医療DX推進体制整備加算は、調剤薬局や医科・歯科で算定できる加算です。2025年4月の改定で点数や算定要件、区分などが見直され、2025年10月・2026年3月にも、施設基準におけるマイナ保険証利用率の実績要件の段階的な変更が行われます。本記事では、医療DX推進体制整備加算の概要や算定要件・点数、施設基準について解説するとともに、マイナ保険証利用率や届出、経過措置などについてもお伝えします。

1.医療DX推進体制整備加算とは?
医療DX推進体制整備加算とは、薬局や医療機関が質の高い医療を提供するために医療DXに対応する体制を確保している場合に算定できる加算です。
2024年度診療報酬改定で新設され、マイナ保険証の利用実態や活用状況などに応じて、2024年10月と2025年4月に点数や区分などが見直されています。
また、時期に応じたメリハリのある評価を行うためとして、2025年10月、および2026年3月にも、施設基準におけるマイナ保険証利用率の実績要件が段階的に変更されます。
調剤報酬のほか、医科診療報酬や歯科診療報酬にも同加算があり、医療業界全体で医療DXが推進されているといえます。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【医療DXの推進】|厚生労働省
参照:医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて|厚生労働省
参照:医療DX推進体制整備加算及び在宅医療DX情報活用加算の見直しについて|厚生労働省
参照:医療DX推進体制整備加算の見直し(令和7年10月以降)|厚生労働省
🔽 2024年度の調剤報酬改定について解説した記事はこちら
2.医療DX推進体制整備加算の点数
医療DX推進体制整備加算は、医科診療報酬・歯科診療報酬・調剤報酬によって点数が異なります。医科・歯科診療報酬については、2025年4月から6区分となっています。それぞれの点数は以下のとおりです。
| 区分 | 点数 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 医科 | 歯科 | 調剤 | ||||
| 改正前 | 2025年 4月~ |
改正前 | 2025年 4月~ |
改正前 | 2025年 4月~ |
|
| 医療DX推進体制整備加算1 | 11点 | 12点 | 9点 | 11点 | 7点 | 10点 |
| 医療DX推進体制整備加算2 | 10点 | 11点 | 8点 | 10点 | 6点 | 8点 |
| 医療DX推進体制整備加算3 | 8点 | 10点 | 6点 | 8点 | 4点 | 6点 |
| 医療DX推進体制整備加算4 | 10点 | 9点 | ||||
| 医療DX推進体制整備加算5 | 9点 | 8点 | ||||
| 医療DX推進体制整備加算6 | 8点 | 6点 | ||||
参照:医療DX推進体制整備加算等の取扱いについて(2025年2月20日)|厚生労働省

