薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.11.15公開日:2024.09.24 薬剤師のスキルアップ

時間外等加算(時間外・休日・深夜)とは?薬局の算定要件や点数を解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

時間外等加算を算定するためには、算定要件や夜間・休日等加算との違いを正しく理解することが大切です。本記事では、時間外等加算と夜間・休日等加算の算定要件や点数、両者の違いについて解説するとともに、土曜日や平日に算定する際のよくある質問と回答を紹介します。

1.薬局の時間外等加算(時間外・休日・深夜)とは?

時間外等加算(あるいは時間外加算等)とは、時間外加算・休日加算・深夜加算を合わせた略称で、薬局が開局時間外に調剤を実施したことを評価するものです。算定要件を満たすことで、薬剤調製料に加算できます。

 
🔽 薬剤調製料について解説した記事はこちら

 

医科診療報酬においても、同様の加算があり、初診料や再診料、外来診療料などに加算可能です。
 
参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省

2.薬局の時間外等加算の算定要件・点数

時間外等加算は、薬局が開局時間以外の時間帯に調剤を行った場合に算定できる加算です。
 
時間外等加算を算定する薬局は、開局時間を薬局の内側と外側の分かりやすい場所に表示しなければなりません。
 
薬局における時間外等加算の点数は、以下のとおりです。

 

■時間外等加算の点数
加算名 基礎額に対する割合
時間外加算 100%
休日加算 140%
深夜加算 200%

参照:調剤報酬点数表|厚生労働省
 
上記の加算については、重複して算定することができません。
 
続いて、時間外加算、休日加算、深夜加算の算定要件と、基礎額について詳しく見ていきましょう。

 

2-1.時間外加算の算定要件

時間外加算の算定要件には、対象となる時間帯と薬剤服用歴等への記載について定められています。

 

■時間外加算の算定要件
1.時間外加算の対象となる以下の時間帯に調剤応需をすること
 ● おおむね8時前と18時以降(深夜にあたる22時から翌6時までを除く)
 ● 休日加算の対象となる休日以外の日を終日休業日とする薬局の休業日
2.処方箋の受付時間を患者さんの薬剤服用歴等に記載すること

参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
 
なお、時間外加算では、「各都道府県における薬局の開局時間の実態や患者さんの来局上の便宜などを考えて、時間外として取り扱うこと」とされています。
 
薬局の常態として、開局時間外であっても開局時間内と同様の取り扱いで調剤を行っている場合は、時間外加算が算定できません。
 
また、時間外加算には特例があります。特例の適用を受ける薬局が、おおむね18時~22時または6時~8時(当該地域において一般の保険薬局がおおむね調剤応需の態勢を解除してから、翌日調剤応需の態勢を再開するまでの深夜時間を除いた時間)に調剤を行った場合、基礎額の100%に相当する点数を加算できます。

 

■時間外加算の特例が適用される薬局
● 救急医療の確保のために一般的な薬局の開局時間以外となる時間帯に常態として開局している
● 国または地方公共団体などによって夜間救急に対応する目的で設けられている

 

上記の要件を全て満たす薬局が特例の適用を受けられます。

 

2-2.休日加算の算定要件

休日加算の算定要件には、対象となる休日と対象患者さんについて定められています。

 

■休日加算の算定要件
1.休日加算の対象となる以下の休日に調剤応需をすること
 ● 日曜日
 ● 国民の祝日
 ● 1月2、3日
 ● 12月29、30、31日
2.以下に該当する患者さんであること
 ① 以下のいずれかの薬局で休日調剤を受けた患者さん
 ● 救急医療対策の一環として設けられた薬局で、輪番制による休日当番薬局
 ● 地域の行政機関からの要請で、休日に開局して調剤を行っている薬局
 ② 本来、休日に開局しないこととしている薬局で、または休日に開局して調剤を行っている薬局の開局時間外(深夜を除く)に、急病などのやむを得ない理由で調剤を受けた患者さん

参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
 
休日加算は、対象となる休日を開局時間としていない薬局が、要件を満たすことで算定できます。

 

2-3.深夜加算の算定要件

深夜加算の算定要件には、対象となる時間帯と対象患者さん、薬剤服用歴等の記載について定められています。

 

■深夜加算の算定要件
1.22時から翌6時までに調剤応需をすること
2.以下に該当する患者さんであること
 ① 以下のいずれかの薬局で深夜に調剤を受けた患者さん
 ● 救急医療対策の一環として設けられた薬局で、輪番制による深夜当番薬局
 ● 地域支援医療の観点から行政の要請で、深夜に開局して調剤を行っている薬局
 ② 本来、深夜を開局時間としていない薬局や、開局時間が深夜時間帯まで及んでいる薬局の開局時間と深夜時間帯とが重複していない時間に、急病などのやむを得ない理由で調剤を受けた患者さん
3.処方箋の受付時間を薬剤服用歴等に記載すること

参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
 
なお、上記の2の①以外の理由で、常態としてまたは臨時に深夜時間帯を開局時間としている薬局については、深夜加算は算定できません。

 

2-4.時間外等加算の基礎額とは?

