- 1.医療DX推進体制整備加算とは?
- 1-1.医療DX推進体制整備加算が新設された背景
- 1-2.マイナ保険証が普及するメリット
- 2.医療DX推進体制整備加算の算定要件・点数
- 3.医療DX推進体制整備加算の施設基準
- 3-1.医療DX推進体制整備加算の施設基準
- 3-2.施設基準に関する経過措置
- 4.医療DX推進体制整備加算を算定する際の注意点と必要な準備
- 4-1.医療DX推進体制整備加算を算定する際の注意点
- 4-2.医療DX推進体制整備加算を算定する際に必要な準備
- 5.医療DX推進体制整備加算の届出
- 5-1.医療DX推進体制整備加算の届出書と添付書類
- 5-2.届出書の提出先
- 6.医療DX推進体制整備加算を算定するために体制整備を進めよう
1.医療DX推進体制整備加算とは?
医療DX推進体制整備加算とは、医療機関が医療情報の利用や情報セキュリティ対策などDXに関する取り組みを行う体制を整備している場合に算定できる加算です。医療DXの推進を通じて、医療の質の向上や業務の効率化、患者サービスの向上を目指しています。
1-1.医療DX推進体制整備加算が新設された背景
厚生労働省の資料「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」によると、2024年2月に行った18歳以上のマイナンバーカードを保有する人を対象にしたWebアンケートで、マイナンバーカードを常時携帯している人の割合は約4割、必要時に持ち歩いている人の割合は3割弱でした。また、4割弱がマイナ保険証を利用したいと考えています。
4割弱の人がマイナ保険証を利用したいと考えているにもかかわらず、マイナ保険証の利用状況については、2024年1月時点で利用率3%未満の施設が47.9%と、あまり普及していないことが分かります。
施設 | 利用率が3%未満の施設の割合 |
---|---|
全体 | 47.9% |
病院 | 21.9% |
医科診療所 | 42.8% |
歯科診療所 | 26.9% |
薬局 | 69.4% |
特に薬局は他の医療機関と比較して、マイナ保険証の普及が進んでいません。その背景として、従来の保険証は初診時や有効期限が切れた際などが確認のタイミングであるのに対し、マイナ保険証は原則毎回確認が必要であることが挙げられます。確認頻度が高いことが、普及が進まなかった要因のひとつかもしれません。
参照:マイナンバーカード(健康保険証)は、受診の度に提示が必要ですか。|よくある質問|マイナポータル
薬局をはじめとした医療機関が、マイナ保険証の提示を積極的に求めることで、利用率が高まる可能性があると考えられています。そうした背景から、医療DX推進体制整備加算が新設されました。
🔽 2024年度の調剤報酬改定について解説した記事はこちら
1-2.マイナ保険証が普及するメリット
薬剤師にとってのメリットは、患者さんの服薬状況や健康状態をリアルタイムで正確に把握し、適切な服薬指導を行える点でしょう。重複投薬や相互作用のチェックが容易になるなど、患者さんの安全性向上にも寄与します。
患者さんにとってのメリットは、患者さんの医療費削減につながる点でしょう。マイナ保険証を活用することで、医療情報取得加算1(3点)から医療情報取得加算2(1点)へと加算点数が低くなります。
🔽 医療情報取得加算について解説した記事はこちら
また、厚生労働省の資料「マイナ保険証の利用促進等について」では、医療機関における初診の急患対応で、マイナ保険証が役立った事例を紹介しています。この事例では、マイナ保険証を確認したことで、以下の情報を得られ、早期治療につながったとしています。
● 服用薬
● 服用歴
● 健康診断の検査結果
● 過去の血液検査
薬局では緊急対応を求められるケースは少ないですが、マイナ保険証の普及に取り組むことで、間接的に患者さんの安全を守ることにつながります。
2.医療DX推進体制整備加算の算定要件・点数
医療DX推進体制整備加算は、調剤基本料の加算として設定されており、月1回に限り、処方箋受付1回につき4点が算定できます。
医療DX推進体制整備加算の算定要件は以下の通りです。
● 電子処方箋や紙の処方箋を受け付けて調剤した場合に、電子処方箋管理サービスに調剤結果を登録する
参照:オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)|厚生労働省
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
電子処方箋管理サービスへの登録は、最新の薬剤情報を活用できるようにするため、調剤後速やかに行う必要があります。また、特別調剤基本料Bを算定している薬局は、医療DX推進体制整備加算を算定できません。
参照:疑義解釈資料の送付について(その2) 2024年4月12日|厚生労働省
🔽 調剤基本料・特別調剤基本料について解説した記事はこちら
3.医療DX推進体制整備加算の施設基準
医療DX推進体制整備加算には多くの施設基準があり、薬局によっては要件を満たすのに時間がかかるかもしれません。そのため、施設基準の一部に経過措置が設けられています。ここでは、医療DX推進体制整備加算の施設基準と経過措置について見ていきましょう。
3-1.医療DX推進体制整備加算の施設基準
医療DX推進体制整備加算が算定できる施設の基準は、以下のように定められています。
● 健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認を行う体制
● オンライン資格確認等システムで取得した薬剤情報や特定健診情報などを閲覧・活用し、調剤や服薬指導を行う体制
● 「電子処方箋管理サービスの運用について」に基づく電子処方箋を受け付ける体制
● 電磁的記録による調剤録および薬剤服用歴の管理体制
● 電子カルテ情報共有サービスで取得できる診療情報などを活用する体制
● 一定程度のマイナ保険証の利用実績
● 「医療DX推進の体制に関する事項」と「質の高い調剤を実施するための十分な情報を取得・活用して調剤を行うこと」について、薬局の見やすい場所やWebサイトなどに掲示
