薬剤師の職場 公開日:2021.12.21 薬剤師の職場

零売薬局のメリットと課題とは?薬剤師が知っておくべきポイント 文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

零売薬局とは、患者さんに処方せんなしで医療用医薬品を販売する薬局のことです。医療用医薬品は「処方せん医薬品」と「処方せん医薬品以外の医療用医薬品」に分類され、零売薬局ではそのうち「処方せん医薬品以外の医療用医薬品」を取り扱います。
厚生労働省が公表する「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について」によると、令和3年11月25日時点で医療用医薬品は約14000種類。そのうちの一部が零売の対象です。今回は、零売薬局の特徴とそのメリットや課題について解説します。

1.なぜ薬局で医療用医薬品を零売できるのか?

医療用医薬品は、本来、医師の処方を受けて提供するものであり、零売が法的に認められているのか疑問に思う薬剤師もいるのではないでしょうか。
 
零売が認められるとされる理由は、2005年(平成17年)3月に厚生労働省医薬食品局長が通知した「処方せん医薬品の取り扱いについて」で、処方せん医薬品以外の医療用医薬品について以下のように記載されているためではないかと考えられます。

 

「一般用医薬品の販売による対応を考慮したにもかかわらず、やむを得ず販売を行わざるを得ない場合などにおいては、必要な受診勧奨を行った上で、次に掲げる事項を遵守すること」

(厚生労働省「処方せん医薬品等の取扱いについて」より)

 

この文言は処方せん医薬品以外の医療用医薬品についてのみ記載されており、広義において処方せんなしでの販売が認められるように解釈できます。また、同資料の「次に掲げる事項」において、必要最小限の数量での販売することや販売記録の作成を行うことなど、販売時の条件が提示されているとみてよいでしょう。

2014年(平成26年)の法改正により薬局医薬品の取り扱いが変更になりましたが、処方せん医薬品以外の医療用医薬品については大きな変更はありませんでした。そうした経緯から、薬局では処方せん医薬品以外の医療用医薬品に限り、零売が認められるとされています。

1-1.医薬品の分類と販売方法をおさらい

処方せん医薬品以外の医療用医薬品と一般用医薬品、要指導医薬品ではどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、医薬品の分類と販売方法について再確認していきましょう。

 

■医薬品の分類と販売方法



(福島県薬剤師会「一般用医薬品について」、厚生労働省資料「一般用医薬品のインターネット販売について」を参考に作成)

 

「要指導医薬品」は、医療用医薬品から一般用医薬品になって間もない医薬品であり、一般用医薬品としてのリスクが明確になっていない、いわゆる「スイッチOTC」です。使用時は注意が必要なので、薬剤師による対面販売が規定されています。

「処方せん医薬品以外の医療用医薬品」も薬剤師の対面販売が義務づけられており、インターネット販売などの通販は認められていません。また、処方せん医薬品と同等に取り扱うよう求められています(厚生労働省「薬局医薬品の取扱いについて」より)。

 

1-2.零売専門の薬局チェーンとは?

最近は、零売をメイン事業とする薬局チェーンもあります。
 
セルフケア薬局という薬局をご存じでしょうか。GOOD AIDグループのセルフケア薬局株式会社が運営している零売専門の薬局チェーンで、薬代のみを全額自己負担で提供しています。セルフケア薬局グループの公式LINEにお友だち登録をするとお友だち価格での購入が可能で、薬剤師との無料相談や在庫確認、事前予約などができるため、忙しい方など医療機関への受診が難しい場合に利用しやすい薬局として注目されています。

 
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2.零売薬局のメリット

医療用医薬品を処方せんなしで販売できる零売は、薬局と患者さんの双方にメリットがあります。ここでは、薬局で零売を行うメリットについて見ていきましょう。

 

2-1.薬局が零売で医薬品を販売するメリット

零売で医療用医薬品を販売する際には、OTC医薬品と同様に、患者さんから症状や既往歴、服用歴などを聞き取り、薬剤師が症状に合わせた薬を選択します。薬剤師としての知識や経験を十分に生かせる業務として、やりがいをもって取り組むことができるでしょう。

また、患者さんが常用する風邪薬や頓服薬を疑義照会なしで提供できる可能性があるのもメリットです。患者さんが病院で処方をもらい損ねた時、通常であれば、疑義照会を行い処方追加の指示をもらってから交付します。
 
しかし、零売であれば価格説明が必要なものの患者さんを待たせることなく提供が可能です。患者さんのなかには、値段よりもスピードを優先する人もいます。患者さんのニーズを満たすことで薬剤師への信頼につながるかもしれません。また、零売は保険制度を利用せずに医療用医薬品を販売するため、全額自己負担となることから医療費節減にも貢献できます。

 
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2-2.患者さんが零売で医薬品を購入するメリット

患者さんが零売を利用するメリットのひとつは、時間の節約ができる点です。処方せんを介して医療用医薬品を購入する場合、患者さんが医療機関を受診後、薬局で調剤をします。医療機関や薬局での待ち時間や診察・会計にかかる時間、服薬指導の時間などを考えると、短時間で必要な薬を購入できる零売は都合が良いものです。医療機関を受診する時間を確保できない時や、薬を紛失してしまい受診日まで数回分足りなくなってしまった時に利用できるのも利点でしょう。
 