時間外等加算の点数は、時間外加算、休日加算、深夜加算で異なりますが、基礎額の計算方法は共通です。時間外等加算における基礎額とは、次の項目の合計額のことです。

 

■基礎額の内訳
● 調剤基本料
● 薬剤調製料
● 無菌製剤処理加算
● 調剤管理料

 

ただし、以下の加算は基礎額に含まれません。

 

■基礎額に含まれない加算
● 麻薬・向精神薬・覚醒剤原料・毒薬加算
● 自家製剤加算
● 計量混合調剤加算
● 重複投薬・相互作用等防止加算
● 調剤管理加算
● 医療情報取得加算

 

また、かかりつけ薬剤師包括管理料を算定する場合の時間外等加算については、かかりつけ薬剤師包括管理料の点数を基礎額とします。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 
🔽 かかりつけ薬剤師包括管理料について解説した詳しい記事はこちら

3.夜間・休日等加算の算定要件と点数

夜間・休日等加算は、以下の算定要件を満たした場合に、処方箋受け付け1回につき40点を算定します。

 

■夜間・休日等加算の算定要件
1. 薬局が表示する開局時間内で、以下の時間帯に調剤を行うこと
 ● 平日の19時から翌8時まで、または土曜日の13時から翌8時まで(休日加算の対象となる休日を除く)
 ● 休日加算の対象となる休日(日曜日、国民の祝日、1月2~3日、12月29~31日)
2.開局時間を薬局内外の分かりやすい場所に掲示すること
3.夜間・休日等加算の対象となる日と受付時間帯を薬局内の分かりやすい場所に掲示すること
4.処方箋の受付時間を薬剤服用歴等に記載すること

参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

ただし、時間外等加算の要件を満たす場合は、夜間・休日等加算ではなく時間外等加算を算定します。

4.薬局の時間外等加算と夜間・休日等加算の違いとは?

時間外等加算と夜間・休日等加算の違いは、開局時間に該当するかという点です。
 
時間外等加算は、開局時間以外の調剤応需を評価しているのに対し、夜間・休日等加算は、開局時間のうち夜間・休日にあたる時間帯の調剤応需を評価しています。
 
参照:『保険調剤Q&A 令和4年版』Q89|じほう(編集:日本薬剤師会)
 
時間外等加算と夜間・休日等加算の違いは、以下のとおりです。

 

■時間外等加算と夜間・休日等加算の違い
加算名 点数 時間帯 薬歴への受付時間の記載 開局時間
時間外等加算 時間外加算 基礎額の100% ● 6時~8時
● 18時~22時
あり 時間外
休日加算 基礎額の140% ● 日曜日
● 国民の祝日
● 1月2~3日
● 12月29~31日
なし
深夜加算 基礎額の200% 22時~翌6時 あり
夜間・休日等加算 40点 ● 【平日】19時~翌8時
● 【土曜日】13時~翌8時
あり 時間内

 

夜間の救急医療確保のために国または地方公共団体などが開設した薬局については、夜間帯が開局時間となりますが、特例として時間外加算の適用を受けられます。

5.時間外等加算と夜間・休日等加算に関する事例Q&A

処方箋応需をする薬局では、状況によって、時間外等加算を算定できるか、時間外等加算と夜間・休日等加算のどちらを算定すればいいのかなど、迷ってしまうこともあるでしょう。
 
ここでは、具体的な事例についてQ&A形式で解説します。
 
参照:『保険調剤Q&A 令和6年版』|じほう(編集:日本薬剤師会)

 

5-1.【Q1】開局時間内である20時に処方箋を受け付けた場合、時間外加算の算定対象となるか?

開局時間内のため算定対象外となります。また、開局時間外であっても、薬局が常態として調剤応需態勢をとり、開局時間内と同じように調剤を行っている場合は、時間外加算の対象となりません。
 
ただし、このケースでは、夜間・休日等加算の対象となる時間帯であるため、夜間・休日等加算が算定できます。

 

5-2.【Q2】開局時間内に持参した処方箋について、開局時間外に患者さんが薬を取りに来た場合、時間外加算を算定できるか?

時間外加算は、処方箋を受け付けた時間帯が調剤応需の態勢を解除している場合に算定できるものです。
 
そのため、このケースでは、処方箋の受付時は調剤応需の態勢をとっているため、時間外加算の対象にはならないと解釈できます。

 

5-3.【Q3】開局時間外である平日の21時に急病患者さんのために薬局を開き、調剤後に別の患者さんから調剤の求めがあった場合、時間外加算の算定はどうなるか?

1人目、2人目ともに、時間外加算が算定できます

 

5-4.【Q4】隣の医療機関が休日当番のため、輪番制の依頼はないが臨時で開局した場合は休日加算が算定できるか?

輪番制による休日当番薬局でないため、休日加算には該当しません
 
ただし、通常の開局時間ではないため、調剤応需の態勢をとった上で、薬局の内外に所定の掲示をすることで夜間・休日等加算が算定できます。

 

5-5.【Q5】12月29日~1月3日は夜間・休日等加算と休日加算のどちらを算定するか?

休日の取り扱いとなる12月29日~1月3日については、輪番制による休日当番薬局、または開局日ではないが急病などでやむを得ずに調剤応需をした場合に休日加算を算定します。
 
これらに該当しない場合は、夜間・休日等加算を算定することになります。

 

5-6.【Q6】同一薬局で分割調剤を行った場合、2回目以降の調剤時に夜間・休日等加算を算定することはできるか?

夜間・休日等加算は、処方箋受け付け1回につき算定するものとされているため、同一薬局で分割調剤を行った際の2回目以降の調剤については、夜間・休日等加算は算定できません

 
🔽 分割調剤について解説した記事はこちら

6.時間外等加算と夜間・休日等加算の違いを理解しよう

時間外等加算と夜間・休日等加算は類似しているため、算定の可否に迷うことがあるでしょう。時間外等加算は、薬局の開局時間外に調剤に応需した場合の評価であるのに対し、夜間・休日等加算は夜間・休日を開局時間としている薬局を評価するものです。正しく算定するためにも、時間外等加算と夜間・休日等加算の違いを理解しましょう。

 
🔽 調剤報酬に関連する記事はこちら






































執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。