薬剤師のスキルアップ 公開日:2021.11.25 薬剤師のスキルアップ

調剤後薬剤管理指導加算とは?算定要件や算定タイミングを解説 文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

2020年度診療報酬改定で新設された調剤後薬剤管理指導加算。地域支援体制加算を届け出ている調剤薬局が算定できる薬学管理料です。糖尿病患者さんの来局が多い調剤薬局や地域支援体制加算を算定している調剤薬局では算定を考えるでしょう。今回は、調剤後薬剤管理指導加算の目的や算定要件について詳しくお伝えします。

1.調剤後薬剤管理指導加算とは

調剤後薬剤管理指導加算は、糖尿病患者さんの自宅での服薬サポートを行う目的で新設されました。糖尿病患者さんに新しくインスリン製剤やスルフォニル尿素系製剤(SU剤)が処方された場合、地域支援体制加算を届け出ている調剤薬局の薬剤師が、電話などで使用状況や副作用の有無について患者さんに確認するなどの薬学的管理指導を行い、その結果を医療機関へ文書で情報提供することで1回30点を月1回まで算定できます。
 
調剤後薬剤管理指導加算を算定するには、まず地域支援体制加算の届出が必要です。地域支援体制加算とは、調剤薬局や薬剤師がかかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師として地域医療に貢献していることを評価して算定されるものです。2020年度の診療報酬改定では、地域支援体制加算が35点から38点に変更されました。

 

点数の見直しに加え、地域支援体制加算の施設基準が、調剤基本料1を算定している調剤薬局とそれ以外の調剤薬局それぞれで見直されたことからも、薬剤師による地域医療の貢献に期待が高まっていることが伺えます。


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2.調剤後薬剤管理指導加算の目的

糖尿病の治療において、低血糖の知識や対処法などを患者さんへ伝えることは薬剤師の重要な業務です。新しくインスリン製剤やスルフォニル尿素系製剤(SU剤)が処方された場合は、低血糖などの副作用が起こる可能性が高まります。そのため、早い段階で副作用の発現に気付けるよう患者さんをサポートする目的で、調剤後薬剤管理指導加算が新設されました。

 

2-1.薬剤ごとの低血糖の頻度

日本糖尿病学会が作成している「糖尿病診療ガイドライン2019」によると、スルフォニル尿素系製剤(SU剤)は、メトホルミンの約4~5倍、チアゾリジン薬の約4倍、低血糖を起こしやすいとされています。また、メトホルミンとSU剤の併用は、メトホルミンとチアゾリジン薬の併用の約6倍低血糖を起こしやすいとされているため、SU剤による低血糖の発現には注意が必要です。

 

インスリン製剤においては、強化インスリン療法により血糖コントロールが良好になるのと比例して、重症低血糖が多くなることが報告されています。低血糖を予防するためにも、血糖の自己測定など自己管理の方法を伝える必要があるでしょう。

 

 

2-2.薬剤師に求められる指導

低血糖が頻発するケースでは、投与量を減量することがあります。投与量の減量後も低血糖が起こることがあるため、薬剤師は投与量の変更によって起こりうる可能性を十分に指導しなければなりません。
 
また、すでに薬物治療を行っている糖尿病患者さんが用法を変更するケースでは、低血糖について十分な知識を持っていたとしても、食習慣や運動習慣などの生活スタイルによって低血糖が起こりやすくなることがあります。
 
処方変更後は、低血糖の頻度や低血糖が起こりやすいタイミングが変わる可能性があるため、患者さんにインスリン製剤などの低血糖を起こす糖尿病薬の服用歴があったとしても、対処法などを改めて確認し、安全に糖尿病治療を行えるよう努めることが大切です。

 

2-3.運転免許を持つ患者さんへの指導

2013年に改正された道路交通法において、無自覚性低血糖症などの意識障害を起こす可能性について虚偽の申告をして免許を取得・更新した場合に罰則が適用されることになりました(糖尿病情報センターより)。
 
ただし、薬物療法によって低血糖になる可能性がある場合でも、医師が低血糖に対して適切な対応ができると診断したケースにおいては、運転免許を取得できることになっています。患者さんのQOLを維持・向上するためにも、薬剤師は、低血糖を起こさないための生活習慣や症状が現れたときの対処法を指導することが求められます。

3.調剤後薬剤管理指導加算の算定要件

ここでは調剤後薬剤管理指導加算の算定要件について、詳しく見ていきましょう。

 

3-1.対象となる患者さんは?

