薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2026.04.28 薬剤師のためのお役立ちコラム

長期処方とは?リフィル処方箋との違いや日数のルール・関連する加算について解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

長期処方は、慢性疾患の患者さんの通院負担を軽減し、医療機関の業務効率化にもつながる重要な仕組みです。長期処方にはさまざまなメリットがありますが、服薬管理の負担増加や体調変化に気づきにくくなるなど、注意すべき点も存在します。本記事では、長期処方の概要やリフィル処方箋との違い、何日まで処方できるのかについて解説するとともに、関連する加算やメリット・デメリット、薬剤師の対応時のポイントについてもお伝えします。

1.長期処方とは?

長期処方とは、医師が患者さんの病状を確認した上で、一定期間に必要な薬をまとめて処方することを指します。特に、症状が安定している慢性疾患の患者さんに対して、通院負担を軽減する目的で活用されるケースが多く見られます。
 
長期処方の対象となるのは、主に病状が安定しており、副作用のリスクが低く、薬の管理を自分で適切に行える患者さんです。また、新薬や向精神薬など一部の薬には日数制限があるため、医師はそれらの点を踏まえて処方日数を決定します。
 
参考:長期処方・リフィル処方の活用について |厚生労働省

 

1-1.長期処方は何日まで?

長期処方そのものに「何日まで可能」という一律の日数制限は設けられていません
 
ただし、すべての薬が自由に長期処方できるわけではなく、新医薬品は14日、麻薬や向精神薬は薬効成分、内服薬・外用薬などによって14日、30日、90日と、処方日数に上限が定められています。そのため、処方日数は、薬の特性と患者さんの状態に応じて決められるといえます。
 
参考:医療・介護・保育WG資料 新医薬品の14日間処方日数制限の見直し|厚生労働省

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2.長期処方とリフィル処方箋の違い

長期処方とリフィル処方箋は、どちらも、主に患者さんの通院負担の削減を目的とした制度ですが、その仕組みは大きく異なります。長期処方は、1回の受診で長期間分の薬をまとめて処方するため、患者さんは処方日数分の薬を一度に受け取ります。
 
一方、リフィル処方箋は、医師が指定した回数の範囲で、同じ処方箋を繰り返し薬局で使用できる制度です。薬局での受け取りのたびに薬剤師が体調や服薬状況を確認し、必要に応じて医師へ情報をフィードバックする仕組みが整えられています。
 
長期処方とリフィル処方箋のいずれも、医療機関への受診頻度を減らせる点は同じです。しかし、リフィル処方箋は定期的に薬剤師による服薬状況の確認があるため、長期処方と比較すると、より安全に薬物治療が受けられるといえます。
 
参考:「リフィル処方箋」を知っていますか?1度の診察で最大3回まで薬の処方を受けられます!|政府広報オンライン

 

3.長期処方に関連する加算

長期処方に関連する代表的な加算として、特定疾患処方管理加算があります。継続的な薬物治療が必要な疾患の患者さんに対して、28日以上の長期処方を行った場合に算定できる医科診療報酬です。診療所または許可病床数が200床未満の病院が対象となっています。
 
長期処方だけでなくリフィル処方箋でも、複数回使用した合計処方日数が28日以上になる場合は特定疾患処方管理加算が算定できます。対象となるのは、厚生労働省が定める疾患を主病とする患者さんです。
 
なお、2026年度診療報酬改定により、非ステロイド性抗炎症薬の投与を受けている場合には、胃潰瘍および十二指腸潰瘍の対象から除外されることとなりました。
 
参考:令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等|厚生労働省

 

4.長期処方のメリット

長期処方には、患者さんと医療機関の双方に多くの利点があります。ここでは、長期処方がもたらす主なメリットについて解説します。
 
参考:長期処方及びリフィル処方箋の実施状況調査報告書(案)<概要>|厚生労働省

 

4-1.通院負担の軽減

長期処方のメリットの一つに、患者さんの通院回数を減らせることが挙げられます。高血圧や糖尿病などの慢性疾患の患者さんは、症状が安定していても、薬を処方してもらうために定期的に通院しなければなりません。
 
長期処方は1~3カ月分の薬をまとめて受け取れるため、患者さんの通院負担を軽減できるでしょう。高齢者や移動が困難な患者さんにとって通院回数が減ることは、生活の質を向上させる要因となります。

 

4-2.医療費の節約

長期処方は、医療費の節約につながる場合がある点もメリットです。通院回数が減ることで、診察料や再診料の支払い頻度が少なくなり、結果として自己負担額が抑えられる場合があります。
 
また、薬局での調剤基本料や薬剤服用歴管理指導料なども受診回数に応じて発生するため、まとめて処方されることでトータルの費用が軽減されるケースもあります。
 
さらに、慢性疾患で長期的に治療を続ける患者さんにとっては、通院にかかる交通費を削減できる点も魅力となるでしょう。

 

4-3.医療従事者の業務効率化

長期処方は、患者さんだけでなく医療従事者の業務効率化にも寄与します。症状が安定している患者さんの受診頻度が減ることで、医師や看護師は急性疾患や重症の患者さんへの対応に、より多くの時間を割けるようになるでしょう。
 
また、薬剤師にとっても、毎月の処方箋受け付けが減ることで、服薬指導や薬歴管理をより丁寧に行える環境が整います。医療機関全体の混雑緩和にもつながり、待ち時間の短縮や医療サービスの質向上も期待できます。長期処方は、医療現場の負担軽減と効率的な運営に貢献する仕組みといえるでしょう。

