薬剤師のスキルアップ 公開日:2022.09.22 薬剤師のスキルアップ

敷地内薬局が増えている? メリット・デメリットと関連する「特別調剤基本料」について 文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

敷地内薬局が算定する特別調剤基本料は、前回に続き2022年度の診療報酬改定でも減点されることになりました。にもかかわらず、敷地内薬局は増え続けています。今回は、敷地内薬局がおかれている状況について解説するとともに、敷地内薬局のメリット・デメリットや特別調剤基本料についてお伝えします。

1.敷地内薬局とは

敷地内薬局とは、医療機関の敷地内にある調剤薬局のことで、病院敷地内薬局、構内薬局などとも呼ばれます。
 
医療業界の敷地内薬局に対する評価は厳しいものとなっており、2022年度の診療報酬の改定で、特別調剤基本料が減点されていることからも、その状況がうかがえます。ところが、特別調剤基本料を算定している敷地内薬局の割合は、増加傾向にあり、年々敷地内薬局は増えているようです(中医協第500回資料「調剤(その3)」より)。

 

1-1.2016年以前は敷地内薬局が禁止されていた

2016年9月以前は、敷地内薬局の開設が禁止されていました。「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(薬担規則)」のなかで、保険薬局と保険医療機関は“一体的な構造”であってはならないとされていました。
 
そのため、2016年9月30日までは、保険薬局と医療機関は公道等を介さずに行き来できる形態であってはならないと定められていました。そうした背景から、実質、敷地内に設けられた薬局は、医療機関との間にフェンスや壁を設置して、直接行き来できないようにするといった対策がとられていました。

しかし、体調が悪い人や足が不自由な人などが、薬局へ遠回りしていくのは不便だと相談を受けた総務省が、厚労省と掛け合い、2016年10月から一体的な構造の解釈が変更になりました。このことがきっかけで、敷地内薬局が解禁された形になったのです。

 

1-2.敷地内薬局とかかりつけ推進の関係

敷地内薬局の開設が解禁されたとはいえ、日本薬剤師会や政府の敷地内薬局に対する評価が高くなったわけではありません。その理由は、敷地内薬局は、政府が掲げる「患者のための薬局ビジョン」に逆行しているからです。
 
医薬分業における薬局の役割を果たすためには、薬局の独立性の担保が重要です。しかし、敷地内薬局は医療機関と構造的・機能的にも独立性に欠けてしまいます。医療の最後の砦として役割を果たせるのかという点が懸念されているのです。また、敷地内薬局の特性上、かかりつけ機能を充実させることは難しいかもしれません。患者さんの服用薬を一元的かつ継続的に管理できるのかという点も課題です。
 
一方で、大手調剤薬局のなかには、患者さんの利便性を考えて、開設を推進している企業もあります。さらに、敷地内薬局を公募する医療機関も存在しています。そういった薬局や医療機関は、敷地内薬局にどのようなメリットを感じているのでしょうか。次の項目でみていきましょう。

 
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2.敷地内薬局のメリット

敷地内薬局は、患者さんや病院、薬局にとって、さまざまなメリットがあります。患者さんや医療機関、社会的なメリットについて見ていきましょう。

 

2-1.患者さんのメリット

敷地内に薬局があれば、患者さんの移動時間の短縮につながります。車いすを使っている人や小さい子どもを連れている人などにとって、移動の負担が軽減できるのは大きなメリットでしょう。

また、患者さんにとって、利用する薬局の選択肢が広がることも利点です。自宅近くの薬局で取り扱っていない薬が処方されている場合、病院とのつながりが深い敷地内薬局を利用できると安心でしょう。
 
また、ケガや体調不良などで、すぐにでも帰宅したいというのであれば、FAXやアプリなどの処方せん送信サービスを利用して、自宅近くの薬局で調剤を頼むことも可能です。あるいは、薬局の所在地に関係なく、頼りにしている薬剤師がいる薬局を選ぶこともできるでしょう。目的や状況に合わせて薬局の選択肢が増える点も、患者さんにとってメリットといえます。

 

2-2.病院や薬局のメリット

医療機関と薬局との距離が近いとコミュニケーションをこまめにとったり、治療方針や患者さんの情報を共有したりしやすくなります。また、総合病院などの敷地内薬局の場合には、薬局薬剤師が、医療機関に所属する医師や薬剤師などと交流することもあるでしょう。
 
病院と合同で勉強会を行うといった機会があれば、さまざまな知識や経験を習得しやすいです。高度で専門的な質の高い医療の提供につながるでしょう。さらに、医療機関と薬局が連携しやすいため、より丁寧な服薬サポートが可能になります。

 
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2-3.社会的なメリット

敷地内薬局の開設は、医療費抑制にも貢献します。敷地内薬局が算定する特別基本料は、他の調剤基本料に比較してとても低い点数です。そのため、患者さんの金銭的な負担を軽減することに加え、国の医療費を抑えられます

また、総合病院などでは、医療機関側が敷地内薬局に治療方針を共有すれば、院内の薬剤科と敷地内薬局との連携が効率化できるメリットがあります。地域薬局とのハブとしての役割も期待できるため、地域全体の連携強化が望めるでしょう。

3.敷地内薬局のデメリット

敷地内薬局は、さまざまな点でメリットがあります。しかし、敷地内薬局への評価が厳しいのは、政府が掲げる「患者のための薬局ビジョン」が関係しています。敷地内薬局のデメリットについて見ていきましょう。

 

