薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.11.15公開日:2024.07.18 薬剤師のスキルアップ

薬学管理料とは?算定要件・点数の一覧や算定しないケースについて解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

調剤薬局が保険請求する診療報酬は、「調剤技術料」「薬学管理料」「薬剤料」「特定保健医療材料料」の4つに区分されています。このうち薬学管理料は、服薬指導などに関わる業務を行った際に算定できる項目です。この記事では、「薬学管理料」について、各項目の算定要件や点数を解説するとともに、薬学管理料の算定する・算定しないケースや、薬学管理料を算定する際に気を付けたいポイントについてお伝えします。

1.薬学管理料とは

薬学管理料は、対人業務を評価して算定する診療報酬です。細かく項目が分かれており、それぞれ具体的な算定要件が決められています。
 
また、薬学管理料にあたる各算定項目は、服薬指導を行う時点の患者さんの状態などを考えながら、患者さんにとって必要な情報やサポート内容をその都度判断し、算定するものです。
 
そのため、薬剤師自身が患者さん個々について算定の可否を判断し、機械的に一律に算定しないこととされています。
 
参照:令和6年度 保険調剤の理解のために(スライド資料)|厚生労働省

2.薬学管理料の算定要件と点数一覧

薬学管理料は全部で15項目あります。

 

■薬学管理料の一覧

 

ここでは、それぞれを算定するための条件や点数について見ていきましょう。
 
なお、2024年度の診療報酬改定の詳細については、以下の記事をご確認ください。
 

 

①調剤管理料

調剤管理料は、処方箋受付1回につき、処方内容についての薬学的分析と評価をした上で薬学服用歴の記録・管理などをした時に算定できる薬学管理料です。内服用滴剤、浸煎薬、湯薬、屯服薬を除く内服薬を調剤した場合は、1剤につき日数に応じた点数を算定します(3剤まで)。

 

■調剤管理料の算定点数
区分 処方日数 算定点数
① 内服薬の場合 7日分以下 4点
8~14日分 28点
15~28日分 50点
29日分以上 60点
② ①以外の場合 4点

 

調剤管理料の詳細については、以下の記事をご確認ください。

 

 

②服薬管理指導料

服薬管理指導料は、処方箋受付1回につき、薬剤の情報提供と服薬指導を行った場合に算定します。

 

■服薬管理指導料の算定点数
要件 算定点数
① 原則3月以内に再度処方箋を持参した患者
(お薬手帳による情報提供あり)
45点
② ①の患者以外の患者 59点
③ 介護老人福祉施設等に入所している患者に訪問して行った場合
(ショートステイ等の利用者も含む)
45点
④ 情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合
(イ)原則3月以内に再度処方箋を提出した患者
(お薬手帳による情報提供あり)
45点
④ 情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合
(ロ)イの患者以外の患者
59点
服薬管理指導料の特例
3カ月以内の再調剤のうち手帳の活用実績が50%以下の薬局
13点
服薬管理指導料の特例
処方箋受付1回につき、かかりつけ薬剤師との連携対応、かかりつけ薬剤師指導料等の算定患者
59点

 

服薬管理指導料の詳細については、以下の記事をご確認ください。

 

 

③かかりつけ薬剤師指導料

かかりつけ薬剤師指導料は、かかりつけ薬剤師が処方医と連携して、服薬状況を一元的かつ継続的に把握し、服薬指導などを行った場合に76点を算定できます。
 
かかりつけ薬剤師指導料の詳細については、以下の記事をご確認ください。

 

 

④かかりつけ薬剤師包括管理料

かかりつけ薬剤師包括管理料は、医科点数表における以下の項目を算定している患者さんに対して、かかりつけ薬剤師が処方医と連携して服薬状況を一元的かつ継続的に把握し、服薬指導などを行った場合に、処方箋受付1回につき291点を算定できます。

 

● 地域包括診療加算
● 認知症地域包括診療加算
● 地域包括診療料
● 認知症地域包括診療料

 

