薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.09.16 薬剤師のスキルアップ

分割調剤とは?リフィル処方との違いや算定方法を分かりやすく解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

分割調剤は、薬剤師としての職能を発揮できる業務のひとつです。本記事では、分割調剤を行う3つのケースとそれぞれの算定方法、日数の計算方法、リフィル処方箋との違いを解説するとともに、レセプトコンピューターへの入力方法やメリット・デメリット、分割調剤を行う時のポイントをお伝えします。

1.分割調剤とは?

分割調剤とは、処方箋による調剤を行う場合に、医師の指示などにより、複数回に分けて調剤を行うことです。
 
一度でその処方箋の調剤が終了しないため、分割調剤を行ったら処方箋に以下を記入し、患者さんへ返却します。

 

● 調剤量
● 調剤年月日
● 調剤した薬剤師の氏名
● 分割した理由 など

 

調剤済みとならなかった処方箋は患者さんへ返却することになるため、調剤録と合わせて処方箋のコピーを薬局に保管しておくことになります。
 
最後の分割調剤が終わり、処方箋が調剤済みとなった場合は、患者さんへ返却せず、薬局で保管しなければなりません。

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2.分割調剤を行う3つのケースとそれぞれの算定方法

分割調剤を行うケースには、以下の3つが挙げられます。

 

① 長期保存が困難な薬剤を処方された場合
② ジェネリック医薬品の試用が目的の場合
③ 医師の指示による場合

 

分割調剤は、実施した理由や薬剤によって調剤基本料や薬剤調製料、調剤管理料の算定方法が異なります。詳しく見ていきましょう。

 

2-1.長期保存が困難な薬剤を処方された場合の分割調剤

長期保存が難しい薬剤を分割調剤する場合について見ていきましょう。
 
同一薬局で内服薬84日分の処方箋を受け付け、28日分ずつ分割調剤するケースでは、以下のように算定します。

 

算定項目 初回 2回目 3回目
同一薬局 同一薬局
調剤基本料 通常通り算定 5点 5点
薬剤調製料 24点 0点 0点
調剤管理料 50点 10点
(60点-50点)
0点
(60点-60点)

 

同一薬局で2回目以降の調剤を行う場合は、薬剤調製料は0点、内服薬と湯薬の調剤管理料は以下のように計算します。

 

内服薬と湯薬の調剤管理料=「第1回目の調剤から通算した日数に対応する点数」-「前回までに請求した点数」

 

2回目以降の調剤を他薬局で行う場合は算定点数が異なります。

 

算定項目 初回 2回目 3回目
他薬局A 他薬局A
調剤基本料 通常通り算定 通常通り算定 5点
薬剤調製料 24点 24点 0点
調剤管理料 50点 50点 10点
(60点-50点)

 

なお、浸煎薬や外用薬など「1調剤につき」算定する薬剤の薬剤調製料は、前回までの算定点数を差し引く必要はありません。調剤の都度、所定の点数を算定します。
 
また、自家製剤加算や計量混合調剤加算など、その都度手間が生じるものについては、その都度算定可能です。
 
参考:保険調剤Q&A 令和6年版|じほう
参考:調剤報酬点数表|厚生労働省
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 
🔽 調剤基本料について詳しく解説した記事はこちら


🔽 薬剤調製料について詳しく解説した記事はこちら

🔽 調剤管理料について詳しく解説した記事はこちら

🔽 自家製剤加算・計量混合調剤加算について詳しく解説した記事はこちら

 

2-2.ジェネリック医薬品の試用目的としての分割調剤

続いて、ジェネリック医薬品を試しに使用するために分割調剤する場合について見ていきましょう。
 
内服薬56日分の処方箋を受け付け、28日分ずつ分割調剤するケースでは、以下のように算定します。

 

算定項目 初回 2回目
同一薬局 他薬局A
調剤基本料 通常通り算定 5点 通常通り算定
薬剤調製料 24点 0点 24点
調剤管理料 50点 10点
(60点-50点)
50点

 

ジェネリック医薬品の試用目的の場合も、浸煎薬や外用薬など「1調剤につき」算定する薬剤の薬剤調製料は、調剤の都度、所定の点数を算定します。
 
なお、ジェネリック医薬品の試用目的による2回目の分割調剤においては、調剤管理料、服薬管理指導料、外来服薬支援料2以外の薬学管理料は算定できません。
 
また、1処方箋の2回目以降の分割調剤について「長期保存が困難な薬剤を処方された場合」と「ジェネリック医薬品の試用が目的の場合」を同一日に同一薬局が行う場合は、いずれか一方の点数のみを算定します。
 
