- 1.後発医薬品調剤体制加算とは
- 1-1.後発医薬品の普及による効果
- 1-2.政府が目標とする後発医薬品の使用割合
- 1-3.品質確保や使用促進に向けた取り組み
- 2.後発医薬品調剤体制加算の算定要件・点数と減算要件
- 2-1.後発医薬品調剤体制加算の算定要件・点数
- 2-2.後発医薬品に関わる減算要件
- 3.後発医薬品調剤体制加算の施設基準
- 3-1.後発医薬品調剤体制加算の除外品目一覧
- 4.後発医薬品調剤体制加算を算定するための届出方法
- 4-1.後発医薬品の使用割合の計算方法
- 4-2.カットオフ値の計算方法
- 5.後発医薬品不足による患者対応と後発医薬品調剤体制加算への影響
- 5-1.患者対応による業務負荷
- 5-2.後発医薬品調剤体制加算への影響
- 6.後発医薬品の使用促進のために
1.後発医薬品調剤体制加算とは
後発医薬品調剤体制加算とは、後発医薬品の使用割合に応じて算定できる調剤基本料の加算です。3区分あり、後発医薬品の使用割合が高い薬局ほど高い点数が加算できるようになっています。
ここでは、後発医薬品の普及による効果と、政府が目標としている後発医薬品使用割合、政府による品質確保や使用促進に向けた取り組みについて解説します。
1-1.後発医薬品の普及による効果
後発医薬品は、特許が切れた先発医薬品の有効成分を使って製造された医薬品のため、先発医薬品と比較すると研究開発費が抑えられており、多くの後発医薬品が先発医薬品より低い薬価となっています。
同じ効果が期待できるのであれば、先発医薬品よりも後発医薬品を使用した方が、医療費を抑えられます。そのため、後発医薬品が普及すると、患者負担の軽減や国民医療費の削減につながると考えられています。
1-2.政府が目標とする後発医薬品の使用割合
厚生労働省は、2013年4月に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定したほか、2017年に後発医薬品の使用割合を70%以上、2020年9月までに80%以上とするといった目標を定めてきました。
さらに、2021年6月の閣議決定において、「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性確保を図りつつ、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上」とする新たな目標が定められ、2023年9月の調査で後発医薬品の使用割合は80.2%となっています。
参照:後発医薬品(ジェネリック医薬品)及びバイオ後続品(バイオシミラー)の使用促進について|厚生労働省
参照:「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」について|厚生労働省
また、バイオ医薬品の後発医薬品であるバイオシミラー(バイオ後続品)についても、普及啓発のための取り組みを行っています。
バイオ医薬品とは、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術などを応用し、微生物や細胞の「たんぱく質などを作る力」を活用して作られた医薬品のことです。インスリンやインターフェロン、リツキシマブなどが該当します。
バイオシミラーは、複雑な構造、不安定性などの品質特性から、バイオ医薬品の有効成分との同一性などを検証するのが難しいとされています。
2021年度時点で、保険収載されているバイオシミラー16成分のうち、バイオシミラーに80%(数量ベース)以上置き換わった成分数は3成分です。成分ベースに換算すると置換率は18.8%(3成分/16成分)となります。政府は2029年度末までに、成分ベース換算で60%以上を目標としています。
参照:バイオシミラーに係る政府方針|厚生労働省
1-3.品質確保や使用促進に向けた取り組み
2013年4月に策定された「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」では、後発医薬品の使用を促進するための具体的な取り組みとして、以下の5項目が挙げられています。
● 品質に対する信頼性の確保
● 情報提供の方策
● 使用促進に関わる環境整備
● 医療保険制度上の事項
上記の項目について、ロードマップには国や都道府県、後発医薬品メーカー、業界団体が取り組む内容などが具体的に示されています。
2013年4月に策定されたロードマップについては、毎年、目標の達成状況や関係者への取り組み状況などの調査が行われています。
令和5年度の「ロードマップ検証検討事業報告書」では、後発医薬品メーカーや医療機関、調剤薬局、業界団体や保険者などに調査を行っており、調査結果をもとに上記の5項目について実施状況や課題などが報告されています。
参照:後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進について 4 各種調査結果|厚生労働省
2.後発医薬品調剤体制加算の算定要件・点数と減算要件
続いて、後発医薬品調剤体制加算の算定要件と点数、後発医薬品に関わる減算要件について見ていきましょう。
2-1.後発医薬品調剤体制加算の算定要件・点数
後発医薬品調剤体制加算1・2・3の点数は以下のとおりです。
区分 | 点数 |
---|---|
後発医薬品調剤体制加算1 | 21点 |
後発医薬品調剤体制加算2 | 28点 |
