- 1.在宅患者緊急時等共同指導料とは?
- 2.在宅患者緊急時等共同指導料の点数
- 3.在宅患者緊急時等共同指導料の算定要件
- 3-1.医師への情報提供
- 3-2.ビデオ通話によるカンファレンスへの参加が可能
- 3-3.薬剤服用歴への記載事項
- 4.在宅患者緊急時等共同指導料の加算
- 4-1.麻薬管理指導加算
- 4-2.在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算
- 4-3.乳幼児加算
- 4-4.小児特定加算
- 4-5.在宅中心静脈栄養法加算
- 5.在宅患者緊急時等共同指導料の算定における注意点
- 5-1.在宅患者緊急時等共同指導料が算定できない場合
- 5-2.午前中に在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定し、夕方に在宅患者緊急時等共同指導料に関する薬学的管理指導を行った場合
- 5-3.カンファレンス1回につき薬学的管理指導を2回実施した場合
- 6.在宅患者緊急時等共同指導料のレセプト摘要欄への記載事項
- 6-1.調剤を行っていない月に在宅患者緊急時等共同指導料を算定する場合
- 6-2.介護老人福祉施設に入所中の末期悪性腫瘍の患者さんに実施した場合
- 7.多職種と連携して患者さんをサポートしよう
1.在宅患者緊急時等共同指導料とは?
在宅患者緊急時等共同指導料とは、在宅で療養を行っている患者さんの状態が急変したときや診療方針の変更を行う際などに、医療関係職種などが集まりカンファレンスを実施することで、情報共有をしたり、適切な治療方針を立てたりする取り組みを評価するものです。
2.在宅患者緊急時等共同指導料の点数
在宅患者緊急時等共同指導料は、算定要件を満たすことで、月2回に限り1回につき700点を算定できます。
3.在宅患者緊急時等共同指導料の算定要件
在宅患者緊急時等共同指導料の主な算定要件は、以下のとおりです。
対象患者 | 在宅療養を実施しており、以下に該当する通院が困難な患者さん ● 病状が急変した ● 診療方針の大幅な変更などの必要性が生じた |
対象薬局・薬剤師 | 訪問薬剤管理指導を実施している薬局の薬剤師 |
医師の求め | 以下のいずれかの医師の求めが必要 ● 患者さんの在宅療養を担う医療機関の医師 ● 患者さんの在宅療養を担う医療機関と連携する他の医療機関の医師 |
共同でカンファレンスを行う医療関係職種など | ● 患者さんの在宅療養を担う医療機関の保険医等 ● 歯科訪問診療を実施している医療機関の歯科医師等 ● 訪問看護ステ-ションの保健師 ● 助産師 ● 看護師 ● 理学療法士 ● 作業療法士 ● 言語聴覚士 ● 介護支援専門員(ケアマネジャー) ● 相談支援専門員 |
薬学的管理指導の内容 | カンファレンスで共有した情報と結果を踏まえ、計画的な訪問薬剤管理指導の内容に加えて、患者さんの居宅で療養上必要な薬学的管理指導を行う |
薬学的管理指導の実施タイミング | カンファレンス実施日と異なる日に指導を行っても在宅患者緊急時等共同指導料は算定可能(ただし、カンファレンス実施日以降速やかに行うこと) |
算定頻度 | 月2回に限り、カンファレンスおよびそれに基づく薬学的管理指導1回につき1回のみ算定する |
参照:調剤報酬点数表|厚生労働省
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
続いて、算定要件の詳細についてお伝えします。
3-1.医師への情報提供
患者さんの在宅療養を担う医療機関の医師と連携する他の医師の求めで患者さんの居宅を訪問して薬学的管理指導を行った場合、以下の医師に文書で情報提供をすることとされています。
● 在宅療養を担う医療機関の医師と連携する他の医師
在宅療養を担う医療機関の医師と連携する他の医師については、担当医に確認し、薬学的管理指導計画書などに当該医師の氏名と医療機関名を記載する必要があります。
3-2.ビデオ通話によるカンファレンスへの参加が可能
薬局薬剤師は、ビデオ通話が可能な機器を用いてカンファレンスに参加することができます。ただし、患者さんの診療等を行う医療関係職種などのうち1者以上は、患者さんの居宅でカンファレンスを行っていることとされています。
また、ビデオ通話によるカンファレンスで患者さんの個人情報を画面共有する場合は、患者さんの同意を得なければなりません。医療機関の電子カルテなどの医療情報システムと共通のネットワーク上の端末でカンファレンスを実施する場合は、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に対応している必要があります。
