- 1.薬学部卒業後の主な進路
- 1-1.4年制薬学部卒業後の主な進路
- 1-2.薬学系大学院修了後の主な進路
- 2.薬学部卒業後の主な就職先一覧
- 2-1.薬剤師資格が必要な就職先
- 2-2.薬剤師資格がなくても働ける就職先
- 2-3.公務員として働く場合の就職先
- 3.薬学部卒業後の就職先の選び方
- 3-1.就職先の仕事内容や働き方を理解する
- 3-2.自分の適性を踏まえて希望条件を明確にする
- 3-3.将来を見据えてキャリアプランを立てる
- 4.薬学生が就職活動を成功させるポイント
- 4-1.学業と両立できるスケジュールを立てる
- 4-2.自己分析・他己分析で自分自身を理解する
- 4-3.業界研究・企業研究を怠らない
- 5.薬学部卒業後の就職先の選択肢は意外と多い
1.薬学部卒業後の主な進路
一般社団法人薬学教育協議会の調査によると、2024年3月に6年制薬学部を卒業した薬学生の進路としては、薬局やドラッグストアの調剤部門、病院・診療所などが多いことが分かりました。企業や公務員を就職先に選ぶ薬学生もいますが、その割合は薬局や病院などと比較すると低くなっています。
就職先(進路) | 割合 |
薬局 | 28.1% |
ドラッグストアの調剤部門 | 19.6% |
病院・診療所 | 21.2% |
一般販売業(ドラッグストアなど) | 1.2% |
行政(国家公務員・地方公務員など) | 1.7% |
企業(医薬品関連企業・化学系企業など) | 8.8% |
進学 | 2.0% |
試験・研究機関・大学 | 0.1% |
未定(未報告も含む) | 11.0% |
参照:2024(令和6)年3月卒業生および大学院修了者の就職動向調査結果報告書(一部)|薬学教育協議会
1-1.4年制薬学部卒業後の主な進路
一般社団法人薬学教育協議会の調査によると、4年制薬学部卒業後の進路は、進学が最も多い結果となっています。就職先としては、企業や薬局、病院・診療所などがありますが、いずれも進学より割合は低くなっています。
就職先(進路) | 割合 |
薬局 | 1.0% |
病院・診療所 | 2.1% |
一般販売業(ドラッグストアなど) | 1.5% |
卸売販売業 | 1.0% |
行政(国家公務員・地方公務員など) | 1.0% |
企業(医薬品関連企業・化学系企業など) | 13.3% |
進学 | 72.1% |
試験・研究機関・大学 | 1.5% |
未定(未報告も含む) | 2.2% |
参照:2024(令和6)年3月卒業生および大学院修了者の就職動向調査結果報告書(一部)|薬学教育協議会
1-2.薬学系大学院修了後の主な進路
一般社団法人薬学教育協議会の調査によると、薬学系大学院の修士・博士課程を修了した後の主な進路としては、医薬品関連企業の研究・開発職や、試験・研究機関、大学などへの就職が多くなっています。
就職先 | 人数 | ||
4年制 | 6年制 | ||
修士課程 | 博士課程 | 博士課程 | |
薬局 | 0人 | 3人 | 12人 |
病院薬剤部(薬剤科) | 2人 | 7人 | 20人 |
医薬品関連企業(営業・MR) | 14人 | 0人 | 0人 |
医薬品関連企業(研究・開発) | 374人 | 63人 | 17人 |
医薬品関連企業(その他) | 81人 | 0人 | 3人 |
化学系企業 | 99人 | 15人 | 6人 |
その他の企業 | 119人 | 14人 | 3人 |
行政 | 22人 | 3人 | 8人 |
試験・研究機関・大学 | 21人 | 50人 | 41人 |
その他の職業 | 11人 | 4人 | 3人 |
進学 | 250人 | – | – |
非就職者 | 34人 | 19人 | 8人 |
合計 | 1,027人 | 178人 | 121人 |
参照:2024(令和6)年3月卒業生および大学院修了者の就職動向調査結果報告書(一部)|薬学教育協議会
2.薬学部卒業後の主な就職先一覧
薬学部卒業後の主な就職先には、以下のようなものがあります。
薬剤師資格が必要な就職先 | ● 調剤薬局 ● ドラッグストア ● 病院・医療施設 |
薬剤師資格がなくても働ける就職先 | ● 製薬会社 ● 医薬品卸会社 ● SMO・CRO ● 化粧品・化学メーカー ● 食品・飲料メーカー ● 試験・研究機関、大学 |
