薬剤師のスキルアップ 公開日:2024.11.21 薬剤師のスキルアップ

医療情報取得加算とは?薬局の施設基準や算定要件を分かりやすく解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

医療情報取得加算は、現行の健康保険証の新規発行が終了するため、2024年12月から調剤報酬、医科診療報酬ともに区分や点数が見直されます。本記事では、医療情報取得加算の概要や医療DX推進体制整備加算との違いを解説するとともに、医療情報取得加算の2024年12月改定のポイントや算定要件・点数、施設基準などをお伝えします。また、疑義解釈資料をもとにした算定時の注意点や、オンライン資格確認ができない場合の対応についても分かりやすく解説します。

1.調剤報酬の「医療情報取得加算」とは?

調剤報酬の「医療情報取得加算」とは、オンライン資格確認を導入している薬局が、患者さんの情報を十分に活用して調剤することなどを評価した調剤管理料の加算です。
 
医療情報取得加算は、2024年度の調剤報酬改定により、従来の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」から名称が変更されました。
 
これは、2023年4月から薬局や医療機関でのオンライン資格確認等システム導入が原則義務化されたことを踏まえたものです。評価のあり方も「体制整備に係る評価」から「診療情報の取得・活用に係る評価」へと見直されています。
 
参照:令和6年度調剤報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
 
また、医療情報取得加算は、医科診療報酬においても見直されました。ここでは、医科診療報酬の「医療情報取得加算」について解説するとともに、医療DX推進体制整備加算との違いについてもお伝えします。

 
🔽 調剤管理料について解説した記事はこちら


🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら

 

1-1.医科診療報酬の「医療情報取得加算」とは?

医療機関における「医療情報取得加算」も薬局と同様に、オンライン資格確認の導入により、患者さんの診療情報を活用して質の高い診療を行う体制を評価した加算です。
 
調剤報酬の医療情報取得加算と同じく、2024年度の医科診療報酬改定で「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」から名称が変更され、2024年12月から算定要件や点数などが改定されます。
 
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【医療DXの推進】|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算の取扱いについて|厚生労働省

 

1-2.医療DX推進体制整備加算との違いとは?

薬局における医療DX推進体制整備加算は、オンライン資格確認を行う体制に加え、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスを導入するといった医療DXに対応する体制を評価した調剤基本料の加算です。
 
どちらもマイナ保険証に関連する加算であり、医療DX推進体制整備加算は2024年10月、医療情報取得加算は2024年12月から、基準や点数が改定されることとなりました。
 
参照:医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて|厚生労働省
 
医療DX推進体制整備加算が医療DXに対応する体制を評価するものであるのに対し、医療情報取得加算はオンライン資格確認を導入した薬局で患者情報を活用して調剤を実施することなどを評価しています。そのほか、区分や点数、算定頻度の違いは以下のとおりです。

 

■医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算の主な違い
  医療情報取得加算
(2024年12月~)
医療DX推進体制整備加算
(2024年10月~)
区分 なし 1 2 3
点数 1点 7点 6点 4点
算定頻度 12カ月に1回 月1回

 
🔽 医療DX推進体制整備加算について詳しく解説した記事はこちら

2.医療情報取得加算の2024年12月改定のポイント

2024年12月から、現行の健康保険証の新規発行が終了します。それに伴い、薬局や医療機関でマイナンバーカードが利用されるようになることから、医療情報取得加算の要件も2024年12月から改定されます。
 
ここでは、薬局・医療機関における医療情報取得加算の変更点について見ていきましょう。

 

2-1.調剤報酬の医療情報取得加算の改定内容

薬局における医療情報取得加算は、2024年12月より2区分から1区分へと変更され、医療情報取得加算2の算定要件「電子資格確認により当該患者に係る診療情報を取得等した場合」が削除されました。算定頻度も12カ月に1回となります。

 

■医療情報取得加算(調剤報酬)の2024年12月以降の変更点
  2024年6月~11月 2024年12月~
算定点数 医療情報取得加算1 3点 医療情報取得加算 1点
医療情報取得加算2 1点
算定頻度 6カ月に1回 12カ月に1回

参照:医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算の取扱いについて|厚生労働省

 

2-2.医科診療報酬の医療情報取得加算の改定内容

医療機関における医療情報取得加算も、初診・再診ともに2024年12月より2区分から1区分へと変更されますが、算定頻度は据え置きとなっています。

 

