1.外来後発医薬品使用体制加算とは?
外来後発医薬品使用体制加算とは、後発医薬品の品質、安全性、安定供給体制などの情報を収集・評価し、その結果を踏まえて後発医薬品の採用を決定する体制が整備された診療所を評価する処方料の加算です。
院内処方を行っていて、後発医薬品の使用割合が高い診療所が1処方ごとに算定でき、後発医薬品の使用割合に応じて1・2・3の区分が設けられています。
1-1.導入された背景と目的
外来後発医薬品使用体制加算が導入された背景としては、高齢者人口の増加による医療費の増大が挙げられます。
厚生労働省が公表した「令和5年度の医療費の動向について」によると、令和5年度における概算医療費は47.3兆円であり、年々増加していることが分かります。
特に薬剤費は医療費全体の20%程度を占めており、医療費の増大を抑えるためには薬剤費の抑制が欠かせません。
そうした背景から、先発医薬品よりも薬価の安い後発医薬品の使用を促進することを目的として、外来後発医薬品使用体制加算が導入されました。
参照:薬剤費等の年次推移について|厚生労働省
参照:平成28年度診療報酬改定の概要|厚生労働省
1-2.2024年度診療報酬改定における変更点
近年、製薬会社の不祥事を発端として、医薬品の供給不足が問題となっています。このような状況下でも、患者さんが適切な治療を受けられるように、2023年4月から12月までの期間、保険医療機関・保険薬局に対する時限的な診療報酬上の特例措置が講じられました。
参照:令和5年4月1日からの診療報酬上の特例措置等について|厚生労働省
外来後発医薬品使用体制加算については、「医薬品の供給が不足した場合に処方変更などに関して十分な対応ができる体制が整備されていること」など追加された施設基準を満たすことで、従来の点数よりも2点多い点数を算定できるようになりました。
参照:「個別改定項目について」の補足説明資料|厚生労働省
そして、2024年度診療報酬改定では、以下の施設基準が追加されました。
引用:令和6年度診療報酬改定の概要 【個別改定事項(Ⅱ)】|厚生労働省
また、外来後発医薬品使用体制加算1・2・3の全てにおいて、算定できる点数が改定前に比べて3点上乗せされています。
2.外来後発医薬品使用体制加算の算定要件・点数
外来後発医薬品使用体制加算は、後述する施設基準を満たし、届出をすることで、1処方ごとに以下の点数を算定できます。1・2・3の区分は、後発医薬品の使用割合によって異なります。
区分 | 後発医薬品の 使用割合 |
算定できる点数 |
外来後発医薬品使用体制加算1 | 90%以上 | 8点 |
外来後発医薬品使用体制加算2 | 85%以上90%未満 | 7点 |
外来後発医薬品使用体制加算3 | 75%以上85%未満 | 5点 |
参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
3.外来後発医薬品使用体制加算の施設基準
外来後発医薬品使用体制加算を算定するには、以下の施設基準を満たさなければなりません。
(2) 当該保険医療機関において調剤した後発医薬品のある先発医薬品および後発医薬品について、当該薬剤を合算した使用薬剤の薬価(薬価基準)(平成20年厚生労働省告示第60号)別表に規定する規格単位ごとに数えた数量(以下「規格単位数量」という)に占める後発医薬品の規格単位数量の割合が、外来後発医薬品使用体制加算1にあっては90%以上、外来後発医薬品使用体制加算2にあっては85%以上90%未満、外来後発医薬品使用体制加算3にあっては75%以上85%未満であること
(3) 当該保険医療機関において調剤した薬剤(後述する算出除外品目を除く)の規格単位数量に占める後発医薬品のある先発医薬品および後発医薬品を合算した規格単位数量の割合が50%以上であること
(4) 後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用に積極的に取り組んでいる旨を当該保険医療機関の受付および支払窓口の見やすい場所に掲示していること
(5) 医薬品の供給が不足した場合に、医薬品の処方等の変更などに関して適切な対応ができる体制が整備されていること
(6) (5)の体制に関する事項ならびに医薬品の供給状況によって投与する薬剤が変更となる可能性があることおよび変更する場合には患者さんに十分に説明することについて、当該保険医療機関の見やすい場所に掲示していること
(7) (4)および(6)の掲示事項について、原則として、ウェブサイトに掲載していること(自ら管理するホームページなどを有しない場合については、この限りではない)
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
なお、薬剤師がいない診療所であっても、薬剤部門に医師などが配置され(兼務も可能)、後発医薬品の品質、安全性、安定供給体制などの情報を収集・評価し、その結果を踏まえて後発医薬品の採用を決定する体制が整備されていれば、外来後発医薬品使用体制加算を算定することが可能です。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1) 平成28年3月31日|厚生労働省