公務員として働く場合の就職先 | ● 国家公務員 ● 地方公務員 ● 学校薬剤師 |
それぞれについて見ていきましょう。
2-1.薬剤師資格が必要な就職先
薬剤師資格が必要な就職先では、薬剤師としての知識や経験、スキルが求められます。ここでは、調剤薬局やドラッグストア、病院・医療施設での仕事についてお伝えします。
2-1-1.調剤薬局
調剤薬局では、総合病院や大学病院、中小病院、クリニックなどの医療機関から交付された処方箋を基に調剤業務を行います。さまざまな疾患の処方を扱うため、調剤薬局で働く薬剤師には幅広い知識とスキルが求められるでしょう。
また、調剤薬局の中には、介護や在宅医療に対応する地域連携薬局、悪性腫瘍などの高度な治療に携わる専門医療機関連携薬局、セルフメディケーションやOTC薬の相談などを行う健康サポート薬局など、専門的機能を備えた薬局があります。職場の特色によって薬剤師に求められる専門性が異なるのも調剤薬局の特徴です。
参照:健康サポート薬局及び認定薬局について|日本保険薬局協会
厚生労働省の統計調査によると、2022年度時点で薬剤師のうち調剤薬局に従事する人の割合は58.9%でした。ドラッグストアや病院・医療施設と比較すると働いている人の割合が高くなっており、多くの薬剤師の就職先となっていることが分かります。
参照:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 3 薬剤師|厚生労働省
🔽 薬局薬剤師の仕事について解説した記事はこちら
2-1-2.ドラッグストア
ドラッグストアでの薬剤師の主な仕事は、OTC薬やサプリメントなどを購入する人へ、使用方法や効能効果、症状に適した薬を選ぶためのアドバイスを行うことです。医療機関の処方薬とOTC薬、サプリメントの飲み合わせの確認など、ドラッグストアに就職する薬剤師も幅広い医薬品の知識が必要になるでしょう。
なお、厚生労働省の統計調査によると、2022年度時点で「店舗販売業」に従事する薬剤師の割合は1.9%でした。
参照:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 3 薬剤師|厚生労働省
🔽 ドラッグストアで働く薬剤師の仕事について解説した記事はこちら
2-1-3.病院・医療施設
病院や医療施設に勤める薬剤師は、対応する患者さんや薬剤師としての役割などを踏まえて、それぞれの施設に合わせた知識やスキルが求められるでしょう。
厚生労働省の統計調査によると、2022年度時点で病院や診療所に従事する薬剤師の割合は19.3%で、約2割の薬剤師が就職先として選んでいます。
参照:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 3 薬剤師|厚生労働省
🔽 病院薬剤師の仕事について解説した記事はこちら
2-2.薬剤師資格がなくても働ける就職先
薬学部卒業後の主な進路のうち、薬剤師資格がなくても働ける就職先としては、製薬会社や化学系メーカー、治験関連会社、試験・研究機関、大学職員などが挙げられます。薬学部に限らず、理系学部を卒業していると採用されやすい業種でしょう。
ただし、薬剤師資格があることで採用されやすくなる場合があるほか、応募条件によっては薬剤師資格が求められるケースもあるため、就職活動を行う際には募集要項を確認しましょう。
🔽 企業で働く薬剤師の仕事について解説した記事はこちら
2-2-1.製薬会社
薬学部を卒業してから、就職先として製薬会社を目指す薬学生は多いでしょう。医薬品や化学、生物学、衛生化学など幅広い分野を学んだ薬学生は、製薬会社にとっても貴重な人材です。製薬会社における主な職種には、以下のようなものがあります。
● 研究職(新薬開発を行う)
● 開発職(新薬の安全性や効果を確認する)
● DI(医薬品の情報を管理・提供する) など
製薬会社への就職と一口にいっても、その職種はさまざまです。職種の理解を深めて就職活動を行うようにしましょう。
🔽 MRの仕事について解説した記事はこちら
2-2-2.医薬品卸会社
医薬品卸会社は、製薬会社と医療機関や薬局の間に立ち、医薬品の提供をサポートする会社です。仕入れや品質管理、受注、配送、販売などを行います。
医薬品卸販売担当者はMSと呼ばれる医薬品卸会社の営業職です。医師や薬剤師に対して医薬品や医療機器の販売・情報提供をするため、医薬品や医療の知識がある薬学部卒業生の就職先候補のひとつとなります。