● サイバーセキュリティを確保するために必要な体制
参照:電子処方箋管理サービスの運用について|厚生労働省
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
オンライン資格確認に関する薬局内やWebサイトなどへの掲示については、厚生労働省が作成したポスターを参考にすることで、医療DX推進体制整備加算の施設基準を満たせます。
参考:オンライン資格確認に関する広報素材について|厚生労働省
また、医療DX推進体制整備加算を算定するためには、ポスターの掲示だけでなくマイナ保険証の提示を求める活動も必要です。「マイナ保険証をお出しください」など、積極的に周知活動を行いましょう。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1) 2024年3月28日|厚生労働省
3-2.施設基準に関する経過措置
医療DX推進体制整備加算の施設基準を満たすためには、薬局の体制を整える必要があります。しかし、薬局によって、すぐに対応できる施設基準もあれば、時間や費用がかかるものもあるでしょう。そこで、以下のような施設基準について経過措置が設けられています。
施設基準 | 経過措置 |
---|---|
電子処方箋を受け付ける体制 | 2025年3月31日まで該当するものとみなす |
電子カルテ情報共有サービスにより取得される診療情報などを活用する体制 | 2025年9月30日まで該当するものとみなす |
マイナンバーカードの健康保険証の利用率 | 2024年10月1日から適用する |
経過措置を有効に活用し、計画的にDXの取り組みを進めていくことが重要でしょう。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
4.医療DX推進体制整備加算を算定する際の注意点と必要な準備
続いて、医療DX推進体制整備加算を算定する際の注意点と必要な準備について見ていきましょう。
4-1.医療DX推進体制整備加算を算定する際の注意点
マイナ保険証は、インターネットを介して個人情報を取り扱うため、セキュリティ対策が欠かせません。不正アクセスや情報漏洩などのリスクに十分留意する必要があります。
医療DX推進体制整備加算の施設基準では、セキュリティ対策や個人情報保護に関する規定を定め、適切に実施していることが求められています。
システムへのアクセス管理や不正アクセス防止対策、個人情報の取り扱いに関する研修の実施など、総合的なセキュリティ対策が必要です。
4-2.医療DX推進体制整備加算を算定する際に必要な準備
オンライン上で個人情報を取り扱うためには、医療情報システムの安全管理に関する責任者を配置し、セキュリティ対策や個人情報保護を適切に実施する体制を整備することも重要です。
責任者は、システムの運用管理や、従業員への教育・指導など、安全管理に関する業務を統括することになるため、事前の知識習得が求められるでしょう。
また、サイバーセキュリティに関するガイドラインやチェックリストは、厚生労働省が提示する資料が更新された場合には、速やかに対応することとされています。
参照:疑義解釈資料の送付について(その5) 2024年5月17日|厚生労働省
医療情報システムの安全管理に関するガイドラインは厚生労働省のWebサイトに最新情報が掲載されるため、定期的に確認しましょう。
参照:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版(令和5年5月)|厚生労働省
5.医療DX推進体制整備加算の届出
医療DX推進体制整備加算を算定するためには、届出が必要です。届出は、「特掲診療料の施設基準に係る届出書」と「医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類」を用いて行います。
5-1.医療DX推進体制整備加算の届出書と添付書類
「特掲診療料の施設基準に係る届出書」は、該当する項目にチェックを入れます。「医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類」については、前述した通り一部の施設基準に経過措置があり、以下のように記載するとされています。
■電子処方箋を受け付ける体制
2025年3月31日まで該当するものとみなし、導入が済んでいない場合は、「導入予定」にチェックを入れます。
■電子カルテ情報共有サービスにより取得される診療情報等を活用する体制
2025年9月30日まで該当するものとみなし、それまでの間に届出を行う場合は記載不要です。
■マイナンバーカードの健康保険証の利用率
2024年10月1日から適用し、利用率の記載については、2024年9月末までは記載不要としています。
経過措置の期間が終了すると、全ての項目を満たす必要があります。
5-2.届出書の提出先
届出書の提出先は、薬局の所在地を管轄する地方厚生局などで、届出が受理されて、はじめて加算の算定が可能となります。
ただし、届出内容に変更や間違いがあった場合には、速やかに変更の届出を行わなければなりません。届出後も、定期的に施設基準の適合状況を確認し、必要に応じて届出内容の変更や再届出を行うことが求められます。
6.医療DX推進体制整備加算を算定するために体制整備を進めよう
医療DX推進体制整備加算は、医療機関におけるDXの取り組みを評価し、医療の質の向上や業務の効率化、患者サービスの向上を図ることを目的とした加算です。調剤薬局には、DXの取り組みを通じて、患者さんの利便性の向上や業務の効率化に貢献していくことが期待されています。
同時に、DXの推進には、セキュリティ対策や個人情報保護への配慮も欠かせません。オンライン資格確認等システムの活用や電子処方箋への対応など、DXの波に乗り遅れないよう、体制整備を進めていきましょう。
🔽 調剤報酬に関連する記事はこちら
薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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