薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.11.15公開日:2024.09.11 薬剤師のスキルアップ

特定薬剤管理指導加算2とは?算定要件・タイミングや施設基準を解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

特定薬剤管理指導加算2は、抗悪性腫瘍剤による治療を受ける患者さんに対して必要な服薬サポートを行うことで算定できます。本記事では、特定薬剤管理指導加算2の概要や算定要件・点数について解説するとともに、施設基準や届出についてお伝えします。加えて、算定タイミングや算定できないケース、医療機関へ提出する報告書の書き方について説明するとともに、特定薬剤管理指導加算で薬剤師に期待されることについて考えます。

1.特定薬剤管理指導加算2とは?

特定薬剤管理指導加算2とは、抗悪性腫瘍剤を注射した患者さんに対して、薬局の薬剤師が処方された抗悪性腫瘍剤などの服薬管理や服薬サポート、体調管理といった治療に必要な支援を行うことを評価したものです。要件を満たすことで、服薬管理指導料またはかかりつけ薬剤師指導料に加算することができます。

 
🔽 服薬管理指導料について詳しく解説した記事はこちら


 
🔽 かかりつけ薬剤師指導料について詳しく解説した記事はこちら

 

特定薬剤管理指導加算には2のほかに1と3があります。ここでは特定薬剤管理指導加算1、3との違いについてお伝えします。

 

1-1.特定薬剤管理指導加算1との違い

特定薬剤管理指導加算1とは、免疫抑制剤や不整脈用剤、てんかん剤など厚生労働省が定める「特に安全管理が必要な医薬品」について、薬剤の管理や指導などを行った場合に算定できる加算です。いわゆるハイリスク薬を対象としています。
 
特定薬剤管理指導加算1と2の違いは以下のとおりです。

 

■特定薬剤管理指導加算1と2の違い
  特定薬剤管理指導加算1 特定薬剤管理指導加算2
対象患者 ハイリスク薬が処方された患者さん 抗悪性腫瘍剤を注射された悪性腫瘍の患者さん
対象薬剤 ハイリスク薬 抗悪性腫瘍剤や制吐薬など悪性腫瘍の治療に関わる薬剤
点数 10点または5点 100点
算定頻度 処方箋受付ごとに1回 月1回
医師への情報提供 なし あり
患者さんの同意 なし あり

 

また、特定薬剤管理指導加算1と2は対象が異なるため、併算定が可能です。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和2年3月31日|厚生労働省

 
🔽 特定薬剤管理指導加算1について詳しく解説した記事はこちら

 

1-2.特定薬剤管理指導加算3との違い

特定薬剤管理指導加算3とは、服薬指導を行う際に、重点的な指導が必要となる場合を評価した加算です。

 

特定薬剤管理指導加算2と3の違いは、以下のとおりです。

 

■特定薬剤管理指導加算2と3の違い
  特定薬剤管理指導加算2 特定薬剤管理指導加算3
対象患者 抗悪性腫瘍剤を注射された悪性腫瘍の患者さん ● RMPの策定が義務付けられている薬剤を新たに処方された患者さん
● 緊急安全性情報などの発出により指導や情報提供を行った患者さん
● 後発医薬品への変更が可能であるにもかかわらず、先発医薬品を選択しようとする患者さん
● 医薬品の供給状況によって前回と別の銘柄の医薬品を調剤することになる患者さん
対象薬剤 抗悪性腫瘍剤や制吐薬など悪性腫瘍の治療に関わる薬剤 ● RMPの策定が義務付けられている薬剤
● 供給が安定していない薬剤 など
点数 100点 5点
算定頻度 月1回 当該医薬品に関して最初に処方された1回
医師への情報提供 あり なし
患者さんの同意 あり なし

 

特定薬剤管理指導加算3についても、要件を満たすことで特定薬剤管理指導加算2との併算定が可能です。

 
🔽 特定薬剤管理指導加算3について詳しく解説した記事はこちら

2.特定薬剤管理指導加算2の算定要件と点数

特定薬剤管理指導加算2は、要件を満たすことで100点を算定できます。算定要件は以下のとおりです。

 

■特定薬剤管理指導加算2の主な算定要件
算定要件 詳細
対象患者 連携充実加算を届け出ている医療機関で、抗悪性腫瘍剤を「注射」した患者さんのうち、抗悪性腫瘍剤や制吐剤などの支持療法で使用する薬剤を処方された患者さん
患者さんのレジメンの確認・服薬指導 医療機関のホームページなどでレジメンを確認する
電話などによる服薬状況や体調変化などの確認 服薬指導後に、患者さんや家族などへ電話またはビデオ電話で連絡した場合や、ほかの医療機関の処方箋を持参した場合などに、抗悪性腫瘍剤や制吐剤などの服用状況や副作用の有無などについて聞き取りを行う