後発医薬品調剤体制加算3 | 30点 |
後発医薬品調剤体制加算は、施設基準を満たした上で、地方厚生局等に届出を行った薬局が調剤基本料に加算できます。
🔽 調剤基本料について詳しく解説した記事はこちら
また、特別調剤基本料AまたはBを算定している薬局における後発医薬品調剤体制加算の算定要件は、以下のように規定されています。
薬局の区分 | 算定要件 |
---|---|
特別調剤基本料Aを算定する薬局 | 後発医薬品調剤体制加算の所定点数を100分の10にし、小数点以下第1位を四捨五入した点数を算定 |
特別調剤基本料Bを算定する薬局 | 算定不可 |
🔽 特別調剤基本料について詳しく解説した記事はこちら
2-2.後発医薬品に関わる減算要件
後発医薬品の減算要件に該当する場合、調剤基本料から5点を減算することとなっています。後発医薬品に関わる減算要件は、以下のとおりです。
● 直近1年間に地方厚生局長等に後発医薬品の使用割合について報告を行っていない
ただし、以下の要件に当てはまる薬局は対象となりません。
● 直近1カ月の間で、変更不可の指示がある処方箋が全体の50%以上の場合
なお、直近1年間に地方厚生局長等に報告を行っていない薬局が報告を行った場合は、報告した月の翌月から減算要件に該当しないものとなります。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
3.後発医薬品調剤体制加算の施設基準
後発医薬品調剤体制加算1・2・3の施設基準には、共通の要件があります。
● 薬局の内側及び外側の見えやすい場所に「後発医薬品の調剤を積極的に行っていること」を掲示
● 薬局の内側の見やすい場所に「後発医薬品調剤体制加算を算定していること」を掲示
上記の要件に加えて、区分ごとに後発医薬品の使用割合が定められています。
区分 | 後発医薬品の 使用割合 |
点数 |
---|---|---|
後発医薬品調剤体制加算1 | 80%以上 | 21点 |
後発医薬品調剤体制加算2 | 85%以上 | 28点 |
後発医薬品調剤体制加算3 | 90%以上 | 30点 |
後発医薬品の使用割合が高いほど、加算点数が高くなります。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
3-1.後発医薬品調剤体制加算の除外品目一覧
後発医薬品調剤体制加算は、後発医薬品の規格単位数量の割合を算出する際に除外する医薬品があります。
分類 | 医薬品 | |
---|---|---|
ア | 経腸成分栄養剤 | エレンタール配合内用剤 エレンタールP乳幼児用配合内用剤 エンシュア・リキッド エンシュア・H ツインラインNF配合経腸用液 ラコールNF配合経腸用液 エネーボ配合経腸用液 ラコールNF配合経腸用半固形剤 イノラス配合経腸用液 |
イ | 特殊ミルク製剤 | フェニルアラニン除去ミルク配合散「雪印」 ロイシン・イソロイシン・バリン除去 ミルク配合散「雪印」 |
ウ | 生薬 | 薬効分類番号 510 |
エ | 漢方製剤 | 薬効分類番号 520 |
オ | その他の生薬及び漢方処方に基づく医薬品 | 薬効分類番号 590 |
また、厚生労働省のホームページでは、後発医薬品に関する以下の情報を定期的に更新しています。
● 診療報酬における加算等の算定対象から除外する品目リスト
● カットオフ値の算出に含める品目リスト
参照:薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について|厚生労働省
「各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報」については、以下のように分類されています。
分類 | 番号または印 |
---|---|
後発医薬品がない先発医薬品 | ● 「1」 |
後発医薬品がある先発医薬品 | ● 「2」 ● 後発医薬品と同額または薬価が低いものは「☆」 |
後発医薬品 | ● 「3」 ● 先発医薬品と同額または薬価が高いものは「★」 |
なお、1967年(昭和42年)以前に承認・薬価収載された医薬品と2024年(令和6年)度薬価基準改定で、同一成分及び同一剤形区分の品目が全て「基礎的医薬品」の対象となった成分については空欄となっています。
基礎的医薬品とは、最低薬価になる前の薬価を下支えする制度です。医薬品の薬価が低くなることで、継続的な安定供給ができなくなるのを防ぐことを目的としています。
参照:基礎的医薬品について|厚生労働省
基礎的医薬品の変更調剤の可否についても、厚生労働省のホームページで一覧が公開されています。変更の可否を確認する際は活用しましょう。
参照:薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について|厚生労働省
4.後発医薬品調剤体制加算を算定するための届出方法
後発医薬品調剤体制加算を算定するためには、厚生局へ届出を行う必要があります。届出に必要な書類は以下の2つです。
● 調剤基本料の注7に係る後発医薬品調剤体制加算の施設基準に係る届出書添付書類及び「調剤基本料の注8の後発医薬品調剤割合が著しく低い保険薬局に係る報告書」
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
