医療

外来感染症薬で認定制度~薬局向け、耐性対策推進へ

薬+読 編集部からのコメント

薬剤耐性対策には、外来患者に使用される抗感染症薬の適正使用が不可欠として、日本化学療法学会が4月から「外来抗感染症薬認定薬剤師」制度の運用を開始しました。資格取得には学会や研修会への参加、経験症例の提示、試験合格などが必要。将来的には専門医療機関連携薬局の要件の一つになる可能性もあり、認定取得は来年度以降に本格化すると見られています。

日本化学療法学会は、4月から「外来抗感染症薬認定薬剤師」制度の運用をスタートさせた。薬剤耐性対策には、外来患者に使用される抗感染症薬の適正使用が不可欠として、役割を担う薬局薬剤師向けの制度として立ち上げた。将来は、専門医療機関連携薬局の要件の一つとして確立したい考えもあるようだ。この資格を得るには学会や研修会への参加、経験症例の提示、試験合格などが必要で、認定の取得は来年度以降に本格化すると見られる。

 

「専門連携」の要件も視野

同制度は、薬剤耐性病原体の出現抑制に向けて、外来診療における抗感染症薬の適正使用に関する十分な知識や技能を有する認定薬剤師を育成するもの。

 

同学会は2008年、病院薬剤師を対象に「抗菌化学療法認定薬剤師」制度を立ち上げているが、薬剤耐性対策を推進するためには外来での取り組みも欠かせないと判断。薬局薬剤師向けの制度を新設することにした。

 

資格を取得したい薬局薬剤師は要件として、▽抗感染症薬の外来調剤と服薬指導等の3年以上の実務経験▽抗感染症薬の外来調剤や服薬指導、疑義照会等15例以上の症例報告(在宅における3症例、疑義照会による処方介入3症例を必ず含む)▽同学会の学術集会や各地の研修会等で3年以内に30単位以上取得――等を満たした上で申請。審査を受けた上で、年1回実施される筆記試験に合格すれば認定を取得できる。認定は5年ごとに更新する。

 

7月末までに要件を満たせば申請できるが、4月の運用開始以降、短期間で申請可能な薬剤師は多くない。今年度は準備期間に充て、来年度以降に申請する薬局薬剤師が増えそうだ。

 

5日に岐阜市で開かれた同学会総会では、認定制度をテーマにした特別シンポジウムが開かれ、関係者が制度に込めた思いや取り組みを語った。

 

同認定委員会委員長の藤村茂氏(東北医科薬科大学薬学部臨床感染症学教室教授)は、「専門医療機関連携薬局制度の要件の一つとして、学会認定等の専門性の高い薬剤師の配置が求められている。癌領域ではスタートしているが、感染症領域もこの流れに乗っていきたい」と述べ、将来の発展に期待を示した。

 

同学会理事長の松本哲哉氏(国際医療福祉大学医学部感染症学講座教授)は「外来で処方された抗感染症薬を、薬局薬剤師が疑義照会で『本当に必要ですか』と言えればいいが、ハードルは高い。そうした認識もあって認定制度を開始した」と言及。

 

「制度ができるだけでは十分ではない。薬局薬剤師の疑義照会を受け入れる医師側の変化も起こらないといけないし、患者の理解も進まないといけない」と話した。

 

継田雅美氏(新潟薬科大学薬学部臨床薬学教育研究センター教授)は、要件の一つとして単位を取得できる研修会を4月から開始したと報告した。

 

8月まで毎月開く計5回シリーズの研修会で、ウェブ開催は4回、新潟薬科大学での対面1回で実施する。4、5月の研修会は100人前後の参加者を集めたという。

 

このほか認定要件の一つとして、疑義照会による処方介入3症例以上の報告が必要となる。継田氏は「薬局薬剤師にとって抗微生物薬は疑義照会しづらい分野」と述べ、「疑義照会しやすい環境整備が必要。医師との間に病院薬剤師が入ってくれると進みやすい」と投げかけた。

 

中居肇氏(大館市立総合病院薬剤部長)は、地域での経口抗菌薬適正使用を推進するため、腎機能別投与量などを解説した一覧表を全薬局に配布し、不適切な処方に対する疑義照会を後押ししていると報告。

 

今後は、研修会の開催や情報共有の場を作ることに力を入れたいとし、「連携を強化して顔の見える関係性の構築が重要。薬剤耐性対策に向けた薬局薬剤師の育成を進めたい」と話した。

 

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出典:薬事日報

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