3-3.薬剤服用歴への記載事項
在宅患者緊急時等共同指導料を算定するためには、通常の記載事項に加えて、少なくとも以下の事項について記載することとされています。
2. 薬学的管理指導を行った保険薬剤師の氏名
3. カンファレンスに参加した医療関係職種などの氏名
4. 患者さんの在宅療養を担う医療機関の医師または担当医師と連携する他の医師から要請があって患者さんの居宅を訪問し、他の医療関係職種などと共同してカンファレンスを行い、その結果を踏まえて薬学的管理指導を実施した旨とその理由
5. カンファレンスの要点やカンファレンスの結果を踏まえて実施した薬学的管理指導の内容
● 服薬状況
● 副作用
● 相互作用等に関する確認 など
6. 医師に対して提供した訪問結果に関する情報の要点
4.在宅患者緊急時等共同指導料の加算
続いて、在宅患者緊急時等共同指導料の加算について見ていきましょう。
4-1.麻薬管理指導加算
麻薬管理指導加算とは、麻薬の投薬が行われている患者さんに対して、服用状況や副作用の有無、残薬、保管状況を確認した上で、麻薬の取り扱いや保管上の注意点を指導するなど、必要な薬学的管理指導を行った場合に算定するものです。
在宅患者緊急時等共同指導料を算定している場合、要件を満たすことで1回につき100点を加算できます。
🔽 麻薬管理指導加算について詳しく解説した記事はこちら
4-2.在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算
在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算とは、施設基準を満たした薬局において、在宅で医療用麻薬の持続注射療法を行う患者さんに対して必要な薬学的管理指導を行った場合に算定できるもので、1回につき250点を加算できます。
患者さんの居宅に訪問し、麻薬の投与状況や残液の状況、保管状況を確認し、残液の取り扱い方法や保管上の注意点などを指導します。また、鎮痛効果、副作用の有無をチェックした上で薬学的管理指導を行い、処方医に対して必要な情報提供を行うことが必要です。
なお、麻薬管理指導加算を算定している患者さんについては、在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算は算定できません。
4-3.乳幼児加算
乳幼児加算とは、在宅で療養中の乳幼児に係る薬学的管理指導を行った場合に算定するものです。1回につき100点を加算できます。
体重や患者さんに適した剤形など必要な事項を確認した上で、患者さんの家族などに対して、服用方法や誤飲防止方法などの指導を行います。
乳幼児加算と類似したものに乳幼児服薬指導加算があります。乳幼児加算は在宅患者訪問薬剤管理指導料などの在宅関連の指導料の加算です。一方、乳幼児服薬指導加算は服薬管理指導料やかかりつけ薬剤師指導料を算定した場合に加算します。
🔽 乳幼児服薬指導加算について詳しく解説した記事はこちら
4-4.小児特定加算
小児特定加算とは、医療的ケア児である18歳未満の患者さんや家族などに対して薬学的管理指導を行った場合に算定するものです。1回につき450点を加算することができます。
患者さんの居宅を訪問し、服薬状況などを確認した上で、患者さんの状態に合わせた必要な薬学的管理指導を行います。なお、乳幼児加算との併算定は不可とされています。
🔽 小児特定加算について詳しく解説した記事はこちら
4-5.在宅中心静脈栄養法加算
在宅中心静脈栄養法加算とは、在宅で中心静脈栄養法を行う患者さんに対して、必要な薬学的管理指導を行った場合に算定するものです。
患者さんの状態や投与環境、保管方法、配合変化防止に係る対応方法などについて確認・指導を行い、処方医に対して必要な情報を提供した場合に、1回につき150点を加算できます。
🔽 在宅中心静脈栄養法加算について詳しく解説した記事はこちら
5.在宅患者緊急時等共同指導料の算定における注意点
続いて、在宅患者緊急時等共同指導料を算定する際の注意点について見ていきましょう。
5-1.在宅患者緊急時等共同指導料が算定できない場合
在宅患者緊急時等共同指導料は、特別調剤基本料Bを算定する薬局においては算定できない他、在宅患者訪問薬剤管理指導料や在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料との同時算定は不可とされています。
