薬剤師のスキルアップ 公開日:2024.09.25 薬剤師のスキルアップ

重複投薬・相互作用等防止加算とは?算定要件・点数や算定例を解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

重複投薬・相互作用等防止加算は、2024年度の調剤報酬改定で点数が見直されました。本記事では、重複投薬・相互作用等防止加算の算定要件や点数、2024年度調剤報酬改定における変更点を解説するとともに、算定例や算定時の注意点、レセプト摘要欄に記載するコメントなどについてもお伝えします。

1.重複投薬・相互作用等防止加算とは?

重複投薬・相互作用等防止加算とは、重複投薬や相互作用を防止することなどを目的として、処方医に疑義照会を行い、処方変更が行われた場合に、調剤管理料に加算するものです。イとロの2区分があり、それぞれ算定要件や点数が異なります。

 
🔽 調剤管理料について解説した記事はこちら

 

重複投薬・相互作用等防止加算は、2024年度調剤報酬改定で一部点数が変更されました。次に、変更点について見ていきましょう。

 

1-1.2024年度調剤報酬改定における変更点

2024年度調剤報酬改定における重複投薬・相互作用等防止加算の変更点は、以下のとおりです。

 

■2024年度調剤報酬改定における重複投薬・相互作用等防止加算の変更点
区分 改定前 改定後
イ:残薬調整に係るもの以外の場合 40点 変更なし
ロ:残薬調整に係るものの場合 30点 20点

 

薬剤師から処方医への照会により、残薬調整に係る処方変更が行われた場合の評価が見直され、「ロ:残薬調整に係るものの場合」の点数が30点から20点へと減点されました。
 
なお、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料についても、同様に「ロ:残薬調整に係るものの場合」の点数が30点から20点に減点されています。
 
重複投薬・相互作用等防止加算を算定するにあたっては、残薬や重複投薬が生じる理由を分析し、処方医に対して連絡・確認する際に、必要に応じてその理由を処方医へ情報提供することとされています。

 

参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省

 
🔽 2024年度診療報酬改定について解説した記事はこちら

2.重複投薬・相互作用等防止加算の算定要件・点数

重複投薬・相互作用等防止加算の点数は以下のとおりです。

 

■重複投薬・相互作用等防止加算の点数
区分 点数
イ:残薬調整に係るもの以外の場合 40点
ロ:残薬調整に係るものの場合 20点

参照:調剤報酬点数表|厚生労働省

 

続いて、算定要件や算定時の注意点について詳しく見ていきましょう。

 

2-1.重複投薬・相互作用等防止加算の算定要件

重複投薬・相互作用等防止加算は、薬剤服用歴等または患者さんや家族などからの情報などにもとづいて処方医へ連絡や確認を行い、処方変更が行われた場合に、処方箋受け付け1回につき算定します。
 
受け付けた処方箋について、重複投薬・相互作用等防止加算の対象となる項目が複数あったとしても、算定できるのは1回となります。
 
算定時は、残薬や重複投薬が生じる原因について分析し、必要に応じて処方医へ情報提供することとされています。
 
また、薬剤服用歴等に処方医への問い合わせ内容や変更内容について記載しなければなりません。
 
🔽 疑義照会について解説した記事はこちら

 

2-1-1.「イ:残薬調整に係るもの以外の場合」の算定要件

「イ:残薬調整に係るもの以外の場合」については、以下のような内容を処方医へ連絡・確認し、処方変更された場合に40点を算定できます。

 

■「イ:残薬調整に係るもの以外の場合」を算定するケース
(イ)併用薬との重複投薬(薬理作用が類似する場合を含む)
(ロ)併用薬、飲食物等との相互作用
(ハ)そのほか薬学的観点から必要と認める事項

 

2-1-2.「ロ:残薬調整に係るものの場合」の算定要件

「ロ:残薬調整に係るものの場合」については、残薬のある薬剤の数量を処方医へ報告し、処方変更によって残薬調整を行った場合に20点を算定できます。

 
🔽 残薬を「買い取ってもらえないの?」と聞かれたときの対応について解説した記事はこちら

 

2-2.重複投薬・相互作用等防止加算を算定する際の注意点

重複投薬・相互作用等防止加算は、調剤管理料を算定していない場合、算定ができません。同時に複数の処方箋を受け付け、それぞれの処方箋の処方内容が変更になった場合であっても、算定できるのは1回となります。
 
また、以下を算定している患者さんの処方については、重複投薬・相互作用等防止加算を算定できません。

 

■重複投薬・相互作用等防止加算を加算できない指導料・指導費
● 在宅患者訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急時等共同指導料
● 居宅療養管理指導費
● 介護予防居宅療養管理指導費

 

上記の指導料・指導費を算定する患者さんが交付された処方箋について、重複投薬や相互作用などを防止する目的で疑義照会を行い、処方が変更された場合は、重複投薬・相互作用等防止加算ではなく、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料を算定します。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 
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3.重複投薬・相互作用等防止加算の算定例

続いて、重複投薬・相互作用等防止加算の算定例について見ていきましょう。

 

3-1.分割調剤の2回目以降に残薬や副作用が確認された場合

分割調剤の2回目以降に、処方医へ残薬や副作用などに関する疑義照会を行い、処方変更があった場合には、重複投薬・相互作用等防止加算が算定できます
 
なお、訪問薬剤管理指導を行っている場合は、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料を算定します。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)平成28年3月31日|厚生労働省

