、かかりつけ薬剤師を活用するメリットなどを改めて伝えてみると納得してもらえるかもしれません。

 

7-2.薬剤師を1人に絞らなければならない

かかりつけ薬剤師を持つためには、患者さんは特定の薬剤師1人を選ばなければなりません。複数の薬局を利用する患者さんの中には、それぞれの薬局に頼りにする薬剤師がいる場合もあるでしょう。
 
かかりつけ薬剤師を持つということは、基本的には利用する薬局と服薬指導を受ける薬剤師を1つに絞るということを意味します。もちろん、かかりつけ薬剤師が在籍する薬局以外から薬をもらうことは可能ですが、そのときは別の薬局にかかりつけ薬剤師がいることを伝えなければなりません。
 
複数の薬局にそれぞれ頼りにする薬剤師がいる患者さんは、自身の担当となる薬剤師を1人に絞るのが難しいと感じて、受け入れ難いかもしれません。そうした患者さんには、来局頻度の高い薬局の薬剤師をかかりつけ薬剤師に選ぶよう説明するのもひとつの方法です。

 

7-3.患者さんがかかりつけ薬剤師を自由に選べるとは限らない

頼りにしている薬剤師に、かかりつけ薬剤師になってほしいと考える患者さんもいるでしょう。しかし、前述した通り、かかりつけ薬剤師になるには、在籍する薬局や薬剤師自身がさまざまな要件をクリアする必要があります。
 
患者さん自らかかりつけ薬剤師を希望しても、薬局や薬剤師側が要件を満たしていないために対応できないこともあるでしょう。そうした経験から、「かかりつけ薬剤師はいらない」と思ってしまうかもしれません。
 
患者さんが自由に選べないことがある点も、かかりつけ薬剤師を断られる理由となります。自身が指名されたときを想定し、かかりつけ薬剤師の条件をクリアしておくことが大切です

 

7-4.そもそも、かかりつけ薬剤師を必要としていない

医療機関で薬を処方してもらうのは、風邪をひいたときや、けがをしたときだけといった患者さんもいます。あるいは、継続的に服用する薬は1、2種類程度で、服薬管理に困らないと考える人もいるでしょう。
 
定期的に医療機関を受診しない人や受診していても服用している薬の数が少ない場合、薬剤師のサポートを必要としない傾向にあります。そういった患者さんにかかりつけ薬剤師の声かけをしたとしても、「かかりつけ薬剤師はいらない」と断られるのは容易に想像できます。
 
しかし、サプリメントや市販薬などを服用している患者さんの中には、処方薬との飲み合わせを確認した方がよい人もいます。かかりつけ薬剤師は処方薬に限らず、幅広いサポートができる点をお伝えすると、必要性が伝わるかもしれません。

8.かかりつけ薬剤師の声かけをするタイミング

かかりつけ薬剤師の声かけをするのであれば、患者さんのニーズを見極める必要があるでしょう。ここでは、患者さんへ声かけをするタイミングについてお伝えします。

 

8-1.患者さんから質問を受けたとき

まずは、患者さんがかかりつけ薬剤師を必要としているかを見極めることが大切です。自身の健康や服薬管理に不安や悩みを抱えている患者さんは、かかりつけ薬剤師の声かけをしてみるとよいでしょう。
 
中でも、毎回何らかの質問や相談をする患者さんは、かかりつけ薬剤師の声かけをする候補といえます。

 

8-2.かかりつけ薬剤師の業務を行ったとき

患者さんからの問い合わせ対応や他薬局への服薬情報の確認、医師への情報共有・処方提案などは、かかりつけ薬剤師が行う業務です。
 
これらは、かかりつけ薬剤師でなくても行う業務ではありますが、こういった対応を頻繁に行う患者さんはかかりつけ薬剤師の必要性が高いといえるでしょう。かかりつけ薬剤師の業務を行ったときも患者さんに声をかけるタイミングといえます。

 

8-3.服用薬や治療歴を覚えている患者さんがいるとき

かかりつけ薬剤師は、いつ連絡が来ても対応できるように、患者さんの情報をある程度、頭に入れておく必要があります。長く薬局に勤めていると、来局頻度の高い患者さんの中に、顔や名前を見ただけで服用薬や治療歴といった情報を思い出せる人がいるものです。
 
そういった患者さんは、かかりつけ薬剤師になる準備ができているため、声かけをするタイミングを計ってもよいでしょう。

 

8-4.来局頻度の高い患者さんがいるとき

複数の診療科にかかっている患者さんは来局頻度が多い傾向にあり、中には、月に数回来局する患者さんもいることでしょう。そういった患者さんがかかりつけ薬剤師を持つと、薬歴の確認作業が短縮できる上に、重複投与や副作用などにも気がつきやすくなります。
 
来局頻度の高い患者さんへ服薬指導を行ったときも、かかりつけ薬剤師の声かけをするタイミングでしょう。

 
🔽 かかりつけ薬剤師の声かけをするポイントについて解説した記事はこちら

9.かかりつけ薬剤師はコミュニケーション能力を磨くことも大切

薬剤師は日々医療に関するあらゆる知識を蓄積し、患者さんに還元するように求められます。さらに、患者さんと良好な関係を築くためのコミュニケーション能力を身に付けることも大切です。豊富な知識やスキルに加え、信頼される人柄であることを心がけ、患者さんが健康に関する全てを任せたくなるようなかかりつけ薬剤師を目指しましょう。

 
🔽 かかりつけ薬剤師がコミュニケーションスキルを高める方法を紹介した記事はこちら

参考URL

令和6年度診療報酬改定について|厚生労働省

 

書籍

■日本薬剤師会・編『保険調剤Q&A 令和4年版』(じほう、2022年)


編集/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。