参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
 

また、特定薬剤管理指導加算2は、患者さん1人につき同一月に2回以上の情報提供を行った場合でも算定は月1回のみとなります。
 
なお、特定薬剤管理指導加算2は抗悪性腫瘍剤などの「調剤を行った」薬局が算定することとされているため、抗悪性腫瘍剤などの調剤をしていない患者さんから、治療や症状に関する相談を受けたとしても算定できません。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和2年3月31日|厚生労働省

 

2-1.特定薬剤管理指導加算2におけるレジメンとは?

レジメンとは、抗がん剤や輸液、制吐剤などの支持療法について、時系列で示した治療計画のことです。連携充実加算を届け出ている医療機関は、ホームページなどで化学療法のレジメンをいつでも閲覧できるようにしておくことが定められています。
 
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
 
そのため、患者さんが薬局にレジメンを持参していない場合でも、ホームページで確認してから服薬指導を行うことが可能です。
 
なお、プロトコールは一般的に「治験実施計画書」を指し、治験を実施する目的、方法、統計学的考察、組織などを記述した文書ですので、レジメンと混同しないように注意しましょう。

 

2-2.服用状況等の確認を行う際の注意点

服用状況の確認は、電話もしくはテレビ電話を利用してリアルタイムの音声通話によって行うよう定められています。
 
メールやチャットなどを補助的に活用すること自体は問題ありませんが、メールやチャットのみでの確認による算定は認められていません。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和2年3月31日|厚生労働省

 

2-3.緊急時に対応できる体制整備も必要

特定薬剤管理指導加算2を算定する薬局は、患者さんの緊急時に対応できるよう、あらかじめ医療機関と緊急時の対応方法や連絡先などを共有しておくことが望ましいとされています。
 
また、患者さんの服用状況を確認した際に、重大な副作用を発現している可能性が示唆された場合は、患者さんへなるべく早く医療機関への連絡または受診を促すといった対応が求められています。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

3.特定薬剤管理指導加算2の施設基準

特定薬剤管理指導加算2の施設基準は、以下のとおりです。

 

■特定薬剤管理指導加算2の施設基準
● 保険薬剤師としての勤務経験を5年以上有する薬剤師が勤務していること
● 会話のやりとりが他の患者さんに聞こえないようパーティションで区切られた独立したカウンターを有するなど、プライバシーに配慮していること
● 麻薬小売業者の免許を取得し、必要な指導を行うことができる体制が整備されていること
● 医療機関が実施する抗悪性腫瘍剤の化学療法に係る研修会に、薬局に勤務する薬剤師の少なくとも1名が年1回以上参加していること

参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

 

薬剤師の勤務経験については、医療機関の薬剤師として勤務経験が1年以上ある場合、1年を上限として勤務経験に含めることができます。
 
施設基準の届出は、地方厚生局などのホームページにある指定様式を使用する必要があります。4つの基準を満たしている旨を記載し、管轄している地方厚生局などへ届け出ましょう。

 

3-1.施設基準「研修会への参加」の回数をカウントする際の注意点

医療機関が実施する研修会の参加実績については、同一の研修会に複数の薬剤師が参加した場合であっても出席回数は1回と数えなければなりません。
 
なお、連携充実加算を算定する医療機関は、外来化学療法に関わる職員や地域の薬局に勤務する薬剤師などを対象とした研修会などを年1回以上実施することとされています。
 
特定薬剤管理指導加算2を算定に関わる処方箋を受け付ける場合、その医療機関では定期的に研修会が実施されていることになるため、研修会の実施情報について、化学療法のレジメンと同様に医療機関のホームページなどで確認しましょう。
 
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

 

3-2.施設基準「研修会への参加」を行うことのメリット

医療機関が実施する研修会への参加は、施設基準を満たすためだけでなく、スキルアップの観点からもいい機会になります。
 
定期的に参加すれば、医療機関と調剤薬局のつながりも作りやすくなり、今まで以上に連携して患者さんの薬物治療に取り組むことができるでしょう。

4.特定薬剤管理指導加算2の算定タイミング

特定薬剤管理指導加算2の算定タイミングは、医療機関への情報提供後に、患者さんが処方箋を持参して来局した時です。
 
この時、持参した処方箋には医療機関の指定はありません。特定薬剤管理指導加算2の算定に係る医療機関以外の処方箋を受け付けた場合であっても、特定薬剤管理指導加算2を算定することができます。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和2年3月31日|厚生労働省