🔽 MSの仕事について解説した記事はこちら
2-2-3.SMO・CRO
SMOは治験施設支援機関の略称で、医療機関の治験業務の一部を受託および代行する企業のことです。CROは開発業務受託機関の略称で、製薬会社や医療機器メーカーから委託を受け、新薬開発を代行する企業です。
SMO、CROともに治験に関わる企業ですが、CROは新薬や医療機器の開発メーカーからの委託、SMOは治験を実施する医療機関からの委託であるのが大きな違いです。新薬や医療機器の開発には、医療や医薬品に加えて、GCP(治験実施のためのルール)などの知識も欠かせないため、薬学部卒業後の就職先のひとつとなっています。
🔽 CRCの仕事について解説した記事はこちら
🔽 CRAの仕事について解説した記事はこちら
2-2-4.化粧品・化学メーカー
化粧品メーカーや化学メーカーも薬学部卒業後の就職先となります。化粧品メーカーでは、化粧品となる成分やその安定性などの研究・開発、品質管理などが主な仕事です。
化学メーカーとは、化学反応を活用して製品を作る企業のことで、樹脂やゴム、合成繊維、化学肥料、石けん、塗料など、その分野は多岐にわたります。いずれも、薬学部で学んだことが生かせる進路となるでしょう。
2-2-5.食品・飲料メーカー
食品・飲料メーカーとは、仕入れた原材料を使って食品を開発・製造し、完成した商品を販売する企業のことです。採用は、主に総合職と技術系に分かれており、薬学部の卒業生は商品の研究開発や管理を行う技術系の求人に応募できるでしょう。
食品・飲料メーカーでは、商品の開発だけでなく、生産管理や品質管理などの仕事もあります。健康に対する有用性の検証や商品・原材料の品質保証といった検査も行うため、薬学生の就職先の候補となるでしょう。
2-2-6.試験・研究機関、大学
試験・研究機関や大学などの研究職も、薬学部卒業生の就職先のひとつです。試験・研究機関には、公的機関と民間企業があり、公的機関には「国立研究開発法人」「国立研究機関」「公設試験研究機関」などがあります。
薬学生の就職先となる公的機関としては、理化学研究所や国立感染症研究所、地方衛生研究所などが挙げられるでしょう。
2-3.公務員として働く場合の就職先
公務員として働く場合の就職先には、国家公務員や地方公務員などが挙げられます。公務員になるためには、公務員試験に合格しなければなりません。
また、職種によっては薬剤師資格が必要になることがあります。そのため、公務員を就職先に考えている場合は募集要項をしっかり確認しましょう。
2-3-1.国家公務員
薬剤師免許を活用して国家公務員として働く場合の就職先は、厚生労働省の薬系技官や麻薬取締官などが挙げられます。
厚生労働省の薬系技官は、医薬品や医療機器などの薬事分野、診療報酬などの保健医療分野といった薬剤師関連の分野に加え、食品安全分野や化学物質分野、研究開発分野、その他行政分野があります。
🔽 麻薬取締官の仕事について解説した記事はこちら
2-3-2.地方公務員
薬学部卒業後の地方公務員としての就職先には、地方自治体や地方厚生局、公立病院、保健所、衛生研究所などがあります。
仕事内容は、薬局やドラッグストア、医薬品製造業などを対象とした法令違反のチェック、飲食系企業を対象とした衛生検査や衛生管理の確認などです。公立病院の薬剤師として就職する場合は、民間の病院薬剤師と同等の業務を行います。
🔽 公務員薬剤師の仕事について解説した記事はこちら
2-3-3.学校薬剤師
学校薬剤師は、幼稚園や小学校、中学校、高等学校などの環境衛生に関する管理や指導、健康相談、保健指導などを行います。非常勤職員として月1~数回、学校に行き、教室やプール、トイレなどの環境チェックを行い、必要に応じて指導するのが主な仕事です。
学校薬剤師として働く薬剤師の多くは、薬局薬剤師などを本業としています。学校薬剤師になるのは、地域の薬剤師会からの推薦などによるケースが多いようです。
🔽 学校薬剤師の仕事について解説した記事はこちら
3.薬学部卒業後の就職先の選び方
就職先を選ぶには、仕事内容や自分の適性、将来のキャリアプランをしっかり考える必要があります。ここでは、就職先の選び方について詳しくお伝えします。
3-1.就職先の仕事内容や働き方を理解する
まずは就職先の仕事内容や働き方を理解することが大切です。自身の得意分野や興味のある分野なのか、理想とする働き方が実現できるかといった点を踏まえて、企業研究をするようにしましょう。