届出書の添付書類には、後発医薬品の使用割合やカットオフ値を記載しなければなりません。それぞれの計算方法を見ていきましょう。
4-1.後発医薬品の使用割合の計算方法
後発医薬品の使用割合の指標は、2013年(平成25年)度を境に変更されており、旧指標・新指標があります。旧指標と新指標の計算方法は以下のとおりです。
旧指標 | 後発医薬品の数量 / 全医療用医薬品の数量 |
---|---|
新指標 | 後発医薬品の数量 / 後発医薬品のある先発医薬品及び後発医薬品の数量 |
参照:「最近の調剤医療費(電算処理分)の動向」における後発医薬品使用割合(参考資料2)|厚生労働省
新指標は、前述した「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」において新たに定められた指標です。後発医薬品調剤体制加算を算定する場合は、新指標を使って後発医薬品の使用割合を計算する必要があります。
4-2.カットオフ値の計算方法
カットオフ値とは、薬局に在庫を置く全医薬品の規格単位数量を分母とし、後発医薬品がある先発医薬品と後発医薬品の規格単位数量を分子として計算した値のことです。
カットオフ値 | 後発医薬品あり先発医薬品及び後発医薬品の規格単位数量 / 全医薬品の規格単位数量 |
---|
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
後発医薬品使用体制加算1、2、3を算定するためには、カットオフ値が50%以上であることが必要です。
5.後発医薬品不足による患者対応と後発医薬品調剤体制加算への影響
後発医薬品不足は、一部メーカーによる後発医薬品の供給停止を発端に、薬局や医療機関が出荷停止となった後発医薬品の代替品として、Aメーカーの後発医薬品を入荷するといった対応を行うことで、連鎖的に起こりました。
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厚生労働省では、医療用医薬品の供給状況について、製造販売業者から報告を受け付けており、エクセルファイルの一覧表として公開しています。入荷が遅れている医薬品について状況を知りたい場合は、以下のページを確認するとよいでしょう。
参照:医療用医薬品供給状況|厚生労働省
薬局において、後発医薬品の供給不足は業務上さまざまな影響を及ぼします。ここでは、薬局における患者対応の業務負荷と、後発医薬品調剤体制加算への影響についてお伝えします。
5-1.患者対応による業務負荷
後発医薬品の供給不足によって、全ての患者さんへ後発医薬品を安定的に調剤するのが難しくなります。後発医薬品の在庫が足りないために、先発医薬品で調剤せざるを得ない患者さんもいることでしょう。
そういった患者さんの中には、医療費の負担が大きくなることを訴えたり、後発医薬品を調剤できる他薬局を探したりする方もいるのではないでしょうか。
入荷されにくい後発医薬品を採用している薬局では、患者さんへのこまやかな対応が必要となるでしょう。
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2024年度の調剤報酬改定では、後発医薬品不足により薬剤師の業務負荷が大きくなることから、医薬品供給に関する対応を評価する特定薬剤管理指導加算3のロが新設されました。
後発医薬品の供給不足による患者対応がある薬局は、特定薬剤管理指導加算3のロについて確認しておきましょう。
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5-2.後発医薬品調剤体制加算への影響
供給不足によって後発医薬品での調剤ができない場合、先発医薬品で調剤するケースが増えるでしょう。おのずと先発医薬品の使用割合が高くなってしまうため、薬局や薬剤師が後発医薬品の普及に尽力していたとしても、後発医薬品調剤体制加算の算定に必要な使用割合を満たせない薬局が出てしまう可能性があります。
後発医薬品の供給状況によって後発医薬品調剤体制加算の算定に影響が出ることから、厚生労働省は2024年3月18日の事務連絡で、後発医薬品の入手が難しい薬剤については、2024年4月から2024年9月30日まで後発医薬品の使用割合(新指標)を算出する際に除外しても差し支えないとしています。
ただし、事務連絡に記載されている全ての品目について、新指標の算出対象から除外することとし、一部の成分のみ対象から外すことは認められていません。
なお、カットオフ値の算出では除外が認められておらず、従来通りに算出し、加算等の実績要件を満たすかどうかを確認することとされています。
6.後発医薬品の使用促進のために
日本は医療費の増大による医療経済の圧迫が課題となっています。後発医薬品の使用割合を上げることは、医療費削減に貢献するものです。患者さんの中には、後発医薬品の使用に抵抗がある方もいることでしょう。薬剤師はそうした患者さんに対して、後発医薬品は安全性や効果が承認された医薬品であることを丁寧に説明し、納得して服用してもらえるよう対応することが求められています。
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薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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