かかりつけ薬剤師包括管理料の詳細については、以下の記事をご確認ください。

 

 

⑤外来服薬支援料

外来服薬支援料には1・2の区分があり、それぞれ算定要件が異なります

 

■外来服薬支援料の算定点数
区分 算定点数
外来服薬支援料1 185点(月1回限り)
外来服薬支援料2
(イ)42日分以下の場合
投与日数が7またはその端数を増すごとに34点を加算して得た点数
外来服薬支援料2
(ロ)43日分以上の場合
240点

 

外来服薬支援料の詳細については、以下の記事をご確認ください。

 


 

⑥服用薬剤調整支援料

服用薬剤調整支援料には1・2の区分があり、それぞれ算定要件が異なります

 

■服用薬剤調整支援料の算定点数
区分 算定点数
服用薬剤調整支援料1 125点
服用薬剤調整支援料2
(イ)別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険薬局において行った場合
110点
服用薬剤調整支援料2
(ロ)イ以外の場合
90点

 

服用薬剤調整支援料の詳細については、以下の記事をご確認ください。

 


 

⑦調剤後薬剤管理指導料

調剤後薬剤管理指導料とは、糖尿病または慢性心不全の治療を受ける患者さんに対して、調剤後に電話などで服薬状況や体調変化などを確認することで算定できる薬学管理料です。

 

■調剤後薬剤管理指導料の算定点数
要件 算定点数
糖尿病患者に対して行った場合(月1回限り) 60点
慢性心不全患者に対して行った場合(月1回限り) 60点

 

調剤後薬剤管理指導料の詳細については、以下の記事をご確認ください。

 

 

⑧服薬情報等提供料

服薬情報等提供料には1・2・3の区分があり、それぞれ算定要件が異なります

 

■服薬情報等提供料の算定点数
区分 算定点数
服薬情報等提供料1 30点
服薬情報等提供料2 20点
服薬情報等提供料3 50点

 

服薬情報等提供料の詳細については、以下の記事をご確認ください。

 

 

 

⑨在宅患者訪問薬剤管理指導料

在宅患者訪問薬剤管理指導料は、在宅で療養を行っている患者さんに対して、居宅へ訪問し必要な指導を行った場合に算定できる薬学管理料です。

 

■在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定点数
要件 算定点数
単一建物診療患者が1人の場合 650点
単一建物診療患者が2人以上9人以下の場合 320点
単一建物診療患者が10人以上の場合 290点
情報通信機器を用いた場合
(在宅患者オンライン薬剤管理指導料)
59点

 

在宅患者訪問薬剤管理指導料の詳細については、以下の記事をご確認ください。

 

 

⑩在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料

訪問薬剤管理指導を実施している患者さんの急変などによって、主治医または主治医と連携する医師の求めにより、緊急訪問し必要な指導を行った場合、以下の算定点数を月4回(末期の悪性腫瘍の患者さん、または注射による麻薬の投与が必要な患者さんは原則として月8回)に限り算定できます。

 

■在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の算定点数
要件 算定点数
① 計画的な訪問薬剤管理指導に係る疾患の急変に伴うものの場合 500点
② ①以外の場合 200点
情報通信機器を用いた場合
(在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料)
59点

 

在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の詳細については、以下の記事をご確認ください。

 

 

⑪在宅患者緊急時等共同指導料

訪問薬剤管理指導を実施している患者さんの急変などによって、主治医または主治医と連携する医師の求めにより共同カンファレンスに参加し、必要な指導を行った場合に月2回に限り700点を算定します。

 

⑫在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料

在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者さんなどについて、重複投薬、相互作用の防止等の目的で疑義照会を行い、処方変更があった場合に算定します。

 

在宅医療に携わる薬局や薬剤師は、医師から処方内容の相談を受けることもあるでしょう。在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は、相談内容が反映された処方箋を受け付けた場合にも算定できます。

 

■在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の算定点数
要件 算定点数
残薬調整に係るもの以外の場合 40点
残薬調整に係るものの場合 20点

