- 1.在宅中心静脈栄養法加算とは?
- 1-1.2024年度介護報酬改定で居宅療養管理指導の加算として新設
- 2.在宅中心静脈栄養法加算の点数
- 3.在宅中心静脈栄養法加算の算定要件
- 4.在宅中心静脈栄養法加算の施設基準
- 5.在宅中心静脈栄養法加算の届出
- 6.在宅中心静脈栄養法加算を算定するときの注意点
- 6-1.在宅中心静脈栄養法加算と併算定ができる加算
- 6-2.薬剤服用歴などへの記載事項
- 7.在宅中心静脈栄養法の実施時における薬剤師の役割
- 7-1.在宅中心静脈栄養法とは?
- 7-2.在宅医療に移行する患者さんが在宅中心静脈栄養法を実施する際の確認事項
- 7-3.在宅中心静脈栄養法の実施時に必要な薬学的管理
- 7-4.在宅医療において他職種が薬剤師に求めること
- 8.在宅中心静脈栄養法加算を算定するために
1.在宅中心静脈栄養法加算とは?
在宅中心静脈栄養法加算とは、在宅中心静脈栄養法が行われている患者さんに対して、輸液セットを用いた中心静脈栄養法用輸液等の薬剤の使用など、在宅での療養の状況に応じた薬学的管理および指導を行った場合を評価したものです。
2022年度の調剤報酬改定で、在宅患者訪問薬剤管理指導料・在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料・在宅患者緊急時等共同指導料の加算として新設されました。
参照:令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)|厚生労働省
1-1.2024年度介護報酬改定で居宅療養管理指導の加算として新設
在宅中心静脈栄養法加算は、2024年度の介護報酬改定で、居宅療養管理指導の加算として算定できることになりました。
在宅中心静脈栄養法を行っている利用者さんに対して、投与や保管の状況、配合変化の有無などについて確認し、必要な薬学的管理指導を行った場合に、1回につき150単位を加算できます。
参照:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
🔽 居宅療養管理指導について解説した記事はこちら
2.在宅中心静脈栄養法加算の点数
在宅中心静脈栄養法加算は算定要件を満たすことで、以下の指導料について1回につき150点を加算できます。
● 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急時等共同指導料
なお、在宅中心静脈栄養法加算は、患者さんの自宅に訪問することが算定要件に含まれているため、在宅患者オンライン薬剤管理指導料と在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料については算定できないことになっています。
参照:調剤報酬点数表|厚生労働省
🔽 在宅患者訪問薬剤管理指導料について解説した記事はこちら
🔽 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料について解説した記事はこちら
3.在宅中心静脈栄養法加算の算定要件
在宅中心静脈栄養法加算の主な算定要件は、以下のとおりです。
対象患者 | 在宅中心静脈栄養法を行っている患者さん |
---|---|
確認事項 | 患者さんの自宅を訪問し、以下について確認する ● 患者さんの状態 ● 投与環境 ● その他、必要な事項 など |
薬学的管理指導 | 患者さんや家族などに対して、以下について必要な薬学的管理指導を行う ● 保管方法 ● 配合変化防止に係る対応方法 など |
処方医への情報提供 | 必要 |
処方医以外の医療関係職種への情報提供 | 2種類以上の注射薬が同時に投与される場合、配合変化を回避するため、必要に応じて以下について情報提供する ● 患者さんが使用する注射剤に係る配合変化に関する留意点 ● 輸液バッグの遮光の必要性 など |
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
また、薬剤服用歴などへの記載事項についても、詳細が規定されています。詳しくは後述します。
4.在宅中心静脈栄養法加算の施設基準
在宅中心静脈栄養法加算の施設基準は以下のとおりです。
● 高度管理医療機器の販売業の許可(医薬品医療機器等法第39条第1項の規定)を受けていること
● 管理医療機器の販売業の届出(医薬品医療機器等法第39条の3第1項の規定)を行っていること
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
なお、高度管理医療機器の販売業の許可を受けているか、管理医療機器の販売業の届出を行っているかによって、在宅中心静脈栄養法加算の届出書添付書類の記載事項が異なります。
5.在宅中心静脈栄養法加算の届出
在宅中心静脈栄養法加算を算定するためには、地方厚生(支)局へ届出を行わなければなりません。届出書と在宅中心静脈栄養法加算の施設基準に係る届出書添付書類を提出します。
高度管理医療機器の販売業の許可を受けている場合は、許可番号を記載し、管理医療機器の販売業の届出を行っている場合は、該当箇所にチェックを入れます。
6.在宅中心静脈栄養法加算を算定するときの注意点
在宅中心静脈栄養法加算を算定するときの注意点について見ていきましょう。
6-1.在宅中心静脈栄養法加算と併算定ができる加算
在宅中心静脈栄養法加算は、薬剤調製料の無菌製剤処理加算(中心静脈栄養法用輸液)との併算定が可能です。
また、在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算も要件を満たすことで併算定できることになっています。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和4年3月31日|厚生労働省
🔽 無菌製剤処理加算について解説した記事はこちら
6-2.薬剤服用歴などへの記載事項
薬剤服用歴などへの記載事項についても、詳しく規定されています。薬剤服用歴などには、薬学的管理指導の内容や、患者さんや家族への指導内容、医療関係職種との連携などについて記載しなければなりません。項目ごとに詳しく見ていきましょう。
6-2-1.訪問に際して実施した在宅中心静脈栄養法に係る薬学的管理指導の内容
● 保管管理状況
● 残薬の状況
● 栄養状態などの状況
● 輸液製剤による患者さんの体調変化(副作用が疑われる症状など)の有無
● 薬剤の配合変化の有無などの確認 など
上記のような薬学的管理指導の内容を、薬剤服用歴などに記載しなければなりません。
6-2-2.訪問に際して行った患者さん・家族への指導の要点
● 適切な保管方法の指導 など
上記のような患者さんや家族への指導内容も記載しましょう。
6-2-3.処方医および関係する医療関係職種に対して提供した訪問結果、輸液製剤の保管管理に関する情報の要点
● 栄養状態や患者さんの体調変化(副作用が疑われる症状など)などの状況
● 服薬指導の要点などに関する事項 を含む
服薬管理・指導の内容や処方医などの医療関係職種への情報提供などについて、丁寧に記録を残しましょう。
7.在宅中心静脈栄養法の実施時における薬剤師の役割
第500回中央社会保険医療協議会総会(令和3年11月26日)の資料「調剤(その3)」によると、在宅中心静脈栄養法を実施する際は、安全安心な薬物治療を提供できるよう各医療関係職種の連携が求められています。
薬剤師は、在宅医療における役割について理解した上で、多職種と連携できる体制を整えておく必要があるでしょう。
ここでは、在宅中心静脈栄養法の概要や、患者さんが在宅医療へ移行するときの確認事項についてお伝えするとともに、在宅中心静脈栄養法を実施する際に行う薬学的管理や、他職種が薬剤師に求めることを解説します。
7-1.在宅中心静脈栄養法とは?