参考:調剤報酬点数表|厚生労働省
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 
🔽 服薬管理指導料について詳しく解説した記事はこちら


🔽 外来服薬支援料2について詳しく解説した記事はこちら

 

2-3.医師の指示による分割調剤

医師の指示で行った分割調剤は、分割調剤を実施しなかった場合に算定する点数を分割回数で除した点数(小数点以下第一位を四捨五入)を算定します。
 
ただし、服薬情報等提供料については分割回数で割らずに算定できます。
 
🔽 服薬情報等提供料について詳しく解説した記事はこちら


 
医師の指示による分割調剤を行う場合、いくつか注意点があります。詳しく見ていきましょう。

 

2-3-1.患者さんへの確認事項が決められている

医師の指示による分割調剤を行う場合は、以下について患者さんに説明・確認しなければなりません。

 

● 全ての調剤が完了するまで、同一調剤薬局へ処方箋を持参するべきであること
● 次回以降の来局予定を確認し、来局されない場合は調剤薬局から確認の連絡を行うこと
● 次回以降、別の調剤薬局で調剤を希望する場合、来局予定の調剤薬局へ当薬局から必要な情報を提供すること
● 2回目以降も患者さんの服薬状況や体調変化などについて聞き取りを行い、処方医へ情報提供すること

参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

2-3-2.複数枚の処方箋が交付される

医師の分割指示による処方箋は、分割回数に応じて複数枚の分割調剤用の処方箋が交付されます。合わせて、別紙も交付され、それらすべてを1つの処方箋として扱わなければなりません。
 
そのため、最後の分割調剤が完了するまでは、切り離したり紛失したりすることがないよう注意する必要があります。
 
もし、すべてがそろっていない分割調剤用の処方箋を提出された場合は、処方箋を受け付けることができません。
 
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参考:疑義解釈資料の送付について(その1) 平成30年3月30日|厚生労働省

3.分割調剤の日数の計算方法

調剤報酬点数表に関する事項」において、分割調剤の調剤日数は以下のように定められています。

 

分割調剤を行う場合は、その総量は、当然処方箋に記載された用量を超えてはならず、また、第2回以後の調剤においては使用期間の日数(ただし、処方箋交付の日を含めて4日を超える場合は4日とする。)と用量(日分)に示された日数との和から第1回調剤日から起算して当該調剤日までの日数を差し引いた日分を超えては交付できない。

 

上記の内容は、例えば10日分の処方があった場合、通常、処方箋の期限は4日間であることから、処方箋が交付されてから14日以内(処方日数10日分+処方箋の有効期限4日間)に服用が終了するように調剤をするということを示しています。
 
では、以下のケースについて考えてみましょう。

 

処方箋の交付日 4月3日
処方箋の有効期限 4日間
処方日数 10日分
分割回数 2回

 

上記の場合、4月16日までに処方薬が飲み切れるよう、調剤しなければなりません。

 

4月3日 有効期限4日間
4月4日
4月5日
4月6日
4月7日 処方日数10日分
4月8日
4月9日
4月10日
4月11日
4月12日
4月13日
4月14日
4月15日
4月16日

 

例えば、4月4日に処方箋を受け付けて5日分の分割調剤を行った場合、4月5日から服用開始するものと考えます。
 
そのため、残り5日分を4月16日までに飲み切るためには、2回目の調剤は遅くても4月11日までに受け付ける必要があります。

 

4月3日  
4月4日 受付
4月5日 1回目:5日分
4月6日
4月7日
4月8日
4月9日
4月10日  
4月11日 受付
4月12日 2回目:5日分
4月13日
4月14日
4月15日
4月16日

 

もし、上記のケースで2回目の受付が4月12日以降となった場合、患者さんへ渡せる処方薬は5日分よりも少なくなります。

 

日付 調剤できる日数
4日分 3日分 2日分 1日分 0日分
4月12日 受付        
4月13日   受付      
4月14日     受付    
4月15日       受付  
4月16日         受付

 