また、保険制度を利用すると医療機関では診察料・検査料など、調剤薬局では基本料・薬学管理料などがかかりますが、零売では保険制度を利用しないため、そうした費用がかかりません。希望する医薬品が少量である場合や薬価が安い種類である場合は、医療機関を受診するよりも低価格で購入できるケースもあるでしょう。

3.零売薬局が抱える課題

医療用医薬品の零売を行うことはメリットばかりではありません。ここでは、薬局が零売を行ううえでの課題について考えてみましょう。

 

3-1.医薬品副作用被害救済制度の補償対象になるのか不明

薬の副作用は誰にでも起こる可能性があります。万全を期していても、副作用の発生を完全に防止することは難しいため、正しい方法で服用して発生した副作用に対しては、「医薬品副作用被害救済制度」の補償が受けられます。
 
入院を要するほどの健康被害や日常生活が著しく制限される障害が生じた場合、医療費や年金などの給付を受けられる公的な制度ですが、気になるのがその対象範囲です。

この制度では、薬局等で購入した医薬品も補償対象とされていますが、使用目的・方法が適正であったと認められない場合は救済の対象になりません(医薬品医療機器総合機構「医薬品副作用被害救済制度Q&A」より)。処方せんを介して購入した医薬品や一般用医薬品での副作用は補償対象であることがはっきりと記載されていますが、零売については明記されていないため補償対象にならない可能性があります。場合によっては推薦した薬剤師が非難を受けることもあるでしょう。

 

3-2.利益につながりにくい

処方せんによる医療用医薬品の交付を行う調剤薬局は、近隣の医療機関からの処方せん応需が見込めます。加えて、薬の種類や処方日数に関わらず調剤基本料や薬学管理料などの調剤報酬を得ることができるため、ある程度の収益を担保できるでしょう。
 
一方、零売専門の薬局は保険制度を利用しないため、調剤基本料などを得られないことから、相談料や卸価格との差額で売上を得なければならなりません。また、薬価の高い医療用医薬品は零売よりも、保険制度を利用して購入した方が安価になりやすいため、販売頻度が低くなりがちです。人件費やシステム利用費などのコストを考えると、薬局としての利益につながりにくいこともあるでしょう。薬局の売上が確保できなければ、薬剤師の給料にも影響があるかもしれません。

 
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3-3.近隣の医療機関との関わり方が難しい

病院や調剤薬局を利用していた患者さんが頻繁に零売薬局を利用するようになると、医療機関への受診頻度が低くなる可能性があります。また、風邪の初期症状などをOTC医薬品で対処していた患者さんが零売を利用するようになると、近隣のドラックストアの収益に影響を与えるかもしれません。状況によっては、病院や調剤薬局、ドラックストアと対立関係になってしまうことが考えられます。

 

3-4.薬剤師の責任が大きく問われる

零売では、医師の診察を受けずに医療用医薬品を販売するため、通常の保険調剤のように医師が聞き取れなかったことを薬剤師が聞き取るというダブルチェックの機能がありません。また、ほとんどの調剤薬局は血液検査などの詳しい検査を行えないため、患者さんからの聞き取りと薬局内で実施可能な簡単な検査によって、薬剤師の責任のもと、医療用医薬品を販売することになるでしょう。零売を行う際は、責任の重さを十分に理解しておく必要があります。

 
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4.薬剤師が零売薬局で働く際の注意点

患者さんが安心安全に医療用医薬品を服用するために、零売薬局の薬剤師は患者さんへ適切な指導を行わなくてはいけません。症状だけでなく既往歴や併用薬の有無など、十分なカウンセリングを行うことで、患者さんにとって最適な薬を選べます。例えば、アスピリン喘息(ぜんそく)の既往歴がある患者さんにはロキソニンなどの禁忌薬を避ける必要があるなど、薬を選択する際の判断材料を得るように、聞き取り力が求められるでしょう。

また、正しい服用方法を伝えることに加え、副作用への注意喚起も必要です。とくに、初めて服用する医療用医薬品は、アナフィラキシーショックなどのアレルギー症状が現れる可能性があります。体調が改善しない場合や、発疹や痒み、息苦しさなどの症状が出た場合は、医薬品の使用を中止してなるべく早めに医師の診察を受けるように伝えることも必要です。零売薬局に限りませんが、副作用を未然に防ぐためにも、使用経験のない医療用医薬品の販売は慎重に行わなければなりません

5.零売薬局でも患者さんの安心安全を第一に

零売薬局は、時間や医療費を節約したい患者さんにとって魅力を感じる薬局です。医療機関を受診せずにいつも服用している医療用医薬品が購入できるメリットは大きいのではないでしょうか。一方で、安全性や経営上の問題、近隣の医療機関との関係性など、課題があることも事実です。薬剤師は零売薬局のメリットと課題を理解し、患者さんが安心安全に薬を服用できる環境を提供する必要があることを覚えておきましょう。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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