【厚労省 村上専門官】偽造薬、SNSの監視強化 ~ GLP-1不正流通に警鐘
厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課の村上明男偽造医薬品等監視専門官は8月28日、オンラインで開かれた第14回医薬品セキュリティ研究会主催のフォーラムで講演し、偽造医薬品・不正医薬品をめぐる最近の動向などに言及。SNSやフリマサイトを介した個人間取引の拡大を踏まえ、監視・取り締まりと啓発活動の両輪による対策強化の重要性を強調した。村上氏は、有効成分が含まれない製品や異なる成分が混入した偽造医薬品が流通することで「治療効果の低下だけでなく重大な健康被害や死亡につながる恐れがある」と指摘した。
村上氏は、世界的に偽造医薬品が抗菌薬や抗マラリア薬に加え、抗癌剤や免疫抑制剤、高額バイオ医薬品へと広がっていることを紹介した。国内では2017年の「ハーボニー配合錠」の偽造品流通事案以降、正規流通網での偽造医薬品は確認されていないが、個人輸入やインターネット経由の流入リスクは継続している。近年はSNSやフリマサイトを利用した医薬品の個人間売買が広がり、医薬品医療機器等法違反として摘発された事例も発生している。
厚労省は13年に開設した「あやしいヤクブツ連絡ネット」を活用し、偽造医薬品に関する情報提供や相談対応を行っているが、今年度からSNSもインターネットパトロールの監視対象に加え、違法販売の監視を強化しているとした。
また、GLP-1やGIP/GLP-1受容体作動薬をめぐる不正流通の問題にも言及。体重減少効果など適応外使用が拡大する中、「マンジャロ」の無許可販売・保管で関係者が書類送検された事案を示し、「正規流通経路を経ない製品は品質や保管状態が保証されず、健康被害につながる可能性がある」と警鐘を鳴らすと共に、国民の健康被害を未然に防止するため行政、事業者、医療関係者、消費者が連携した対策の必要性を訴えた。
一方、日本イーライリリー信頼性保証部の水本聡太統括部長は、GLP-1およびGIP/GLP-1受容体作動薬の需要拡大を背景に偽造品問題が世界規模で深刻化しており「企業単独では解決できない課題」と強調した。
GLP-1関連製剤の偽造品は既に60カ国以上で確認されており、世界的な需要増加や供給不足、国・地域間の価格差などを背景に不正流通が拡大し、近年はSNS上の投稿から違法販売サイトへ誘導するケースも増加しているという。
偽造品調査では、有効成分が全く含まれない事例のほか、異なる有効成分や未承認添加物、不純物が検出された事例も確認され、また有効成分を含有していても含量が表示と一致しない事例もあることから、「安全性、有効性の両面から重大な公衆衛生リスクになっている」と説明した。
水本氏は、国内でチルゼパチド製剤の偽造品は確認されていないものの、美容クリニックが海外から個人輸入した製品が同社製品に類似した名称で販売されていた事例を報告。同社の分析によると、チルゼパチド自体は検出されたが、正規製造工程では認められない副産物や添加剤が確認されたという。
同社は、偽造医薬品対策として▽検知▽分析▽評価▽連携▽予防――の5段階フレームワークを運用し、市場モニタリングや苦情情報から疑義案件を把握すると共に、必要に応じて試買調査を実施。
分析結果を踏まえ、厚労省や都道府県薬務課、警察、税関などの関係機関と協力しながら対策を進めているという。
過去にはED治療薬「シアリス」の偽造品対策で行政機関や他社と連携し、情報提供や啓発活動、法的措置を展開してきた例も紹介し、SNSを起点とする不正販売の拡大とAI技術の進歩による偽造品の高度化を今後の課題に挙げた。その上で、「製品の真正性をその場で確認できる仕組みが重要になる」とし、デジタルトレーサビリティの活用拡大に期待を示した。
出典:薬事日報


薬+読 編集部からのコメント
厚労省医薬局監視指導・麻薬対策課の村上偽造医薬品等監視専門が偽造医薬品・不正医薬品をめぐる最近の動向などに言及。SNSやフリマサイトを介した個人間取引の拡大を踏まえ、監視・取り締まりと啓発活動の両輪による対策強化の重要性を強調しました。