医療

【岩手医大・松浦特任教授ら】チャットGPT、副作用見逃す~高血圧薬情報の大半不一致

薬+読 編集部からのコメント

チャットGPTが生成した高血圧治療薬30品目の一般的な副作用情報を、米国の医薬品情報データベース「レキシコンプ」に搭載されている情報と比較したところ、正確に一致した品目はわずか2品目(6.7%)だったという研究結果が公表されました。生成AIの薬剤師業務への活用については、今後より一層の検討が必要になりそうです。

 薬剤師による検証必要

米国の医薬品情報データベース「レキシコンプ」に搭載されている米国食品医薬品局(FDA)承認の高血圧治療薬30品目の副作用情報について、生成AIのチャットGPTにより生成された内容と比較したところ、全て一致した品目はわずか2品目(6.7%)にとどまったことが、岩手医科大学薬学部臨床薬学講座地域医療薬学分野の松浦誠特任教授(写真)らの研究で明らかになった。生命に直結する医薬品情報は100%の正確性が求められるが、チャットGPTはほとんどの副作用情報を見逃しており、現時点でチャットGPTは薬剤師業務を代替できないと考えられた。今後、生成AIをどのように薬剤師業務に活用できるか一層の検討が求められそうだ。

オープンAIが開発したチャットGPTは、様々な場面での活用が爆発的に広がっているが、医薬品情報をめぐってはチャットGPTが生成した情報の正確性が検証されずに、不適切な使用につながる恐れもあると懸念されている。

 

そこで、松浦氏らは、一般の人がアクセスする可能性が高い領域として、高血圧治療薬の副作用に着目。レキシコンプに搭載されている高血圧治療薬30品目の一般的な副作用情報について、チャットGPTにより生成された情報と比較し、正確性を検討した。

 

昨年4月11日から6月13日にかけて、毎日10時半と13時の2回、選択した高血圧治療薬30品目についてチャットGPTに「各薬剤で最も一般的な副作用は何か」と質問し、レキシコンプのデータベース情報と比較した。レキシコンプの副作用と全て一致するチャットGPTの生成内容を「正確」、半分以上一致するものを「部分的正確」、半分未満しか一致しなかったものは「不正確」と判定した。

 

その結果、チャットGPTが正確に副作用を回答した品目はアジルサルタン、スピロノラクトンの2品目のみにとどまり、半分以上一致していた品目もアムロジピン(64%)、アリスキレン(50%)の2品目に過ぎなかった。チャットGPTは、26品目とほとんどの品目でレキシコンプと一致しない不正確な情報を生成しており、大半の副作用を見逃していたことが明らかになった。これは、機械学習に使用するデータの違いが原因と考えられた。

 

今回の検証を踏まえ、松浦氏は「チャットGPTはまだ未成熟で、生成した副作用情報が正しいとは言えない。医薬品情報は100%の正確性が求められるため、しっかり薬剤師がチェックしなければならない。患者や一般の人は専門家である薬剤師に相談する必要がある」と話す。

 

一方で、「いつまでもチャットGPTを使わないのではなく、薬剤師が正しい医薬品情報をチャットGPTに学習させて精度を高めることにより、薬剤師業務に活用できる可能性が高い。生成AIというテクノロジーをどのように活用できるか考えていくべきだ」と主張する。

 

チャットGPTが生成する回答は、その時点での指示や質問の入力内容や方法、会話の文脈、学習された言語データのパターンなどによって異なり、情報を捏造するリスクもある。日進月歩で進化するため、研究の再現性を得られる可能性が低いとの弱点もある。

 

しかし、昨年の研究時点からチャットGPTはさらに賢くなっており、「私は医療の専門家ではないので、回答することはできない」との回答を生成するようになってきたという。

 

現在、松浦氏らは、日本における医療用医薬品、一般用医薬品などについても同様の結果が得られるか研究を進めており、今後も薬剤師業務の改善にチャットGPTを役立てることができるか検証を続けていく考えだ。

🔽 チャットGPTの薬剤師業務への活用方法について解説した記事はこちら

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出典:薬事日報

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