薬剤師のスキルアップ 更新日:2025.03.26公開日:2025.03.25 薬剤師のスキルアップ

使用薬剤料とは?算定要件・点数や計算方法の具体例を紹介

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

使用薬剤料の計算は、通常であればレセコンの自動計算に任せられます。そのため、日常業務で行うことはほぼないでしょう。しかし、いざという時のために、しっかり理解しておくことをおすすめします。
筆者が薬局に勤めていた時に、朝、レセコンが立ち上がらず、患者さんの負担金額を手計算した経験があります。その時は、業者の対応が終了するまで、新規の患者さんのみ手計算で負担金額を算出するという対応を取りました。
負担金額を計算するためには、薬剤ごとの薬価だけでなく調剤基本料や各加算などあらゆる項目を確認し、全体の点数を計算しなければなりません。薬袋や薬情などの印刷もできなかったため、薬局に勤める薬剤師であれば、混乱した状況が容易に想像できるのではないでしょうか。こういったケースでも落ち着いて対応できるよう、使用薬剤料の計算方法を把握しておくことはとても大切です。
本記事では、使用薬剤料の算定要件や点数について解説するとともに、計算方法や計算例、算定する際の注意点などをお伝えします。

1.使用薬剤料とは?

使用薬剤料とは、調剤した処方薬の価格を保険請求する際に点数化したもののことです。調剤報酬における薬剤料に区分されます。
 
薬局では、調剤を行った場合の保険請求は「点数」で行わなければなりません。調剤技術料や薬学管理料については「点数」での評価となっていますが、薬剤の薬価は「円」での表記となっています。
 
そのため、使用薬剤料を算定するためには、「円」を「点数」に換算しなければなりません。使用薬剤料の計算方法には、細かな決まりがあるため、薬剤師は計算方法について理解しておく必要があるでしょう。

2.使用薬剤料の算定要件・点数

使用薬剤料の算定要件と点数は以下のとおりです。

 

区分 算定要件 点数
1 使用薬剤の薬価が薬剤調製料の所定単位につき15円以下の場合 1点
2 使用薬剤の薬価が薬剤調製料の所定単位につき15円を超える場合の加算 10円またはその端数を増すごとに1点

参照:調剤報酬点数表|厚生労働省

 

使用薬剤の薬価は厚生労働大臣が別に定めています。そのため、使用薬剤料を計算する際は、薬剤ごとの薬価を確認しなければなりません。
 
参照:薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について|厚生労働省

 

2-1.特別調剤基本料A・Bを算定する薬局の使用薬剤料の算定要件

特別調剤基本料AまたはBを算定する薬局が、同一処方月日において1処方につき7種類以上の内服薬(特に規定するものを除く)の調剤を行った場合は、所定点数の100分の90に相当する点数を算定することとされています。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)|厚生労働省
 
🔽 特別調剤基本料について解説した記事はこちら


 
ここでは、上記における「内服薬の種類」と「所定点数」について解説します。

 

2-1-1.内服薬の種類

内服薬の種類については、以下のように計算します。

 

(イ)内服薬の種類に屯服薬は含めない
(ロ)錠剤、カプセル剤は、1銘柄ごとに1種類と計算する
(ハ)散剤、顆粒剤、液剤、浸煎薬および湯薬は、1銘柄ごとに1種類と計算する
(ニ)(ハ)の薬剤を混合して服薬できるよう調剤を行ったものは1種類とする
(ホ)同一医療機関で異なる診療科の複数の医師が発行する処方箋を同時に受け付けた場合は、それぞれの処方箋の内服薬の種類を合計して計算する

参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

残薬調整などでカットした内服薬については種類数に含めません。医療上の必要性によって賦形剤や矯味矯臭剤を使用し、保険請求する場合は、種類数としてカウントします。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)|厚生労働省

 

2-1-2.内服薬の所定点数と所定単位

特別調剤基本料A、Bを算定する薬局における内服薬の所定点数とは、1回の処方箋受け付けのうち、所定単位ごとの内服薬の薬剤料をいいます。
 
所定単位とは、内服薬は1剤1日分、湯薬は1調剤ごとに1日分、内服用滴剤・浸煎薬は1調剤分を指します。

 

2-2.2024年度調剤報酬改定で変更になった容器代の返還について

2024年度の調剤報酬改定以前は、患者さんに薬剤交付で使用した容器のうち、再利用が可能な状態で返還されたものについては、徴収した実費を返還することとされていました。
 
しかし、薬局では返還された容器を当該患者さんや別の患者さんへ再利用することは、衛生上の理由などから行われていないのが現状です。
 
そのため、2024年度の調剤報酬改定では、現状を踏まえて「患者が当該容器を返還した場合は、当該容器本体部 が再使用できるものについては当該実費を返還する」の文言が削除され、「投薬時において薬剤の容器を交付する場合は、その実費を徴収できる」と改められました。
 
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省

 
🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら

3.使用薬剤料の計算方法

使用薬剤料を計算するためには、五捨五超入を理解する必要があります。ここでは、五捨五超入について解説するとともに、内服薬・内服用滴剤・頓服薬・外用薬の使用薬剤料の具体的な計算例について見ていきましょう。

 

3-1.五捨五超入とは?

