薬局の掲示物の中には、さまざまな法令や通知などによって、掲示が義務付けられているものがあります。また、掲示義務はないものの、患者さんへの周知活動を目的に、薬局内に掲示しているものもあるでしょう。本記事では、薬局の掲示物について代表的な掲示義務があるもの・ないものを紹介するとともに、掲示物を作成するときのポイントについてお伝えします。
1.薬局の掲示物は何が必要?
薬局の掲示物には、法令上の掲示義務があるものと、掲示義務がないものがあります。法令上の掲示義務があるものとして、薬局開設許可証や薬局開設者の氏名、管理薬剤師の氏名などがよく知られているでしょう。その他にも、調剤報酬点数表や服薬管理指導料に関する掲示なども義務付けられています。
また、掲示物によって、薬局の内側・外側への掲示、ホームページへの掲載が義務化されているものもあるため、薬剤師はそれらについてしっかり把握しておかなければなりません。
2.掲示義務がある主な掲示物
薬局には、さまざまな法令や通知により、薬局の機能や提供サービス、費用などの情報を掲示することが求められています。ここでは、掲示義務がある主な掲示物についてお伝えします。
2-1.薬局の内側への掲示物一覧
薬局内に掲示することが義務付けられている掲示物としては、以下のようなものが挙げられます。
掲示内容 | 法令・通知など |
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薬局開設の許可証 | 薬機法施行規則 第3条 |
薬局の管理および運営に関する事項 ● 許可の区分の別 ● 薬局開設者の氏名または名称その他の薬局開設の許可証の記載事項 ● 薬局の管理者氏名 ● 薬局に勤務する薬剤師または登録販売者の別、氏名と担当業務 ● 取り扱う要指導医薬品および一般用医薬品の区分 ● 薬局に勤務するものの名札等による区別に関する説明 ● 営業時間、営業時間外で相談できる時間と営業時間外で医薬品の購入または譲り受けの申し込みを受理する時間 ● 相談時および緊急時の電話番号その他連絡先 |
薬機法施行規則 第15条の15 |
要指導医薬品および一般用医薬品の販売に関する制度に関する事項 ● 要指導医薬品および第1~3類医薬品の定義とこれらに関する解説 ● 要指導医薬品および第1~3類医薬品の表示に関する解説 ● 要指導医薬品および第1~3類医薬品の情報の提供・指導に関する解説 ● 指定第2類医薬品の陳列等に関する解説 |
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指定第2類医薬品の禁忌を確認することおよび使用について薬剤師または登録販売者に相談することを勧める旨 ● 要指導医薬品および一般用医薬品の陳列に関する解説 ● 医薬品による健康被害の救済制度に関する解説 ● 個人情報の適正な取り扱いを確保するための措置 ● その他必要事項 |
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調剤報酬点数表の一覧など | 調剤報酬点数表 (通則) (時間外加算等、夜間・休日等加算) |
夜間・休日等加算の対象日、受付時間帯 | |
服薬管理指導料に関する事項 | ● 保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(第2条の4) ● 高齢者の医療の確保に関する法律の規定による療養の給付等の取り扱い及び担当に関する基準(第25条の4) ● 療養担当規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等(第13) ● 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取り扱いについて(令和6年3月5日 保医発0305第6号) ● 医療費の内容の分かる領収証及び個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書の交付について(令和6年3月5日 保医発0305第11号) |
調剤報酬点数表に基づき地方厚生局長等に届け出た事項に関する事項 ● 調剤基本料1、2、3 ● 特別調剤基本料A ● 調剤基本料1の特例除外 ● 連携強化加算 ● 後発医薬品調剤体制加算 ※当該加算の算定をしていること ● 在宅薬学総合体制加算 ● 無菌製剤処理加算 ● 特定薬剤管理指導加算2 ● かかりつけ薬剤師指導料 ● かかりつけ薬剤師包括管理料 ● 服用薬剤調整支援料2 ● 在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算 ● 在宅中心静脈栄養法加算 ● 在宅患者訪問薬剤管理指導料 ● 明細書の無償交付に関する事項 |
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● 取扱可能な公費負担医療 ● 労災指定薬局の標札 |
● 各種公費負担医療根拠法 ● 労働者災害補償保険法施行規則(第11条第3項) |
患者希望に基づくサービス内容・料金 ● 内服薬の一包化 ● 甘味料の添加 ● 服薬カレンダーの提供 |
「療養担当規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」および「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について(第7)(平成18年3月13日 保医発第0313003号) 療養の給付と直接関係ないサービス等の取り扱いについて(平成17年9月1日 保医発第09001002号) |
療養の給付と直接関係ないサービス等の内容・料金 ● 在宅医療に係る交通費 ● 薬剤の容器代等 ● 禁煙補助剤の調剤 ※治療中の疾病・負傷に対するもの以外 ● 患家等への薬剤の持参料と郵送料 ● 日本語を理解できない患者さんに対する通訳料 |
