薬剤師のスキルアップ 公開日:2024.11.26 薬剤師のスキルアップ

在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料とは?1と2の算定要件を解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は、2024年度調剤報酬改定で見直されました。本記事では、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料1・2の算定要件や点数について解説するとともに、調剤管理料の重複投薬・相互作用等防止加算との違い、算定時の注意事項、レセプト摘要欄への記載事項などをお伝えします。

1.在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料とは?

在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料とは、在宅患者訪問薬剤管理指導料などを算定している患者さんに対して、薬剤服用歴などに基づき、重複投薬や相互作用の防止などの目的で医師に疑義照会や処方提案を行い、処方が変更された場合に算定できる薬学管理料です。

 

1-1.2024年度調剤報酬改定における変更点

2024年度の調剤報酬改定により、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の「残薬調整に係るものの場合」の点数が30点から20点へ減点されました。
 
また、「処方箋交付前に医師と処方内容を相談し、処方に係る提案が反映された処方箋を受け付けた場合」の評価が新設されています。

 

■2024年度調剤報酬改定における変更点
区分 改定前の点数 改定後の点数
1.処方箋に基づき医師へ疑義照会し、処方内容が変更された場合 イ 残薬調整に係るもの以外の場合 40点 40点
ロ 残薬調整に係るものの場合 30点 20点
2.処方箋交付前に医師と処方内容を相談し、処方に係る提案が反映された処方箋を受け付けた場合 イ 残薬調整に係るもの以外の場合 40点
ロ 残薬調整に係るものの場合 20点

 

在宅医療の現場では、処方箋が交付される前に薬剤師が医師に処方提案などを行うケースがあります。交付された処方箋は薬剤師の提案が反映されたものとなっているため、疑義照会を必要とするケースは少なくなるでしょう。
 
業務負担の軽減などにつながる取り組みではあるものの、従来は評価されていなかった業務でした。2024年度の調剤報酬改定では、こうした業務が評価されるよう見直されています。
 
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
参照:在宅(その5)|厚生労働省

 
🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら

 

1-2.調剤管理料の重複投薬・相互作用等防止加算との違い

重複投薬・相互作用等防止加算とは、薬剤服用歴などに基づき、重複投薬や相互作用を防止することなどを目的として医師に疑義照会を行い、処方が変更された場合に算定できる調剤管理料の加算です。
 
在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料と同じく、2024年度の調剤報酬改定により「残薬調整に係るものの場合」の点数が30点から20点に見直されました。
 
在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料と重複投薬・相互作用等防止加算の算定要件は重なる部分が多いものの、対象となる患者さんや、処方箋交付前の処方提案が反映された処方箋を受け付けた場合の評価の有無などに違いがあります。主な両者の違いや算定点数は、以下のとおりです。

 

■在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料と重複投薬・相互作用等防止加算の比較
  在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料 重複投薬・相互作用等防止加算
対象患者 在宅医療を受ける患者さん
 
※以下を算定する患者さんには算定不可
● 調剤管理料の重複投薬・相互作用等防止加算
● 服薬管理指導料
● かかりつけ薬剤師指導料
● かかりつけ薬剤師包括管理料
一般の患者さん
 
※以下を算定する患者さんには算定不可
● 在宅患者訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急時等共同指導料
● 居宅療養管理指導費
● 介護予防居宅療養管理指導費
処方箋交付前の処方提案が反映された処方箋を受け付けた場合 算定項目あり 算定項目なし
算定点数 残薬調整に係るもの以外の場合 40点
残薬調整に係るものの場合 20点

 
🔽 重複投薬・相互作用等防止加算について解説した記事はこちら

2.在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の点数

在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の点数は、以下のとおりです。

 

区分 点数
1.処方箋に基づき医師へ疑義照会し、処方内容が変更された場合 イ 残薬調整に係るもの以外の場合 40点
ロ 残薬調整に係るものの場合 20点
2.処方箋交付前に医師と処方内容を相談し、処方に係る提案が反映された処方箋を受け付けた場合 イ 残薬調整に係るもの以外の場合 40点
ロ 残薬調整に係るものの場合 20点

 

疑義照会により処方変更が行われた場合と、処方箋交付前の処方提案に基づく内容の処方箋を受け付けた場合で算定区分が異なるものの、点数は同一となっています。

 

参照:調剤報酬点数表|厚生労働省

3.在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の算定要件

在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は、以下を算定している患者さんについて要件を満たすことで算定できる薬学管理料です。

 

● 在宅患者訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者オンライン薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急時等共同指導料
● 居宅療養管理指導費
● 介護予防居宅療養管理指導費

 

受け付けた処方箋について医師へ疑義照会を行い、処方変更があった場合は在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料1、処方箋交付前に処方提案を行い、処方変更された処方箋を受け付けた場合は在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料2を、処方箋受け付け1回につき算定します。
 
同時に複数の処方箋を受け付けて薬剤を変更した場合や、複数項目について処方変更した場合であっても、重複して算定することはできません。
 
在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料1・2は、それぞれ「イ 残薬調整に係るもの以外の場合」「ロ 残薬調整に係るものの場合」があり、処方変更の内容によって算定区分が異なります

 
🔽 在宅患者訪問薬剤管理指導料について解説した記事はこちら

 
🔽 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料について解説した記事はこちら

 
🔽 居宅療養管理指導について解説した記事はこちら

 

3-1.「イ 残薬調整に係るもの以外の場合」とは?