五捨五超入とは、薬剤料を計算した時の端数を処理する方法です。薬価は「円」で表記されていますが、薬剤料を計算するためには「点」に変換しなければなりません。薬価を点数に換算する際には、端数を四捨五入ではなく五捨五超入することとされています。
 
五捨五超入では、薬価を10で除した時の小数点以下がちょうど「5」以下である場合は切り捨て、「5」よりわずかでも大きい場合は切り上げます。具体的な例を見ていきましょう。

 

■五捨五超入の例
薬価を10で除した値 点数
10.49 10点
10.499 10点
10.4999 10点
10.5 10点
10.51 11点
10.501 11点
10.5001 11点

 

上記のように、10で除した値の小数点以下が、「5」をわずかでも超えた場合には切り上げ、「5」以下の場合は切り下げとなります。レセコンで自動計算されるため、基本的には日常業務で計算することはないでしょう。
 
しかし、不具合や災害などによりレセコンが使用できないケースでは、使用薬剤料の手計算をしなければならないこともあり得ます。そういった時に備えて、五捨五超入の考え方を理解しておくことは大切です。

 

3-2.内服薬の計算例

内服薬の薬剤料の所定単位は、1剤1日分です。内服薬の計算は、1剤の薬価を合計し、15円を超えている場合は10で除して点数にします。算出された点数に処方日数を乗じた点数が内服薬の使用薬剤料となります。具体的な計算例は以下のとおりです。

 
【処方例】

A錠(薬価15.8円) 3錠
B錠(薬価12.8円) 3錠 1日3回 7日分

 

【使用薬剤料の計算例】
まずは、1日分の薬価を計算します。
 
A錠:15.8円×3錠=47.4円
B錠:12.8円×3錠=38.4円
47.4円+38.4円=85.8円
 
15円を超えているため、10円で除します。
 
85.8円÷10円=8.58点
 
小数点以下「.58」は「.5」超えているため、五捨五超入すると切り上げとなり、1日分の点数は「9点」となります。
 
9点に7日分を乗じた値(9点×7日分)が使用薬剤料「63点」です。
 
なお、1剤については、内服薬の薬剤調製料を算定する際と同様にカウントします。

 
🔽 薬剤調製料について解説した記事はこちら

 

3-3.内服用滴剤の計算例

内服用滴剤の所定単位は、1調剤分全量を1単位とします。全量に薬価を乗じて得た額が15円を超えている場合は、10円で除した点数を五捨五超入します。具体的な計算例は以下のとおりです。

 
【処方例】

A剤(薬価:16.0円/ml) 1回10滴 1本(20ml)

 

【使用薬剤料の計算例】
20ml×16.0円=320.0円
320.0円÷10円=32.0点
 
小数点第以下は「.0」となるため、使用薬剤料は「32点」となります。

 

3-4.頓服薬の計算例

頓服薬の薬剤料の所定単位は、1剤1調剤分です。頓服薬の計算は、薬価に全量を乗じて得た額を10円で除して、端数を五捨五超入します。具体的な計算例は以下のとおりです。

 
【処方例】

A錠(薬価15.0円) 1回3錠 7回分 頭痛時

 

【使用薬剤料の計算例】
15.0円×3錠×7回=315.0円
315.0円÷10円=31.50点
 
小数点以下が「.5」となっているため五捨五超入をすると切り捨てとなり、「31点」が使用薬剤料となります。

 

3-5.外用薬の計算例

外用薬の薬剤料の所定単位は、1調剤です。そのため、外用薬の計算は頓服薬と同様に、薬価に全量を乗じて得た額を10円で除して、端数を五捨五超入します。具体的な計算例は以下のとおりです。

 
【処方例】

Aテープ(薬価:30.5円/枚)1日1枚 28枚

 

【使用薬剤料の計算例】
30.5円×28枚=854円
854円÷10円=85.4点
 
小数点以下が「.4」のため五捨五超入すると切り捨てとなり、使用薬剤料は「85点」となります。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:『保険調剤Q&A 令和6年版』(編集:日本薬剤師会)Q194|じほう

4.使用薬剤料を算定する時の注意点

使用薬剤料を算定する時は、薬剤料とは別に徴収できる費用や患者さんが薬を紛失した際の負担金額などについて把握しておく必要があります。ここでは、使用薬剤料を算定する時の注意点をお伝えします。

 

4-1.薬剤の容器代や薬袋・薬包紙などの徴収

軟膏剤や液剤など、投薬時に薬剤を容器に詰めて交付する際は、容器代を実費で徴収できます。ただし、薬剤入りのチューブや薬剤使い捨てタイプの容器など、患者さんへ直接投薬することを目的とした製品は、容器代を実費で徴収できません。
 
また、薬包紙や薬袋の費用は別に徴収・請求できないことになっています。喘息治療剤の使用に必要な小型吸入器や噴霧器などを交付した場合は、機器の実費を徴収することで差し支えありませんが、返還された場合は患者さんへ実費の返還をしなければなりません。

 

4-2.患者さんが薬を紛失した場合

患者さんが交付した薬剤を帰宅途中や自宅で紛失してしまうこともあるでしょう。そういった場合には、処方箋が再発行されることも少なくありません。
 
患者さんの過失によって処方薬を紛失した場合の薬剤料は、患者さんの自己負担となります。

 

4-3.内服用液剤を投与時に使用する水

内服用液剤を投与する際に使用する水は、常水(水道水、自然水)を使用します。
 
しかし、特別な理由がある場合は、蒸留水を使用して差し支えないとされています。

5.使用薬剤料を計算できるようになろう

使用薬剤料の計算方法は、やや複雑です。平時では、レセコンによる自動計算を活用できますが、レセコンの不具合や災害などによって手計算をしなければならないケースもあるでしょう。そういった時のために、使用薬剤料の計算ができるようになることはとても大切です。日常業務の合間に、手計算の練習をしてみてはいかがでしょうか。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。