 

⑬経管投薬支援料

経管投薬支援料は、胃瘻もしくは腸瘻による経管投薬または経鼻経管投薬を行っている患者さんに対して算定できる薬学管理料です。患者さんや家族、医療機関の求めに応じて行うもので、患者さんの同意を得た上で、簡易懸濁法を使った薬剤服用の支援を行った場合に、初回に限り100点を算定します。
 
簡易懸濁法については、以下の記事をご確認ください。

 

 

⑭在宅移行初期管理料

在宅移行初期管理料とは、訪問薬剤管理指導を計画的に実施する前段階で患者さんの自宅を訪問し、管理や指導をすることを評価した薬学管理料です。多職種と連携してその後の訪問薬剤管理指導に向けた確認や指導を行うことで、初回に限り230点を算定できます。
 
在宅移行初期管理料については、以下の記事をご確認ください。

 

 

⑮退院時共同指導料

退院時共同指導料は、入院中の患者さんが退院後に在宅で療養するために、入院している医療機関の医療従事者と共同で説明および指導を行った場合に、600点を算定できます。
 
退院時共同指導料の詳細については、以下の記事をご確認ください。

 

 

参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
参照:調剤報酬点数表|厚生労働省
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:調剤報酬点数表(令和6年6月1日施行予定)|日本薬剤師会

3.算定する・算定しない?薬学管理料のQ&A

本来、薬学管理料は患者さんの希望に合わせて算定するものではありません。薬剤師の判断で算定するため、算定の有無は状況によって異なるでしょう。
 
しかし、まれに、自分で服薬管理しているという理由で、調剤管理料や服薬管理指導料の算定を拒否する患者さんがいます。その背景には、薬代の節約という目的もあるかもしれません。
 
では、こうしたケースで薬学管理料を算定しない場合、服薬指導や薬歴の記載は行わなくてもよいのでしょうか。ここでは、薬学管理料の算定における疑問について、『保険調剤Q&A 令和4年版』『保険薬局Q&A 令和4年版』(じほう、2022年)を参考に解説します。

 

3-1.患者さんの希望で薬学管理料を算定しない場合、服薬状況や薬剤服用歴の確認は必要?

調剤管理料や服薬管理指導料に関する業務は、患者さんの求めに応じて実施するものではないとされています。薬剤師として必要性があると判断した場合は、患者さんの希望に関わらず確認をしなければなりません
 
保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(薬担規則)の第8条や薬剤師法25条の2でも明確に規定されているため、算定の有無に関わらず、服薬状況・薬剤服用歴の確認や指導、情報提供などは必須業務といえるでしょう。
 
参照:『保険調剤Q&A 令和4年版』Q113(じほう、2022年)

 

3-2.患者さんが医師や薬剤師の場合

患者さんが医師や薬剤師の場合、薬学管理料を算定するか判断に迷うかもしれません。『保険薬局Q&A 令和4年版』Q120では、「患者さんが医師や薬剤師という理由だけで算定できないわけではないが、患者さんに対して服薬指導の必要性の可否をどのように判断したのかが重要」としています。
 
例えば、医療従事者の専門外の疾患について処方されているケースでは、一般の患者さんと同様に薬学管理料を算定しても問題ないでしょう。
 
ただし、保険請求の客観性を担保するという観点から、取り扱いには注意する必要があります。なお、薬学管理料を算定しなかった場合でも、薬歴に記録を残すよう心がけましょう

 

3-3.患者さんから希望があった場合

患者さんに服薬管理や情報提供を拒否されたとしても、薬剤師として患者さんが安全に薬物治療を行うために薬学管理料にあたる業務が必要だと判断した場合には、業務を実施した上で過不足なく算定することが求められています。
 
先にもお伝えしたように、調剤管理料や服薬管理指導料といった薬学管理料に関わる業務は、患者さんの希望に応じて行うものではありません。患者さんから希望があったとしても、薬物治療を安全に効果的に行うために必要なことであると患者さんへ説明し、納得してもらうことが大切です。
 