3.医療DX推進体制整備加算の算定要件
医科診療報酬・歯科診療報酬・調剤報酬の算定要件において、医療DX推進体制整備加算は「オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報などを実際の診療/調剤に活用できる体制を有するとともに、電子処方箋および電子カルテ情報共有サービスを導入するなど、質の高い医療を提供するため医療DXに対応する体制を評価するもの」とされています。
医科・歯科診療報酬と調剤報酬で算定要件が異なる部分があるため、以下でそれぞれの算定要件について解説します。
3-1.医科・歯科診療報酬における算定要件
医科・歯科診療報酬では、施設基準を満たした上で、地方厚生(支)局長等に届出を行った場合に、初診の患者さんに対して月1回に限り算定できます。
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:歯科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
3-2.調剤報酬における算定要件
調剤報酬では、処方箋受付1回につき調剤基本料に加算できます。ただし、患者さん1人に対して、同一月に2回以上調剤を行った場合でも、月1回のみの算定となります。
🔽 調剤基本料について解説した記事はこちら
医療DX推進体制整備加算を算定する薬局は、オンライン資格確認等システムを通じて取得した患者さんの診療情報や薬剤情報などを閲覧・活用し、調剤や服薬指導などを行うこととされています。
また、特別調剤基本料Bを算定している薬局は、医療DX推進体制整備加算を算定できません。
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
🔽 特別調剤基本料について解説した記事はこちら
4.医療DX推進体制整備加算の施設基準
医療DX推進体制整備加算は、医科・歯科診療報酬は1~6、調剤報酬は1~3の区分ごとに施設基準が設けられています。
医科・歯科診療報酬と調剤報酬における主な施設基準と、マイナ保険証利用率に関する施設基準について、以下で解説します。
4-1.医科・歯科診療報酬における主な施設基準
医科・歯科診療報酬における医療DX推進体制整備加算について、マイナ保険証利用率に関するもの以外の施設基準は、以下のとおりです。
| No. | 施設基準 | 区分 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | ||
| 1 | 電子情報処理組織を活用した請求 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 2 | オンライン資格確認を行う体制 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 3 | オンライン資格確認等システムを活用して患者さんの薬剤情報や特定健診情報などを診察室や手術室、処置室などで閲覧・活用できる体制 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 4 | 電子処方箋を発行する体制、または調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制 | ○ | ○ | ○ | × | × | × |
| 5 | 電子カルテ情報共有サービスで取得される診療情報などを活用する体制 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 6 | 医療DX推進の体制に関する事項と質の高い診療を実施するための十分な情報を取得・活用して診療を行うことについて、医療機関の見やすい場所やウェブサイトなどに掲示 | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ |
| 7 | マイナポータルの医療情報などに基づき、患者さんからの健康管理に係る相談に応じる体制 | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × |
参照:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
上記6の掲示については、具体的な事項が以下のように定められています。
(イ)マイナ保険証の促進など、医療DXを通じて質の高い医療を提供できるよう取り組んでいる医療機関であること
(ウ)電子処方箋の発行や電子カルテ情報共有サービスなどの医療DXに関する取り組みを実施している医療機関であること
医療DX推進体制整備加算4・5・6は、上記(ウ)の電子処方箋に係る事項が施設基準から除外されているため表内の表記を△としています。
4-2.調剤報酬における主な施設基準
調剤報酬における医療DX推進体制整備加算について、マイナ保険証利用率に関するもの以外の施設基準は、以下のとおりです。
| No. | 施設基準 | 区分 | ||
|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | ||
| 1 | 電子情報処理組織を活用した請求 | ○ | ○ | ○ |
| 2 | オンライン資格確認を行う体制 | ○ | ○ | ○ |
| 3 | オンライン資格確認等システムを活用して患者さんの薬剤情報や診療情報などを閲覧・活用できる体制 | ○ | ○ | ○ |
| 4 | 電子処方箋を受け付け、調剤する体制と、紙の処方箋を含めて原則としてすべての調剤結果を速やかに電子処方箋管理サービスに登録すること | ○ | ○ | ○ |
| 5 | 電磁的記録による調剤録および薬剤服用歴の管理体制 | ○ | ○ | ○ |
| 6 | 電子カルテ情報共有サービスで取得される診療情報などを活用する体制 | ○ | ○ | ○ |
| 7 | 医療DX推進の体制に関する事項と質の高い医療を提供するための十分な情報を取得・活用して調剤を行うことについて、薬局の見やすい場所やウェブサイトなどに掲示 | ○ | ○ | ○ |
| 8 | サイバー攻撃に対する対策を含め、セキュリティ全般について適切な対応を行う体制 | ○ | ○ | ○ |
| 9 | マイナポータルの医療情報などに基づき、患者さんからの健康管理に係る相談に応じる体制 | ○ | ○ | × |
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
上記4の「原則としてすべての調剤結果を速やかに電子処方箋管理サービスに登録すること」とは、やむを得ない事態が発生した場合を除き、処方箋が調剤済みとなった日に調剤結果を登録することを指します。
参照:医療DX推進体制整備加算の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)|厚生労働省

