薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.11.15公開日:2024.06.19 薬剤師のスキルアップ

服薬管理指導料とは?点数・算定要件や2024年度改定のポイントを解説

編集:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬局薬剤師の業務については、これまでも対物業務から対人業務にシフトする流れが進んでおり、地域医療への参画が推進されています。2024年度の診療報酬改定では「服薬管理指導料」においても対人業務への評価を高める見直しが行われ、服薬管理指導料3の対象患者さんや服薬管理指導料の特例についての要件などが変更されています。この記事では、服薬管理指導料の変更点や点数・算定要件、加算項目などについて詳しく解説します。

1.服薬管理指導料とは?

「服薬管理指導料」とは、服薬指導などに関わる業務に対して算定される薬学管理料です。薬剤の用法用量などについて基本的な説明をするほかに、患者さんが適切かつ安全に薬を服用できるよう、服用歴や残薬状況、アレルギー歴などの確認・指導を行い、継続的に服薬状況を把握することが求められます。
 
また、服薬管理指導料には、乳幼児やハイリスク薬、麻薬、吸入薬などで細やかなフォローを行った場合や、医療的ケア児に対する薬学的管理を行った場合に算定できる加算項目があります。

 
🔽 薬剤師の服薬指導について詳しく解説した記事はこちら

2.服薬管理指導料の2024年改定における変更点

2024年度の診療報酬改定では、服薬管理指導料3の対象患者さんや算定要件、服薬管理指導料の特例、調剤後薬剤管理指導加算について見直されました。それぞれの変更点についてお伝えします。

 

2-1.服薬管理指導料3の見直し

2024年度の診療報酬改定で、特定養護老人ホームに入所している患者さん以外に、ショートステイの利用者さんや、介護医療院または介護老人保健施設(老健)へ入所している患者さんについても、要件を満たすことで服薬管理指導料3を算定できるようになりました。
 
算定回数については「月4回まで」と上限回数が設けられ、処方箋受付1回につき算定することとされています。

 

2-2.服薬管理指導料の特例の見直し

服薬管理指導料の特例とは、かかりつけ薬剤師を持つ患者さんへの服薬指導を、かかりつけ薬剤師以外の薬剤師が行った際に算定する指導料です。
 
2022年度改定では、かかりつけ薬剤師の代わりに服薬指導ができる薬剤師は、要件を満たす薬剤師1名までとされていました。2024年度の改定で、条件を満たす「複数人」の薬剤師で対応可能となります。

 

2-3.調剤後薬剤管理指導加算の見直し

調剤後薬剤管理指導加算は、2024年度改定で調剤後薬剤管理指導料と名称が変更になり、服薬管理指導料の加算項目から除かれました。
 
調剤後薬剤管理指導料は、糖尿病や慢性心不全の患者さんに対して丁寧なフォローを行い、結果を文書によって医療機関へ情報提供した場合に月1回60点を算定できます。
 
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省

 
🔽 調剤後薬剤管理指導料について詳しく解説した記事はこちら


 
🔽 2024年度調剤報酬改定について詳しく解説した記事はこちら

3.服薬管理指導料の点数

服薬管理指導料の算定点数は以下のようになっており、2024年度の改定における点数の変更はありません。

 

■服薬管理指導料の点数
区分 点数
服薬管理指導料1 45点
服薬管理指導料2 59点
服薬管理指導料3 45点
服薬管理指導料4 45点または59点

参照:調剤報酬点数表|厚生労働省

 

次項で、それぞれの算定要件について詳しく解説します。

4.服薬管理指導料の算定要件

服薬管理指導料は、服薬指導を行う場所や方法などによって算定区分が異なります。薬局で服薬指導を行う場合には服薬管理指導料1または2、高齢者施設の場合は3、オンライン服薬指導の場合は4を算定します。いずれも、特別調剤基本料Bを算定する薬局は算定できません。
 
服薬管理指導料1、2、3、4を算定するためには、患者さんの薬剤服用歴や服用中の医薬品などについて確認した上で、薬剤の服用に関して基本的な説明と必要な指導を行わなければなりません。

 
■基本的な説明

● 用法、用量、効能、効果
● 副作用、相互作用
● 調剤した薬剤に関する情報 など

 
■必要な指導

以下の点を確認した上で必要な服薬指導を行う。
● 服薬状況、体調の変化、残薬の状況
● アレルギー歴、副作用歴
● 既往歴、合併症、他科受診の有無、併用薬 など

 

そのほか、お薬手帳の活用や抗菌薬の適正使用、ポリファーマシー対策などについて対応することも算定要件となっています。加えて、継続的に服薬管理を行い、必要に応じた継続的服薬指導を実施することとされています。
 
続いて、服薬管理指導料における区分ごとの対象患者さんについてお伝えします。

 

4-1.服薬管理指導料1

服薬管理指導料1は、3カ月以内に再度処方箋を持参し、手帳を提示した患者さんに対して服薬指導を行った場合に45点を算定します。

 

