医療

ウクライナ避難民を支援~母国語で薬相談に対応

薬+読 編集部からのコメント

ロシアの軍事侵攻によりウクライナから逃れた避難民の支援に取り組んでいる薬局が、茨城県古河市にあります。同市の「そらまめ薬局」にはウクライナ語・ロシア語・日本語を同時通訳できるスタッフが在籍し、母国語での服薬指導、相談対応などを実施しています。

茨城県古河市のそらまめ薬局は、昨年4月からウクライナ避難民支援に取り組んでいる。同薬局には、ウクライナ語、ロシア語、日本語を同時通訳できるスタッフが在籍。古河市などの自治体に支援を申し出て、県内の身寄りのない単身避難民に対し、薬局内に設置した募金箱から集めた寄付金を原資に、避難民が要望する必要物資を提供(写真)した。さらに、一般用医薬品の販売や保険調剤業務では、ウクライナ語・ロシア語による服薬指導、日本在留中の生活相談や医薬品相談ではウクライナ語・ロシア語対応の窓口を設置。処方薬の投薬時に服薬指導を行ったり、日本での生活面や医薬品に関する問い合わせにも対応するなど、薬局の特徴を生かした支援で貢献している。

同薬局には、ウクライナの看護師資格を持ち、病院実務経験のある在日ウクライナ人が勤務している。ロシアによるウクライナ軍事侵攻で、昨年3月に日本政府はウクライナ避難民の日本への受け入れ支援を発表し、同4月には茨城県の大井川和彦知事がウクライナからの避難民を受け入れると表明した。

 

そのスタッフの強い意向もあり、同薬局でも支援を検討することとなった。古河市や近隣の坂東市、常総市、栃木県小山市を訪問し、自主的に避難民支援を申し出て、協力を得た。

 

支援を行うに当たって、来日したウクライナ人の医療サポート時に想定される懸案事項を抽出した。一つは言葉の壁だ。日常会話がウクライナ語とロシア語で、支援を受けるウクライナ人が英語を介する会話ができない場合には、意思疎通が困難になることが想定された。

 

ウクライナでは、薬局で処方箋なしでも薬剤師の指導のもと、抗生物質や降圧剤など購入できる薬剤が多種類存在しており、日本とは環境が異なる。セルフメディケーションへの意識も高く、かぜや病気の時には病院よりも薬局を身近に利用する習慣があり、日本での薬局利用時に困惑する恐れもあった。

 

医療機関の環境、医療保険制度にも大きな違いがある。ウクライナでは、病院受診時に診療代は全額国負担で無料、処方箋や指示箋による医薬品の購入は自費になる場合が多いという。

こうした状況を踏まえ、同薬局では支援内容を決定した。一般用医薬品の販売や保険調剤業務では、ウクライナ語・ロシア語による服薬指導、日本在留中の生活相談や医薬品相談では、ウクライナ語・ロシア語対応の窓口を設置し、母国語で対話(写真)することで安心して相談を受けられるようにした。薬局内の待合室には募金箱を設置して寄付を募り、寄付金を原資に個々の避難民の要望する必要物資を支援した。

避難民に対しては、ウクライナ語、ロシア語対応スタッフが所属していることや、薬の相談など様々な相談が可能であるとの案内を薬局内に掲示。自治体にも配布し、協力を求めた。

 

自主的な支援には限界があるため、県内の避難民を対象に身寄りのない単身避難民を優先した。昨年4月から今年8月までに、常総市在住のウクライナ避難民には処方した医薬品の投薬時の服薬指導、つくば市などに住む避難民には日本での生活面、医薬品に関する問い合わせ、病院受診時の相談対応などを行った。

 

募金箱での寄付金は、昨年6~9月に1万2275円、同11月~今年2月には1万0290円を集め、それを原資に避難民が要望した衛生用品や一般用医薬品、コロナ抗原検査キットなどを救急箱に入れて提供。全ての商品にウクライナ語、またはロシア語シールを貼付し、どんな商品であるか分かるようにした。

 

同薬局を経営する薬剤師の山形明氏は、「支援活動を通じて、改めて薬局としての役割や活動の可能性を考える機会になり、対人業務の重要性を認識することにつながった」と意義を強調した。

 

支援団体を通すことなく、同薬局が避難民に支援物資を直接届け、対面での支援を行うことで、「迅速かつ的確で寄り添った支援提供ができた」と話す。今後も相談窓口について継続していく考えで、薬局ができる支援を検討する。

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出典:薬事日報

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