■医療情報取得加算(医科診療報酬)の2024年12月以降の変更点
    2024年6月~11月 2024年12月~
初診料 算定点数 医療情報取得加算1 3点 医療情報取得加算 1点
医療情報取得加算2 1点
算定頻度 1カ月に1回
再診料 算定点数 医療情報取得加算3 2点 医療情報取得加算 1点
医療情報取得加算4 1点
算定頻度 3カ月に1回

参照:医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算の取扱いについて|厚生労働省

3.医療情報取得加算の算定要件と点数

医療情報取得加算の主な算定要件と点数は、以下のとおりです。

 

■医療情報取得加算の算定要件・点数
主な算定要件 点数 算定頻度
● 施設基準を満たした薬局で調剤
● 規定の事項を薬局内やウェブサイトに掲示
● 調剤に必要な情報を取得して薬剤服用歴などに記載
1点 12カ月に1回

参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

医療情報取得加算を算定する薬局は、以下について薬局内への掲示と、原則としてウェブサイトへの掲載を行い、必要に応じて患者さんへ説明することとされています。

 

■医療情報取得加算を算定する際に薬局内とウェブサイトへ掲載する事項
● オンライン資格確認を行う体制を有していること
● 処方箋を受け付けた患者さんについては、診療情報や薬剤情報などを取得し、活用して調剤を行うこと

参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

なお、医療情報取得加算を算定する薬局は、アレルギー歴や副作用歴、ジェネリック医薬品への変更の意向、疾患に関する情報、併用薬、服薬状況、体調変化などについて、患者さんから必要な情報を取得し、薬歴などに記載することとされています。

4.医療情報取得加算の施設基準

医療情報取得加算の施設基準は、以下のとおりです。

 

■医療情報取得加算の施設基準
1. 電子情報処理組織を使用した診療報酬請求の実施
2. オンライン資格確認を行うための体制
 (医療機関等向けポータルサイトにおける運用開始日の登録)
3. 以下の事項を薬局の見やすい場所に掲示
 ● オンライン資格確認を行う体制があること
 ● 来局した患者さんに対し、薬剤情報、特定健診情報、そのほか必要な情報を取得・活用して調剤などを行うこと
4. 3の掲示事項について、原則ウェブサイトに掲載
 ● ただし、ホームページなどを有しない保険薬局については、この限りではない

 

ウェブサイトへの掲載については、「2025年5月31日までの間に限り、基準を満たしているものとみなす」とする経過措置が設けられています。
 
なお、医療情報取得加算については、地方厚生(支)局長に届出を行う必要はありません。算定要件や施設基準を満たすことで算定できます。
 
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

 

4-1.オンライン資格確認とは?

オンライン資格確認とは、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号などにより、オンラインで資格情報の確認ができる仕組みのことです。
 

参照:オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)|厚生労働省
 
日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の三師会は、医療機関や薬局でのオンライン資格確認の導入を進め、医療機関の間で情報共有することで、患者さんがより良い医療を受けられる環境づくりや、事務コストの削減などを目指しています。
 
オンライン資格確認等システムを利用することで、以下のようなメリットがあります。

 

■薬局業務におけるオンライン資格確認のメリット
● 保険証の入力の手間が削減できる
● 資格過誤によるレセプト返戻が削減できる
● 来院・来局前に保険資格の有効・無効を確認できる
● 患者さんが保険者へ限度額適用認定証などを申請しなくても限度額情報を取得できる
● 診療情報・薬剤情報や特定健診などの情報を把握できる
● 災害時に診療情報・薬剤情報や特定健診などの情報を確認できる
● 重複投薬などを発見できる
● 電子版お薬手帳と連携できる

参照:オンライン資格確認の導入で事務コストの削減とより良い医療の提供を~データヘルスの基盤として~【医療機関・薬局の方々へ】|厚生労働省

 

また、診察券や医療費助成の受給者証をマイナンバーカードと一体化する取り組みも推進されています。
 
公費負担医療制度や自治体が単独で設けている医療費助成制度については、2023年度から希望する自治体・医療機関・薬局でマイナンバーカードを受給者証として利用する取り組みが先行的に開始されており、2024年度も規模を拡大しつつ継続されています。
 
2023年度、2024年度の取り組みからシステム改善の状況などを踏まえて、順次全国展開される予定です。
 
参照:診察券・医療費助成の受給者証とマイナンバーカードの一体化に係る医療機関・薬局システム事業者向け説明会|デジタル庁

 

4-2.運用開始日の登録とは?

