薬剤総合評価調整管理料は、医療機関が他医療機関や薬局と連携して医薬品の適正使用の推進に取り組むことを評価したものです。本記事では、薬剤総合評価調整管理料の概要や薬剤総合評価調整加算との違いを解説するとともに、算定要件や点数、施設基準について分かりやすくお伝えします。加えて、連携管理加算やレセプト摘要欄への記載事項、薬剤総合評価調整管理料が設けられた背景についても説明しています。
1.薬剤総合評価調整管理料とは?
薬剤総合評価調整管理料とは、多剤投薬の患者さんについて、必要な評価や薬剤調整を行い、結果として処方薬剤数が減少した場合を評価したものです。患者さんをサポートする各医療機関や薬局が連携して、残薬や重複投薬、不適切な多剤投薬・長期投薬を減らすために、2016年(平成28年)度の診療報酬改定で新設されました。
薬剤総合評価調整管理料は、入院中の患者さん以外の患者さんが対象です。2016年度の診療報酬改定では、入院患者さんを対象とした「薬剤総合評価調整加算」も新設されており、薬物治療の適正化・効率化を推進するための取り組みが行われています。
参照:2016年度診療報酬改定説明(医科)その7|厚生労働省
1-1.薬剤総合評価調整加算との違い
薬剤総合評価調整管理料と類似したものに、薬剤総合評価調整加算があります。薬剤総合評価調整加算も多剤併用となっている患者さんの処方薬を評価・調整することを評価したものです。薬剤総合評価調整管理料と薬剤総合評価調整加算の主な違いは以下のとおりです。
薬剤総合評価調整管理料 | 薬剤総合評価調整加算 | |
対象患者 | 入院中の患者さん以外の患者さん | 入院中の患者さん |
算定頻度 | 月1回まで | 退院時1回 |
算定点数 | 250点 情報通信機器を使用した場合:218点 |
100点 |
服用している内服薬の種類 | 6種類以上 | 6種類以上 |
減薬の有無 | 2種類以上の減薬が必要 | ● 減薬は必須ではない ● 処方内容の変更と必要な指導の実施が求められる |
加算 | 連携管理加算:50点 ※他医療機関・薬局への情報提供が必要 |
薬剤調整加算:150点 ※2種類以上の減薬が必要 |
薬剤総合評価調整管理料と薬剤総合評価調整加算は、どちらもポリファーマシーの解消を目的としています。しかし、対象患者さんや算定頻度、算定点数などは異なるため、それぞれの違いを理解しておく必要があるでしょう。
参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
🔽 薬剤総合評価調整加算について解説した記事はこちら
2.薬剤総合評価調整管理料の点数・算定要件
薬剤総合評価調整管理料の点数や算定要件は、以下のとおりです。
点数 | 250点 情報通信機器を使用:218点 |
服用中の内服薬 | 服用開始から4週間以上経過した内服薬が6種類以上 |
対象患者 | 入院中の患者さん以外の患者さん |
算定頻度 | 月1回まで |
減薬 | ● 内服薬の種類が2種類以上減少した状態が4週間以上継続すると見込まれる場合 ● 他医療機関の処方薬と合わせて2種類以上減薬した場合は、薬剤総合評価調整加算と合わせて1カ所の医療機関に限り算定可能 ※ただし、診療報酬明細書の摘要欄に調整前後の薬剤の種類数を記載しなければならない ● 1年以内に薬剤調整加算または薬剤総合評価調整管理料を算定した場合は、前回の算定からさらに2種類以上減薬した場合に算定 |
薬局との連携 | 薬局からの提案を踏まえて、処方内容の評価・調整をした場合は、結果を当該薬局へ情報提供する |
内服薬の種類 | ● 以下は1銘柄ごとに1種類としてカウント ○ 錠剤 ○ カプセル剤 ○ 散剤 ○ 顆粒剤 ○ 液剤 ● 以下は内服の種類から除外 ○ 頓服薬 ○ 服用開始から4週間以内の薬剤 |
参考資料 | 内服薬の総合的な評価・調整では以下の資料を参考とすること ● 「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」(厚生労働省) ● 「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」(厚生労働省) ● 日本老年医学会の関連ガイドライン(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン) など |
診療記録 | 評価した内容や調整の要点を記録 |
参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

3.薬剤総合評価調整管理料の連携管理加算とは?
連携管理加算とは、薬剤総合評価調整管理料の加算で、医療機関や薬局と連携して処方内容の調整を行った場合を評価したものです。算定要件と点数は、以下のとおりです。
点数 | 50点 ※ただし、診療情報提供料(I)との同一日の算定は不可 |
対象薬剤 | 薬効の類似した処方または相互作用を有する処方など |
医療連携 | 医療機関や薬局への照会または情報提供を受けた場合に、処方内容の調整または評価を行った結果について情報提供を実施 |
連携管理加算は、他医療機関や薬局からの情報をもとに処方調整・評価を行い、その結果を当該の他医療機関や薬局に情報提供することで算定できます。
参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
4.薬剤総合評価調整管理料の施設基準
薬剤総合評価調整管理料の施設基準は、情報通信機器を活用した診療の届出を行っていることです。「情報通信機器を用いた診療」に係る施設基準は以下のとおりです。
十分な体制整備 | ● 医療機関外での診療があらかじめ想定される場合、実施場所が厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に該当しており、事後的に確認できること ● 対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められていることを踏まえて、対面診療を提供できる体制を有すること ● 患者の状況によって当該医療機関において対面診療を提供することが困難な場合に、他の医療機関と連携して対応できること |
医療機関の要件 | 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を行う体制を有すること |
情報通信機器を活用した診療を継続的に行うためには、「情報通信機器を用いた診療に係る施設基準」の届出を行った上で、毎年7月に前年度の診療実施状況と診療件数について届け出る必要があります。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
参照:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