5.特定薬剤管理指導加算2が算定できないケース

特定薬剤管理指導加算2は、かかりつけ薬剤師指導料と服薬管理指導料に設けられた加算です。以下の薬学管理料を算定している患者さんには算定できません。

 

■特定薬剤管理指導加算2と同時算定できない薬学管理料
● かかりつけ薬剤師包括管理料
● 服薬管理指導料の特例(手帳減算に該当する場合)

参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
 

また、以下の薬学管理料については、同一月内の算定が基本的にはできません。

 

■特定薬剤管理指導加算2と同一月内に算定できない薬学管理料
● 在宅患者訪問薬剤管理指導料
● 服薬情報等提供料1・2・3

参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
 

上記の薬学管理料を算定している月については、基本的には特定薬剤管理指導加算が算定できないことになっています。
 
ただし、在宅患者訪問薬剤管理指導料については、訪問薬剤管理指導の薬学的管理指導計画の疾患と異なる疾患または負傷に係る臨時処方については算定可能です。

 
🔽 在宅患者訪問薬剤管理指導料について詳しく解説した記事はこちら

 
服薬情報等提供料については、ほかの医療機関や診療科で処方されている薬剤の情報を得た場合は、抗悪性腫瘍剤などを処方している医療機関以外の医療機関へ情報提供した時に限り、服薬情報提供料が算定できます。

 
🔽 服薬情報提供料について詳しく解説した記事はこちら

6.特定薬剤管理指導加算2の算定時に使用する報告書の書き方

特定薬剤管理指導加算2の算定時に使用する報告書の様式などに決まりはありません。しかし、横浜南共済病院のように施設によっては独自のフォーマットを用意しているところもあります。報告書を提出する際は、あらかじめ医療機関のホームページや薬剤部などでフォーマットの有無を確認しましょう。
 
参照:化学療法室|横浜南共済病院
 
医療機関独自の報告書のフォーマットがない場合は、事前に記載事項などの確認を取ってから情報提供書のフォーマットを作成すれば、医療機関と調剤薬局の双方が使用しやすい報告書になるでしょう。
 
報告書には、主に以下のような内容を記載します。

 

■報告書に記載する内容
● 患者氏名・ID
● 薬局の名称・所在地・電話番号・FAX番号
● 担当薬剤師名
● 服用状況
● 副作用状況
● その他

 

報告書を作成する場合は、なるべく簡潔に要点をまとめて書くように意識しましょう。

7.特定薬剤管理指導加算2で薬剤師に期待されること

特定薬剤管理指導加算2では、薬局薬剤師が医師や病院薬剤師に代わって、外来で化学療法を受ける患者さんの症状や副作用のモニタリング、メンタルケアなどをすることが期待されているでしょう。薬局薬剤師は、これまで以上に外来がん治療を受ける患者さんの薬物治療をサポートすることが求められています。

 

7-1.体調変化や副作用の発現をいち早く察知する

入院中の化学療法であれば、あらゆる症状に対して医師や薬剤師などが細かくチェックし、随時処方変更をするといった対応が可能でしょう。
 
しかし、退院後も治療を継続する患者さんや入院せずに治療を開始する患者さんは、次回受診時まで、体調や治療などについて医療従事者に相談をする機会を得るのは難しいかもしれません。
 
抗悪性腫瘍剤を投与している患者さんの中には、重い副作用などによって治療の継続を断念してしまうケースもあるでしょう。
 
そのため、薬局薬剤師が体調変化や副作用の発現をいち早く察知し、医師へ報告することは、症状のコントロールや副作用の緩和につながります。

 

7-2.コンプライアンスの確認とメンタルケアを行う

化学療法を受ける患者さんは、服用後、数日経過してから副作用が現れたり、治療や生活などに不安を感じたりすることがあるため、いつでも相談ができる医療従事者が必要です。
 
患者さんにとって相談しやすい環境を整えることは、重大な副作用の発現にいち早く気がつくだけでなく、服薬コンプライアンスの向上やメンタル面のケアにもつながるでしょう。
 
薬局薬剤師が化学療法を受ける患者さんをサポートすることで、安全確保と治療効果の向上が期待できます。

8.化学療法を受けるがん患者さんのQOL向上を目指して

薬剤師が化学療法の効果を高めながら副作用を抑えられるよう治療のサポートを行うことは、患者さんのQOL向上につながります。薬局薬剤師は、患者さんが安心して薬物治療に取り組むためにも、積極的に医師や医療機関と関わりながら、医療への貢献度を高めていきましょう。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。