分割調剤はやや複雑な仕組みなので、ポイントを押さえながら、適切に対応できるよう理解を深めましょう。

 
🔽 処方箋について詳しく解説した記事はこちら

4.分割調剤とリフィル処方の違い

リフィル処方箋と分割調剤は、どちらも1回の処方で複数回の調剤ができる制度ですが、目的や運用方法が異なります。
 
リフィル処方箋は、医師が「リフィル可」と指定した処方箋を一定期間内に最大3回まで繰り返し使用できる制度です。
 
症状が安定している患者さんが対象となっており、医療機関を受診することなく薬局でいつもの薬が調剤できます。
 
リフィル処方箋は、受診回数を減らせるため、患者さんの負担軽減や医療費削減が期待されています。
 
一方、分割調剤は、1つの処方箋を複数回に分けて調剤することです。長期保存が難しいといった理由やジェネリック医薬品の試用のため、あるいは医師の指示により実施し、服薬状況や安全性を確認しながら薬を服用することができます。
 
このように、分割調剤とリフィル処方箋は目的や運用方法が異なるため、薬剤師はその違いを理解することが大切です。
 
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参考:導入から2年超 使おう! リフィル処方箋|厚生労働省

 
🔽 リフィル処方箋について詳しく解説した記事はこちら

患者さんへの対応から
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5.分割調剤のレセプトコンピューターへの入力方法

分割調剤を行った場合、レセプトコンピューターへの入力は、分割調剤を行った理由によって異なります。主な入力方法は、以下のとおりです。

 

記載欄 分割調剤を行った理由
長期保存困難 ジェネリック
医薬品
医師指示
「受付回数」欄 件数 1 1 2回目以降:1
受付回数 0 0 2回目以降:0
「調剤数量」欄 単位数・総単位数につける記号 「分」または「B」 「試」または「T」 「医」または「D」
「薬剤調製料、調剤管理料」欄
※以下の加算などを含む
● 麻薬・向精神薬・覚醒剤原料・毒薬加算
● 時間外加算
● 休日加算
● 深夜加算
● 時間外加算の特例
● 自家製剤加算
● 計量混合調剤加算
● 予製剤加算
● 無菌製剤処理加算
● 外来服薬支援料2
内服薬・湯薬について
「第1回目の調剤から通算した日数に対応する点数」-「前回までに請求した点数」
0

参考:「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について|厚生労働省

 

医師の指示による分割調剤は、「処方」欄に以下を記載します。

 

● 分割回数
● 当該分割調剤が何回目の分割調剤に相当するか
● 調剤基本料と加算等の名称・点数
● 薬剤調製料と加算の名称及び点数
● 調剤管理料と加算等の名称及び点数
● 薬学管理料と加算の名称及び点数
● 分割調剤技術料

参考:「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について|厚生労働省

 

分割調剤技術料とは、調剤基本料や薬剤調製料、薬学管理料などを合算した点数を分割指示回数で除し、小数点以下第一位を四捨五入した点数のことです。

 

5-1.長期保存が困難な場合による分割調剤の入力例

【処方例】

A錠 1錠 1日1回朝食後 28日分(14日分ずつ分割調剤)

 
【入力例】

処方日 調剤日 処方 調剤数量 薬剤調製料
調剤管理料
10.1
 
10.1
10.1
 
10.15
【内服】
A錠1錠
B14
 
B14
24
28
0
22

参考:レセプト電算処理システム 電子レセプトの作成手引き|令和6年9月版 編集 社会保険診療報酬支払基金

 

5-2.ジェネリック医薬品の試用による分割調剤の入力例

【処方例】

A錠 1錠 1日1回朝食後 28日分(7日分を試用)

 
【入力例】

処方日 調剤日 処方 調剤数量 薬剤調製料
調剤管理料
10.1 10.1 【内服】
A錠1錠
T7 24
4
10.1 10.8 【内服】
A錠1錠
T21 0
46

参考:レセプト電算処理システム 電子レセプトの作成手引き|令和6年9月版 編集 社会保険診療報酬支払基金

 

5-3.医師の指示による分割調剤の入力例

【処方例】

A錠 1錠 1日1回朝食後 28日分(14日分ずつ分割調剤)

 
【入力例】

処方日 調剤日 処方 調剤数量 薬剤調製料
調剤管理料
10.1
 
10.1
 
10.1
 
10.15
 
【内服】
A錠1錠
 
 
14
D28
14
D28
0
0
0
0
10.1
 
 
 
