薬剤師国家試験は薬剤師なら誰もが必ず通った道。毎年、試験の難易度や合格率が話題になりますが、国試は“現役薬剤師”として基本的な知識を再確認するチャンス。橋村先生の解説で、国家試験の過去問を「おさらい」しましょう!
いよいよ薬剤師国家試験ですね。薬学生にとっては追い込み。すでに薬剤師として活躍しているみなさんにとっては、過去問を振り返ることで、薬や治療の基礎知識を再確認できます。今回は、ここでご紹介した薬剤師国家試験の過去問から、花粉、感冒、インフルエンザ…今の季節にぴったりの問題3つをピックアップしてみました。
◆Pick up1
花粉症シーズン到来。Ⅰ型アレルギーについての出題
今年は大量飛散の恐れがある花粉ですが、第101回薬剤師国家試験では、Ⅰ型アレルギーにまつわる問題が出題されました。
【過去問題】
問 120(物理・化学・生物)
Ⅰ型アレルギーに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1Ⅰ型アレルギーの原因となる IgEは、主としてヘルパーT細胞により産生される。
- 2Ⅰ型アレルギーでは、ヒスタミンがB細胞内の顆粒から放出される。
- 3アレルゲンに対して産生された IgEは、肥満細胞上の特異的受容体と結合する。
- 4ウルシによる接触性皮膚炎は、Ⅰ型アレルギーに分類される。
- 5花粉、ダニ、ハウスダストなどが抗原となって IgEが産生され、感作された状態では、同じ抗原が再度侵入した時にⅠ型アレルギーの症状があらわれる。
解説
- 1:IgEは、他の抗体と同じくB細胞が分化した形質細胞により産生し、分泌されたIgEは血清中γグロブリン画分に存在します。ヘルパーT細胞は抗体産生細胞ではありません。
- 2:Ⅰ型アレルギーとは、マスト細胞(肥満細胞)や好塩基球からヒスタミンが放出されることで発現します。なお、ヒスタミンは肥満細胞および好塩基球の顆粒の中に保持されていますが、B 細胞内の顆粒ではありません。
- 4:接触性皮膚炎はⅣ型アレルギー反応です。原因物質が表皮を透過し、それらがタンパク質と結合し皮膚のランゲルハンス細胞に取り込まれ、その刺激によりヘルパーT細胞から放出されたサイトカインが、マクロファージやキラーT細胞を活性化して起こる細胞障害です。
◆Pick up2
感冒症状、花粉症…漢方薬の投薬で気を付けることは?
漢方薬には「副作用がない」という思い込みにより、併用されてしまうケースが多くあります。第101回の問題は、生薬の副作用について取り上げられました。
【過去問題】
35歳女性。体重 45kg。昨夜より 40℃の発熱が続いたため、医療機関を受診した。発汗はなく、全身の関節がひどく痛かった。下記表の生薬を含む漢方エキス細粒が処方された。なお、処方量は常用量である。
生薬名 | 1日量 |
---|---|
マオウ | 5.0 g |
キョウニン | 5.0 g |
ケイヒ | 4.0 g |
カンゾウ | 1.5 g |
問 214(実務)
この漢方処方について、薬剤師が留意すべき点として誤っているのはどれか。1つ選べ。
- 1浮腫が出現することがある。
- 2動悸を起こすことがある。
- 3発汗を促すため、水分補給が必要である。
- 4高カリウム血症を起こすことがある。
- 5甲状腺機能亢進症の患者には、慎重に投与する必要がある。
解説
1:「浮腫」はカンゾウの代表的な副作用症状です。
2・3・5:「動悸」「発汗」はマオウの代表的な副作用症状であり、激しい動悸は甲状腺機能亢進患者の状態を悪化させる可能性があります。
4:下記解説に示すように、高カリウム血症ではなく低カリウム血症を引き起こす可能性があります。
◆Pick up3
今年猛威を振るったインフルエンザの病態・治療について
第102回の薬剤師国家試験には、インフルエンザに関する問題が出題されました。
もう一度、基礎からインフルエンザを見直してみませんか?
【過去問題】
問 186(病態・薬物治療)
インフルエンザの病態、診断及び治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1インフルエンザウイルスは、A、B、Cの3つの型に分類され、いずれもヒトに感染して典型的なインフルエンザ症状を発症させる。
- 2インフルエンザによる死亡率が最も高い年代は、15歳以下の子供である。
- 3迅速診断には、鼻腔・咽頭ぬぐい液を用いた酵素免疫測定法が用いられる。
- 4インフルエンザを発症した小児の解熱には、アセトアミノフェンは推奨されない。
- 5慢性呼吸器疾患などのハイリスク患者にはオセルタミビルの予防内服が認められている。
解説
- 1:誤
インフルエンザの分類:A、B、Cの3種類
ヒトへの感染:3種類ともあり
典型的なインフルエンザ症状の発症(急激な発熱、関節痛など):A、B ※Cは上気道炎症状 - 2:誤
死亡率が高いのは65歳以上の高齢者(特に85歳以上)で、15歳以下が高いのは罹患率(特に5歳~9歳)です。 - 3:正
検体:鼻腔ぬぐい液(陽性率約80%~90%)、咽頭ぬぐい液(陽性率約60%~80%)、鼻腔吸引液(陽性率約90%~95%)、鼻かみ液(陽性率約80%~85%)
測定原理:抗原抗体反応
発色方法:酵素免疫測定法、金コロイド法 - 4:誤
インフルエンザを発症した小児の解熱にはアセトアミノフェン製剤が推奨されます。解熱作用を有するNSAID類特にアスピリンは小児(15歳未満)に使用すると、ライ症候群を発症する可能性が高まるため使用しません。 - 5:正
予防投与が認められている薬剤:オセルタミビル・ザナミビル・ラニナミビルのノイラミニダーゼ阻害薬
予防投与が認められている患者の背景:原則として、インフルエンザ感染症を発症している患者の同居家族または共同生活者であり下記条件を満たす者
・高齢者(65歳以上)・慢性呼吸器疾患または慢性心疾患患者・代謝性疾患患者(糖尿病)
・腎機能障害患者
引用記事:第18回 基礎から学ぶインフルエンザ。新型インフルエンザに使える薬は?
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