 
🔽 分割調剤について解説した記事はこちら

 

3-2.疑義照会後に処方箋の差し替えを依頼された場合

疑義照会後に処方箋の差し替えを依頼された場合でも、重複投薬・相互作用等防止加算を算定することは可能です。ただし、保険請求をする際は、算定の根拠となる情報が不可欠です。
 
疑義照会により処方箋が差し替えとなった場合、疑義照会を行った情報や記録がなくなるため、保険請求上や法令上の問題が生じます。
 
そのため、やむを得ず、処方箋の差し替えを行う場合には、薬剤服用歴等に記録するだけでなく、差し替え前の処方箋の写しなどを保存しておくといった対応が必要でしょう。
 
なお、調剤レセプトの提出時に処方箋の差し替えを行ったことについてのコメントを記入する必要はないとされています。
 
参照:『保険調剤Q&A 令和6年版』Q116|じほう(編集:日本薬剤師会)

 

3-3.残薬調整により処方変更後、トレーシングレポートで情報提供した場合

残薬調整により処方変更後、トレーシングレポートで医師へ情報提供した場合には、重複投薬・相互作用等防止加算と服薬情報等提供料を合わせて算定することができます。
 
残薬調整を行う場面では、患者さんに詳しい服薬状況を聞き取ることもあるでしょう。残薬調整のための疑義照会では、限られた時間で必要な情報を提供し、指示を得る必要があるため、服薬状況の詳細を情報共有できない場合があります。
 
そういった場合には、トレーシングレポートを活用して情報提供し、重複投薬・相互作用等防止加算と合わせて服薬情報等提供料2を算定することが可能です。
 
また、残薬調整についての疑義照会時に、医師から患者さんの服用状況や今回の残薬調整について文書で情報提供してほしいと依頼されることがあるかもしれません。そういった場合には、服薬情報等提供料1を同時算定ができます。
 
🔽 服薬情報等提供料について解説した記事はこちら


 
参照:『保険調剤Q&A 令和6年版』Q117|じほう(編集:日本薬剤師会)

 

3-4.疑義照会によって薬剤の追加や日数延長をした場合

疑義照会で薬剤の追加や日数延長をした場合、算定要件の「薬学的観点から必要と認める事項」に該当するため、重複投薬・相互作用等防止加算を算定できます。
 
2016年(平成28年)3月までは、薬剤の追加や日数延長は、処方内容の変更として認められていませんでした。
 
しかし、同年度の診療報酬改定以降は、薬学的観点による処方変更であれば、追加や延長であっても算定可能となっています。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)平成28年3月31日|厚生労働省
参照:『保険調剤Q&A 令和6年版』Q113|じほう(編集:日本薬剤師会)

 

3-5.アレルギー歴や副作用歴などによる処方変更の場合

アレルギー歴や副作用歴などによって処方変更になった場合なども「薬学的観点から必要と認める事項」に該当するため、重複投薬・相互作用等防止加算を算定できます。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)平成28年3月31日|厚生労働省

 

3-6.そのほかの重複投薬・相互作用等防止加算の算定例

重複投薬・相互作用等防止加算の具体的な評価範囲については、処方箋同士によるものだけではありません。受け付けた処方箋に対して、以下のようなものも算定対象となります。

 

■重複投薬・相互作用等防止加算の算定対象
● 自薬局で受け付けた別の処方箋
● 他薬局で調剤された薬剤
● OTC薬や飲食物
● 院内処方箋

 

複数の処方箋同士だけでなく1枚の処方箋であっても、重複投薬・相互作用等防止加算は算定可能です。
 
なお、処方された薬剤の在庫がないために変更した場合は算定できません。また、処方医の事務的な記載ミスについては算定対象として想定されていませんが、薬学的観点から必要と判断できることについては算定対象になり得るとされています。
 
参照:『保険調剤Q&A 令和6年版』Q114・115|じほう(編集:日本薬剤師会)

4.重複投薬・相互作用等防止加算のレセプト摘要欄に記載するコメント

重複投薬・相互作用等防止加算(イ)を算定する際は、レセプト摘要欄に以下についてのコメントを記載する必要があります。

 

■重複投薬・相互作用等防止加算のレセプト摘要欄に記載するコメント
レセプト電算処理
システム用コード
左記コードによるレセプト表示文言
内容の要点(重複投薬・相互作用等防止加算)
820101030 同種・同効の併用薬との重複投薬
820101031 併用薬・飲食物等との相互作用
820101032 過去のアレルギー歴、副作用歴
820101256 年齢や体重による影響
820101257 肝機能、腎機能等による影響
820101034 授乳・妊婦への影響
830100775 その他薬学的観点から必要と認める事項

参照:「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について|厚生労働省

 

重複投薬・相互作用等防止加算を算定する際は、上記のコードとともに、レセプト摘要欄にコメントを残しましょう。

5.重複投薬・相互作用等防止加算を算定するために

重複投薬・相互作用等防止加算を算定するためには、イとロの算定要件について理解を深めることが大切です。残薬調整による算定については、明確に判断ができますが、残薬調整以外で算定する場合には、どのようなケースで算定できるのか、細かく把握しておく必要があります。重複投薬・相互作用等防止加算の算定要件をしっかり理解して、算定漏れのないようにしましょう。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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