- 1.服用薬剤調整支援料2とは?
- 1-1.服用薬剤調整支援料1との違いとは?
- 1-2.重複投薬・相互作用等防止加算との違いとは?
- 2.服用薬剤調整支援料2の算定要件・点数
- 3.服用薬剤調整支援料2の施設基準
- 4.服用薬剤調整支援料2の算定における注意点
- 4-1.内服薬の種類数の考え方
- 4-2.服用薬剤調整支援料2が算定できない主なケース
- 5.服用薬剤調整支援料2の算定例
- 5-1.事例1:服用薬剤調整支援料2の算定後、1の要件を満たす場合
- 5-2.事例2:複数の医療機関に重複投薬等の解消に係る提案を行った場合
- 5-3.事例3:毎月、提案内容を変えて複数の医療機関に報告書を送付した場合
- 5-4.事例4:重複投薬等の解消に係る提案後、変更がない場合
- 6.服用薬剤調整支援料2の報告書様式
- 6-1.「重複投薬等の解消に係る提案」とは?
- 6-2.服用薬の一覧を記載する際の注意点
- 6-3.報告書の作成において意識しておきたいこと
- 7.重複投薬等の解消がポリファーマシー解消の一助に
- 8.薬剤師としての職能を発揮しよう
1.服用薬剤調整支援料2とは?
服用薬剤調整支援料2とは、複数の医療機関から内服薬が合わせて6種類以上処方されている患者さんに対して、患者さんやその家族などから希望があった場合に、薬局薬剤師が重複投薬などの解消のために取り組みを行うことを評価するものです。
服用薬剤調整支援料2と類似しているものに、服用薬剤調整支援料1や重複投薬・相互作用等防止加算があります。まずは、それらとの違いについて見ていきましょう。
1-1.服用薬剤調整支援料1との違いとは?
服用薬剤調整支援料1は、処方医へ減薬の提案を行い、実際に減薬された場合に算定できるものです。一方、服用薬剤調整支援料2は重複投薬などの解消を提案した場合に算定します。
服用薬剤調整支援料1は「減薬」という処方変更があるのに対し、服用薬剤調整支援料2は処方の変更が必須ではない点が大きな違いでしょう。
🔽 服用薬剤調整支援料1について解説した記事はこちら
1-2.重複投薬・相互作用等防止加算との違いとは?
服用薬剤調整支援料2と調剤管理料の重複投薬・相互作用等防止加算との主な違いは、以下のとおりです。
服用薬剤調整支援料2 | 重複投薬・相互作用等防止加算 | |
---|---|---|
点数 | イ 110点 | 残薬調整以外 40点 |
ロ 90点 | 残薬調整 20点 | |
内服薬の種類数 | 6種類以上 | 規定なし |
処方変更の必要性 | なし | あり |
処方変更の確認時点 | 次回来局時 | 当日 |
報告書 | あり | なし |
施設基準 | イ あり | なし |
ロ なし |
残薬調整や同じ薬剤が他院から処方されているなど、明らかに当日中に疑義照会を行わなければならないケースでは、処方変更があった場合に重複投薬・相互作用等防止加算を算定します。
一方、併用可能な薬剤ではあるものの、減薬の余地があるため処方医に検討してほしいといったケースでは、薬剤師としての考えについて文書を用いて提案することで服用薬剤調整支援料2を算定できます。
🔽 調剤管理料の加算について解説した記事はこちら
2.服用薬剤調整支援料2の算定要件・点数
服用薬剤調整支援料2は2区分あり、それぞれの点数は以下のとおりです。
区分 | 点数 |
---|---|
イ 施設基準を満たす薬局が行った場合 | 110点 |
ロ イ以外の場合 | 90点 |
続いて、算定要件について見ていきましょう。
○ 手帳の確認
○ 患者さんやその家族、他薬局、医療機関への聞き取り
● 同種・同効薬が処方されている場合は、医師や患者さん、家族などに処方背景を確認
● 重複投薬などの恐れがある場合は、重複投薬などの解消に係る提案の検討
● 報告書に上記の内容と提案を記載し処方医へ送付
また、処方内容の見直し状況については、患者さんが次回来局した際に確認することとされています。
3.服用薬剤調整支援料2の施設基準
服用薬剤調整支援料2について110点(イ)を算定するためには、過去1年間に1回以上、以下の実績が必要となります。
なお、減薬された薬剤のうち1種類は、自薬局の薬剤師が減薬の提案をした薬剤でなければなりません。上記の施設基準を満たさない場合、90点(ロ)を算定します。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
4.服用薬剤調整支援料2の算定における注意点
服用薬剤調整支援料2を算定する際に注意点について見ていきましょう。
4-1.内服薬の種類数の考え方
内服薬の種類の数え方は、服用薬剤調整支援料1に準じています。錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤については、1銘柄ごとに1種類として計算し、浸煎薬や湯薬は含まれません。また、6種類以上の内服薬の中で、少なくとも1種類は自薬局で調剤している必要があります。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1) 平成30年3月30日|厚生労働省
4-2.服用薬剤調整支援料2が算定できない主なケース
服用薬剤調整支援料2は以下を算定している場合、算定できません。
● 特別調剤基本料B
● 服薬情報等提供料
※ 服用薬剤調整支援料2の算定に係る医療機関へ情報提供した場合
● 特別調剤基本料A
※ 不動産取引等その他特別な関係のある医療機関へ情報提供した場合
服薬情報等提供料は、服用薬剤調整支援料2の算定に係る医療機関への情報提供について算定できません。
🔽 服薬情報等提供料について解説した記事はこちら
