薬剤師会

疑義照会、薬剤部が回答代行‐医師への連絡省略で事前合意

薬+読 編集部からのコメント

2015年12月より、医師一人ひとりから同意書を取得した上で、薬局からの疑義照会は病院薬剤師が回答できるようプロトコールを策定した羽島市民病院。現在の状況についての記事です。医師への問い合わせを省略できるのは用法、投与日数、一包化に関する3項目。疑義照会を受けた患者の待ち時間も、運用前は1件あたり平均20分が6カ月後は7.8分になったと伝えられています。

岐阜県の羽島市民病院(281床)は、薬局薬剤師からの疑義照会のうち一部の項目について、病院薬剤師が医師に改めて問い合わせることなく回答できるようプロトコールを策定し、昨年12月から運用を開始した。同院では薬剤部が疑義照会の受付窓口となって医師に連絡をとり、薬局薬剤師に回答している。運用後、疑義照会の約3割は医師への連絡を省略し、病院薬剤師がすぐに回答できるようになった。医師や薬剤師の業務負担軽減、患者の待ち時間短縮につながったとしている。


 

同院の院外処方箋発行率は91.7%。院外処方箋枚数は1日平均約400枚。薬局からの疑義照会は基本的にFAXで、緊急時には電話で薬剤部が窓口となって受け付け、医師に連絡し回答を得た上で、その内容を電話で薬局薬剤師に伝えている。これまで、疑義照会への対応によって入院患者の調剤や持参薬鑑別などの通常業務が滞ったり、医師から回答を得るのに時間を要し患者の待ち時間が長くなったりすることが課題になっていた。

 

これらの課題を解決するため薬剤部からの発案で、医師と薬剤師が連携するプロトコールとして「薬剤部による院外処方疑義照会の回答手順書」を策定。院内の医師一人ひとりから同意書を取得した上で、運用を開始した。

 

手順書に盛り込んだ項目は事前に医師の了解を得ているとして、病院薬剤師は医師への問い合わせを省略し、薬局薬剤師に回答できる。

 

医師への問い合わせを省略できるのは用法、投与日数、一包化に関する3項目。用法は、▽漢方薬、胃腸機能調整薬などの用法を「食前」に変更▽αグルコシダーゼ阻害薬などの用法を「食直前」に変更▽EPA製剤などの用法を「食直後」に変更▽一部の抗アレルギー剤などの用法を「就寝前」に変更▽吸入薬の各用法▽貼付剤の各用法――などについて医師の指示を添付文書通りの用法に変更する。

 

投与日数については、1日1回投与ではないのに医師の指示は1日1回になっているビスホスホネート薬の投与日数を修正する。一包化については、患者の状態を確認した上で一包化を指示する。

 

運用前は受け付けた全ての疑義照会について病院薬剤師が医師に問い合わせていたが、運用開始直後は、2週間で136件受けた疑義照会のうち36%の問い合わせを省略できた。運用開始6カ月後は、2週間で82件受けた疑義照会のうち23%の問い合わせを省略でき、迅速な回答が可能になった。

 

運用前は1件あたり平均6分だった疑義照会業務時間は、開始直後は3.8分、6カ月後も3.9分と短くなった。疑義照会を受けた患者の待ち時間も、運用前は1件あたり平均20分だったが、開始直後は15.8分、6カ月後は7.8分になっていた。

 

手順書の運用によって疑義照会の対応を円滑に行うことができ、医師や薬剤師の業務負担軽減、患者の待ち時間短縮につながった。患者の待ち時間が運用開始6カ月後に大幅に減少したのは、手順書運用の成果に加え、疑義照会に対する意識が高まったためとしている。

 

同院のほかにも、同じような手順を踏んで疑義照会を効率化する動きが各地の病院で見られるようになってきた。口約束などの簡易な取り決めではなく、医師と薬剤師が具体的な手順を話し合って文書化したプロトコールを策定した上で運用を開始していることがポイントだ。

 

同院は、2010年に発出された厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」や、プロトコールを策定し薬局薬剤師からの疑義照会の簡略化に踏み切った京都大学病院の取り組みを参考に、この体制を作り上げた。

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出典:薬事日報

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