薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.06.26 薬剤師のスキルアップ

特定疾患処方管理加算とは?2024年度改定後の算定要件や対象疾患について解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

特定疾患処方管理加算は、プライマリ機能を担う地域のかかりつけ医師が、特定疾患を主病とする患者さんに対して総合的に病態分析を行い、それに基づく処方管理を行うことを評価した加算です。2024年度診療報酬改定で、点数や算定要件、対象疾患が見直されました。本記事では、特定疾患処方管理加算の概要と算定要件・点数、2024年度診療報酬改定での変更点や対象疾患について解説するとともに、特定疾患処方管理加算が見直された背景についてもお伝えします。

1.一般名処方加算とは?

特定疾患処方管理加算とは、診療所または許可病床数が200床未満の病院において、入院中の患者さん以外の患者さん(厚生労働大臣が別に定める疾患を主病とする患者)に対して、薬剤を28日以上処方した場合に算定できる加算です。
 
プライマリ機能を担う地域のかかりつけ医師が、対象となる患者さんに対して総合的に病態分析を行い、それに基づく処方管理を行うことを評価しています。
 
参考:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参考:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

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2.特定疾患処方管理加算の2024年度診療報酬改定における変更点

特定疾患処方管理加算の2024年度診療報酬改定における主な変更点は、以下のとおりです。

 

  改定前 改定後
対象疾患 ● 糖尿病
● 高血圧性疾患
【削除】
リポ蛋白代謝障害及びその他の脂(質)血症 リポ蛋白代謝障害及びその他の脂(質)血症(家族性高コレステロール血症等の遺伝性疾患に限る。
【追加】
● アナフィラキシー
● ギラン・バレー症候群
区分 ● 特定疾患処方管理加算1
● 特定疾患処方管理加算2
区分なし
(特定疾患処方管理加算1を廃止)
点数 18点(特定疾患処方管理加算1) 【廃止】
66点(特定疾患処方管理加算2) 56点
算定要件 【追加】
リフィル処方箋の処方期間が、複数回の使用によって合計28日以上となる場合も算定可能とする。

参考:個別改定項目について|厚生労働省
参考:令和6年度診療報酬改定の概要【外来】|厚生労働省

 

2024年度診療報酬改定では、リフィル処方箋による処方や長期処方の活用、医療DXを活用して医薬品情報の管理を効率的かつ適切に推進する観点から、特定疾患処方管理加算が見直されました。

3.特定疾患処方管理加算の算定要件・点数

特定疾患処方管理加算の算定要件と点数は、以下のとおりです。

 

  算定要件・点数
点数 56点
対象医療機関 ● 診療所
● 病床数200床未満の病院
対象患者 入院中の患者さん以外の患者さん(厚生労働大臣が別に定める疾患を主病とするものに限る)
算定タイミング ● 「F100」処方料または「F400」処方箋料を算定した場合に、月1回に限り算定可能
● 初診料を算定した初診の日においても算定可能
● 投薬は本来直接本人を診察した上で適切な薬剤を投与すべきであるが、やむを得ない事情で看護等に当たっている者から症状を聞いて薬剤を投与した場合においても算定可能
処方期間 ● 特定疾患に対する薬剤の処方期間が28日以上の場合(処方された薬剤の処方期間が全て28日以上である必要はない)
● リフィル処方箋の交付においては、複数回の使用による合計の処方期間が28日以上の処方である場合も算定可能
主病の判断基準 ● 患者さんの全身的な医学管理の中心となっている特定疾患
● 2つ以上の診療科を受診している場合は、主病と認められる特定疾患の治療に当たっている診療科においてのみ算定する

参考:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

なお、特定疾患処方管理加算は、生活習慣病管理料を算定した月に同一の患者さんに対して算定することはできません。その理由は、特定疾患処方管理加算は、特定疾患療養管理料と同じ特定疾患について処方箋を交付した場合に算定でき、特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料は併算定ができないためです。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その11)|厚生労働省

 
🔽 生活習慣病管理料について解説した記事はこちら

4.特定疾患処方管理加算の対象疾患

特定疾患処方管理加算の対象疾患は、特定疾患療養管理料と共通しており、以下のとおりです。

 

1. 結核
2. 悪性新生物
3. 甲状腺障害
4. 処置後甲状腺機能低下症
5. スフィンゴリピド代謝障害及びその他の脂質蓄積障害
6. ムコ脂質症
7. リポ蛋白代謝障害及びその他の脂(質)血症(家族性高コレステロール血症等の遺伝性疾患に限る。)
8. リポジストロフィー
9. ローノア・ベンソード腺脂肪腫症
10. 虚血性心疾患
11. 不整脈
12. 心不全
13. 脳血管疾患
14. 一過性脳虚血発作及び関連症候群
15. 単純性慢性気管支炎及び粘液膿性慢性気管支炎
16. 詳細不明の慢性気管支炎
17. その他の慢性閉塞性肺疾患
18. 肺気腫
19. 喘息
20. 喘息発作重積状態
21. 気管支拡張症
22. 胃潰瘍
23. 十二指腸潰瘍
24. 胃炎及び十二指腸炎
25. 肝疾患(経過が慢性なものに限る。)
26. 慢性ウイルス肝炎
27. アルコール性慢性膵炎
28. その他の慢性膵炎
29. 思春期早発症
30. 性染色体異常
31. アナフィラキシー
32. ギラン・バレー症候群

