薬剤師のスキルアップ 公開日:2026.06.17 薬剤師のスキルアップ

門前薬局等立地依存減算とは?算定要件・減点数・施設基準を解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

門前薬局等立地依存減算は、門前薬局や医療モール内薬局の増加により、面分業の推進が十分に進まなかった現状を踏まえて、2026年度調剤報酬改定で新設されました。2026年6月1日以降に新規で開設される薬局を対象としており、薬局の本来の役割である面分業を推進することで、地域全体の医療の質向上を目指しています。本記事では、門前薬局等立地依存減算について、新設された背景や算定要件、施設基準、留意点などを解説します。

 

※本記事の内容は、初出時の情報をもとにしたものです。2026(令和8)年度診療報酬改定に関する最新情報は、厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定について」などから確認してください。

1.門前薬局等立地依存減算とは?

門前薬局等立地依存減算とは、2026年6月1日以降に新規開設する門前薬局や敷地内薬局などが対象となる調剤基本料の減算です。2026年度調剤報酬改定により新設されました。
 
参考:令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
 
ここでは、門前薬局や敷地内薬局の概要についてお伝えするとともに、門前薬局等立地依存減算が新設された背景を解説します。

 

1-1.門前薬局・敷地内薬局とは?

門前薬局とは、特定の医療機関の周辺に立地して、その医療機関が発行する処方箋に頼った経営をしている薬局のことです。患者さんの多くが同一医療機関を受診しているため、処方箋集中率が高くなる傾向にあります。

 

 

一方、敷地内薬局とは、医療機関と敷地または建物を共有している薬局のことを指します。敷地内薬局も門前薬局と同様に、敷地内の医療機関が交付する処方箋を調剤する傾向にあり、処方箋集中率が高くなりやすいのが特徴です。

 
参考:病院の敷地内に所在する薬局に関する調査について|厚生労働省

 

 

1-2.門前薬局等立地依存減算が新設された背景

2015年に策定された「患者のための薬局ビジョン」では、2025年までにすべての薬局がかかりつけ薬局の機能を持ち、2035年には立地も地域へ移行することで面分業の推進を目指すとされていました。
 
ところが、2025年時点では、いわゆる門前薬局や医療モール型薬局の設立が続出し、目標達成の目途が立たないまま10年が経過しています。
 
厚生労働省の資料によると、処方箋集中率が高い薬局の割合は以下のように推移しており、この10年で立地依存の薬局が増加していることが分かります。

 

処方箋集中率 2015年 2024年
95%以上の薬局割合 14.0% 17.3%
85%以上の薬局割合 32.5% 39.3%

参考:調剤について(その2)令和7年11月28日|厚生労働省

 

これまでは経営を安定化するために、門前の医療機関と連携しながら最小限の人員で運営するのが、薬局経営のスタンダードといえる状況でした。しかし、特定の医療機関に依存すると、本来の薬局の役割を果たすのが難しくなる傾向にあります。
 
また、今後人口減少が避けられない日本では、全国的に外来患者数が減少することで、処方箋枚数が減少し、地域での医療提供体制が非効率になる、閉局が相次ぐといったリスクも抱えています。
 
日本の医療資源を守るため、面分業を主とする薬局を増やすとともに、患者本位の医薬分業を実現することを目的として、2026年度調剤報酬改定では門前薬局等立地依存減算をはじめとして、さまざまな項目で見直しが行われています。

 

2.門前薬局等立地依存減算の減点数と算定要件

門前薬局等立地依存減算の減点数は15点です。施設基準に該当する門前薬局や医療モール内薬局などで調剤をした場合に、調剤基本料から減点します。

 
門前薬局等立地依存減算は、以下を目的として新設されました。

 

● 薬局や薬剤師、医薬品等の医療資源の分散を防止することで、地域に効果的な医薬品供給体制の整備を推進する
● 国民が受ける医療の質を向上させる観点から、ポリファーマシーをはじめとする医薬品に関する諸問題に対して効果的に対処できる体制の整備を促進する

参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

上記により、地域全体の医療を支えるために面分業をしている薬局を増やすことを目指しています。
 
参考:調剤報酬点数表|厚生労働省

3.門前薬局等立地依存減算の施設基準と留意点

門前薬局等立地依存減算は、処方箋集中率が高い医療モール内の薬局や、複数の薬局が集中している区域に立地する処方箋集中率が高い薬局を対象としています。ここでは、具体的な施設基準と留意点、届出についてお伝えします。

 

3-1.門前薬局等立地依存減算の施設基準

門前薬局等立地依存減算の施設基準は、次のいずれかに該当する保険薬局であることとされています。

 

1. 次のアからウまでのいずれにも該当する薬局であること。
 (ア)都市部に所在し、かつ水平距離500メートル以内に他の薬局があること。
   (都市部は、「第88の2調剤基本料2」の2の(7)と同様である。)
 (イ)処方箋集中率が85%を超えること。
 (ウ)次のいずれかに該当すること。
   (イ)200床以上の医療機関の敷地境界線からの水平距離が100メートル以内の区域内に所在し、区域内および医療機関の敷地内に、他の薬局が2以上所在すること。
   (ロ)薬局の敷地境界線からの水平距離が50メートル以内の区域内に、他の薬局が2以上所在すること。
   (ハ)薬局の敷地境界線からの水平距離が50メートル以内の区域内に所在する他の薬局が(ロ)に該当すること。
 