 
 
 
10.1
10.1
 
 
 
 
 
 
10.15
【保険】
分割回数:2回 1回目
No1:24点
   50点
基本A:○○点
薬B:○○点 
分割調剤技術料:○○点
【保険】
分割回数:2回 2回目
No1:24点
   50点
基本A:○○点
薬B:○○点 
分割調剤技術料:○○点
   

参考:レセプト電算処理システム 電子レセプトの作成手引き|令和6年9月版 編集 社会保険診療報酬支払基金

6.分割調剤のメリット

複雑な仕組みを持つ分割調剤ですが、そのメリットはどんな点にあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

 

6-1.医療費の削減

患者さんの飲み忘れによって服用期間が延び、次回来局日が予定より先送りとなることもあるでしょう。
 
分割調剤は服用終了日が決まっているため、服用終了日以降の分は調剤されません。つまり、飲み忘れた分は調剤しないため、結果として残薬の削減につながります。
 
また、処方日数が長い処方箋を分割調剤する場合、医療費削減の面でリフィル処方箋とほぼ同等の効果が期待できます。
 
さらに、ジェネリック医薬品の使用に抵抗がある患者さんも、気軽に試用できるため、患者さんの経済的な負担軽減や医療費の削減が望めるでしょう。

 

6-2.ポリファーマシーの予防

分割調剤は、ポリファーマシーの予防にも役立ちます。ポリファーマシーとは、多種類の薬剤が処方されることによって、患者さんに何らかの悪い影響を与える可能性がある状態をいいます。
 
分割調剤を活用すると、薬剤師が定期的に患者さんの服薬状況を医師へ報告する機会が増えます。
 
また、服薬確認をこまめに確認することで、副作用を早期に発見できる可能性が高くなり、不要な薬の削減や処方変更がしやすくなるため、結果としてポリファーマシーの予防につながります。

 
🔽 ポリファーマシーについて詳しく解説した記事はこちら

 

6-3.患者さんの健康状態の把握

より丁寧な服薬サポートが可能になることも、分割調剤のメリットです。例えば、ジェネリック医薬品の試用による体調の変化を確認したり、薬剤の保管に関する相談を受けたりできることが挙げられます。
 
コンプライアンスや服薬アドヒアランスなどについて、より詳細な情報を聞き取ることで、患者さんの健康状態を把握しやすくなります。
 
状況に応じた服薬指導や医師との連携が可能になり、より手厚いサポートができるでしょう。

 
🔽 アドヒアランスについて詳しく解説した記事はこちら

7.分割調剤のデメリット

分割調剤のデメリットとしては、やや複雑な仕組みとなっているにもかかわらず、加算などが設定されていない点が挙げられるでしょう。
 
分割調剤は通常より調剤回数が多くなることに加え、処方日数や調剤点数の計算、来局日の管理など、業務量が増えます。
 
例えば、患者さんが予定日に来局しない場合は連絡して来局を促したり、他薬局への来局を希望した場合は変更先へ情報提供したりするといったフォローが必要です。そのため、労力に対しての報酬が十分でないと感じることがあるかもしれません。

8.分割調剤を行う上でのポイント

「長期保存が困難な薬剤」や「ジェネリック医薬品の試用」での分割調剤は目的が明確ですが、医師の指示による分割調剤の場合、目的が明確に把握できるとは限りません。薬剤師はなぜ医師が分割調剤を指示したのかを考えながら、服薬指導を行う必要があるでしょう。
 
薬剤管理が複雑だったり、コンプライアンスが悪かったりと、分割調剤を行う理由はさまざまです。
 
うまく患者さんから聞き取りを行うことが求められるほか、場合によっては医師への確認が必要になるかもしれません。医師の意図を把握して服薬指導を行うよう意識することが大切です。

9.分割調剤を行う意義を理解しよう

分割調剤は、ポリファーマシーの予防や医療費の削減、丁寧な服薬管理につながります。やや複雑ではありますが、薬剤師の職能が発揮できる領域といえるでしょう。
 
患者さんの状況に合わせて分割調剤を提案することで、最適な服薬サポートが行えます。服薬アドヒアランスの向上のための手段として利用するとよいでしょう。

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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。