参考:特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件|厚生労働省

 

2024年度の診療報酬改定で、特定疾患処方管理加算の対象疾患の見直しが行われました。生活習慣病関連の疾患が除外され、アナフィラキシーやギラン・バレー症候群が追加されており、全32疾患が指定されています。
 
参考:令和6年度診療報酬改定の概要【外来】|厚生労働省

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5.特定疾患処方管理加算が見直された背景

特定疾患処方管理加算が見直された背景には、特定疾患療養管理料のあり方について中央社会保険医療協議会で協議されたことが挙げられます。
 
特定疾患処方管理加算と特定疾患療養管理料は対象疾患が共通しており、特定疾患療養管理料の見直しに合わせて、特定疾患処方管理加算も見直されています。

 

5-1.特定疾患療養管理料とは?

特定疾患療養管理料とは、対象疾患を主病とする患者さんについて、プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が、計画的に療養上の管理を行うことを評価するものです。
 
特定疾患療養管理料の先駆けは、1954年(昭和33年)の診療報酬改定で新設された慢性疾患指導料です。もともとは慢性疾患の患者さんを指導することを評価したものでしたが、要件の変更や拡充などによって一部趣旨に合わない疾患が含まれるようになりました。
 
また、地域のかかりつけ医によるプライマリケア機能の重要性が高まってきたこともあり、現在の特定疾患療養管理料へと改定されています。
 
参考:外来(その3)|厚生労働省
 
従来は生活習慣病等も対象疾患でしたが、2024年度の診療報酬改定により除外されました。

 

5-2.特定疾患療養管理料の算定状況

生活習慣病の外来診療において、特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料の算定回数(NDBデータ令和4年5月診療分)は、以下のとおりです。

 

主傷病名 特定疾患療養管理料 生活習慣病管理料
高血圧 745万9,040回 12万6,738回
糖尿病 209万2,986回 4万4,173回
脂質異常症 210万2,975回 3万2,249回

参考:外来(その3)|厚生労働省

 

上記のデータから、特定疾患療養管理料の方が生活習慣病管理料より、圧倒的に算定回数が多かったことが分かります。
 
また、特定疾患療養管理料の算定回数については、3カ月間に3回算定されている患者さんが最も多く、3カ月間で4回以上算定している患者さんは12.1%でした。
 
厚生労働省の資料「外来(その3)」では、特定疾患療養管理料の全算定件数に占める主な傷病名と割合についても公表されています。

 

傷病名 割合
高血圧 57.7%
糖尿病 16.2%
脂質異常症 23.9%
心不全 2.3%

 

5-3.特定疾患から生活習慣病が除外された理由

特定疾患から生活習慣病が除外された理由には、前述のデータより、生活習慣病の管理をした場合に、生活習慣病管理料よりも特定疾患療養管理料が算定される傾向にあったことが挙げられるでしょう。
 
生活習慣病の治療には計画的な療養指導が必要なため、生活習慣病管理料には詳細な療養計画書の作成と計画書を用いて患者さんへ説明することが求められています。しかし、特定疾患療養管理料には、療養計画書の作成等は要件に含まれていません。
 
2024年度の診療報酬改定では、療養計画書への同意や診療ガイドラインを参考にすることを要件とした出来高算定による生活習慣病管理料(II)が新設されました。計画的・継続的な生活習慣病の管理を実施した場合の評価は、生活習慣病管理料で行うことが医療の質の向上につながることから、特定疾患から生活習慣病が除外されたといえます。

 

5-4.今後求められる「かかりつけ医機能」と「プライマリケア機能」

同じく「外来(その3)」によると、特定疾患療養管理料を算定している施設の30.2%は時間外対応加算を届け出ておらず、44.2%は在宅療養支援病院・診療所の届出をしていません。かかりつけ医機能や介護・障害福祉サービスとの連携などについても、特定疾患療養管理料を算定していない施設と比較して大きな差がありませんでした。
 
今後の医療機関には、これまで以上にかかりつけ医機能やプライマリケア機能を充実させることが求められるでしょう。計画的に患者さんの療養管理を実施して、より質の高い疾病管理を行うことが期待されています。

6.特定疾患処方管理加算の算定要件を理解しよう

特定疾患処方管理加算を算定する医療機関には、地域のかかりつけ医機能やプライマリケア機能の充実が求められます。2024年度診療報酬改定では、対象疾患が見直され、リフィル処方箋・長期処方の活用を推進していく改定となりました。特定疾患処方管理加算の改定点や改定された意図を理解して、質の高い医療に貢献することが期待されます。

 
🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。