医療

移動薬局が過疎地で調剤~全国初、10月から実証実験【岐阜薬科大学】

薬+読 編集部からのコメント

岐阜薬科大学は、10月1日から、医療過疎地域の岐阜県山県市北伊自良地区でモバイルファーマシー(MP)を活用した調剤を行う実証実験を開始する方針を示しました。実証期間は6カ月で、既存の岐阜薬大附属薬局の構造設備の一部としてMPを派遣し、同地区にある伊自良北診療所の近隣駐車場で薬剤師が調剤や服薬指導を行う仕組みです。医薬分業のメリットを検証するのが狙いで、有用性が認められれば地域薬剤師会等と連携した共同研究や薬学教育での活用も検討していく計画です。

規制のサンドボックスで

岐阜薬科大学は、10月1日から医療過疎地域の岐阜県山県市北伊自良地区でモバイルファーマシー(MP、画像)を活用した調剤を行う実証実験を開始する。既存の岐阜薬大附属薬局の構造設備の一部としてMPを派遣し、同地区にある伊自良北診療所の近隣駐車場で薬剤師が調剤や服薬指導を行い、医薬分業のメリットを検証する。災害時以外の平時にMPを活用するのは全国で初めて。実証期間は6カ月で、有用性が認められれば、地域薬剤師会等と連携した共同研究や薬学教育での活用も検討していく計画だ。

実証実験の計画は8月30日、規制のサンドボックス制度(新技術等実証計画)に基づき、内閣官房と厚生労働省から認定された。これまでMPは法令上、災害時しか薬局として利用できなかったが、今回、平時にMPを同大附属薬局の一部として使用することが特例的に認められた。

 

実証実験を行う山県市は、人口約2万4000人。特に伊自良北診療所(画像)のある北部は65歳以上の高齢者が37.8%と約4割に上り、過疎化が進んでいる。交通の便も自主運行バスが2時間に1本と移動手段は限られる。

 

伊自良北診療所は火曜日と金曜日の週2回、17時から18時まで1時間だけ近隣の診療所から医師が出張診療を行っており、1日3~5人の受診がある。無薬局地域で薬剤師不在のため、調剤は薬剤師法の例外規定によって医師が自ら患者に手持ちの限られた薬で行っており、調剤や服薬指導、在庫管理まで医師の負担は大きかった。

そこで、実証実験では、同診療所の医師が院外処方箋を発行し、診療所近くの駐車場に派遣されたMPにおいて、保険薬剤師登録を行った同大地域医療実践薬学研究室の教員が調剤して服薬指導を行う。医師と薬剤師のダブルチェックや副作用の確認などが行えるようになり、安全性が向上する一方、医師も診察に集中でき負担が軽減するといった医薬分業のメリットを検証する。

 

実証実験を主体となって実施する同研究室の林秀樹教授は、MPの平時活用について「薬剤師の地域への貢献が求められている中、住民が住み慣れた地域で最期まで過ごす地域包括ケアシステムに貢献する一つの手段になるのではないか」と話す。

また、今回の活動は薬局の調剤室が移動する形となるが、林氏は「薬局の機能は処方箋調剤だけではない」とし、「OTC医薬品や衛生材料を取り扱い、住民の健康相談などに関わっていくためには、複数のMPがグループで移動して、一つの薬局のような役割を果たす新しい形態もあるのではないか」と展望する。

 

同大は、実証実験でMP調剤の有用性が裏付けられれば、地域薬剤師会や自治体、企業と連携して共同研究を進めていきたい考え。平時の活用法を見出すことで、全国的なMPの普及に弾みがつくことを期待している。

 

林氏は「災害時しか使えないとなると普及もなかなか進まず、地域でMPの平時からの活用と災害への備えを同時に考えていく必要がある。常に稼働させるためには、複数台をうまく組み合わせて運用していく方法が望ましいのではないか」との考えを示す。

 

過疎化が進む無薬局地域には薬局を設置することが前提としつつ、「それが難しい場合はMPの活用が考えられるのではないか」としている。

 

一方、教育面でもMPの平時活用を取り入れていきたい考えだ。地域における薬剤師の役割などを学習した後、実務実習を終えた高学年の学生にMPの活用を検討していく。

 

林氏は、MPの平時活用に向けては「地域のニーズをしっかり考えてやっていくことが重要」と述べ、薬剤師会や自治体と連携した活動がカギになると指摘。将来的には「調剤報酬上のインセンティブも普及のカギになるだろう」との見方を示している。

 

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出典:薬事日報

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