4-2.服薬管理指導料2

服薬管理指導料2は、服薬管理指導料1の対象以外の患者さんに対して服薬指導を行った場合に59点を算定します。具体的には以下のような患者さんが対象です。

 

● 初めて処方箋を持参した患者さん
● 3カ月を超えて再度処方箋を持参した患者さん
● 3カ月以内に再度処方箋を持参して、手帳を提示しない患者さん

 

4-3.服薬管理指導料3

服薬管理指導料3は、以下の患者さんに対して、施設職員と連携しつつ必要な指導を行った場合に、月4回まで処方箋受付1回につき45点を算定できます。

 

● 地域密着型介護老人福祉施設もしくは介護老人福祉施設に入所している患者さん
● 介護医療院または介護老人保健施設に入所している患者さん
● 短期入所生活介護もしくは介護予防短期入所生活介護を受けている患者さん

 

服薬管理指導料3の対象となる患者さんが、入所または利用している各施設には以下のような違いがあります。

 

■介護施設の違い
施設 目的
介護老人福祉施設
(特別養護老人ホーム)
要介護高齢者のための生活施設
介護医療院 要介護高齢者の長期療養・生活のための施設
介護老人保健施設 要介護高齢者にリハビリなどを提供し、在宅復帰・在宅支援を目指す施設

参照:介護医療院とは?|厚生労働省

 

短期入所生活介護とは、利用者さんが可能な限り自立した生活ができるように、施設を活用することで、利用者さんの心身機能を維持したり、家族の身体的・精神的な負担を軽減したりするのを目的に実施されます。ショートステイとも呼ばれています。

 

参照:どんなサービスがあるの? – 短期入所生活介護(ショートステイ)|厚生労働省介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」

 

なお、介護医療院または介護老人保健施設に入所している患者さんについては、「当該施設等の医師以外の医師が、専門的な薬学的管理を必要とする薬剤に関する処方箋を発行した場合に限る」とされています。専門的な薬学的管理を必要とする薬剤には、以下のようなものがあります。

 
■専門的な薬学的管理を必要とする薬剤

● 抗悪性腫瘍剤
● HIF-PH阻害剤
● 疼痛コントロールのための医療用麻薬
● 抗ウイルス剤

○ B型肝炎またはC型肝炎の効能もしくは効果を有するもの
○ 後天性免疫不全症候群またはHIV感染症の効能もしくは効果を有するもの

参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省

 

参照:高齢者の医療の確保に関する法律の規定による療養の給付等の取扱い及び担当に関する基準|厚生労働省

 

4-4.服薬管理指導料4

服薬管理指導料4は、オンライン服薬指導を行った場合に算定できます。患者さんが3カ月以内に再度処方箋を持参し、お薬手帳を提示した場合は45点を、それ以外の場合は59点を算定します。59点を算定するケースは、服薬管理指導料2に該当する患者さんと同様です。
 
ただし、特別養護老人ホームなどの患者さんや、介護医療院または介護老人保健施設に入所している患者さんなど(当該患者さんの薬剤を管理している当該施設の職員を含む)に対してオンライン服薬指導を行った場合には、服薬管理指導料3を算定することとされており、服薬管理指導料4は算定できません。
 
オンライン服薬指導では、患者さんの薬剤服用歴などを経時的に把握するため、お薬手帳を有効に活用するよう求められています。また、薬剤を配送する場合は受領の確認を行わなければなりません。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 
🔽 オンライン服薬指導について詳しく解説した記事はこちら

5.服薬管理指導料の加算項目

服薬管理指導料の加算項目には以下のものがあります。

 

■服薬管理指導料の加算項目
加算項目 算定点数
麻薬管理指導加算 22点
特定薬剤管理指導加算1 新規処方:10点
指導の必要性がある場合:5点
特定薬剤管理指導加算2 100点
特定薬剤管理指導加算3 5点
小児特定加算 350点
吸入薬指導加算 30点
乳幼児服薬指導加算 12点

参照:調剤報酬点数表|厚生労働省

 

ここでは、加算項目ついてお伝えします。

 

5-1.麻薬管理指導加算

2024年度の改定で、麻薬管理指導加算は以下の算定要件を満たすことで22点を算定できるようになりました。

 

● 麻薬の服用および保管の状況、副作用の有無などについて電話などによる確認

○ 電話以外の情報通信機器を用いてもよいが、電子メールの一斉送信などは不可

● 個々の患者さんの状況に合わせた服薬指導
● 効果や体調変化の有無などは緩和ケアのガイドラインを参照して実施

 

緩和ケアのガイドラインについては、以下などを参照することとされています。

 

がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(日本緩和医療学会)
新版 がん緩和ケアガイドブック(日本医師会監修 厚生労働科学特別研究事業「適切な緩和ケア提供のための緩和ケアガイドブックの改訂に関する研究」班」)