重複投薬や相互作用、薬物アレルギーなどの確認や薬剤情報提供などは、患者さんにとって必要なことであり、薬剤師の義務でもあります。薬剤師による実施が義務付けられた業務に対する点数であることを丁寧に説明し、理解を求めるようにしましょう。

 
🔽 患者さんから「説明はいらない」という希望があった場合の対応について詳しく解説した記事はこちら

4.薬学管理料の算定で薬剤師が気を付けるポイント

令和6年度 保険調剤の理解のために(スライド資料)」では、薬剤服用歴等や薬剤情報提供文書、お薬手帳について、調剤報酬の算定に伴う留意点が示されています。それぞれ詳しく紹介します。

 

4-1.薬剤服用歴等について

薬剤服用歴等は、患者さんの情報を一元的かつ継続的に管理するために必要なものです。調剤報酬請求の根拠となる記録にもなるため、受付ごとに患者さんの情報を確認し、得られた情報を更新していきましょう
 
指導後は速やかに完了させ、患者さんごとに保存・管理することが大切です。薬剤服用歴等の指摘事項の例として、以下のような項目が挙げられています。

 

■指摘事項の例
● 同一患者の薬剤服用歴等について、紙薬歴が廃棄されており、全ての記録が必要に応じて直ちに参照できるよう保存・管理していない。
● 薬剤服用歴等への記載が指導後速やかに完了していない。
● 薬剤服用歴等に次の事項の記載がない。
  ○ アレルギー歴、副作用歴
  ○ 薬学的管理に必要な生活像
  ○ 疾患に関する情報
  ○ 服薬状況(残薬の状況を含む。)
  ○ 患者の服薬中の体調の変化
  ○ 服薬指導の要点
● 記載はあるものの、記載が不適切である。
  ○ 併用薬について、単に「あり」と記載されているのみ
  ○ 残薬について、単に「あり」と記載されているのみ
  ○ 患者の服薬中の体調の変化について、単に「あり」と記載されているのみ

 

薬歴を残す際は、上記の内容に注意しましょう。

 

4-2.薬剤情報提供文書について

薬剤情報提供文書は、患者さんごとに作成された薬剤服用歴などに基づいて記載しなければなりません。必要に応じて医薬品リスク管理計画(RMP)に基づく患者さん向け資材を活用した上で、投薬に関わる薬剤の名前や用法用量薬効、副作用などに関する情報を文書、または文書に準ずるもので患者さんに提供する必要があります

 
また、効能効果、副作用などの記載は、患者さんや家族などが理解しやすい言葉や表現を使用することとされています。

 

4-3.お薬手帳について

お薬手帳とは、以下の事項を記載する欄がある手帳のことです。患者さんや服用薬剤などの情報が経時的に記入できる記録用の手帳を指しています。

 

■お薬手帳への記録事項
● 調剤を行った薬剤について、調剤日、当該薬剤の名称、用法、用量、そのほか必要に応じて服用に際して注意すべき事項
● 患者の氏名、生年月日、連絡先等患者に関する記録
● 患者のアレルギー歴、副作用歴等薬物療法の基礎となる記録
● 患者の主な既往歴等疾患に関する記録
● 患者が日常的に利用する保険薬局の名称、保険薬局、または保険薬剤師の連絡先等

 

薬局では、お薬手帳が適切に記録されていることを確認します。記載漏れなどがある場合には、患者さんに確認した上で必要に応じて記入・指導を行い、手帳が有効活用されるよう努めなければなりません。

5.患者さんに合わせた薬学管理料を算定しよう

薬学管理料は患者さんの希望に合わせて算定するものではなく、薬剤師の判断で算定するものです。薬剤師は、患者さんにとって必要な情報を提供し服薬指導を行う義務があり、薬学管理料はそうした業務に対する評価となります。薬学管理料の各項目や算定要件を把握し、患者さんの状態に合わせて適切に算定するようにしましょう。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。