また、在宅患者緊急時等共同指導料は、患者さんの居宅に訪問して薬学的管理指導をすることが算定要件となっているため、情報通信機器を使った場合は算定できません。情報通信機器を使用した場合は、在宅患者オンライン薬剤管理指導料を算定します。
その他、薬局の所在地と患者さんの居宅の所在地の距離が16kmを超える場合については、患者さんの居宅から16km圏内に在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨を届け出ている薬局がないなど、特殊の事情があるケースを除き算定できないことになっています。
🔽 特別調剤基本料について詳しく解説した記事はこちら
🔽 在宅患者訪問薬剤管理指導料について詳しく解説した記事はこちら
🔽 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料について詳しく解説した記事はこちら
5-2.午前中に在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定し、夕方に在宅患者緊急時等共同指導料に関する薬学的管理指導を行った場合
午前中に在宅患者訪問薬剤管理指導を行った患者さんが午後に急変し、共同でカンファレンスが行われるケースもあるでしょう。在宅患者緊急時等共同指導料は、計画的な訪問薬剤管理指導に加えて、カンファレンスの結果を踏まえた薬学的管理指導を行うことを評価しています。
そのため、午前中に訪問薬剤管理指導を行った患者さんに対して、カンファレンス実施当日に在宅患者緊急時等共同指導料に関する薬学的管理指導を行った場合、在宅患者訪問薬剤管理指導料との同時算定はできません。
参照:疑義解釈資料の送付について(その2)別添3 平成20年5月9日|厚生労働省
5-3.カンファレンス1回につき薬学的管理指導を2回実施した場合
カンファレンスでの結果によっては、2回に分けて薬学的管理指導を行うこともあるでしょう。
そういった場合であっても、在宅患者緊急時等共同指導料は1回しか算定できません。
参照:2008年度(平成20年度) 調剤報酬改定等に関するQ&A(その1)|日本薬剤師会
6.在宅患者緊急時等共同指導料のレセプト摘要欄への記載事項
続いて、在宅患者緊急時等共同指導料のレセプト摘要欄への記載事項について見ていきましょう。
6-1.調剤を行っていない月に在宅患者緊急時等共同指導料を算定する場合
調剤を行っていない月に在宅患者緊急時等共同指導料を算定した場合、情報提供または訪問の対象となる調剤の年月日および投薬日数を記載することとされています。
レセプト電算処理 システム用コード |
左記コードによるレセプト表示文言 |
基本料・薬学管理料レコード 「前回調剤年月日」 |
(元号)yy“年”mm“月”dd“日調剤” |
基本料・薬学管理料レコード 「前回調剤数量」 |
ddd”日分投薬” |
6-2.介護老人福祉施設に入所中の末期悪性腫瘍の患者さんに実施した場合
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の入所者であって末期の悪性腫瘍の患者さんに対して実施した場合、訪問薬剤管理指導等を実施した日付を記載することとされています。
レセプト電算処理 システム用コード |
左記コードによるレセプト表示文言 |
850190261 | (特養のがん末期の患者)訪問指導年月日(在宅患者緊急時等共同指導料);(元号)yy“年”mm“月”dd“日” |
参照:「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について|厚生労働省
7.多職種と連携して患者さんをサポートしよう
在宅医療の現場では、医療関係職種との情報共有や連携をしっかり行うことが、患者さんへより良い医療を提供することにつながります。連携を密にとることが重要ではあるものの、さまざまな医療関係職種が一堂に会する機会はそう多くないでしょう。
在宅患者緊急時等共同指導料は、共同でカンファレンスが行われることが算定要件となっています。カンファレンスが行われる際は、医療関係職種と積極的にコミュニケーションをとり、患者さんの薬物治療をサポートしましょう。
🔽 調剤報酬に関連する記事はこちら
薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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