調剤報酬の算定漏れや過剰算定を防ぐために、薬局薬剤師は正確な知識を持っておきたいもの。調剤料の加算の一つである「一包化加算」について解説した前回に続き、今回も代表的な「自家製剤加算」と「計量混合調剤加算」について解説します。算定要件をおさらいし、監査の際に役立てましょう。
INDEX
1. 自家製剤加算の算定要件

自家製剤加算は、「市販されている医薬品の剤形で対応できない時に、医師の指示に基づいて、容易に服用できるよう調剤上の特殊な技術工夫を行った場合」、1調剤ごとに算定できる点数です。
調剤上の特殊な技術工夫とは、安定剤、溶解補助剤、懸濁剤等の添加剤を加えて調剤した場合やろ過、加温、滅菌等を行うことを指します。他にも、錠剤を粉砕して散剤とする、主薬を溶解して点眼剤を無菌で調剤する、主薬に基剤を加えて坐剤とする、割線のある錠剤を医師の指示に基づいて分割して調剤する、といった場合にも算定できます。
ただし、分割した医薬品と同一規格の医薬品が薬価収載されている場合は算定することができません。
2. 自家製剤加算の点数
点数は剤型と用法によって決まっています。1調剤ごとに算定することができ、さらに液剤以外の内服薬については、7日分ごとに所定の点数を算定します。予製剤を使った場合は100分の20の点数を算定することになります。
■内服薬と屯服薬
点数 | 予製剤の点数 | |
---|---|---|
錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エキス剤の内服薬 | 20点(7日分ごと) | 4点(7日分ごと) |
錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エキス剤屯服薬 | 90点 | 18点 |
軟・硬膏剤 | 45点 | 9点 |
■外用薬
点数 | 予製剤の点数 | |
---|---|---|
錠剤、トローチ剤、軟・硬膏剤、パップ剤、リニメント剤、坐剤 | 90点 | 18点 |
点眼剤、点鼻・点耳剤、浣腸剤 | 75点 | 15点 |
液剤 | 45点 | 9点 |
錠剤の半割や粉砕など自家製剤加算が取れる可能性がある薬が処方された場合、算定の有無を調剤録や調剤明細書で確認しましょう。算定されている場合は算定要件を満たしているかチェックし、点数計算が正しいかを監査します。剤形や日数によって点数が異なり複雑なため、最初はメモをとるなどして慎重に監査するとよいでしょう。
3. 自家製剤加算を計算してみよう
では、実際に日常業務でよく出会う「錠剤の半割と粉砕」の具体的な処方例について考えてみましょう。
<処方例1>
Rp1)
フルイトラン錠2mg 0.5錠 朝食後 28日分
上記の薬が処方された場合、フルイトラン錠1mgが市販されているため、算定することができません。半割した際の規格が市販されていないかチェックすることが大切です。
<処方例2>
Rp1)メインテート錠0.625mg 0.5錠 朝食後 28日分
Rp2)ラシックス錠10mg 0.5錠 朝食後 14日分
メインテート0.3125mg、ラシックス5mgの用量は市販されていません。また、処方日数が異なるため2調剤であり、それぞれで算定することができます。錠剤の内服薬のため7日分ごとで20点ずつ算定可能であり、計算すると20×4+20×2=120点となります。
<処方例3>
Rp1)ラシックス錠10mg 0.25錠(粉砕) 朝食後 14日分
Rp2)メインテート錠0.625mg 0.25錠(粉砕) 朝食後 28日分
先程同様ラシックス錠2.5mgは市販されていません。しかし、ラシックス細粒4%が販売されており、市販薬による対応が可能なため、Rp1は算定することができません。一方、メインテート錠0.625mgの4分割製剤や細粒は市販されていません。散剤の内服薬のため、20×4=80点を算定することができます。
4. 計量混合調剤加算の算定要件と点数