 

5-2.特定薬剤管理指導加算1、2、3

特定薬剤管理指導加算は、安全管理が必要な医薬品に対して必要な指導・管理を行った場合に算定できる薬学管理料です。3区分あり、それぞれ算定要件や点数が異なります。

 

■特定薬剤管理指導加算の主な算定要件と点数
区分 主な算定要件 点数
特定薬剤管理指導加算1 ハイリスク薬が新規で処方され、必要な指導を行った場合 10点
ハイリスク薬の用法や用量の変更、副作用の発現などにより指導を行った場合 5点
特定薬剤管理指導加算2 施設基準を満たした薬局において、悪性腫瘍の治療に係る薬剤の投薬・注射に関して、電話などで服用状況や副作用の有無などについて患者さんに確認し、保険医療機関に必要な情報を文書により提供した場合 100点
特定薬剤管理指導加算3 ● 医薬品リスク管理計画(RMP)の策定が義務付けられている医薬品が新しく処方された患者さんに、製造販売業者が作成したRMPに係る情報提供資料を用いて指導を行った場合
● 選定療養の対象となる先発医薬品を選択しようとする患者さんに対して説明を行った場合
● 医薬品の供給状況によって銘柄変更が必要な患者さんに対して説明を行った場合
5点

 
🔽 特定薬剤管理指導加算1・2・3について詳しく解説した記事はこちら




 

5-3.小児特定加算

小児特定加算は、医療的ケア児である患者さんまたはその家族に対し、服用に関して必要な指導を行い、かつ当該内容を手帳に記載した場合に350点を加算できます。
 
医療的ケア児とは、人工呼吸器や胃ろうなどを使用しており、自宅でのたんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な児童を指します。対象となるのは、児童福祉法第56条の6第2項に規定される障害児である18歳未満の患者さんとされています。
 
参照:医療的ケア児について|厚生労働省
参照:児童福祉法|e-Gov法令検索
 
🔽 小児特定加算について詳しく解説した記事はこちら

 

5-4.吸入薬指導加算

吸入薬指導加算は、喘息または慢性閉塞性肺疾患の患者さんへ吸入手技の指導を行い、結果を医療機関に情報提供した場合に、3カ月に1回30点を算定します。
 
🔽 吸入薬指導加算について詳しく解説した記事はこちら

 

5-5.乳幼児服薬指導加算

乳幼児服薬指導加算は、6歳未満の乳幼児またはその家族に調剤に関して必要な情報を確認し、指導を行った上で、指導内容を手帳に記載した際に12点を算定します。
 
🔽 乳幼児服薬指導加算について詳しく解説した記事はこちら

 

参照:調剤報酬点数表|厚生労働省
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

6.服薬管理指導料の特例(かかりつけ薬剤師と連携する薬剤師の場合)

「服薬管理指導料の特例」(かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が対応した場合)とは、かかりつけ薬剤師が対応できないタイミングで患者さんが来局するケースを想定した服薬管理指導料です。
 
算定対象者は、かかりつけ薬局での直近の調剤で、かかりつけ薬剤師指導料、または、かかりつけ薬剤師包括管理料を算定した患者さんです。やむを得ない事情でかかりつけ薬剤師が対応できない場合、患者さんの同意を得た上で、かかりつけ薬剤師と連携を取っている薬剤師が指導などを行った場合に、59点を算定できます。

 
🔽 かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料について詳しく解説した記事はこちら

 

これまで、かかりつけ薬剤師に代わって服薬指導を行う薬剤師は、十分な経験を持つ薬剤師1名が患者さんからの同意を得た場合に限定されていましたが、2024年度の診療報酬改定で、かかりつけ薬剤師指導料などの施設基準を満たす複数の薬剤師が対応できるようになりました。
 
ただし、服薬管理指導料の特例を算定するためには、事前に患者さんの同意を得る必要があります。同意に関して同意書に追記する場合は、追記したことが確認できるよう日付を記載し、患者さんの署名を得るようにしましょう。
 
なお、服薬管理指導料の特例は2種類あり、「適切な手帳の活用実績が相当程度あると認められない保険薬局」については13点を算定することとされています。

7.対人業務を強化して薬剤師の役割を発揮しよう

2024年度の診療報酬改定では、介護施設やショートステイを利用する患者さんへの服薬指導についての評価が見直されました。また、かかりつけ薬剤師がやむを得ない事情で患者さんに対応できない場合の特例についても要件が緩和されました。
 
服薬管理の面では、引き続き個々の患者さんに応じた指導が求められ、症状コントロールのための継続的な服薬管理において、薬剤師の指導が重要視されています。
 
より細やかに、効率的に、患者さんの健康サポートを行える薬剤師が求められています。算定要件をあらためて理解し、スムーズに業務を進められるようスキルアップを図りましょう。

 
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編集/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。