就職先の社風や転勤の有無、福利厚生などをチェックすることで、理想とする就職先であるかどうかを見極めやすくなります。
3-2.自分の適性を踏まえて希望条件を明確にする
就職活動をする上では、自分の適性を踏まえて、希望条件を明確にしておくことも重要です。例えば、MRの仕事の場合、人とコミュニケーションをとるのが得意で、自分の実力を試したり、ノルマを達成するために努力したりすることにやりがいを感じるのであれば、仕事に向いているといえるかもしれません。
苦手分野・得意分野といった自身の適性や、希望する働き方を明確にすることが、就職先を選ぶときのポイントです。
3-3.将来を見据えてキャリアプランを立てる
就職後の自身のキャリアを具体的にイメージすることも、就職先を選択する上で行っておきたいことです。薬局に勤めるのであれば、「○○年以内に認定薬剤師や専門薬剤師といった資格を取得する」「いずれは管理薬剤師や薬局長、エリアマネージャーなどの管理職になる」など、短期、中期、長期の目標を設定しましょう。
自分の理想とするキャリアプランが達成できるかを踏まえて検討することも、就職先の選び方のひとつです。
4.薬学生が就職活動を成功させるポイント
薬学生は実務実習や卒論、国家試験対策と並行して就職活動を行わなければなりません。そのため、学業と両立しながら、上手に就職活動をする必要があります。ここでは、薬学生が就職活動を成功させるポイントをお伝えします。
4-1.学業と両立できるスケジュールを立てる
薬学生は、実務実習・国家試験対策・卒論と並行しながら就職活動を行います。そのため、学業と両立できるように、あらかじめスケジュールを立てておくと、安心して就職活動ができるでしょう。
就職活動では、5年生の夏から秋にかけて企業のインターンシップが実施され、5年生の3月あたりからエントリー・選考が始まります。そのため、4年生の終わりから5年生の春までに自己分析や業界研究を行い、就職する業界を絞るのが理想的でしょう。インターンシップやエントリー・選考が実習期間と重なるため、スケジュール管理をしっかり行うことが大切です。
🔽 薬学生の就活について解説した記事はこちら
4-2.自己分析・他己分析で自分自身を理解する
自己分析や他己分析を行い、自分自身についてしっかり理解することはとても重要です。他己分析とは、家族や友人などから自身の強みや特徴、性格などを聞き取り、他人から見た自分の印象を評価することです。自己分析と他己分析を行うことで、主観的な視点と客観的な視点の両方で自身を分析することができます。
さまざまな角度から自身の魅力や強みを把握することで、自己アピールの説得力が増すため、就職活動を成功させるためにも重要です。
4-3.業界研究・企業研究を怠らない
業界研究を行う目的は、主に「志望する業界について詳しくなること」「志望業界を絞ること」です。業界研究によって、薬剤師の働く業界について把握でき、業界同士のつながりも理解できます。自身が興味のある業界を絞るため、薬剤師関連の業界を知ることが、就職活動の第一歩です。
業界研究で志望業界を決めたら、企業研究を行います。企業研究では、企業の強みや方針、事業展開、社風などを把握できます。企業研究をしっかりと行うことで、理想の就職先を見つけやすくなるだけでなく、面接でホームページに書いてあることを質問してしまうといった失敗も防げるでしょう。
5.薬学部卒業後の就職先の選択肢は意外と多い
薬剤師になるために薬学部に入学した薬学生は多いでしょう。さまざまな調査からも、薬学生が選択する就職先として、薬局や病院など薬剤師免許の必要な職場が人気であることがうかがえます。
しかし、薬学部卒業後の就職先の選択肢は、意外と多いものです。就職活動をする際は、自己分析・他己分析、業界分析・企業分析を通して、自身に合った業界を探してみてはいかがでしょうか。薬学部入学時には考えもしなかった業界が、就職先の候補に挙がるかもしれません。
新卒で企業に就職できるのは、一生に一度きりです。後悔のない就職活動ができるよう心がけましょう。
薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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