また、ウェブサイトへの掲載については、2025年5月31日までの間に限り該当するものとみなすという経過措置が設けられています。
3-1.後発医薬品の使用割合の計算方法
上記の施設基準(2)に示したとおり、外来後発医薬品使用体制加算を算定するには、後発医薬品の使用割合において一定の基準を満たす必要があります。
後発医薬品の使用割合を算出する計算式は以下のとおりです。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
3-2.カットオフ値の計算方法
カットオフ値とは、医療機関で調剤した医薬品の規格単位数量に占める、後発医薬品のある先発医薬品と後発医薬品を合算した規格単位数量の割合のことです。
外来後発医薬品使用体制加算を算定するためには、後発医薬品の使用割合の基準を満たすだけではなく、カットオフ値が50%以上でなければいけません。
カットオフ値の計算式は以下のとおりです。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
3-3.後発医薬品の規格単位数量の割合を算出する際に除外する医薬品
後発医薬品の使用割合やカットオフ値を計算するにあたり、以下の医薬品は計算から除外する必要があります。
● 特殊ミルク製剤(フェニルアラニン除去ミルク配合散「雪印」およびロイシン・イソロイシン・バリン除去ミルク配合散「雪印」)
● 生薬(薬効分類番号510)
● 漢方製剤(薬効分類番号520)
● その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品(薬効分類番号590)
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
3-4.後発医薬品の出荷停止等を踏まえた臨時的な取扱い
後発医薬品の供給停止や出荷調整によって、医療現場では在庫確保が困難な医薬品が増えてきています。そうした状況を踏まえ、厚生労働省から事務連絡「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」が発出されました。
供給停止品目と同一成分・同一投与形態の医薬品については、外来後発医薬品使用体制加算の実績要件である後発医薬品の使用割合の算出対象から除外してもよいことになっています。
2024年9月24日の通達内容によると、2025年3月31日までが本取扱いの有効期間です。ただし、本連絡は2021年から複数回発出されており、その都度有効期間が延長されています。最新の情報を厚生労働省のホームページ上でチェックしておくとよいでしょう。
また、外来後発医薬品使用体制加算の届出において、直近3カ月分の使用割合を算出する際、本取扱いを行う月と行わない月が混在しても問題ありません。
なお、本取扱いによって使用割合を算出する場合、一部の成分の品目に限って算出対象から除外することはできません。本取扱いは後発医薬品の使用割合の算出を対象としており、カットオフ値の算出には用いられないため注意が必要です。
対象品目について具体的に知りたい場合は、厚生労働省のホームページ上で対象品目リストを確認しましょう。
参照:薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について|厚生労働省
4.外来後発医薬品使用体制加算の届出
外来後発医薬品使用体制加算を算定するためには、「特掲診療料の施設基準に係る届出書」と様式38の3「外来後発医薬品使用体制加算の施設基準に係る届出書添付書類」を、医療機関が所在する都道府県を管轄する厚生局事務所などに提出しなければなりません。
様式38の3「外来後発医薬品使用体制加算の施設基準に係る届出書添付書類」には、以下の4項目を記載します。
● 後発医薬品の使用を促進するための体制の整備
● 医薬品の使用状況
● 医薬品の供給が不足した場合に適切に対応する体制の有無
参照:特掲診療料の届出一覧(令和6年度診療報酬改定)|関東信越厚生局
5.医療費の削減や安定的な医薬品の供給に貢献しよう
外来後発医薬品使用体制加算は、診療所における後発医薬品使用体制を評価する加算です。施設基準を満たし、届出を行うと、1処方につき算定できます。
近年、医薬品の供給不足が問題となっていることを背景に、2024年度の診療報酬改定では、安定供給に関する施設基準が追加されるとともに、算定できる点数が加点されました。
また、施設基準である後発医薬品の使用割合を算出する際は、事務連絡「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」を参照し、除外品目を把握しておくことが大切です。
後発医薬品の使用を推進して、医療費削減に貢献しつつ、安定的な医薬品の供給に貢献しましょう。
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執筆/篠原奨規
2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。
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