薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.11.15公開日:2024.09.04 薬剤師のスキルアップ

特定薬剤管理指導加算3とは?イ・ロの算定要件と点数やRMPについて解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

2024年度診療報酬改定で新設された特定薬剤管理指導加算3は、服薬管理指導料とかかりつけ薬剤師指導料の加算です。本記事では、特定薬剤管理指導加算3の概要やイの算定要件にあるRMPについて解説するとともに、1・2との違いや算定要件(イ・ロ)、点数、算定例、注意点などをお伝えします。

1.特定薬剤管理指導加算3とは?

特定薬剤管理指導加算3とは、特に丁寧な説明が必要となる薬剤が処方されている患者さんへ服薬指導を行う場合について評価したものです。イとロの2つに区分されており、服薬による副作用や相互作用などのリスク管理を目的とした指導、および選定療養の対象となる先発医薬品の使用を希望する患者さんへの説明や指導などを行うことで算定できます。
 
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
 
特定薬剤管理指導加算3のイは、RMP(医薬品リスク管理計画)に基づいた薬学的管理が求められています。また、特定薬剤管理指導加算3と1・2は算定要件や点数が異なるため、それぞれの違いを理解しておく必要があるでしょう。
 
ここでは、RMP(医薬品リスク管理計画)について解説するとともに、特定薬剤管理指導加算1・2との違いについてもお伝えします。

 

1-1.RMP(医薬品リスク管理計画)とは?

RMPとは、Risk Management Planの略で、医薬品リスク管理計画のことです。承認前から市販後までに収集されたリスク(副作用)を整理し、不足情報をどのように収集すべきか、分かっているリスクをどのように最小化すべきかについてまとめられた文書で、RMPの策定・実施は医薬品の承認条件となっています。
 
医薬品の治験では症例数に限りがあるため、副作用などについて十分な情報が集められない場合があります。そのため、「関連が疑わしいもの」や「高齢者・小児の使用情報」などについての詳しい内容が、添付文書に記載できないことがあります。
 
RMPには、添付文書には記載できない確認が不十分な副作用(潜在的なリスク)や、高齢者・小児などへの使用情報(不足情報)などについて、以下の3つの安全性検討事項に分けて記載されています。

 

■RMPに記載されている安全性検討事項の区分と詳細
安全性検討事項 詳細
重要な特定されたリスク 治験時や市販後に関連が確認されている副作用
重要な潜在的なリスク 関連が疑わしいが確認が不十分な副作用
重要な不足情報 高齢者や小児など情報が不足している条件

 

それぞれの安全性検討事項については、「医薬品安全性監視計画」と「リスク最小化計画」を実施するための内容が記載されています。
 
「医薬品安全性監視計画」とは企業が行う副作用や使用成績などの情報収集に関する計画、「リスク最小化計画」は患者さんなどへの情報提供といったリスクを軽減・回避するための活動に関する計画のことです。
 
薬剤師は医薬品のRMPを確認して、リスク(副作用や相互作用など)を最小化するための情報を患者さんへ提供するとともに、企業へ副作用を報告したり、使用成績調査のための情報収集に協力したりすることが期待されています。医薬品の安全対策サイクルを回すためにも、薬剤師はとても重要な役割を担っているといえます。
 
参照:医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)|医薬品医療機器総合機構(PDMA)
参照:3分でわかる!RMP講座|医薬品医療機器総合機構(PDMA)
参照:今日からできる!How to RMP ~RMPってなに?編~|医薬品医療機器総合機構(PDMA)

 

1-2.特定薬剤管理指導加算1・2との違いとは?

特定薬剤管理指導加算3と1・2との違いは以下のとおりです。

 

■特定薬剤管理指導加算1・2・3の違い
区分 点数 算定要件の概要 施設基準 文書による情報提供 算定回数
特定薬剤管理指導加算1 10点 特に安全管理が必要な医薬品を新規処方された患者さんに指導を行った場合 なし なし 処方箋受付1回につき1回に限り
5点 特に安全管理が必要な医薬品の用法用量の変更、副作用の発現状況などに基づき薬剤師が必要と認めて指導を行った場合 なし なし
特定薬剤管理指導加算2 100点 悪性腫瘍の治療に関して規定された業務を行った場合 あり あり 患者さん1人につき月1回に限り
特定薬剤管理指導加算3 5点 RMP資材を用いた指導などを行った場合 なし なし 患者さん1人につき当該品目が最初に処方された1回に限り
調剤前に医薬品の選択に係る情報について説明および指導を行った場合 なし なし

参照:調剤報酬点数表|厚生労働省

参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

特定薬剤管理指導加算は、1・2・3ともに安全管理が必要な医薬品の指導や管理を行うことを評価した加算です。
 
特定薬剤管理指導加算1は、いわゆるハイリスク薬の指導・管理に関するもので、患者さんが安全に薬物治療を続けるためのサポートをすることに対する評価です。
 
特定薬剤管理指導加算1について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
 


 
特定薬剤管理指導加算2は悪性腫瘍の治療を行う患者さんの服薬サポートを行うことを評価した加算です。レジメンや体調変化、副作用などのチェックを行い、医師へ文書を用いた情報提供が求められます。特定薬剤管理指導加算1・3と比較して、必要な業務が多く、求められるスキルが高いことから、算定点数も高く設定されています。
 