もう一つ代表的な調剤料の加算に「計量混合調剤加算」があります。計量混合調剤加算は「薬価収載されている2種類以上の医薬品を計量して、混合して調剤した場合」に算定できる点数です。対象となる剤形は液剤、散剤、顆粒剤または軟・硬軟剤の4種類のみ。投与量や投与日数にかかわらず、計量して混合する1調剤行為に対して所定の点数を算定します。
■計量混合調剤加算の点数
点数 | 予製剤の点数 | |
---|---|---|
液剤 | 35点 | 7点 |
散剤、顆粒剤 | 45点 | 9点 |
軟・硬膏剤 | 80点 | 16点 |
ただし、調剤した医薬品と同一剤形、同一規格の医薬品が存在する場合には算定することができません。また、服用時点と服用日数が同一である場合、計量混合調剤加算をそれぞれに算定することはできず、「1調剤」ごとの算定となります。
5. 計量混合調剤加算を計算してみよう
それでは具体的な処方の例をみながら、算定方法を考えてみましょう。
<処方例4>
Rp1)
ムコダインシロップ5% 6ml
アスベリンシロップ0.5% 3ml
ペリアクチンシロップ0.04% 3ml 毎食後 7日分
混合
3種類の液剤を計量し、混合して調剤しており、計量混合調剤加算を算定することができます。日数に関係なく1調剤行為による算定のため、液剤の35点を算定することになります。
<処方例5>
Rp1)
ペリアクチン散1% 0.1g
乳糖「ホエイ」 0.1g 朝夕食後 5日分
混合
ペリアクチン散の一回量が少ないため、小児が正確に、容易に服用できるように乳糖を賦形した処方です。計量混合調剤加算は医療上の理由で医師の指示で賦形剤を使用した場合も算定が可能であり、散剤の45点を算定できます。ただし、医師の指示がない場合に水分量の調整などのために薬局側が勝手に行った単シロップの賦形などは算定することはできません。
また、計量混合調剤加算は、薬価収載されている2種類以上の医薬品を「計量かつ混合」した場合に算定することが認められています。したがって、あらかじめ所定の分量が計量された分包品を使用して調剤した場合には、計量混合調剤加算を算定することは認められていません。これは分包品の販売の有無ではなく、実際の調剤行為に分包品を使用したかどうかで判断されます。
<処方例6>
Rp1)
ヒルドイドソフト軟膏0.3% 25g
アンテベート軟膏0.05% 25g
混合
上記の処方の場合はヒルドイドソフト軟膏25g分包品とアンテベート軟膏5g分包品を使用した場合は算定できず、ヒルドイドソフト軟膏100gや500g、アンテベート軟膏100gなどから計量して、混合した場合は算定することができます。
6. 自家製剤加算と計量混合調剤加算の区別

自家製剤加算を算定した「調剤」に関しては、計量混合調剤加算を算定できない点にも注意が必要です。例えば、錠剤を粉砕して計量し、他の散剤と混合して分包した場合は、いずれも算定条件を満たしていますが、どちらか一方のみしか算定できません。
ただし、次のような処方の場合は算定ができます。
<処方例7>
Rp1)
オゼックス錠75mg 3錠 朝夕食後 5日分
Rp2)
ムコダインドライシロップ50% 1.2g
ミヤBM細粒 1.0g 朝夕食後 7日分
自家製剤加算と計量混合調剤加算は1調剤ごとに算定できるため、Rp1)とRp2)は別調剤であり、算定可能です。
7. 混合、粉砕、半割など特殊な調剤を意識する
自家製剤加算や計量混合調剤加算は日常業務でよく算定する加算です。忙しい業務の中では、全てをチェックするのは難しく感じるかもしれませんが、薬局薬剤師としては調剤報酬の誤算定はできるだけ防ぎたいもの。まずは処方せんの混合、粉砕、半割など特殊な調剤指示がある場合に、調剤報酬算定の監査を意識することから始めてみてはいかがでしょうか。
参考URL:
参考書籍:
■『【最新’18-’19年版】 世界一やさしい調剤報酬請求事務の入門ノート』(水口錠二著、ぱる出版刊)
■『調剤報酬請求事務 [基礎知識とレセプト作成]Version7版』(NIメディカルオフィス編、 一ツ橋書店刊)
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執筆/加藤鉄也
薬剤師。研修認定薬剤師。JPALSレベル6。2児の父。
大学院卒業後、製薬会社の海外臨床開発業務に従事。その後、調剤薬局薬剤師として働き、現在は株式会社オーエスで薬剤師として勤務。小児、循環器、糖尿病、がんなどの幅広い領域の薬物治療に携わる。医療や薬など薬剤師として気になるトピックについて記事を執筆。趣味は子育てとペットのポメラニアン、ハムスターと遊ぶこと。