薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.10.16公開日:2024.10.02 薬剤師のスキルアップ

麻薬管理指導加算とは?算定要件・タイミングや2024年度改定のポイントを解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

麻薬管理指導加算を算定するためには、麻薬に関する知見を深め、薬物治療を受ける患者さんを丁寧にサポートすることが求められます。本記事では、麻薬管理指導加算の算定要件や点数、算定タイミングについて解説するとともに、薬剤服用歴などへの記載事項、在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算や麻薬加算との同時算定の可否、居宅療養管理指導費を算定する場合の麻薬管理指導加算などについてお伝えします。

1.麻薬管理指導加算とは?

麻薬管理指導加算とは、麻薬を投与する患者さんやその家族に対して、服用および保管の状況、副作用の有無などについて確認し、必要な薬学的管理や指導を行った場合に算定する加算です。
 
2024年度の診療報酬改定で、麻薬管理指導加算の算定要件が一部見直されました。まずは、2024年度改定における変更点について見ていきましょう。

 

1-1.2024年度改定における変更点

2024年度の診療報酬改定では、麻薬管理指導において、疼痛緩和の評価などをより丁寧に実施するための参考資料が提示されました。
 
あわせて、薬剤交付後のフォロー体制についても明確化するために、麻薬管理指導加算の算定要件に以下の項目が追加されています。

 

■麻薬管理指導加算の算定要件の追加項目
● 電話などによる確認方法は、電話以外の情報通信機器を用いた方法も含まれる(一斉メールなどの一方的な情報発信ではなく個々に対応する必要あり)
● 麻薬による鎮痛効果や体調の変化の有無の確認などに当たっては、緩和ケアに関するガイドラインを参照して実施する

 

鎮痛効果や副作用の発現、体調変化などの確認については、以下のガイドラインなどを参考にすることとされています。

 

■緩和ケアに関するガイドライン・資料
● 「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」(日本緩和医療学会)
● 「新版 がん緩和ケアガイドブック」(日本医師会監修 厚生労働科学特別研究事業「適切な緩和ケア提供のための緩和ケアガイドブックの改訂に関する研究」班)

 
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
参照:個別改定項目について|厚生労働省

 
🔽 2024年度診療報酬改定について解説した記事はこちら

2.麻薬管理指導加算の点数

麻薬管理指導加算は、元となる指導料や、対面またはオンラインによって算定点数が異なります。

 

■麻薬管理指導加算の点数
加算対象 点数
服薬管理指導料 22点
かかりつけ薬剤師指導料
在宅患者訪問薬剤管理指導料 100点
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
在宅患者緊急時等共同指導料
在宅患者オンライン薬剤管理指導料 22点
在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料

参照:調剤報酬点数表|厚生労働省

 

麻薬の投薬が行われている患者さんに対して、必要な管理・指導などを行った場合に、上記の点数を算定できます。

3.麻薬管理指導加算の算定要件

麻薬管理指導加算を算定するためには、以下のいずれかの指導料を算定している必要があります。

 

■麻薬管理指導加算が算定できる指導料
● 服薬管理指導料
● かかりつけ薬剤師指導料
● 在宅患者訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者オンライン薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急時等共同指導料

 

麻薬管理指導加算は、「服薬管理指導料とかかりつけ薬剤師指導料」と「在宅関連の指導料」とで算定要件がやや異なります。共通の算定要件は以下の通りです。

 

■麻薬管理指導加算の共通の算定要件
● 患者さんや家族などに対して、調剤後も継続して以下の点を確認する
 1. 麻薬の服用状況
 2. 残薬の状況
 3. 麻薬の保管状況
 4. 鎮痛などの効果
 5. 体調変化
 6. 副作用状況 など
● 麻薬の残薬については、以下の点を指導する
 1. 適切な取り扱い方法
 2. 保管方法
 3. 注意点 など
● 緩和ケアに関する以下のようなガイドラインを参照する
 1. 「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」(日本緩和医療学会)
 2. 「新版がん緩和ケアガイドブック」(日本医師会監修 厚生労働科学特別研究事業「適切な緩和ケア提供のための緩和ケアガイドブックの改訂に関する研究」班)

 

続いて、それぞれの麻薬管理指導加算の算定要件について詳しく解説します。

 

3-1.服薬管理指導料・かかりつけ薬剤師指導料の算定要件

薬局内で行う「服薬管理指導料」と「かかりつけ薬剤師指導料」における麻薬管理指導加算の算定要件には、自宅での服薬状況などの確認について規定があります。

 

■服薬管理指導料とかかりつけ薬剤師指導料における麻薬管理指導加算の算定要件
調剤後は、電話などの情報通信機器を用いて服用状況や体調変化などを確認する。
ただし、電子メールの一斉送信などについては継続的な服薬指導と認められないため、個々の患者さんに合わせた対応をする。

 

電子メールなどでの確認については、複数の患者さんが希望したとしても一斉送信のみにはせず、それぞれの患者さんに合わせて対応することが求められています。

 
🔽 服薬管理指導料について解説した記事はこちら


 
🔽 かかりつけ薬剤師指導料について解説した記事はこちら

 

3-2.在宅患者訪問薬剤管理指導料などの算定要件

前述した通り、麻薬管理指導加算を算定できる在宅関連の指導料は以下の通りです。

 

■在宅関連の指導料
● 在宅患者訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者オンライン薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急時等共同指導料

 

在宅訪問薬剤管理指導料などで麻薬管理指導加算を算定するためには、上記の共通の算定要件を満たした上で、処方箋発行医(もしくは患者さんの在宅療養を担う保険医療機関の保険医)に対して必要な情報提供を行う必要があります。
 
