薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.06.18 薬剤師のスキルアップ

一般名処方加算とは?2024年度改定後の施設基準や算定要件を分かりやすく解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

一般名処方加算は2024年度診療報酬改定で、点数や施設基準が見直されました。本記事では、一般名処方加算1と2の違いや2024年度改定における変更点、算定要件・点数、施設基準について分かりやすく解説するとともに、算定できないケース、算定時の注意点についてもお伝えします。

1.一般名処方加算とは?

一般名処方加算とは、医科診療報酬の処方箋料に設けられている加算です。処方箋に薬剤の一般名を記載した場合に算定できます。一般名処方加算を算定するためには、厚生労働省が定める施設基準を満たさなければなりません。

 

1-1.一般名処方加算1と2の違い

一般名処方加算には、一般名処方加算1・2の2区分があります。一般名で処方する薬剤数によって算定する区分が異なります。一般名処方加算1の方が2よりも要件が厳しいため、点数も高くなっています。

 

1-2.一般名処方加算が設けられた背景

一般名処方加算は、もともとは後発医薬品の利用促進における薬局の業務・在庫負担の軽減を目的として2012年度の診療報酬改定で新設されました。
 
現在は、医薬品によって供給状況が不安定になるケースがあるため、一般名処方とすることで安定的に薬物治療を継続できます。また、医療費の削減効果も期待されています。
 
参考:平成24年度調剤報酬改定及び薬剤関連の診療報酬改定の概要|厚生労働省
参考:平成24年度診療報酬改定の概要|厚生労働省

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2.一般名処方加算の2024年度診療報酬改定における変更点

2024年度の診療報酬改定では、一般名処方加算の点数が以下のように見直されました。

 

区分 改定前の点数 改定後の点数
一般名処方加算1 7点 10点
一般名処方加算2 5点 8点

 

また、医薬品の供給不足に対応できる体制整備と、一般名処方の趣旨についての患者さんへの説明・院内掲示に関する要件として、以下の施設基準が設けられました。

 

医薬品の供給状況等を踏まえつつ、一般名処方の趣旨を患者に十分に説明することについて、当該保険医療機関の見やすい場所に掲示していること。

 

参考:令和6年度診療報酬改定の概要【個別改定事項(Ⅱ)】|厚生労働省

3.一般名処方加算1・2の算定要件と点数

一般名処方加算1・2の主な算定要件と点数は、以下のとおりです。

 

  一般名処方加算1 一般名処方加算2
点数 10点 8点
加算頻度 処方箋交付1回につき
対象医薬品 処方箋に記載する医薬品の中で、後発医薬品が存在するすべての医薬品が一般名処方されている場合 1品目でも一般名処方が含まれている場合
品目数 2品目以上 1品目

参考:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参考:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

品目数については、一般名で計算します。ただし、投与経路が異なる場合は、同じ一般名であっても別品目とします。

 

3-1.一般名処方とは?

一般名処方とは、医師が先発医薬品・後発医薬品といった個別銘柄にこだわらず処方しているもののことです。一般名処方によって、患者さんや調剤薬局は、同じ薬効成分であれば、先発医薬品・後発医薬品を問わず、自由に選択することができます。
 
代替品を柔軟に選択できるため、医薬品が不足している状況でも薬物治療を継続しやすいというメリットがあります。
 
参考:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

3-2.一般名処方の標準的な記載方法

一般名処方の標準的な記載方法は以下のとおりです。
 
【般】+「一般的名称」+「剤形」+「含量」
 
「一般的名称」とは、添付文書に記載されている有効成分の一般的名称を基本としますが、一部簡略したものも使用されます。例えば、以下のようなものが該当します。

 

一般的名称 一部簡略化
アトルバスタチンカルシウム水和物 アトルバスタチン
ジクロフェナクナトリウム ジクロフェナクNa

参考:処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載(一般名処方マスタ)について(令和7年6月13日適用)|厚生労働省

 

上記の一般的名称または一部簡略化した一般的名称のあとに、剤形と含量を記載します。なお、厚生労働省のホームページでは、一般名処方マスタを公表しています。一般名処方加算を算定する場合は、一般名処方マスタで対象となる薬剤や規格を確認するようにしましょう。

 

3-3.一般名処方加算における先発医薬品とは?

一般名処方加算は、後発医薬品のある先発医薬品を一般名処方した場合に算定できます。ここでの先発医薬品とは、1967年(昭和42年)以降に承認・薬価収載された新薬を基本としています。1967年(昭和42年)以前の新薬については、価格差のある後発医薬品があるものは「先発医薬品に準じたもの」と判断できるため、一般名処方加算を算定できます。
 
ただし、この場合においても、一般名処方マスタで加算対象となるかを確認しておきましょう。
 
参考:処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載(一般名処方マスタ)について(令和7年6月13日適用)|厚生労働省
参考:疑義解釈資料の送付について(その7)|厚生労働省

4.一般名処方加算1・2の施設基準

一般名処方加算に関する施設基準は、以下のとおりです。

 