5.薬剤総合評価調整管理料のレセプト摘要欄への記載事項
医療機関と他医療機関で処方されている内服薬を合計した種類数から2種類以上減薬した場合、薬剤総合評価調整管理料のレセプト摘要欄にはそれぞれの医療機関における調整前後の薬剤の種類数を記載することとされています。記載事項は以下のとおりです。
コード | レセプト表示文言 |
830100079 | 他の保険医療機関名(薬剤総合評価調整管理料);****** |
842100031 | 当該保険医療機関における調整前の内服薬の種類数(薬剤総合評価調整管理料);****** |
842100032 | 他の保険医療機関における調整前の内服薬の種類数(薬剤総合評価調整管理料);****** |
842100033 | 当該保険医療機関における調整後の内服薬の種類数(薬剤総合評価調整管理料);****** |
842100034 | 他の保険医療機関における調整後の内服薬の種類数(薬剤総合評価調整管理料);****** |
参照:「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について|厚生労働省
6.薬剤総合評価調整管理料が設けられた背景
薬剤総合評価調整管理料が設けられた背景には、ポリファーマシーや処方カスケードが課題となっていることが挙げられます。また、国民医療費は年々増加傾向にあり、患者さんの自宅にある大量の残薬も取り組むべき課題とされています。ここでは、ポリファーマシーと処方カスケード、残薬について見ていきましょう。
6-1.ポリファーマシー
ポリファーマシーとは、複数「poly」と調剤「pharmacy」の造語で、多剤併用により患者さんに副作用や有害事象、服薬アドヒアランスの低下などのさまざまな問題が起こることを指します。
患者さんの中には、転居や担当医の異動などによって主治医が変わり、前任が処方した薬剤をそのまま継続しているケースがあります。服用の必要性が再評価されずに長期的に継続している薬の中には、服用を中止しても問題ないものも含まれている可能性があるでしょう。
また、症状の緩和などを目的とした薬物治療では、「薬を飲んでいるから症状が落ち着いている」と考えられやすく、服薬を中止するタイミングが得られにくい傾向にあります。
こういったケースが積み重なると、足し算的に服用薬が増えていくため、ポリファーマシーが起こりやすくなります。薬剤総合評価調整管理料は、定期的に服用薬を見直す動機付けとなるでしょう。
🔽 ポリファーマシーについて解説した記事はこちら
6-2.処方カスケード
処方カスケードとは、薬物の副作用や有害事象を新たな病状と誤認し、別の薬で対処することを指します。例えば、複数の医療機関を受診している患者さんが、A病院で処方されている薬が原因で胃の不快感が出た場合に、B病院で胃の不快感を軽減するために胃薬を処方してもらう、といったケースが挙げられます。状況や状態にもよりますが、こういったケースでは、A病院の処方薬の変更または休薬が可能であれば、新たに服用薬を追加することはなかったかもしれません。
薬の数が多ければ多いほど、処方カスケードは起こりやすくなります。薬剤総合評価調整管理料は、症状の原因となる薬剤があるかを見直すきっかけになるでしょう。
🔽 処方カスケードについて解説した記事はこちら
6-3.大量の残薬
複数の医療機関を受診している患者さんは、医療機関ごとに診察日や処方日数が異なるため、どの薬がどれだけ残っているのか管理しなければなりません。飲み忘れや飲み間違いなどによって、薬の数がずれてしまった場合も、自身で残薬を管理する必要があります。災害時などでも薬に困らないよう、予備の処方を希望する患者さんもいるため、長期間服用を継続している薬ほど残薬が大量に残りやすくなります。
ある程度の予備を自宅に保管しておくことは大切です。しかし、多すぎる残薬は、管理が行き届かず、最終的には廃棄しなければならないことも少なくありません。必要のない薬はカットし、服用薬の種類をなるべく少なくすることは、患者さんの服薬管理を容易にするだけでなく、国民医療費の削減にもつながります。薬剤総合評価調整管理料は、患者さんが無理なく薬剤管理をするためにも必要といえるでしょう。

7.薬剤総合評価調整管理料の算定のために薬剤師ができること
医療機関にもよりますが、病院薬剤師が入院患者さん以外の患者さんの処方薬について関与するケースは少ないでしょう。そのため、薬剤総合評価調整管理料の算定に関わる機会は得にくいかもしれません。しかし、日本病院薬剤師会では、多剤投薬の対応事例集を公開しているため、事例集を参考に知識を得て、医師などからの問い合わせに対応できるよう準備しておくことが大切です。
参照:多剤投薬の患者に対する病院薬剤師の対応事例集の公開について|日本病院薬剤師会
一方、薬局薬剤師は患者さんの服用薬を総合的に管理できます。調剤報酬には、減薬に貢献することで算定できる薬学管理料「服用薬剤調整支援料1」「服用薬剤調整支援料2」などがあります。積極的に医療機関へアプローチして、医薬品の適正使用に努めましょう。
🔽 服用薬剤調整支援料1・2について解説した記事はこちら
🔽 病院薬剤師に関連する診療報酬について解説した記事はこちら

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。