特定薬剤管理指導加算2について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
 

 
なお、特定薬剤管理指導加算3と特定薬剤管理指導加算1・2は、それぞれ要件を満たすことで同時算定が可能です。続いて、特定薬剤管理指導加算3の算定要件と点数について詳しく見ていきましょう。

 
🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら

2.特定薬剤管理指導加算3の算定要件・点数

特定薬剤管理指導加算3のイまたはロの要件を満たす場合、患者さん1人につき、該当する薬剤が最初に処方された1回に限り5点を算定できます。算定要件と点数は以下のとおりです。

 

■特定薬剤管理指導加算3の算定要件と点数
区分 算定要件 点数
特に安全性に関する説明が必要な医薬品について、患者さんに対して最初に資料を用いた指導を行った場合
● RMPの策定が義務づけられている医薬品を最初に処方された場合に限り、患者さんまたはその家族などに対して、RMPに基づきRMPに係る情報提供資材を活用して副作用や併用禁忌などの特性を踏まえて適正使用や安全性などについて十分な指導を行った場合
● 処方された薬剤の緊急安全性情報や安全性速報が出された場合などに、安全性に係る情報について提供と十分な指導を行った場合
5点
調剤前に医薬品の選択に係る情報が特に必要な患者さんに説明および指導を行った場合
● 後発医薬品が存在する先発医薬品で、一般名処方または銘柄名処方された医薬品について、選定療養の対象となる先発医薬品を選択しようとする患者さんに対して説明を行った場合
● 医薬品の供給状況が不安定なため、必要な数量を確保するために前回と別銘柄の医薬品への変更が必要な患者さんに対して説明を行った場合

 

特定薬剤管理指導加算3のイにおける患者さん用のRMP資材がある薬剤については、事前に資料を準備しておくことでスムーズに対応できるでしょう。緊急安全性情報などの情報が得られた場合には、速やかに患者さんへ連絡して、情報提供と指導を行う必要があります。
 
また、特定薬剤管理指導加算3のロについて、医薬品の供給状況により銘柄変更をした場合には、調剤報酬明細書の摘要欄に「必要数量が確保できなかった薬剤名」を記載することとされています。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
 
選定療養の対象となる先発医薬品については、厚生労働省のホームページで一覧が公表されています。詳しくは厚生労働省のホームページで確認しましょう。
 
参照:後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について|厚生労働省

 
🔽 長期収載品の選定療養について解説した記事はこちら

3.特定薬剤管理指導加算3の算定例

特定薬剤管理指導加算3の算定には、さまざまなケースがあり、算定の可否に迷うこともあるでしょう。ここでは、疑義解釈や算定要件を踏まえた特定薬剤管理指導加算3の算定例について紹介します。

 

3-1.1回の処方で特定薬剤管理指導加算3のイとロに該当する医薬品がある場合

1回の処方で、「イに該当する医薬品」と「ロに該当する医薬品」がある場合、それぞれについて説明を行うことで、特定薬剤管理指導加算3のイとロを算定できます。また、1つの医薬品についてイとロの両方が該当する場合も同様に算定可能です。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和6年3月28日|厚生労働省

 

3-2.先発医薬品希望の患者さんが説明により後発医薬品を選定した場合

先発医薬品を希望する患者さんに対して、特定薬剤管理指導加算3のロに関する説明を行った結果、選定療養の対象となる医薬品から後発医薬品へ変更になった場合、特定薬剤管理指導加算3のロが算定可能です。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和6年3月28日|厚生労働省

4.特定薬剤管理指導加算3の算定における注意点

特定薬剤管理指導加算3は、算定する上で知っておきたい注意点があります。ここでは、特定薬剤管理指導加算3の算定時の注意点ついてお伝えします。

 

4-1.薬剤服用歴等への記録方法

特定薬剤管理指導加算3を算定した場合、薬剤服用歴等に対象となる医薬品が分かるように記載しなければなりません。
 
また、患者向けRMP資材を活用して説明を行った場合は、薬剤服用歴等に指導内容の要点を記載する必要があります。なお、資材の添付や資材名などの記載は不要です。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和6年3月28日|厚生労働省

 

4-2.特定薬剤管理指導加算3のイの算定対象外となる医薬品

患者向けRMP資材がない医薬品や、薬機法の再審査が終了してRMP資材の策定・実施が解除された医薬品については、特定薬剤管理指導加算3を算定できません。
 
特定薬剤管理指導加算3のイを算定する場合、RMPが作られている医薬品や資材については、医薬品医療機器総合機構のホームページで最新情報を確認する必要があります。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和6年3月28日|厚生労働省
参照:RMP提出品目一覧|医薬品医療機器総合機構(PDMA)

5.特定薬剤管理指導加算3に関する理解を深めよう

特定薬剤管理指導加算3を算定するためには、イとロの違いを理解する必要があります。また、特定薬剤管理指導加算3のイの算定に向けて、患者向けRMP資材を取り寄せたり、理解を深めるためにPMDAが配信する動画を確認したりするとよいでしょう。
 
特定薬剤管理指導加算3のロについては、先発医薬品希望の患者さんに対して説明ができるよう、対象となる医薬品や選定療養について理解を深めておくことが大切です。特定薬剤管理指導加算3の算定に向けて、事前準備をしっかりしましょう。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。