● 一般名処方の趣旨を患者さんに十分に説明することについて、医療機関の見やすい場所に掲示していること。
● 上記の説明については、医薬品の供給状況や、長期収載品の選定療養などを踏まえて行うこと。
● 原則として、ウェブサイトに掲載していること。ただし、自ら管理するホームページなどを有しない場合については、この限りではない。

 

長期収載品の選定療養とは、医療上の必要性がないにも関わらず患者さんの希望で長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)を処方した場合に、追加で費用がかかる制度のことです。

 
🔽 長期収載品の選定療養について詳しく解説した記事はこちら

 

ウェブサイトへの掲載に関しては、2025年5月31日までの間に限り該当するものとみなすという経過措置が設けられていました。
 
なお、一般名処方加算の施設基準については、基準を満たしていればよく、地方厚生(支)局長に対して届出を行う必要はありません。
 
参考:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(通知)|厚生労働省

5.一般名処方加算を算定できないケース

一般名処方加算が算定できないケースについて見ていきましょう。

 

5-1.後発医薬品が存在しない医薬品を一般名で処方した場合

一般名処方加算の算定要件は、後発医薬品が存在する先発医薬品や先発医薬品に準じたものについて、一般名処方することです。
 
そのため、後発医薬品が存在しない医薬品や漢方などを一般的名称で処方しても、一般名処方加算は算定できません。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その1)|厚生労働省

 

5-2.先発医薬品と後発医薬品で価格差がないものを処方した場合

医薬品は、定期的な薬価改定が行われるため、先発医薬品と後発医薬品の価格差が徐々に狭まってきます。そのため、医薬品によっては、先発医薬品と後発医薬品が同額の薬価である場合もあります。
 
1967年(昭和42年)以前に承認・薬価収載された医薬品のうち、価格差のある後発医薬品がある場合には、「先発医薬品に準じたもの」とみなせるため、一般名処方加算の対象となりますが、価格差がないものについては一般名処方加算の対象外となります。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その7)|厚生労働省

 

5-3.一般名処方マスタに未掲載の医薬品の場合

一般名処方加算の対象となる医薬品は、厚生労働省が公表する一般名処方マスタに掲載されている医薬品に限られます
 
そのため、一般名処方マスタに未掲載の医薬品については、一般名処方加算は算定できません。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その7)|厚生労働省
参考:処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載(一般名処方マスタ)について(令和7年6月13日適用)|厚生労働省

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6.一般名処方加算を算定する際の注意点

一般名処方加算に関する疑義解釈をもとに、算定時の注意点についてお伝えします。

 

6-1.医薬品銘柄を一般的名称と共に記載する場合

医薬品の取り違えを防ぐ目的で、一般的名称に先発医薬品または後発医薬品の銘柄を併記する場合には、一般名処方加算の算定が可能です。
 
ただし、個別銘柄の指定と誤解されないよう、備考欄に参考情報であることを記載するのが望ましいとされています。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その11)|厚生労働省
 
一般名処方に限らず、医薬品の調剤では類似した名称の医薬品と取り違えをする可能性があります。例えば、以下のような例が報告されています。

 

【般】クロルマジノン酢酸エステル錠25mg 【般】クロルプロマジン塩酸塩錠25mg
【般】カンデサルタン錠2mg カルデナリン錠2mg
【般】沈降炭酸カルシウム錠 250mg/500mg(高リン血症用) 【般】沈降炭酸カルシウム錠 250mg/500mg(制酸剤)

参考:薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 共有すべき事例 2024年No11|日本医療機能評価機構|医薬品医療機器総合機構
参考:薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 共有すべき事例 2022年No7|日本医療機能評価機構|医薬品医療機器総合機構
 
上記のような類似名称の取違いを防ぐ目的で、一般的名称と医薬品銘柄を共に記載することが可能です。

 

6-2.先発医薬品のない後発医薬品を処方する場合

一般名処方加算1を算定する場合は、先発医薬品のない後発医薬品であっても、一般的名称で記載する必要があります。
 
つまり、一般名処方加算1を算定するためには、先発医薬品しかないもの以外のすべての医薬品を一般的名称で記載しなければなりません。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その4)|厚生労働省

 

6-3.配合剤等を一般名処方する場合

配合剤等の一般名処方は、標準的な記載方法である一般名処方マスタを用いることが望ましいとされています。
 
配合剤については、原則として、有効成分の「一般的名称」を「・」で接続し、含量は記載しません。ただし、同一有効成分で含量が異なる医薬品が複数ある場合は、区別するために含量を記載します。
 
また、有効成分と剤形が同じで、効能・効果、用法用量などが異なる医薬品が存在する場合は、括弧書きなどで区別を行います。詳しくは一般名処方マスタを確認しましょう。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その7)|厚生労働省
参考:処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載(一般名処方マスタ)について(令和7年6月13日適用)|厚生労働省

7.一般名処方加算の算定要件や施設基準などを理解しよう

一般名処方加算を算定するのであれば、要件や施設基準を把握しておくことが大切です。また、算定できないケースや算定時の注意点、対象医薬品などについても押さえておく必要があります。算定する場合には疑義解釈や一般名処方マスタを確認し、算定ミスのないようにしましょう。

 
🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。