医療情報取得加算を算定するためには、「医療機関等向け総合ポータルサイト」にて、運用開始日を登録する必要があります。
 
登録が完了したら、実際に運用を開始した日から算定可能となり、特別な手続きなどは必要ありません。
 
参照:医療情報・システム基盤整備体制充実加算の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)2022年9月5日|厚生労働省

5.医療情報取得加算を算定するときの注意点

2024年9月に発出された疑義解釈資料(その1)では、2024年度診療報酬改定に係る疑義解釈資料について、以下のように読み替えるものとしています。

 

● 医療情報取得加算1、2 → 医療情報取得加算
● 6月 → 1年

参照:医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)2024年9月3日|厚生労働省

 

ここでは、医療情報取得加算を算定するときの注意点について、2024年度の疑義解釈資料を参考にまとめました。詳しく見ていきましょう。

 

5-1.医療情報・システム基盤整備体制充実加算の算定後、12カ月以内は医療情報取得加算を算定できない

2024年度の改定前に「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を算定していた場合、算定時期の取り扱いは医療情報・システム基盤整備体制充実加算から引き継ぐため、医療情報取得加算を算定できるのは12カ月を経過した後になります。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)2024年3月28日|厚生労働省

 

5-2.同一患者さんが複数の医療機関の処方箋を持参した場合、医療機関ごとの算定はできない

1人の患者さんから複数の医療機関の処方箋を同時に受け付けた場合、医療機関ごとに医療情報取得加算を算定することはできません。患者さん1人につき12カ月に1回限り算定可能です。
 
参照:疑義解釈の送付について(その4)2024年5月10日|厚生労働省

6.オンライン資格確認ができない場合の対応方法

何らかの原因で、マイナンバーカードを使ったオンライン資格確認ができない場合があります。
 
ここでは、オンライン資格確認ができないケースと対応方法についてお伝えします。

 

6-1.【ケース1】「資格(無効)」「資格情報なし」と表示される場合の対応方法

「資格(無効)」「資格情報なし」と表示される場合は、転職や退職などによって保険者が変更されている可能性が考えられます。新たな保険者などが、資格情報をシステムに登録するか、データ確認が終了することで解消されます。
 
こういったケースでは、マイナポータルでも直近の有効な資格情報を確認することができません。対処方法としては、以下の方法が挙げられます。

 

● 患者さん自身がスマートフォンなどでマイナポータルにアクセスし、被保険者資格情報の画面を提示してもらう
● 患者さんが健康保険証を持参している場合は、健康保険証を提示してもらう

 

上記による資格確認ができない場合は、保険者資格申立書に以下の情報について可能な範囲で記載してもらいます。

 

● 連絡先
● マイナンバーカードの券面情報(氏名、生年月日、性別、住所)
● 保険者等に関する事項(加入医療保険種別、保険者等名称、事業所名)

 

なお、過去の受診歴などがあり、資格情報が変わっていないことを口頭で確認した場合は、被保険者資格申立書の提出があったものとして取り扱うことができます。
 
参照:マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応について|厚生労働省

 

6-2.【ケース2】機器不良などによるトラブルの対応方法

保険者などによるシステムへのデータ登録などが完了しているにも関わらず、薬局のカードリーダーでオンライン資格確認ができない場合、以下のケースが考えられます。

 

● 顔認証付きカードリーダーや資格確認端末の故障
● マイナンバーカードの券面汚損
● ICチップの破損
● 利用者証明用電子証明書の有効期限切れ
● 停電
● 施設の通信障害
● 広範囲のネットワーク障害 など

参照:マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応について|厚生労働省

 

上記が原因でオンライン資格確認ができない場合は、それぞれに合わせた対処が必要です。カードリーダーが正常に作動しない場合には、以下についてチェックすることとされています。

 

● パソコンやカードリーダーを再起動させる
● カードリーダーを直射日光が当たらない場所へ移動させる
● ケーブルが抜けていないか確認する
● インターネットに接続できていることを確認する
● 他の機器で同じインターネットを使用していないか確認する

参照:徹底解決!マイナ保険証への医療現場の疑問 解消セミナー|厚生労働省

 

薬局のシステム環境によって、オンライン資格確認ができない場合もあるため、まずはネットワークや機器の環境を確認しましょう。

7.医療情報取得加算を正しく理解して算定しよう

2024年12月の改定によって、医療情報取得加算は2区分から1区分となり、算定頻度も変更されました。薬局薬剤師は変更点を理解した上で、算定時の注意点や、オンライン資格確認ができない場合の対応についても把握しておく必要があるでしょう。

 
🔽 調剤報酬に関連する記事はこちら








































執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。