また、特別調剤基本料Aを算定している薬局については、不動産取引等その他特別な関係のある医療機関へ情報提供した場合には、服用薬剤調整支援料2を算定できません。
🔽 特別調剤基本料について解説した記事はこちら
5.服用薬剤調整支援料2の算定例
厚生労働省の事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その1) 令和2年3月31日」では、服用薬剤調整支援料2について4つの算定例を挙げています。順に確認していきましょう。
5-1.事例1:服用薬剤調整支援料2の算定後、1の要件を満たす場合
重複投薬などの解消に係る提案を行い、服用薬剤調整支援料2を算定した後に、次回受診時に2種類以上減薬されたケースでは、服用薬剤調整支援料1の要件を満たします。
しかし、この場合は服用薬剤調整支援料2をすでに算定しているため、服用薬剤調整支援料1を算定することはできません。
5-2.事例2:複数の医療機関に重複投薬等の解消に係る提案を行った場合
服用薬剤調整支援料2の算定では、複数の医療機関で処方されている薬について確認するため、報告書を各医療機関に向けて作成することもあるでしょう。
同一月内に複数の医療機関に対して「重複投薬等の解消に係る提案」を行った場合、提案を行った医療機関ごとに服用薬剤調整支援料2を算定することはできません。同一患者について算定できるのは1回までです。
5-3.事例3:毎月、提案内容を変えて複数の医療機関に報告書を送付した場合
例えば、医療機関Aへの重複投薬などの解消に係る提案で服用薬剤調整支援料2を算定し、その翌月に医療機関Bへ異なる内容の提案をした場合、服用薬剤調整支援料2は算定できません。
服用薬剤調整支援料2は、患者さんごとに3カ月に1回までの算定と定められています。それぞれの医療機関に報告書を送付する場合は3カ月以上空けるようにしましょう。
5-4.事例4:重複投薬等の解消に係る提案後、変更がない場合
「重複投薬等の解消に係る提案」を医療機関へ行ったものの、状況に変更がないこともあるでしょう。そういったケースにおいて、3カ月後に「同一内容」で再度提案を行ったとしても、服用薬剤調整支援料2は算定できません。
6.服用薬剤調整支援料2の報告書様式
服用薬剤調整支援料2で使用する報告書の内容は、以下の点を記載することとされています。
● 服用中の薬剤の一覧
● 重複投薬等に関する状況
● 副作用の恐れがある患者の症状および関連する薬剤
● 残薬、その他患者さんへの聞き取りで得た情報 など
報告書の作成においては、医療機関や診療科の情報、服用薬を正確に記載した上で、重複投薬や副作用の可能性などについての薬学的な判断とともに、薬剤の減薬を提案しましょう。
報告書様式について特に規定はありませんが、厚生労働省では報告書の様式例を提示しています。以下に準ずる様式を用いて報告書を作成するようにしましょう。
参照:(別添様式3)患者の重複投薬等に係る報告書|厚生労働省
6-1.「重複投薬等の解消に係る提案」とは?
算定要件にある「重複投薬等の解消に係る提案」とは、重複投薬の状況や副作用の可能性など薬学的観点から減薬が必要と判断される場合に、服用薬の中止などを提案することをいいます。提案を記載した報告書は、薬剤服用歴等に添付するといった方法で保存しなければなりません。
6-2.服用薬の一覧を記載する際の注意点
報告書には、現在服用中の薬剤の一覧を記載することとされています。これは、一目で服用薬を把握できるようにすることを目的としているため、お薬手帳の写しで代用することはできません。補助的に添付するのであれば問題ありませんが、報告書を作成する際は必ず服用薬の一覧を作成しましょう。
参考:疑義解釈資料の送付について(その5)令和2年4月16日|厚生労働省
6-3.報告書の作成において意識しておきたいこと
かかりつけ医の有無や処方開始日、処方意図などについて、できるかぎり情報を集めることが大切です。医師の処方意図を把握できないまま減薬の提案を行うと、場合によっては医師や医療機関からの信頼を失ってしまうかもしれません。医師へ減薬の提案を行う場合は、入念な聞き取りを行い、根拠を明確にしてから報告書を作成しましょう。
7.重複投薬等の解消がポリファーマシー解消の一助に
ポリファーマシーとは、多剤併用による重複投薬や相互作用が引き起こすリスクのことです。服用薬が多くなることで、有害事象のリスクが高まったり、服薬アドヒアランスが低下したりといった問題が起こる可能性がある状況を指します。薬剤師は、服薬指導やお薬手帳の活用により、患者さんの服用薬を一元管理し、残薬の管理や服用状況、重複投薬の有無などの確認を行うことが大切です。
例えば、「便秘薬を数種類もらっているが、じつはだいぶ改善している。調節しながら飲んでいるため、残薬がある」など、丁寧な聞き取りを行うことで得られる情報もあります。服用状況の確認が残薬の管理や重複投薬などの解消につながり、ポリファーマシー解消の一助となる事例でしょう。ポリファーマシーや重複投薬などを解消するためにも、薬剤師は丁寧な服薬指導と服薬管理が求められます。
🔽 ポリファーマシーについて解説した記事はこちら
8.薬剤師としての職能を発揮しよう
服用薬剤調整支援料2は、薬剤師の職能を十分に発揮することを評価した薬学管理料です。昨今の薬剤師には、患者さんの服用薬について一元的に管理するとともに、重複投薬などの解消を検討することで、患者さんの服薬アドヒアランス向上に貢献することが求められています。仕組みを理解し、適切に対応できる知識を身につけましょう。
🔽 調剤報酬に関連する記事はこちら
薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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