残薬調整に係るもの以外の場合とは、以下のものが該当します。

 

ア 併用薬との重複投薬
イ 併用薬、飲食物等との相互作用
ウ そのほか薬学的観点から必要と認める事項

 

「ア 併用薬との重複投薬」については、薬理作用が類似する場合を含みます。「ウ そのほか薬学的観点から必要と認める事項」については、アレルギー歴や過去の副作用などが挙げられます。

 

3-2.「ロ 残薬調整に係るものの場合」を算定する際の留意点

「残薬調整に係るものの場合」を算定する際も、処方箋の受け付け後に疑義照会で処方変更が行われた場合は在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料1を、処方箋交付前の処方提案で内容が変更された処方箋を受け付けた場合は在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料2を算定します。
 
また、残薬が生じる理由について、薬剤服用歴などの確認や患者さんへの聞き取りを行った上で薬学的分析を行い、必要に応じて医師へ情報提供することとされています。

 

3-3.薬剤服用歴等への記載事項

受け付けた処方箋について疑義照会を行い、処方変更があった場合には、疑義照会の内容の要点と変更内容を薬剤服用歴などに記載します。
 
処方箋の交付前に、医師へ処方提案などを行った場合は、以下について薬剤服用歴などに記載することとされています。

 

● 実施日時
● 処方提案の内容の要点
 1.具体的な処方変更の内容
 2.提案に至るまでの薬学的見地から検討した内容・理由 など

 

なお、ICTを活用して服薬情報などの情報共有などをすることで処方提案をした場合には、実施した日時が記録され、必要に応じて内容を随時確認できることが望ましいとされています。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

4.在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の算定における注意点

在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料を算定するにあたっては、同時算定できない指導料・管理料や介護保険が適用される患者さんへの算定について理解しておくことが大切です。

 

4-1.同時算定できない指導料・管理料

在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料と同時算定できない指導料・管理料には、以下のものがあります。

 

● 服薬管理指導料
 ○ 手帳減算に該当する場合
 ○ かかりつけ薬剤師と連携するほかの薬剤師が対応した場合
● かかりつけ薬剤師指導料
● かかりつけ薬剤師包括管理料

参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
 

また、特別調剤基本料Bを算定している薬局も算定できません。

 
🔽 服薬管理指導料について解説した記事はこちら

 
🔽 かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料について解説した記事はこちら

 
🔽 特別調剤基本料について解説した記事はこちら

 

4-2.介護保険が適用される場合

居宅療養管理指導費または介護予防居宅療養管理指導費を算定する患者さんについても、算定要件を満たすことで在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の算定が可能です。
 
介護保険が適用される患者さんに算定できる調剤報酬については、医療保険と介護保険の給付調整を行っています。介護保険が適用される患者さんは介護保険が優先されるため、「在宅患者訪問薬剤管理指導料」を算定できません。
 
在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は、「在宅患者訪問薬剤管理指導料などを算定している患者さん」が対象ですが、介護保険が適用される患者さんについては給付調整の対象となっていないため算定可能です。
 
参照:保険調剤Q&A 令和6年版 Q192|じほう(編集:日本薬剤師会)

5.在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料1・2のレセプト摘要欄への記載事項

続いて、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料のレセプト摘要欄への記載事項についてお伝えします。

 

5-1.在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料1を算定する場合

残薬調整に係るもの以外の場合についてのレセプトコメントは、以下のとおりです。

 

■処方医に連絡・確認を行った内容の要点
820101035 内容の要点(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料):
同種・同効の併用薬との重複投薬
820101036 内容の要点(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料):
併用薬・飲食物等との相互作用
820101037 内容の要点(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料):
過去のアレルギー歴、副作用歴
820101275 内容の要点(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料):
年齢や体重による影響
820101276 内容の要点(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料):
肝機能、腎機能等による影響
820101039 内容の要点(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料):
授乳・妊婦への影響
830100777 内容の要点(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料):
その他薬学的観点から必要と認められる事項;*******

 

5-2.在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料2を算定する場合

「残薬調整に係るもの以外の場合」についての記載事項は3項目に分かれており、それぞれについてレセプトコメントを残す必要があります。

 

■処方箋の交付前に行った処方医への処方提案の内容の要点
820101277 内容の要点(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前):
同種・同効の併用薬との重複投薬

820101278 内容の要点(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前):
併用薬・飲食物等との相互作用

820101279 内容の要点(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前):
過去のアレルギー歴、副作用歴

820101280 内容の要点(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前):
年齢や体重による影響

820101281 内容の要点(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前):
肝機能、腎機能等による影響

820101282 内容の要点(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前):
授乳・妊婦への影響

830100915 内容の要点(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前):
その他薬学的観点から必要と認める事項;******

 

■患者へ処方箋を交付する前に処方医と処方内容を相談した年月日
850190268 相談年月日(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前);
(元号)yy“年”mm“月”dd“日”

 

■薬剤の変更内容
820101283 薬剤の変更内容(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前):
薬剤の追加
820101284 薬剤の変更内容(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前):
薬剤の削減
820101285 薬剤の変更内容(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前):
同種同効薬への変更
820101286 薬剤の変更内容(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前):
剤形の変更
820101287 薬剤の変更内容(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前):
用量の変更
820101288 薬剤の変更内容(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前):
用法の変更
830100916 薬剤の変更内容(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:前):
その他;******

 

残薬調整に係るものの場合は、以下のレセプトコメントを記載します。

 

■患者へ処方箋を交付する前に処方医と処方内容を相談した年月日
850190269 相談年月日(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:事前の残薬調 整);
(元号)yy“年”mm“月”dd“日”

参照:「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について|厚生労働省

6.在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の算定要件を理解しよう

在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は、残薬調整や重複投薬・相互作用に関するもの以外にも、アレルギー歴や副作用歴、年齢・体重、肝機能・腎機能によるものも算定対象です。薬剤の知識を深めるとともに、患者さんへ丁寧に聞き取りを行うことが、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の算定につながるでしょう。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。