3-1.かかりつけ機能を持ちにくい

敷地内薬局は、同じ敷地内にある医療機関を受診した人が来局する傾向にあります。そのため、他の病院で処方せんをもらった患者さんが、自宅から離れた敷地内薬局を利用するケースは少ないでしょう。政府が掲げる「患者のための薬局ビジョン」にあるように、敷地内薬局のみで、一元的かつ継続的に患者さんの服薬管理をするのは難しいかもしれません。

 

3-2.調剤基本料が低い

政府は、かかりつけ機能を充実させ、地域医療に貢献することを薬局に求めています。上述したように、かかりつけの対象となりにくい敷地内薬局は、政府が目指す薬局のあり方に逆行しており、算定する特別調剤基本料が、通常の調剤基本料と比べて低く設定されています。

4.敷地内薬局が算定する「特別調剤基本料」

特別調剤基本料とは、一定要件を満たした敷地内薬局が算定する調剤基本料です。2022年度調剤報酬改定で9点から7点に減点されました。

 

特別調剤基本料は、以下のいずれかの要件に該当する薬局が算定する調剤基本料です。

 

・保険医療機関と不動産取引等その他の特別な関係を有している保険薬局であって、処方箋集中率が 70%を超えるもの。ただし、当該保険薬局の所在する建物内に診療所が所在している場合を除く。

・調剤基本料の施設基準に係る届出を行っていないもの

(厚生労働省「特掲診療料の施設基準及びその届出に関する手続きの取扱いについて」より)

 

ここで指す「保険医療機関と不動産取引等その他の特別な関係を有している保険薬局」とは、次の要件に当てはまる薬局です。ただし、当該保険薬局の所在する建物内に診療所が所在している場合は該当しません。

 

1. 当該保険医療機関と不動産の賃貸借取引関係にある保険薬局である場合
2. 当該保険医療機関が譲り渡した不動産(保険薬局以外の者に譲り渡した場合を含む)を利用して開局している保険薬局である場合
3. 当該保険医療機関に対し、当該保険薬局が所有する会議室その他の設備を貸与している保険薬局である場合
4. 当該保険医療機関から開局時期の指定を受けて開局した保険薬局である場合

(厚生労働省「特掲診療料の施設基準及びその届出に関する手続きの取扱いについて」より)

 

また、2022年度の診療報酬改定で、地域支援体制加算、後発医薬品調剤体制加算はそれぞれの点数の100分の80に相当する点数を加算することになりました。さらに、服薬情報等提供料は算定できません。

 
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特別調剤基本料における「不動産」については、さまざまな取り決めがあります。詳しく見ていきましょう。

 

4-1.特別調剤基本料における不動産とは

ここで指す不動産とは、土地または建物を指し、医療機関や薬局が事業を行うために提供されるものに限定されています。土地や建物を借りて事業を行う場合、賃貸借取引が必要です。医療機関と薬局間で賃貸借取引が行われると、互いが独立関係でいられない可能性が高まり、患者さんの薬物治療に影響を及ぼすかもしれません。

そのため、薬局を開設する際は、土地と建物の賃貸契約書を届出に添付することになっています。医療機関と薬局が賃貸借取引関係である場合、通常の調剤基本料ではなく、特別調剤基本料を算定することになります。

 

4-2.賃貸借取引関係となるケース

賃貸借取引関係となるケースは、医療機関と薬局が直接不動産の賃貸借取引を契約している場合のほかに、以下のようなケースが含まれます。

 

1. 医療機関が所有または賃借している不動産を第三者が賃借して、薬局との間で賃貸借取引を契約している場合
2. 薬局が所有または賃借している不動産を第三者が賃借して、医療機関との間で賃貸借取引を契約している場合
3. 医療機関と薬局の開設者の近親者が契約の名義人となっている場合や、医療機関と薬局が法人である場合の法人の役員が契約の名義人となっている場合

(厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」より)

 
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4-3.賃貸借取引関係と判断されてしまうケース

医療機関と賃貸借取引関係にある薬局と判断されるのは、開設した年月日や医療機関によって異なります。

 

1. 病院と不動産の賃貸借取引関係にあり、2016年10月1日以降に新しく開局し指定を受けた薬局。ただし、遡及指定が認められる場合であって、2016年9月30日以前から病院と不動産の賃貸借取引関係にある場合を除く。
2. 2016年9月30日以前に開局し、2016年10月1日時点では特定の病院と不動産の賃貸借取引関係になかったが、2016年10月1日以降に病院と不動産の賃貸借取引関係にある薬局となった場合。
3. 診療所と不動産の賃貸借取引関係にある薬局であって、2018年4月1日以降に新しく開局し、指定を受けたもの。ただし、遡及指定が認められる場合であって、2018年3月31日以前から、診療所と不動産の賃貸借取引関係にある場合を除く。
4. 2018年3月31日以前に開局し、2018年4月1日時点では特定の医療機関と不動産の賃貸借取引関係になかったが、2018年4月1日以降に診療所と不動産の賃貸借取引関係にある薬局となった場合。
5. 3と4については、2018年3月31日以前に不動産の賃貸取引または譲り渡しの契約もしくは建物の建築の契約を行うなど、当該開局に係る手続きが相当程度進捗している場合には、3のただし書きに該当するものとみなす。

(厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」より)

 

他にも、敷地内薬局と判断されるケースはさまざまなものがあります。詳しくは、「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」を確認しましょう。

5.患者さんの健康・安全・利便性を考えることが大切

敷地内薬局については賛否両論あり、日本薬剤師会や大手調剤薬局だけでなく、薬剤師によっても考え方は異なります。しかし、患者さんの健康や安全、利便性を考えているという点は、共通ではないでしょうか。敷地内薬局の評価の行方を今後も注目していきたいものです。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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