調剤後薬剤管理指導加算の算定対象である、「新しくインスリン製剤やスルフォニル尿素系製剤(SU剤)が処方された」患者さんとは、次のいずれかを指します。

 

・新しくインスリン製剤やスルフォニル尿素系製剤(SU剤)が処方された患者さん
・新しくインスリン製剤やスルフォニル尿素系製剤(SU剤)が追加処方された患者さん
・インスリン製剤の注射単位の変更、またはスルフォニル尿素系製剤(SU剤)の用法・用量の変更があった患者さん

 

3-2.医師の指示または患者さんの求めが必要

調剤後薬剤管理指導加算を算定するには、医師の指示または患者さんの求めが必要です。退院時共同指導時などで保険医療機関や医師から依頼を受けたり、電話などで直接指示を受けたりしたときなど医師から指示を受けることで、調剤後薬剤管理指導加算の算定ができます。

 

また、患者さんや家族のなかには処方変更によって低血糖の発現など不安を抱くこともあるでしょう。患者さん本人や家族などから服用開始後のサポートについて希望があり、かつ薬剤師として調剤後の薬剤管理指導の必要性があると判断できる場合は、医師の了解を得ることで調剤後薬剤管理指導加算を算定できます。

 

3-3.電話による確認が原則

使用状況の確認は、電話またはビデオ通話を使用して、患者さんや家族などに直接確認することを原則としています。あらかじめ電話などを用いることについて患者さんから了承を得るとともに、患者さんの都合などを確認し、電話をするタイミングを前もって取り決めておくとスムーズです。
 
また、使用状況の確認内容は医師や医療機関に文書で情報提供するため、患者さんの同意を得る必要があります。

 

 

3-4.情報提供の記録と臨機応変な対応

医療機関へ情報提供する文書についての規定はありません。ただし、情報提供した文書の写し、またはその内容の要点などを薬剤服用歴の記録に添付または記載することが定められています。医療機関へ情報提供した内容は、必ず記録に残しておきましょう。
 
また、使用状況などの確認時に、速やかに保険医療機関や処方医に伝達しなければならない副作用などの情報を得ることがあります。その場合は、その場で可能な対処法を伝えるとともに、早急に医療機関への受診を勧めましょう。のちに詳しい経過を医療機関に情報提供するといった、臨機応変な対応が求められます。
 
インスリン製剤など以外の薬剤による副作用が疑われる場合であっても、医療機関や医師へ情報提供を行うなど、患者さんの安全を最優先した行動をとるようにしましょう。

 

4.調剤後薬剤管理指導加算が算定できないケース

調剤後薬剤管理指導加算の算定の可否は、電話のタイミングや他の薬学管理料の算定状況によって異なります。ここでは、調剤後薬剤管理指導加算が算定できないケースについて見ていきましょう。

 

4-1.調剤と同日に電話確認したケース

調剤後薬剤管理指導加算は、調剤日と同日に電話確認を行った場合、算定できないことになっています。数日経過することで、処方変更によって低血糖が繰り返されるのか、食事や運動などによる一時的なものなのかの判断をするためです。条件によって低血糖の対処法が異なるため、電話確認までに一定期間あけることで情報量が増え、的確に判断しやすいでしょう。

 

また、服薬管理を行うことで、使用する薬物が変わったことによる悩みや不安などが明確になります。来局して相談するほどではなかったとしても、気になることを電話確認のときに相談できるという安心感は、調剤日から一定期間あけることのメリットといえるでしょう。

 

4-2.同時に算定できない薬学管理料

調剤後薬剤管理指導加算は、以下の薬学管理料を算定している患者さんには算定できません。

 

・かかりつけ薬剤師指導料
・かかりつけ薬剤師包括管理料
・在宅患者訪問薬剤管理指導料
・薬剤服用歴管理指導料4

 

また、以下の薬学管理料を算定している患者さんに対して、同一月内での算定は認められていません。

 

・服薬情報等提供1
・服薬情報等提供2

 

ただし、情報提供を行う医療機関が異なる場合は算定可能です。


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5.調剤後薬剤管理指導加算を算定するタイミング

調剤後薬剤管理指導加算を算定するタイミングは、医療機関に対して情報提供を行い、その後、患者さんが処方せんを持参したときです。持参する処方せんに制限はありませんので、情報提供を行った医療機関以外の処方せんでも算定可能です。

 

糖尿病と関係のない処方せんに対して調剤後薬剤管理指導加算が算定されるケースもあるので、患者さんによっては明細書を確認した際に不信感を抱くかもしれません。あらかじめ、調剤後薬剤管理指導加算を算定するタイミングを伝えておくことで患者さんも安心できます。

6.糖尿病治療を安心安全に行うために

糖尿病治療において、低血糖のリスクや対処法は必ず患者さんへ伝えなければならない事項です。低血糖による死亡リスクも考慮すると、患者さんの安全を確保するためにも薬剤師による指導はとても重要だといえるでしょう。
 
また、調剤後薬剤管理指導加算は、地域支援体制加算を算定している調剤薬局に限り、算定可能になる制度です。これは、今以上に薬剤師の地域包括ケアシステムの参画が求められているとも捉えられます。地域医療に根付いた活動を行うことで医療人としての役割を果たし、さらに地域住民から求められる薬剤師を目指したいものです。


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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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