薬剤師会

残薬バッグで再利用薬回収~億単位の医療費削減効果も

薬+読 編集部からのコメント

北海道薬剤師会は、道内540薬局で薬局利用者に残薬バッグを無償配布する運動で、2019年度から720万円分(薬価ベース)の残薬を回収できたと発表しました。うち金額換算すると再利用可能な薬剤は4分の3を占め、道全土で実施した場合、薬価ベースで億単位の削減効果を創出できると分析しています。

北海道内の540薬局を対象に薬局利用者に残薬バッグを無償で配布し、残薬を薬局に持参してもらうよう協力を呼びかけたところ、2019年度から3年間で720万円分(薬価ベース)の残薬を回収できたことが、北海道薬剤師会が実施した調査の速報値で明らかになった。回収した残薬を金額で換算すると、4分の3が再利用が可能な薬剤で占められていた。道薬では「532万円の再利用薬を回収できたことは、そのまま医療費削減効果につながるものと考えている。道全土で残薬バッグ運動を行ったと試算すると、薬価ベースで億単位の削減効果を創出できるくらいのインパクトはある」と分析している。

 

薬剤師介入で高い効果

 

道内の医療費2兆1220億円のうち、調剤費は3714億円と17.5%を占めている。道では19年度から高齢者医薬品適正使用推進事業を開始し、道内のモデル地域で薬剤師の服薬管理をモデル的に実施し、残薬解消などの効果を検証することで医薬品の適正使用や医療費の適正化を推進している。

 

その一環として、道からの委託を受け、道薬が実施したのが薬局利用者への残薬バッグ運動だ。参加した会員薬局が患者に「残薬バッグ」を無料配布し、残薬があった場合にはお薬手帳と合わせて薬局に持参して来局してもらい、薬剤名と錠数、受診医療機関数などの情報を収集。道薬が集計を行った。

 

19年度に小樽、北見、砂川、名寄の82薬局、20年度に札幌、十勝、日高の389薬局が参加し、2年間で998のシートを回収。患者平均年齢は74.7歳、平均服用剤数7.6剤、総残薬数は23万1395錠、総残薬金額は薬価ベースで約666万円となった。

 

回収した残薬のうち、薬剤師が医師に疑義照会を実施した上で日数調整を行うことができた「再利用薬」は495万円(74%)を占め、再利用が難しい「廃棄薬」が128万円(19%)、患者の希望で手元に保管したい「保留薬」が31万円(5%)となった。

 

21年度は、函館と釧路を対象地域に69薬局が参加。国民健康保険加入者や複数の診療科・医院を受診している人、慢性疾患で長期にわたって診療を受けている人にターゲットを絞って実施した。

 

現在解析中だが、速報値では3年間の合計で1052件のシートを回収。総残薬金額は720万円で、そのうち回収した再利用薬は532万円に達した。

 

他の都府県薬が実施している残薬バッグ運動は長くても1カ月間と短期間で実施されることが多いが、道薬は10月から3月までの6カ月間にわたって集計しているのが特徴。半年間の事業とすることで、1人の患者が複数回残薬を持参することによる費用対効果も検証した。

 

その結果、19、20年度で回収した998シートのうち、複数回残薬を持参した患者は96人いた。複数回残薬を持参した患者のみを抽出すると、1回目の残薬持参時には平均残薬数293錠(平均残薬金額8956円)、2回目は134錠(6732円)、3回目は68錠(1756円)と残薬が減っていた。

 

山田武志常務理事は、「全体の1割程度は薬局に残薬を複数回持参していた。残薬バッグで薬剤師が患者さんに介入することはアドヒアランス向上や残薬解消に役立つ可能性が示唆される結果だ」と強調する。

 

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出典:薬事日報

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