医療

製販後調査に患者レジストリ~難病、希少薬で活用論高まる

薬+読 編集部からのコメント

従来の使用成績調査では難しい有効性評価項目を収集できる可能性や、ランダム化比較試験の対照群として利用し、新薬開発の効率化につながることが期待されている疾患登録システムの患者レジストリを用いた製造販売後調査や薬事申請への活用に注目が集まっています。そんな中、日本臨床薬理学会学術総会のシンポジウム(12月5日、都内)では、医薬品開発に患者レジストリを活用していく方向性について議論されました。レジストリのデータを利用して承認要請する場合の、信頼性におけるさまざまな基準値の設定など、まだ課題は山積みのようです。

■臨床薬理学会で議論

難病や希少疾患を対象に疾患登録システムの患者レジストリを用いた製造販売後調査や薬事申請への活用に注目が集まっている。従来の使用成績調査では難しい有効性評価項目を収集できる可能性や、ランダム化比較試験の対照群として利用し、新薬開発の効率化につなげていくことが期待されている。ただ、国内には約700の患者レジストリが存在しているが、データの信頼性担保や事業継続性などで課題を抱えているのが現状。5日に都内で開かれた日本臨床薬理学会学術総会のシンポジウムでは、医薬品開発に患者レジストリを活用していく方向性が議論された。


患者レジストリは特定疾患で患者の治療内容や治療経過を管理するデータベース。患者数が少ない希少疾患、難病の臨床試験では被験者登録に時間がかかることや、実薬を用いない対照群を置くことが倫理的に難しいなどの課題があり、患者レジストリの活用が検討されている。

 

国立精神・神経医療研究センターの中村治雅氏は、筋ジストロフィーの患者レジストリ「レムディ」の運用経験から、条件付き早期承認制度で承認されることが多い希少疾患・難病治療薬について、製造販売後調査に患者レジストリを活用していく方向性を提示。

 

条件付き早期承認の対象品目は、上市後に様々な承認条件が課される場合が多いため、製造販売後調査での対応が大きな課題となる。中村氏は、「特定使用成績調査では有効性評価項目の収集が難しく、そこで得られたデータの二次利用や第三者提供はできないため、研究開発活動に利活用できない」と問題点を指摘した。

 

その上で、「事前にレジストリで有害事象や処方情報、有効性指標に関する情報を収集しておくことで、製販後調査の一部として使うことができる」と対応策を語った。製販後調査の対象患者をレジストリに登録することで、「有効性・安全性の両方の確認が可能となり、長期フォローアップデータを研究開発活動に利活用できる」との見方を示した。

 

患者レジストリの運用に向けては、「データ所有を含め、アカデミアが主体となるべき」と述べた一方、製販後調査や新薬開発への利活用を実現するために「早期段階からアカデミアと企業の連携が必要」との考えを示した。

 

日本製薬工業協会医薬品評価委員会の東郷香苗氏は、「日本では研究開発に活用できるデータベースが限られ、カルテやレセプトなどのデータが使いづらい現状では、レジストリが使えるようになってほしい」との考えを示した。

 

ただ、「アカデミアが運用するレジストリは、企業のために集めている情報ではないため、レムディのように質がしっかりしているデータベースはごく一部に限られる。レジストリを活用していくために、データの信頼性基準として受け入れ不可となる最低限のレベルを教えてほしい」と規制当局に要望した。

 

これに対し、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の梶山和浩氏は、PMDAがレジストリを構築しているアカデミア向けの窓口として設置している「レジストリ活用相談」の利用を呼びかけた。

 

企業とアカデミアが連携した取り組みの中で、「レジストリのデータを用いて承認申請する場合に、どの程度レジストリのデータが利用可能であるのか、どうしたら利用できるのかなどを相談していただき、新薬開発につなげてほしい」と語った。

 

 

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出典:薬事日報

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