4-3.マイナ保険証利用率に関する施設基準
医療DX推進体制整備加算の施設基準では、区分ごとにマイナ保険証利用率に関する基準が設けられています。2025年4月~2026年5月の基準は以下のとおりです。
| 区分 | マイナ保険証利用率 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 医科・歯科 | 調剤 | |||||
| 2025年 4月~9月 |
2025年 10月~ 2026年 2月 |
2026年 3月~5月 |
2025年 4月~9月 |
2025年 10月~ 2026年 2月 |
2026年 3月~5月 |
|
| 1・4 | 45%以上 | 60%以上 | 70%以上 | 45%以上 | 60%以上 | 70%以上 |
| 2・5 | 30%以上 | 40%以上 | 50%以上 | 30%以上 | 40%以上 | 50%以上 |
| 3・6 | 15%以上 | 25%以上 | 30%以上 | 15%以上 | 25%以上 | 30%以上 |
参考:医療DX推進体制整備加算の見直し(令和7年10月以降)|厚生労働省
なお、マイナ保険証利用率は、医療DX推進体制整備加算を算定する月の3月前のレセプト件数ベースマイナ保険証利用率(マイナ保険証利用者数を患者数で除した割合であって、社会保険診療報酬支払基金から報告されるもの)を用いることとされていますが、その前月または前々月のレセプト件数ベースマイナ保険証利用率を用いることも可能です。
5.医療DX推進体制整備加算の届出
医療DX推進体制整備加算を算定するためには届出が必要です。医科・歯科診療報酬と調剤報酬における届出の内容と経過措置について、以下で解説します。
5-1.医科・歯科診療報酬における届出
医科・歯科診療報酬における届出を行う施設基準は以下のとおりです。
| No. | 主な施設基準 |
|---|---|
| 1 | 電子情報処理組織を活用した請求 |
| 2 | オンライン資格確認を行う体制 |
| 3 | オンライン資格確認等システムを活用して患者さんの薬剤情報や特定健診情報などを閲覧・活用できる体制 |
| 4 | 電子処方箋を発行する体制、または調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制 |
| 5 | 電子カルテ情報共有サービスで取得される診療情報などを活用する体制 |
| 6 | 医療DX推進の体制に関する事項と質の高い診療を実施するための十分な情報を取得・活用して診療を行うことについて、医療機関の見やすい場所やウェブサイトなどに掲示 |
| 7 | 2024年1月1日から12月31日までの延外来患者数のうち6歳未満の患者さんの割合が3割以上 ※小児科外来診療料を算定する医療機関で、医療DX推進体制整備加算3または6のレセプト件数ベースマイナ保険証利用率25%を22%(2026年3月以降は30%を27%)とする場合のみ |
参照:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
なお、マイナ保険証利用率と、マイナポータルの医療情報などに基づき患者さんから健康管理に関する相談に応じる体制については、基準を満たしていればよく、届出を行う必要はありません。
5-2.調剤報酬における届出
調剤報酬における届出を行う施設基準は以下のとおりです。
| No. | 主な施設基準 |
|---|---|
| 1 | 電子情報処理組織を活用した請求 |
| 2 | オンライン資格確認を行う体制 |
| 3 | オンライン資格確認等システムを活用して患者さんの薬剤情報や診療情報などを閲覧・活用できる体制 |
| 4 | 電子処方箋により調剤する体制と調剤結果を登録する体制 |
| 5 | 電磁的記録による調剤録と薬剤服用歴の管理体制 |
| 6 | 電子カルテ情報共有サービスで取得される診療情報などを活用する体制 |
| 7 | 医療DX推進の体制に関する事項と質の高い医療を提供するための十分な情報を取得・活用して調剤を行うことについて、薬局の見やすい場所やウェブサイトなどに掲示 |
| 8 | サイバー攻撃に対する対策を含め、セキュリティ全般について適切な対応を行う体制 |
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
医科・歯科診療報酬と同様に、マイナ保険証利用率とマイナポータルの医療情報などに基づき患者さんから健康管理に関する相談に応じる体制については、基準を満たしていればよく、届出を行う必要はありません。
5-3.届出に関する経過措置
医療DX推進体制整備加算には、一部の要件について経過措置が設けられています。医科・歯科・調剤に共通する経過措置は以下のとおりです。
| 施設基準 | 経過措置期間 |
|---|---|
| 電子カルテ情報共有サービスにより取得される診療情報などを活用する体制 | 2026年5月31日まで |
| 電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスの活用など医療DXに係る取り組みを実施していることの掲示 |
参照:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
また、小児科外来診療料を算定している医療機関が医療DX推進体制整備加算3または6を算定する場合、以下の経過措置が設けられています(小児科特例)。
| 経過措置の対象となる要件 | |
|---|---|
| 医療機関 | 小児科外来診療料を算定 |
| 患者割合 | 2024年1月1日から12月31日までの延外来患者数のうち6歳未満の患者さんの割合が3割以上 |
| レセプト件数ベース マイナ保険証利用率 |
2025年10月から2026年2月までは「25%」を「22%」、2026年3月から5月までは「30%」を「27%」とすることができる |
参照:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
上記の「患者割合」については、小児科外来診療料、小児かかりつけ診療料、初診料・再診料・外来診療料・在宅患者訪問診療料(I)(II)における乳幼児加算のいずれかを算定した延外来患者数を、延外来患者数で除して算出した割合とします。
参照:医療DX推進体制整備加算の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)|厚生労働省

6.医療DX推進体制整備加算を算定するための体制整備を進めよう
医療DX推進体制整備加算は、医療機関や薬局におけるDXの取り組みを評価したものです。医療の質の向上や業務の効率化、患者サービスの向上を図ることを目的としています。調剤薬局には、医療DXの取り組みを通じて、患者さんの利便性の向上や業務の効率化に貢献していくことが期待されています。
また、医療DXの推進には、セキュリティ対策や個人情報保護への配慮も欠かせません。オンライン資格確認等システムの活用や電子処方箋への対応などの体制整備を進めて、医療DX推進体制整備加算を算定しましょう。
🔽 調剤報酬改定に関連する記事はこちら

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。
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