ただし、在宅患者緊急時等共同指導料については、医師への情報提供は算定要件に含まれていません。
 
また、薬剤服用歴などに薬学管理料の通則や在宅訪問関連の指導料に定められた記載事項に加え、麻薬関連の情報を記載しなければなりません(詳しくは後述)。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 
🔽 在宅患者訪問薬剤管理指導料について解説した記事はこちら

4.麻薬管理指導加算の算定タイミング

2004年度(平成16年度)診療報酬改定の疑義解釈で、薬剤服用歴管理指導料(現・服薬管理指導料)において麻薬調剤を行い、必要な薬学的管理・指導を行った場合、麻薬管理指導加算は薬剤服用歴管理指導料を算定した日に限り算定可能と明記されています。
 
そのため、服薬管理指導料とかかりつけ薬剤師指導料については、それぞれの指導料を算定した日に限り、要件を満たすことで麻薬管理指導加算が算定できます。
 
在宅関連の指導料についても、指導料の算定時に麻薬管理指導加算の要件を満たすことで算定可能なので、それぞれの指導料について規定された回数を限度に算定できるといえるでしょう。
 
参照:『保険調剤Q&A 令和6年版』|じほう(編集:日本薬剤師会)
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

5.麻薬管理指導加算に関するQ&A

麻薬管理指導加算を算定する際は、薬歴への記載事項を把握しておくことが大切です。また、介護保険の居宅療養管理指導費を算定する場合や、ほかの麻薬関連の加算と同時算定できるかについても理解しておく必要があるでしょう。
 
ここでは、麻薬管理指導加算に関するQ&Aをご紹介します。

 

5-1.薬歴などへの記載が必要な内容は?

在宅訪問薬剤管理指導料などにおける麻薬管理指導加算の算定要件では、通常記載する事項に加えて、少なくとも以下の点について記載しなければならないとされています。

 

■麻薬管理指導加算における薬歴などへの記載事項
● 訪問時に実施した麻薬に係る薬学的管理指導の内容
 1. 麻薬の保管管理状況
 2. 服薬状況
 3. 残薬の状況
 4. 麻薬注射剤などの併用薬剤
 5. 疼痛緩和などの状況
 6. 麻薬の継続または増量投与による体調変化の有無
 7. 副作用が疑われる症状などの有無 など
● 訪問時に行った患者さんや家族への指導の要点
 1. 服薬指導
 2. 残薬の取り扱い方法も含めた保管管理の指導 など
● 処方医(もしくは患者さんの在宅療養を担う保険医療機関の保険医)に情報提供した内容の要点
 1. 服薬状況
 2. 疼痛緩和の状況
 3. 体調変化の有無
 4. 副作用が疑われる症状の有無
 5. 服薬指導の要点 など
● 患者さんまたは家族から返納された麻薬の廃棄に関する事項
 (都道府県知事に届け出た麻薬廃棄届の写しを薬剤服用歴などに添付)

 

上記の内容について漏れがないよう、しっかりと薬剤服用歴などに記録を残しましょう。

 

5-2.居宅療養管理指導費を算定する場合の麻薬管理指導加算は?

居宅療養管理指導費とは、在宅医療を受ける患者さんへ居宅療養管理指導を行うことで算定できる介護報酬です。
 
類似したものに、調剤報酬の在宅患者訪問薬剤管理指導料などがあります。居宅療養管理指導費は介護保険、在宅患者訪問薬剤管理指導料などは医療保険に分類されるのが両者の違いです。
 
居宅療養管理指導費も、在宅患者訪問薬剤管理指導料などと同様に、要件を満たすことで、麻薬管理指導加算を算定することができます。
 
また、介護保険において麻薬管理指導加算を算定している患者さんについて、医療用麻薬持続注射療法加算を算定することはできません。
 
参照:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(2024年度介護報酬改定)|厚生労働省
参照:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(2012年度介護報酬改定)|厚生労働省

 
🔽 居宅療養管理指導について解説した記事はこちら

 

5-3.在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算は麻薬管理指導加算と同時算定できる?

在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算は、麻薬管理指導加算を算定している患者さんについて同時算定ができません。
 
ただし、麻薬管理指導加算を算定する日以外の日に、在宅患者訪問薬剤管理指導料などを算定し、要件を満たすことで、在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算を算定することは可能です。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その3)(令和4年4月11日)|厚生労働省

 

5-4.薬剤調製料の麻薬加算と同時算定できる?

薬剤調製料の麻薬加算と麻薬管理指導加算は同時算定できます。麻薬加算は、内服薬や屯服薬などの調剤において処方箋の中に麻薬が含まれている場合に、その取り扱いに専門的な知識や対応が必要となることを評価した加算です。
 
麻薬管理指導加算とは評価が異なるため、麻薬加算と麻薬管理指導加算を同時算定しても問題ありません。
 
参照:『保険調剤Q&A 令和6年版』Q191|じほう(編集:日本薬剤師会)

6.麻薬を投与する患者さんをサポートしよう

麻薬を投与する上で、効果や副作用などを薬剤師がしっかりと管理することは治療効果を高めるために重要です。加えて、患者さん自身が麻薬の取り扱いについて十分に理解を深めることも非常に大切でしょう。薬剤師は、麻薬を投与する患者さんが安全・安心に薬物治療を続けるためにも、しっかりサポートしていくことが求められています。

 
🔽 調剤報酬に関連する記事はこちら


































執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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