2. 次のアおよびイに該当する薬局であること。
 (ア)処方箋集中率が85%を超えること。
 (イ)医療機関と同一の敷地内または建物内に所在すること。

参考:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

 

上記の1・2は、いずれも2026年6月1日以降に新規開設する薬局が対象です。1はすでに多数の薬局が所在する地域の薬局、2は敷地内薬局や医療モール内に立地する薬局を対象としたものといえます。また、特別調剤基本料Aを算定する薬局には適用されません。

 

3-2.門前薬局等立地依存減算の留意点

門前薬局等立地依存減算に関する主な留意点について、以下で詳しく解説します。

 

3-2-1.門前薬局等立地依存減算に該当しないケースとは?

門前薬局等立地依存減算には、経過措置が設けられており、2026年5月31日において、現に保険指定を受けている薬局については、当面の間、門前薬局等立地依存減算に該当しないものとします。
 
また、親から子へ、個人形態から法人形態へ、有限会社から株式会社へ、といった開設者の変更や、薬局の改築などの理由により薬機法上の薬局の開設許可を取得し直し、保険薬局の指定について薬局の当該許可の日までの遡及指定が認められる場合も、当面の間、門前薬局等立地依存減算に該当しないものとされます。

 
なお、薬局の移転や事業承継、法人化などで改めて保険薬局の指定を受ける場合についても、新規開設の薬局ではなく既存の薬局という扱いになり、門前薬局等立地依存減算の経過措置に該当する薬局とされます。
 
参考:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
参考:疑義解釈資料の送付について(その2)令和8年4月1日|厚生労働省

 

3-2-2.「区域内に他の薬局が所在する場合」とは?

施設基準における「区域内に他の保険薬局が所在する」とは、当該区域内に他の薬局の敷地境界線の一部でも含まれている場合を指します。ここでの区域内は、「水平距離」として計測されることになっており、薬局間の距離を客観的に判断するための基準が設けられています。
 
そのため、建物の入り口同士が離れていたとしても、区域内に一部でも他薬局が含まれていると「所在する」とみなされる点に注意が必要です。

 

3-2-3.「医療機関が所在する建物または敷地と同一の建物内または敷地内に所在する場合」とは?

「医療機関が所在する建物または敷地と同一の建物内または敷地内に所在する場合」とは、以下のいずれかに該当する場合を指します。

 

● 不動産登記法上、同一の地番または一団の土地として取り扱われている土地上に、医療機関と薬局が所在する建物または敷地である場合
● 医療機関と薬局が所在する敷地または建物が、外観上分離されておらず、構造上も外壁、床、天井、屋根といった敷地または建物の主要な部分が一体として連結し、あるいは密接な関連をもって接続している場合
● 医療機関と薬局が、通路やエントランス、駐車場、案内表示などを共用しており、外形上、医療モールなどとして一体的に利用されていると認められる場合
● 医療機関や薬局などを複数集合させることを目的として、不動産開発業者などが開発の企画、不動産の取得、建築物の建設、入居の募集などを行った敷地または建物である場合

参考:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

 

医療機関との一体性は、立地や構造、利用形態などをもとに総合的に判断されます。そのため、薬局側は基準を正確に理解し、該当可否を慎重に確認することが重要です。

 

3-3.門前薬局等立地依存減算の届出

門前薬局等立地依存減算の施設基準に係る届出は、別添2の様式84(調剤基本料)を用いることとされています。

 

4.門前薬局等立地依存減算の疑義解釈Q&A:新規開設薬局が処方箋集中率以外の要件を満たした場合、いつから適用される?

開設する日が属する月の翌月1日から3カ月間の処方箋集中率で判定します。処方箋集中率が85%以上の場合は、当該3カ月間の最終月の翌々月の1日から適用されます。
 
例えば、6月1日に薬局を新規開設した場合、7月から9月の処方箋集中率の実績が要件を満たせば、11月1日から適用されることになります。

 
参考:疑義解釈資料の送付について(その2)令和8年4月1日|厚生労働省

5.門前薬局等立地依存減算を正しく理解しよう

門前薬局等立地依存減算は、地域での面分業を進めるために新設されました。処方箋の集中率や立地条件などの明確な施設基準が定められていますが、既存の薬局には経過措置が適用されます。そのため、いずれは既存の薬局に対しても適用される可能性があるでしょう。
 
薬局や薬剤師はどのような薬局が門前薬局等立地依存減算の対象となるのかを正確に把握し、該当する場合には経過措置期間を活用して、処方箋集中率を下げるなどの取り組みを行うことが大切です。
 
調剤報酬改定ごとに薬局の役割がより明確に示されていることから、その都度制度の趣旨を理解し、適切な体制整備を進めることが、今後の薬局経営において重要なポイントとなるでしょう。

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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。