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5.長期処方のデメリット

長期処方は多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。医療従事者は、長期処方のリスクを理解した上で、患者さんの状態や生活環境に合わせて適切に対応することが重要です。ここでは、長期処方のデメリットについてお伝えします。
 
参考:長期処方及びリフィル処方箋の実施状況調査報告書(案)<概要>|厚生労働省

 

5-1.アドヒアランス低下につながりやすい

長期処方では、患者さんが一度に多くの薬を受け取るため、服薬管理が自己責任に委ねられる割合が高くなります。その結果、飲み忘れや飲み間違いが起こりやすく、アドヒアランス低下につながる可能性があります。
 
特に高齢者や多剤併用の患者さんでは、薬の種類や服用タイミングを把握しきれず、意図せず不適切な服薬になるケースもあるでしょう。
 
また、定期的な受診が減ることで、医療従事者が服薬状況を確認する機会が少なくなる点も課題です。長期処方を行う際には、薬剤師による服薬支援やお薬カレンダーの活用など、継続的なフォローが重要になります。

 

 

5-2.薬の保管の負担が増える

1〜3カ月分など大量の薬を一度に受け取る患者さんにとって、自宅での保管スペースや管理の負担が増えるという点は長期処方のデメリットといえるでしょう。
 
特に錠数の多い薬や複数の薬剤を服用している患者さんは、薬の置き場所が分散したり、未開封の薬がどこにあるか分からなくなったりすることがあります。
 
湿気・温度・光などの保管条件に注意が必要な薬もあり、このような薬剤は適切に保管できないと品質低下のリスクが生じます。家族と同居している場合は、誤飲防止の観点からも管理が重要で、長期処方を行う際には、患者さんの生活環境や管理能力を考慮する必要があります。

 

5-3.体調変化に気づきにくくなる

長期処方では受診間隔が長くなるため、体調の変化や副作用の兆候に気づきにくくなる点もデメリットです。特に慢性疾患は、症状が徐々に悪化しても自覚しにくいことがあり、受診間隔が長くなることは、医療従事者が早期に異変を察知する機会の減少にもつながってしまいます。
 
また、薬の効果が不十分だったり、副作用が起こっていたりする場合でも、患者さん自身が判断できず、治療が遅れる原因となってしまうこともあるでしょう。生活習慣の変化や新たな併用薬による相互作用など、医師や薬剤師が定期的に確認すべき事項が見落とされるリスクもあります。
 
長期処方では、患者さん自身が「体調の変化を記録する」「薬局で相談する」など、積極的なセルフモニタリングが、安心・安全な薬物治療を行うためには重要です。

6.薬剤師が長期処方の患者さんに対応するときのポイント

長期処方では患者さんが多くの薬を自宅で管理するため、薬剤師の役割がより重要になります。ここでは、薬剤師が長期処方の患者さんに対応するときのポイントについてお伝えします。

 

6-1. 服薬状況を継続的にフォローする

長期処方では受診間隔が長くなるため、薬剤師が服薬状況を継続的にフォローする役割がより重要になります。飲み忘れや自己判断による減量・中断、残薬の有無などを丁寧に確認し、アドヒアランス低下を早期に察知することが求められます。
 
また、患者さんの生活リズムに合わせて、お薬カレンダーや一包化などを提案することで、無理なく継続できる環境づくりをサポートすることも欠かせません。
 
特に高齢者や多剤併用の患者さんは、服薬管理が複雑になりやすいため、薬剤師が定期的に声かけを行い、治療の継続を支えることが重要です。

 

 

6-2. 薬の保管・管理方法を具体的に助言する

長期処方では1〜3カ月分の薬を一度に受け取るため、患者さんの自宅での保管・管理の負担が大きくなります。薬剤師は、湿気・温度・光などの保管条件、誤飲防止の工夫、開封後の注意点などを具体的に説明し、患者さんの生活環境に合わせた管理方法を提案することが求められるでしょう。
 
特に高齢者や家族と同居している場合は、薬の置き場所が分散したり、患者さん以外の人が誤って服用したりするリスクもあるため、整理整頓の方法や保管場所の工夫を一緒に考えることが大切です。
 
残薬が発生しやすい点も踏まえ、定期的に薬の残りを確認し、必要に応じて医師へ情報提供することが、適正使用の維持につながります。

 

6-3. 体調変化や副作用の早期発見に努める

長期処方では受診間隔が空くため、医師や薬剤師が患者さんの体調変化、副作用などに気づきにくくなることがあります。そのため、薬剤師は薬局での対面時に血圧・血糖の変化、むくみ、眠気、食欲低下、皮膚症状など、病状悪化や副作用の兆候を丁寧にヒアリングすることが重要です。
 
また、生活習慣の変化や新たな市販薬・サプリメントの使用など、相互作用につながる要因も確認し、必要に応じて医師へ情報提供します。薬剤師が小さな変化を見逃さず、患者さんの状態を継続的に把握することで、長期処方の安全性を高め、治療の遅れを防ぐことができます。

7.長期処方を安全かつ効果的に活用するために

長期処方は、患者さんの通院負担軽減や医療費の節約、医療機関の業務効率化など、多くのメリットをもたらす仕組みです。一方で、服薬管理の難しさや体調変化の気づきにくさなど、適切なフォローが必要となるデメリットもあります。
 
そのため、薬剤師には服薬状況の確認、保管方法の助言、副作用の早期発見など、患者さんの治療継続を支える役割を担うことが求められます。長期処方を安全かつ効果的に活用するためには、医師・薬剤師・患者さんが連携し、個々の状況に合わせたサポートを行う必要があるでしょう。

患者さんへの対応から
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。