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個人情報の利用目的 | 個人情報保護法 |
※具体的な掲示場所が指定されていないものは、薬局内への掲示物として記載しています。
2-2.薬局の外側への掲示物一覧
薬局の外側に掲示することが義務付けられている掲示物としては、以下のようなものが挙げられます。
掲示内容 | 法令・通知など |
---|---|
保険薬局である旨 | 保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する省令(第7条) |
地域支援体制加算 ※夜間・休日を含む時間帯の対応体制 |
特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取り扱いについて(令和6年3月5日 保医発0305第6号) |
2-3.薬局の内外への掲示物一覧
薬局の内側と外側に掲示することが義務付けられている掲示物には、以下のようなものが挙げられます。
掲示内容 | 法令・通知など |
---|---|
● 地域支援体制加算 ※在宅患者訪問薬剤管理指導の実施 ● 後発医薬品調剤体制加算 ※後発医薬品調剤の積極的な対応 |
特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取り扱いについて(令和6年3月5日 保医発0305第6号) |
開局時間 | 調剤報酬点数表 (時間外加算等、夜間・休日等加算) |
2-4.薬局の内側への掲示とホームページへの掲載が必要なもの
薬局の内側への掲示とホームページへの掲載が義務付けられている掲示物には、以下のようなものが挙げられます。
掲示内容 | 法令・通知など |
---|---|
● 医療DX推進体制整備加算 ● 医療情報取得加算 |
特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取り扱いについて(令和6年3月5日 保医発0305第6号) |
長期収載品の調剤に係る選定療養 | 「療養担当規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について(第7)(平成18年3月13日 保医発第0313003号) |
参考:保険薬局Q&A 令和6年版(監修:日本薬剤師会)|じほう
3.掲示義務がない主な掲示物
掲示義務がない主な掲示物には、アプリやキャンペーンの情報、行政や関係団体のポスターなどが挙げられます。詳しく見ていきましょう。
3-1.アプリやキャンペーン情報
薬局によっては、自社アプリを使って服薬管理をしていたり、キャンペーンを行っていたりすることもあるでしょう。
ポイント制度や市販薬の割引サービスなど、薬局独自のサービス紹介は患者さんの利便性向上や薬局の雰囲気づくりに役立ちますが、法令上の掲示義務はありません。
3-2.行政や関係団体などのポスター
行政や関係団体などから、患者さんへの周知活動を目的にポスターの掲示を依頼されることもあるでしょう。地域のイベント案内や製薬企業から提供されるパンフレットなどもあります。
これらについては、法令上の掲示義務にあたる掲示物とは異なるため、薬局で掲示する義務はありません。
3-3.生活習慣や栄養に関するお知らせ
自社で生活習慣や栄養などに関するパンフレットや資料を作成することもあるでしょう。また、製薬企業などから患者さん向けの配布資料や印刷物を受け取ることもあります。
これらについても、法令上の掲示義務が生じない掲示物に該当します。
4.薬局の提示物を作成するときのポイント
薬局の掲示物を作成するときは、法令上の要件を満たしているかを確認し、患者さんの視点に立って作成することが大切です。
ここでは、薬局の掲示物を作成するときのポイントについてお伝えします。
4-1.法令上の要件を満たしているか確認する
薬局の掲示物には、掲示義務があるものとないものがあります。そのため、薬局の掲示物を作成するときは、掲示義務の有無について確認し、記載漏れがないようにすることが大切です。
また、薬局の内側・外側などの掲示場所や、法令上の要件を満たしていることを確認しましょう。
4-2.患者さんの視点に立って作成する
薬局の掲示物を作成するときは、患者さんの視点に立って、見やすさ・分かりやすさを重視することが大切です。専門用語の使用はなるべく避け、分かりやすい言葉を使いましょう。
また、視認性を高められるようフォントのサイズや配色を工夫することも重要です。患者さんが意味や意義を理解できるような見え方を心がけましょう。
4-3.薬局でのレイアウトを工夫する
薬局の掲示物は、薬局の印象を左右する重要な要素です。患者さんに薬局での待ち時間を有意義に過ごしてもらうために、掲示物のデザインや配置を工夫するようにしましょう。
薬局内に掲示物を貼るときは、カテゴリーごとに配置したり、用紙のサイズを合わせたりするなど、見やすいレイアウトを意識することがポイントです。
また、定期的に掲示物をチェックして、古い情報が記載されていたり、破れていたりする掲示物は撤去して、必要に応じて新しいものへ更新しましょう。
🔽 薬局で患者さんに喜ばれる掲示物を作成するためのポイントを解説した記事はこちら
5.分かりやすく読みやすい掲示物を作成しよう
薬局の掲示物には、法令で掲示が義務付けられているものと、そうでないものがあります。掲示義務があるものは、規定された要件を満たすことが重要です。また、掲示物を作成するときは、患者さんがスムーズに理解できるよう、分かりやすく読みやすいものになるよう心がける必要があります。患者さんの目線を意識して、必要な情報が適切に伝わるよう工夫しましょう。

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。
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