中心静脈栄養法とは、食事ができない場合に、中心静脈と呼ばれる太い静脈にカテーテルを留置し、カテーテルから点滴で栄養素を補う方法です。在宅で中心静脈栄養法を行うことを在宅中心静脈栄養法と呼びます。
中心静脈は血管が比較的太いことに加え、血液量が多く血流も早いため、糖濃度の高い輸液を投与しても、血管痛や静脈炎などのトラブルが起こりにくいメリットがあります。
一方で、感染症や合併症などのリスクがあるため、管理方法や保存方法などについて丁寧な服薬管理・指導が必要です。そのため、薬剤師が介入し、在宅中心静脈栄養法の実施をサポートすることが求められています。
参照:中心静脈栄養(TPN)|輸液と栄養|大塚製薬工場
7-2.在宅医療に移行する患者さんが在宅中心静脈栄養法を実施する際の確認事項
在宅医療では、患者さんが入院時と同様の治療を続けるために、薬局・薬剤師が院内での薬物療法の現状や退院後の生活に関する情報を把握することが求められます。在宅医療への移行時に確認する事項として次のようなものがあります。
● 無菌調剤を行う場合には、配合変化の有無
● 薬局で調剤可能な医薬品であるかどうか など
参照:調剤(その3)|厚生労働省
これらを確認した上で、治療に必要な処方内容を整理し、医師などへあらかじめ処方提案することが求められます。
7-3.在宅中心静脈栄養法の実施時に必要な薬学的管理
在宅中心静脈栄養法を実施している患者さんへの薬学的管理には、次のようなものがあります。
○ 輸液セットや機械式注入ポンプなどの使用に関する指導
○ 輸液の保存性に配慮した分割調剤、頻回訪問、運搬の検討・実施
○ 消毒液や医療衛生材料の供給
○ 栄養状態などを踏まえた服薬指導
● 他職種との連携に関するもの
○ 退院調整:退院時カンファレンス、病院薬剤部との事前調整
○ 処方提案:中心静脈栄養輸液セット、針、ポンプなど
○ 院外処方可能な処方提案
○ 訪問看護との連携:訪問看護の訪問スケジュール、ルート交換タイミング確認など
○ カテーテル感染症防止対策:輸液セット刺し口の消毒、手技実施時の手洗い方法など
参照:調剤(その3)|厚生労働省
薬剤師は、在宅中心静脈栄養法を実施する患者さんに対して、服薬管理や副作用のモニタリングなどに加え、上記のような薬学的管理が求められます。
7-4.在宅医療において他職種が薬剤師に求めること
同資料によれば、在宅医療において、薬剤師は以下のようなことを他職種から求められています。
● 薬剤の保管管理の指導
● 麻薬の服薬管理および保管管理取扱い上の指導
● 医療材料・衛生材料の供給
● 一般用医薬品や医療材料・衛生材料の配達
● 多職種での情報共有の場への積極的な参加
● 在宅での服薬管理などに関する研修用教材・テキストの作成
参照:調剤(その3)|厚生労働省
在宅医療に携わる薬剤師は、自身の役割を把握し、多職種と連携しながら患者さんをサポートすることが求められます。
🔽 在宅医療における薬剤師の役割について解説した記事はこちら
8.在宅中心静脈栄養法加算を算定するために
在宅中心静脈栄養法を実施する際は、薬剤の管理や保管などについて、患者さんや家族だけではなく、患者さんをサポートする医療関係職種もしっかりと理解しておく必要があるでしょう。薬剤師は、在宅中心静脈栄養法を実施する際のポイントや注意点などを関係者に周知する役割を担います。在宅中心静脈栄養法加算は、そういった薬剤師によるさまざまなサポートを評価した加算です。加算の目的を理解し、地域医療に貢献しましょう。
🔽 調剤報酬に関連する記事はこちら
薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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